寝台特急:国内最長列車 廃止のお寒い舞台裏

毎日新聞 2014年06月12日 17時48分(最終更新 06月12日 18時27分)

本州と北海道を結ぶ寝台特急のルート
本州と北海道を結ぶ寝台特急のルート
トワイライトエクスプレス=JR西日本提供
トワイライトエクスプレス=JR西日本提供

 ◇新幹線開業で電圧変更、コスト増

 国内の旅客列車としては最長距離を走る寝台特急「トワイライトエクスプレス」(大阪−札幌)の来春廃止が先月、正式に発表された。運行するJR西日本は車両の老朽化のためというが、疑いの目で見る鉄道ファンは少なくない。そこに浮かび上がる鉄道先進国・日本のお寒い現実とは−−。【小林祥晃】

 トワイライトエクスプレスは最後尾の車窓を独り占めできる個室や、日本海の夕日を眺めながら楽しむフルコースのフレンチが売りの豪華列車。登場から25年、個室は今もなかなか取れないプラチナチケットだ。その「廃止」の報に、鉄道に関する著書の多い明治学院大国際学部教授の原武史さんは「ゆったりと旅したいというシニア層には根強い人気がある。少子高齢化が進み、ニーズはより高まるはずなのに」と首をかしげる。

 JR西日本は「車両製造は40年前で、老朽化した」と説明しているが、複数の関係者は「理由は他にもある」と口をそろえる。一つは、2016年の北海道新幹線開業で青函トンネルの電圧が変わることだ。「現在の交流20キロボルトから、新幹線用の25キロボルトになります。するとトワイライトを引っ張る機関車が使えなくなるのです」。新たに機関車を製造するにも「1両あたり数億円かかり、しかも他の在来線では使えない。別のところに投資したほうがいいという判断です」(JR西日本社員)。

 もう一つは「並行在来線」への支払い問題だ。並行在来線とは、整備新幹線(北陸新幹線や北海道新幹線、東北新幹線の盛岡以北など)と同じ区間を走る在来線のことだ。新幹線開業後は経営がJRから切り離され、地方自治体や地元企業が出資する第三セクターに移管される。トワイライトが走る直江津−金沢間の北陸線や信越線は、北陸新幹線が開業する来春、「あいの風とやま鉄道」や「えちごトキめき鉄道」などの別会社路線になる。「そこにトワイライトを乗り入れるには、JRが三セク側に通行料を支払う必要がある。既に三セク化された岩手や青森の先例から見積もると、年間数億円に達するかもしれない。人気があるとはいえ『列車1本のためにそこまでは』との声が高まり、廃止論へと傾いていったのです」(同)

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