テレビ局へ内定が決まっている学生たちが、『オレたち、すごくね?』と渋谷のスポーツバーで騒いでいたという記事を、法政大学教授の水島宏明氏が書いていた。
水島教授は、そういう自己陶酔気味な学生に対して、こうコメントを残している。
「オレたちって、すごくね?」
そう言って舞い上がっている学生に、テレビ局のOBとして、大学の教員として教えてやろう。
「オマエらは別にすごくはない。単に運が良かっただけだ。自慢しているんじゃないよ。バカモノ!」
「そんなことで舞い上がっている程度の人間には、その先はない」
確かにちょっと心配になる。
水島教授は、キー局の生涯賃金がいかに高いかを紹介し、入社出来た事くらいで舞い上がっていたら、庶民の痛みが分からずテレビマンとして良くないと学生を非難している。
これを読んで私は、『そもそも、今年のキー局内定者は、本当に世間の勝ち組になれるのか?』という、水島教授とは全く違う感想を持った。
というのも、世間がもう気づき始めているように、テレビ自体の影響力が弱まってきている。つまり、テレビという産業自体には、もう伸びしろは無い。それに、日本語コンテンツを作っている以上、日本の人口減はテレビ産業の縮小に追い討ちをかけている。
さらに、国は税金不足なので、電波オークションが時々話題になる。(電波オークションを知らないは、テレビ局が圧倒的に優遇されている税制が無くなるというイメージを持ってください)今年の内定者が定年までには数十年あるので、急に郵便局が民営化された様に、急に政治の力で電波オークションが始まったりする可能性も否定できない。
それ以外にも、数十年のスパンで未来を見れば、何らかの規制が外れたり、インターネット企業の力などで、テレビ業界に新規参入が入る可能性も無くはない。あるいは、アップルがテレビを発売したり、Amazonなども独自の動画配信を始めたりする時代なので、テレビ業界がネット業界に飲み込まれてる形になる可能性もあるだろう。
要するに、既存のテレビ局にとっては、恐ろしく前途多難な事が待ち受けているとしか思えない。最高に良くて現状維持でしかなく、それも、相当難しいように見えるというのが現実だろう。それを見越して、最近のテレビ局自身だって、テレビで儲ける気が失せたのか、不動産やイベントで儲けようとしている。
というわけで、今年のテレビ局の内定者は、『オレたち、すごくない?』と酒を飲んでいるより、フリーでも食べていける程の専門分野を作らないと危ない。そして、日本以外でも働けるように、英語などの外国語を習得しておいたほうがいいのではないだろうか。そうしないと、日本の既存キー局が倒れたら、そのキー局に甘やかされてスキルが社内調整位しかない社員は瞬時に負け組人生となってしまう可能性が十分にあると思われる。
でも、そんな事に気づかない学生だから、そもそもテレビ局なんかで働こうと思うのだろう。だから、勝ち組と世間に誇っていられる時にめいっぱいそれを謳歌して、人生の半分位を『勝ち組』気分で過ごすというのが関の山なのかもしれない。残念ながら、私には気の毒な人生に思える。