かすむ復興/仮設 深まる孤立(中)転居次々、自治に陰り
<増える空き室>
東日本大震災の被災者が暮らす仮設住宅に、「過疎」の陰が迫る。
「以前はにぎやかだったよ。すっかり寂しくなった」
仙台市若林区にある荒井7号公園の仮設住宅。津波で自宅が流失し、夫を亡くした無職女性(74)がつぶやく。
全16戸中、入居者がいるのは6戸にとどまる。内陸部で家屋が倒壊するなどした人が、元の土地への再建を終えて次々と転居した。結果、移転が必要な津波被災者が取り残された。
空き室の広がりは、仮設の暮らしから活気を奪う。交流スペースとして用意された集会所は、今ではほとんど使われなくなった。
借り上げや公営住宅を除いた応急仮設住宅の入居率は現在、岩手が82%、宮城83%、福島79%。新居への移転が進み、1年前と比べていずれも9〜7ポイント減った。
生活実態で見れば、この数値はさらに下がる可能性がある。宮城県内で被災者支援に当たる福祉関係者は「新居に引っ越した後も鍵を返却せず、物置として使っているケースが少なくない」と指摘する。
<組織機能せず>
入居率の落ち込みに伴い、仮設住宅のコミュニティー維持は難しさを増している。
50戸以上を受け入れ可能な石巻市内のある仮設住宅。市は「9割以上が入居中」と判断するが、実際に暮らしているのは半数程度にとどまるとみられる。
2年ほど前に当時の会長が退去したのを契機に、自治会の活動が停滞。昨年3月に解散した。ごみ置き場の当番は守られず、たびたびカラスが荒らす。回覧板は1カ月かかって戻ることもあるという。
1人暮らしの無職男性(80)は「どうせ散り散りになるんだから構わない」と、生活環境の悪化を嘆く様子はない。仮住まいという割り切りも、支え合いの障壁となっている。
「孤立防止にはコミュニティーの形成が不可欠。しかし、住民は自分の生活を守るだけで精いっぱいになっている」。石巻市内の福祉関係者は頭を悩ませる。
<近況把握に力>
仮設の暮らしの質をいかに保つか。宮古市田老の「グリーンピア三陸みやこ」にある仮設住宅では、自治会が重い課題に取り組む。全122戸の入居率は8割を切っており、近況把握も兼ねて月数回の茶話会を開く。
単身世帯を中心に役員が訪問を重ね、参加を促す。欠席すれば、不慮の事故などがないか確認に回る徹底ぶりだ。
「転居までの限られた時間だからこそ、住民がまとまっていたい」。自治会長の赤沼正清さん(73)が力を込めた。
2014年06月13日金曜日