ネットバンキング:中国から指示、被害6億円 送金役逮捕
毎日新聞 2014年06月11日 11時45分(最終更新 06月11日 14時14分)
インターネットバンキング利用者の口座から不正送金された現金を引き出し、中国に送ったとして、警視庁サイバー犯罪対策課は11日、東京都江戸川区南小岩7、無職、林秀美容疑者(42)ら20〜40代の中国人の男女計13人を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の収受)容疑などで逮捕したと発表した。
同課によると、林容疑者らは「中国にいる首謀者の指示を受け、国際郵便で送られてきたキャッシュカードで現金を引き出し、中国に送金していた」などと供述。これまで引き出し役の中国人が摘発されるケースはあったが、中国への送金役が逮捕されるのは初めてで、中国の首謀者の存在が確認されたのも初めて。昨年以降、200件約6億円の不正送金に関与したとみて実態解明を進める。
林容疑者の逮捕容疑は今年1月20日、20代の出し子役の男が引き出した現金76万円を、犯罪収益と知りながら江戸川区の路上で受け取ったとしている。林容疑者は「犯罪に関わる金とは知らなかった」と容疑を否認している。
同課によると、出し子役で逮捕された男8人が、中国・福建省にいる「社長」と呼ばれる首謀者から指示を受け、国際郵便で送られてきたキャッシュカードで、不正送金先の口座から現金を引き出していた。林容疑者は出し子が引き出した金を回収し、地下銀行を使って中国に送金したとみられる。
ネットバンク利用者のIDやパスワードは、「社長」がウイルス感染させた利用者のパソコンから盗み取られていた可能性が高いという。【林奈緒美】
◇不正窓外14億円…13年 法人口座も標的に
警察庁によると、2013年のインターネットバンキングの不正送金被害総額は約14億600万円に上り、統計を取り始めた11年以降で最悪だった。今年も5月9日までに約14億1700万円に達し、既に昨年1年間の被害額を上回っている。被害を受けた金融機関も昨年の32行から58行に拡大。従来は主に個人口座が狙われたが、今年に入り、送金限度額の大きい法人口座が標的となるケースが増えている。
主な手口は、金融機関などのホームページを装った偽サイトに誘導し、情報を盗み取る「フィッシング型」や、パスワードなどを盗む不正プログラムを仕掛けたウイルスを利用者のパソコンに感染させる「ウイルス型」。昨年は全国の警察が34事件で68人を摘発し、うち中国人が約87%(59人)を占める。