11日のソウル外国為替市場で、ウォン相場が5年10カ月ぶりのウォン高水準となる1ドル=1015.70ウォンで取引を終えた。ウォンは年初来で3.7%上昇し、主要17カ国の通貨で最も高い上昇率を示した。1000ウォンを割り込むウォン高は時間の問題との見方も出ている。
最近のウォン高は年700億ドルを超える経常黒字に加え、先進国でだぶついている投機資金が韓国に流入していることによるものだ。外国人投資家は昨年、7兆8000億ウォン(約7800億円)相当の韓国の株式・債券を買い越したが、今年は先月までに買い越し額が3兆8000億ウォン(約3800億円)に達した。
外国人の資金には先進国の金融緩和政策で世界中を駆け巡るホットマネー(短期的な投機資金)が含まれている。欧米や日本など先進国が為替戦争を思わせる金融緩和を今後も続けるとみられることから、投機資金は韓国への流入が続く見通しだ。
韓国経済は現在、輸出、投資、商品という経済の主なエンジンのうち、輸出だけがどうにか作動している状態だ。第1四半期(1-3月)の成長率は前期比0.9%だったが、消費は0.2%増にとどまった。投資に至っては1.9%減少した。輸出だけが1.5%増え、なんとか成長を支えている。こうした状況でウォン高によって輸出まで不振となれば、経済成長を下支えするエンジンがほとんどストップしかねない。
韓国政府は経常黒字を削減するため、輸入規制を緩和し、投資を促進することで、消費財、資本財の輸入を増やさなければならない。市場をかき回すように動くホットマネーへの対策も必要だ。政府は2010年から11年にかけ、為替先物規制、外国人債券投資課税、外債に対する銀行税適用などの政策で外国人の資金が過剰流入するのを防いだ。韓国経済がただでさえ低成長のわなに陥る中、為替政策まで失敗に終われば、さらに大きな衝撃を受けかねない。政府はその点を肝に銘じるべきだ。