政府の規制改革会議が6月13日、首相官邸で規制改革の答申を安倍晋三首相に手渡す。私自身が会議の委員を務めているので、首相に渡す前にここで中身を明かすわけにはいかないが、概要はこれまで各紙が報じてきた通りだ。
朝日新聞の「農協改革後退」報道はおかしい
それでも評価となると、マスコミによって違いがある。たとえば焦点の1つである農業改革について、朝日新聞は「『全中廃止』撤回へ 自民に配慮 農協改革後退」という見出しで「改革案は政府の規制改革会議が示した当初の内容から大きく後退することになる」と批判的に報じた(6月11日付1面)。
なんの話かといえば、農協の中央組織である全国農業協同組合中央会(全中)の扱いだ。日本の農業が農協中心で動いているのは、ご承知だろう。全中は全国の単位農協の頂点に君臨し、年に総額80億円近い上納金を受け取りながら、単位農協を指導監督する立場にある。だが、全中の指導で農業が発展したか。
滋賀県に匹敵する約40万ヘクタールに及ぶ耕作放棄地をみれば、指導の失敗はあきらかである。そこで規制改革会議の農業ワーキング・グループ(WG)は「全中廃止」を打ち出し、新聞の見出しにもなった。
それが全中はもとより自民党や農林水産省の抵抗を受けて、廃止から「新たな制度に移行する」という表現に変わる(報道時点では見通し)点をとらえて、朝日は改革後退と批判したのだ。結論がどうなったかは16日に公開される答申を見ていただきたいが、私自身は「廃止」が「新たな制度に移行する」となったところで、言葉の問題に過ぎず、本質は変わらないと考える。
当たり前の話だが、制度というのは、いきなりゼロになるのはありえない。制度の下で現実に動いている組織があり、そこで働く人がいる。建物もある。それがある日、突然消えてなくなることはない。重要なのは「制度が変わる」ことだ。
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