戦闘機異常接近:日中関係、一層悪化も
毎日新聞 2014年06月13日 00時13分(最終更新 06月13日 01時06分)
東シナ海公海上を監視飛行中の自衛隊機2機に中国軍機が異常接近した問題を巡り、外務省の斎木昭隆事務次官は12日、中国の程永華駐日大使を同省に呼び、「偶発的事故の発生につながりかねない非常に危険な行為だ」と抗議した。それに対して中国国防省が「自衛隊の方が先に異常接近した」と反論する談話を発表し、ホームページ(HP)上で動画を公開すると、小野寺五典防衛相は「そのような事実はない」と再反論。日中関係の一層の悪化を懸念する声が出ている。【飼手勇介、鈴木美穂、北京・石原聖】
◇抗議・反論の応酬に
中国国防省の耿雁生(こう・がんせい)報道官は12日に談話を発表し、「150メートル以上の距離を保っていた」と述べ、日本側の発表を虚偽と主張。先月24日の異常接近も含め「いわれのない中傷で国際社会をだまし、地域が緊張する雰囲気を作り出した。黒を白と言いくるめる悪質なやり方だ」と非難した。報道官によれば、11日午前10時17分ごろ、「中国近海の関係空域」で中国機ツポレフ154に対し、自衛隊のF15戦闘機2機が約30メートルに接近し、約11分間にわたり追跡。日本側が抗議した異常接近が発生したのは同じ日の午前だという。報道官は「中国の防空識別圏で偵察活動をしていたので規定により、殲11(スホイ27)2機を出動させたが、150メートル以上の距離を保っていた」と説明、領空侵犯の可能性がなくても緊急発進(スクランブル)する規定があると明らかにした。
また、ツポレフが撮影したとするF15の写真と動画をHPで公開した。中国は西沙(英語名・パラセル)諸島での中国とベトナムの艦船衝突の映像をベトナム側が公開し、国際社会から批判されたことに神経をとがらせており、「日本が事実をねじ曲げている」と強調する狙いがありそうだ。
日本政府は12日夕、首相官邸で国家安全保障会議(NSC)閣僚会合を開催し、中国軍機の異常接近の状況などを巡って協議。小野寺氏は協議後、記者団に、中国側の反論について「そのような事実はないし、(HP上の動画の映像でも)一定の距離をとって自衛隊機は安定した飛行をしている」と強調した。