シベリア抑留資料選定に京都・舞鶴沸く 記憶遺産候補
舞鶴から平和の尊さを発信したい-。思いは一つになり、最初のハードルを越えた。
京都府舞鶴市が登録申請したシベリア抑留と引き揚げ関連資料が12日、世界記憶遺産の国内候補に選ばれた。連絡を受け市内は歓喜に包まれたが、ユネスコ本部の審査はこれから。関係者は「歴史を風化させない努力を」「歴史を引き継ぐ意識を子どもたちに」と、さらなる取り組みを誓った。
「抑留体験者、市民の思いに応えるスタートラインに立てた」。資料を所蔵する舞鶴引揚記念館の山下美晴館長(51)は、ほっとした表情を見せた。2年前、「体験者が高齢化し、申請は今しかない」と準備を始めた。昨年6月、引き揚げ船出港地のロシア・ナホトカ市に渡って全面協力の約束を取り付け、申請書で両市の「友情」を強調した。「歴史を風化させない努力を進めるのは義務。喜んでばかりいられない」と、興奮を抑え、前を見据える。
市民も活動を広げた。国内外から4万2千筆以上集まった応援署名を担った舞鶴自治連・区長連協議会の倉橋貢会長(78)は「熱意が届いた。さまざまなイベントで周知し、もっと機運を盛り上げたい」。引き揚げ者の出迎えが原点になった女性活動を引き継ぐNPO法人・まいづるネットワークの会の伊庭節子理事長(65)は「もてなしの資料も含まれており、先輩たちの歴史が認められた。女性の地道な活動が世界で注目される」と喜ぶ。
地域活性化の期待も大きい。舞鶴観光協会の斎藤友幸会長(64)は「舞鶴が重要な歴史の舞台であると評価された。平和教育を充実させ、修学旅行の誘致に力を入れる」と意気込む。
ただユネスコへの推薦が決まっても、これまで3割が審査で落選している。市の有識者会議会長の黒沢文貴・東京女子大教授(60)は「まだ第一歩。重要な資料があっても、引揚記念館は身近な存在ではない。子どもたちにもっと足を運んでもらい、歴史を引き継ぐ意識を育まないと、登録しても意味がない」と今後の活動を期待した。
【 2014年06月13日 08時17分 】