科学と社会に対する重い責任を自覚せよ。理化学研究所を、しかりつける声である。

 「STAP(スタップ)細胞」の研究不正をめぐる問題で、理研の改革委員会が厳しい提言をまとめた。

 小保方(おぼかた)晴子氏が所属する発生・再生科学総合研究センター(CDB)には、不正を誘発する構造的な欠陥がある。理研本体にも不正を防ぐ認識が不足している。そう強く批判した。

 おおむね妥当な内容である。

 大幅な組織改編や幹部の人事刷新も求めている。理研は正面から受け止めて、改革を断行し信頼回復に努めるべきだ。

 理研のサイトに掲載された提言は、ほかの大学や研究機関にも耳の痛い内容をたくさん含んでいる。多くの人びとが一読し、自らの組織の点検と改革に生かしたい。

 小保方氏は、所定の手続きを経ずに採用されていた。CDB副センター長の笹井芳樹氏は秘密保持に走りすぎた。そうしたCDBにはびこる成果主義の負の側面を提言は指摘した。

 理研本体については、10年前にも別の研究不正があったのに十分な再発防止策をとらず、今回も事実解明の姿勢が消極的だとしてガバナンスを問うた。

 研究の営みは、従来の個人プレー中心から組織プレー中心に変わってきている。どんな研究者を採り、育て、公正な研究成果をあげるか、組織の責任が重くなったと心してほしい。

 改革委は、CDBを早急に解体することを提言している。研究組織を根幹からつくり直さなければならないという主張には同感である。

 ただ、CDBが00年に発足して以来、蓄えた研究成果やノウハウを有効に生かすことも大切だろう。いま在籍する研究者たちが培ったチームとしての機能もできれば維持したい。

 再生医学は、細胞や組織の再生で病気を治そうという最先端の研究分野である。近年、iPS細胞の発見によって研究状況は大きく変わった。

 その分野で日本の先頭をゆく京大iPS細胞研究所と理研のすみ分けは考えて当然だ。幅広い研究機関との連携を強め、透明性の高い組織に徹底改革すべきだろう。

 大事なのは、世界有数と言われてきたCDBの残すべき財産は生かしつつ、難病患者らの期待が高い再生医療研究の体制を日本全体で整えることだ。

 改革委は外部有識者ばかり6人で構成され、しがらみのない立場から病巣に遠慮なく切り込んだ。不祥事究明の一つのあり方も示したといえよう。