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【第445回】 2014年6月9日
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中島 恵[ジャーナリスト]

韓国船事故の被害拡大は水泳の授業がなかったせい?
社会の歪みを映す中国・韓国人の知られざる日常生活

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 それは、「いくら船内に止まるようにという放送があったにせよ、なぜ乗客はもっと自分の判断で動けなかったのだろうか?」(パニック状態の中で、それほど多くの人が素直に指示に従うものだろうか? まさか、信じられない)、「傾斜がひどすぎてドアが開けられなかったのだろうか?」(荷物を積むなどして、よじ登ることはできなかったのか?)、「一民間企業に主な原因があるのに、怒りの矛先が大統領にまで向いてしまうのはなぜか?」(日本では考えられない)といった素朴な疑問の数々だ。

 いずれにせよ、甲板に飛び出した人のあまりの少なさ、救助のあまりの遅さに、テレビニュースを見つめる日本人は唖然とし、憤りを感じたはずだ。そして、「どうしてこんなことになるのだ!」「何をやっているんだ! 早く助けなくちゃ!」と何度も拳を握った。日頃、韓国には厳しい意見を言う人々でさえ、「どうして若く尊い命を救えなかったのか」と無念に思ったはずだ。

データを紐解いて全てを悟った
日本人が知らない中国・韓国の日常

 しかし、その後の政府のお粗末な対応や、海運会社のオーナー一族の裏事情などを知るにつれ、いつしか気持ちは白けていき、呆れ返り、再び韓国という国家そのものへの不信感が頭をもたげてきた人が大勢いたようだ。そして、それは日本人の「韓国観」を決してよい方向へと転換させたわけではなく、むしろますます悪化させたのではないかと、筆者は思っている。

 だが筆者は、冒頭のニュースを耳にしたとき、なぜか全身の力がすーっと抜けていくのを感じた。「99%の学校にプールが設置されていない」という単純な事実を、少なくとも10年以上韓国と付き合ってきた筆者に、これまで誰1人として教えてくれる人はいなかった。それまで大量に報道されてきた沈没事故のニュースの中で、この話は唯一筆者の目を見開かせてくれたと言っても、過言ではない。

 韓国人は泳げないから水に対して抵抗があり、船から果敢に飛び出せなかったのだ、というだけの話ではない。私たちはこんなに近い韓国について、ほとんど何も知らなかった、ということに気づかされたのである。

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