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地方
海の難所関門海峡 相次ぐ韓国船事故 「セウォル号」の余波懸念 福岡
■安全意識の低さと航行ルールの理解不足
1日平均550隻が通過する海上交通の難所・関門海峡で、韓国船による海難事故が多発している。旅客船「セウォル号」沈没事故では、経験の少ない3等航海士による操船など韓国側の安全意識の低さが指摘され、関門海峡でも韓国人船長が操船を航海士に任せている間の事故があった。第7管区海上保安本部(北九州市)は平成24年、韓国・海洋警察庁と海難事故防止に関する協定を結んだが、朴槿恵(パク・クネ)大統領が同庁解体を打ち出したこともあり、関門海峡の安全確保に懸念が広がっている。(大森貴弘)
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平成21~25年の5年間、関門海峡で海難事故を起こした外国船籍の貨物船74隻の船長をみると韓国人船長が31人と4割を占めた。中国人船長の18人を上回り、最多だった。
昨年6月23日。韓国から岡山県に航行中だった韓国船籍のケミカルタンカー「クリスタルサンブ」(2832トン)が、北九州市門司区中町の浅瀬に座礁した。門司海上保安部航行安全課の松瀬博文課長は「積み荷があれば、化学物質による汚染が広がる可能性もあった」と語った。
事故現場はS字型に蛇行する関門海峡の中央部分。難所中の難所といえるが、事故当時、韓国人船長は腹痛を理由に、1等航海士(47)に操船を任せていた。
1等航海士は対向の船に気をとられ、舵を切るのが遅れ、浅瀬に乗り上げたといい、門司海保は、1等航海士を業務上過失往来危険容疑で逮捕した。1等航海士は略式起訴の上、罰金刑が確定した。
海保担当者は「関門海峡は、船長が緊張感を持たなければならない海域。1等航海士は関門海峡に不慣れだった可能性もある」と述べ、操船を預けた船長の判断に驚く。
また、21年10月に海上自衛隊の護衛艦くらまと韓国籍のコンテナ船が衝突した事故は、日本側管制官の指示ミスもあったが、コンテナ船の急な操舵が最大原因とされる。
門司海保によると、平成16~25年までの10年間、関門海峡で事故を起こした船は202隻。このうち外国船籍は147隻と7割を占めた。背景には、海の難所への理解不足がある。
関門海峡は潮流が速く、時には貨物船並みの11ノットに達する。航路の最狭部は500メートルしかない。
一方、交通量は非常に多いことから、海上保安庁が東京湾などと同じように危険度が高い「輻輳(ふくそう)海域」に指定する。
関門海峡は港内における船舶交通の安全を目的とした「港則法」の適用対象となっており、海峡内のエリアごとに追い越し方法や、船舶の優先航行順位などが細かく定められる。
日本人の場合、海技免状を取得する際に関門海峡の状況も勉強するが、外国人の船長らには、こうした機会がない。特徴を理解せずに海峡を通過することにより、事故を引き起こしているといえる。特に、水先案内人が付かない1万トン未満の中・小型貨物船に問題が多い。
海保関門海峡海上交通センターには「外国船のマナーが悪い。もっと監視を厳しくしてほしい」などの意見が寄せられる。
外国船の中では、東アジアのハブ港湾である韓国・釜山港と近いことから、韓国船の事故が目立つ。
このため、7管本部は平成24年10月、韓国の南海地方海洋警察庁と海難防止分野の協定を結んだ。日韓の地方組織間で、海難防止に踏み込んだ協定は初めてだった。
7管本部が海難事故の発生状況を韓国・海洋警察庁に伝え、同庁が関門海峡を通る韓国人船長に注意喚起や操船指導する計画だった。
ところが、韓国の朴大統領が今月19日、セウォル号事件で救助活動の不手際が指摘された海洋警察庁の廃止・解体を表明した。
朴大統領の方針に最大野党、新政治民主連合は反対する。海洋警察庁の解体は、6月4日投開票の韓国統一地方選の結果次第でどうなるか不透明だが、事故をめぐる韓国側の動揺が、関門海峡の安全に影響するとすれば、「対岸の火事」だと座視することもできない。
「これからも関門海峡の海難防止に向け、韓国側と協力は続けなければならないが、あちらの体制がこれからどうなるか、まったく分からない…」
7管本部の担当者は、こう嘆いた。
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