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『ミッション[宇宙×芸術]展』出品のチームラボ猪子寿之氏「高度な抽象化によって、宇宙はもっと近くなる」

2014/06/13公開

 

チームラボが出品している『憑依する滝、人工衛星の重力』

チームラボが『ミッション[宇宙×芸術]展』に出品している作品、『憑依する滝、人工衛星の重力』

かつて遠い存在だった“宇宙”は、2000年代に入り、それまでよりはずっと身近になった。

2001年、スペースアドベンチャー社の宇宙旅行商品で、アメリカの実業家デニス・チトー氏が民間人初の宇宙旅行を成功させた。その後、世界中の旅行会社がこぞって宇宙旅行の商品を開発・発売するようになり、宇宙旅行専門の業者まで現れた。日本でも、2014年には俳優の岩城滉一氏が、芸能人として初めて宇宙旅行に出発するなど注目を集めている。

しかし、いくら宇宙を身近に感じるようになったとはいえ、宇宙旅行への障壁は低くはない。金額面などでのハードルはまだまだ高いというのが現実だ。

まだまだ本当の意味では“身近”とは言いにくい宇宙であるが、東京都現代美術館で開催されている『ミッション[宇宙×芸術]展』はアートを通じて宇宙を身近に感じられる試みである。

8月31日(日)まで開催される同展では、大平貴之氏のプラネタリウム『夢幻宇宙』や八谷和彦氏の「なつのロケット団」の小型液体燃料ロケット、測地実験衛星『あじさい』など、宇宙に関する作品や資料が約50点展示されている。

『憑依する滝、人工衛星の重力』とチームラボ猪子寿之氏

『憑依する滝、人工衛星の重力』とチームラボ猪子寿之氏

その中でひときわ来場者の目を奪う作品があった。同展の後半に突如として現れる広い空間にそれはある。

チームラボの出品する『憑依する滝、人工衛星の重力』である。

この作品は流れ落ちる滝が空間の下部に設置された人工衛星『だいち2号』の実物大模型に跳ね返り、人工衛星の周囲を周回し、蒸発するまでをプロジェクションマッピングで表現した作品である。

この作品で表現したかったこととは何か、チームラボ代表の猪子寿之氏に話を聞いた。

目に見えないものはアートにして体感する

――『憑依する滝、人工衛星の重力』で表現したかったこととは何ですか?

チームラボ猪子寿之氏

体験することが難しい事象は、高度に抽象化することで理解がしやすくなると話す猪子氏

僕らの『宇宙』の認識って、物理学の世界で解明されてきたことなんだよね。

太陽は燃えているらしいとか、重力がないらしいとか、太陽の周りを地球が回っているらしいとか。いわゆる宇宙の認識って、体感で得られたものではなく、理屈、つまりは物理学によって、まるで体感したかのように知った気になっているものなの。

――なるほど。確かに宇宙を「体感」したことがある人はほんの一握りですね。

この作品では、水の粒子の動きという小さすぎて目には見えないものをテーマにしているんだけど、コンピュータの計算により、情報量を下げ、水の粒子の動きを線として可視化している。

本来体感できない現象をアートにして体感できるようにしたんだよね。

この作品みたいに、高度に“抽象化”された状態によって初めて理解できるようになることもあるんですよ。物理学という高度な抽象化の手段によって理解しやすくなった『宇宙』みたいに。

「ジョナサンくらい身近になったら行きたいかな、宇宙には」

――民間の宇宙旅行会社の登場など、宇宙に行く手段が増えましたが、猪子さんは宇宙に行ってみたいと思いますか?

行ってみたいと思うよ。でも今の状況では行きたくないよね。訓練とか、イヤじゃない。インスタントに行けるようになったら行ってみたいかな、ジョナサン行くみたいに。

――宇宙に行ったらやりたいこととかあるんでしょうか?

特にやりたいことはないかな。「体感」してみたいってのが一番だね。

<ミッション[宇宙×芸術]―コスモロジーを超えて>

会期: 6月7日~8月31日
会場:東京都現代美術館
住所:東京都江東区三好4-1-1
時間:10:00~18:00(7月18・25日、8月1・8・15・22・29日は21:00まで)
料金:一般1300円 大学生・専門学生・65歳以上1000円 中高生800円 小学生以下無料
休館日:月曜日(7月12日は開館)、7月22日

>> 詳細はこちら

■憑依する滝、人工衛星の重力/ Universe of Water Particles under Satellite’s Gravity

コンピュータ上の空間に人工衛星「だいち2号」(ALOS-2)を3Dで立体的に再現し、質量を持った人工衛星の重力によって引き込まれていく水をシミュレーションし、滝を描いている。そうやって描かれた滝を、実在の人工衛星『だいち2号』(ALOS-2)の実物大模型にプロジェクションマッピングした作品。

>> 詳細はこちら

取材・文・撮影/佐藤健太 (編集部)


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