(cache) 3.8 長期的、総合的かつ計画的に構ずべき研究開発等 │ 資源エネルギー庁

第8章 長期的、総合的かつ計画的に構ずべき研究開発等

1.エネルギー技術開発の意義

地球規模で深刻化するエネルギー問題の制約はもとより、気候変動問題を始めとする環境問題関連の制約を本質的に解決するためには、技術によるブレークスルーが不可欠です。資源小国である我が国にとって、強みである技術力・ノウハウ・経験の活用は、エネルギー政策の重要な一翼を担うものです。

我が国としては、技術力の一層の強化に努めるとともに、地球温暖化問題等世界的な取組が必要な課題に対してもその技術力を活かすべくイニシアティブを発揮していきます。

他方、エネルギー関連の技術開発には、長期のリードタイムとそれを実用化するための息の長い官民連携した努力が必要です。そこで、技術動向の変化には柔軟に対応しつつも、中長期的な方向性を官民で共有することで、軸のぶれないエネルギー関連の技術開発の取組の推進を図ることが重要です。

(1)エネルギーの安定供給の確保から見た意義

国内にほとんどエネルギー資源を持たず、その供給の大部分を海外からの輸入に依存する我が国は、その持てる高度な技術力を活かしてエネルギー分野の研究開発を積極的に推進することにより、エネルギー利用効率を向上させる一方、原子力利用の推進、太陽光等新たなエネルギーの利用可能性の拡大、輸入されたエネルギー資源の徹底的な活用等を通じて自らのエネルギー安定供給確保を図るとともに、その成果を活用して世界のエネルギー問題の解決に向けて先導的役割を果たすことが国際的な責務です。これは、資源産出国等との関係を含め、国際社会における我が国の交渉力を強化することにもなります。

(2)環境問題への対応の観点から見た意義

地球温暖化の防止は、人類が今後永きにわたり取り組み続けるべき重要課題であり、これを進めるに当たっては、エネルギーの安定的かつ低廉な供給を含む経済の活性化との両立を図ることを基本とすべきです。温室効果ガスの大部分は、エネルギー利用に伴う二酸化炭素であるため、エネルギー技術の研究開発は、経済との両立を図りつつ、永続的に地球温暖化防止の実効を高めていく上での鍵となるものです。

また、省エネルギーを始めとする我が国の高度なエネルギー技術を活用し、アジア等海外におけるエネルギー利用効率の向上、環境問題への対応を図っていくことは、地球規模の二酸化炭素排出削減につながります。なお、京都議定書の第1約束期間においては、京都メカニズムの活用を通じ、我が国自身の削減約束の達成にも資するものです。

(3)エネルギーコスト低減の観点から見た意義

エネルギー技術の開発は、従来のエネルギーの生産コストの削減及び利用効率の向上を通じてエネルギー・コストの低減を可能にするとともに、特に新エネルギーが競争的な価格で実用化される可能性を拓くものです。また、特定のエネルギー生産・利用技術の開発を行うことにより競合する他のエネルギーの価格上昇を抑制する効果もあります。

(4)経済活性化等の観点から見た意義

エネルギー技術開発は、以上のようなエネルギー政策の観点から見た意義に加えて、技術開発やインフラ整備への投資等を通じて我が国経済の活性化及び国際競争力の強化に資するという効果もあります。

2.エネルギー技術開発に関する取組

エネルギー技術開発は、上記のような極めて重要な政策的意義を有するものであることに加え、実用化までに時間がかかるものが多いこと、技術開発投資の実施者以外に広く便益が及ぶという外部経済性が存在する場合が多いため、民間主体による投資だけでは十分でない場合が多く、国の関与による重点的な取組を行い、官民一体となって推進することが必要な分野です。

(1)技術戦略マップ(エネルギー分野)

エネルギー技術開発に国が関与する際には、利用可能な資金を最大限有効に活用するという観点に立って、解決すべき課題を具体的に抽出し個々の技術開発が目指すべき目的・成果(アウトカム)を明確にした上で、当該技術分野における我が国の水準を踏まえ、プロジェクトの開始時及び節目ごとに的確な評価を行い、当該目的・成果(アウトカム)をどこまで達成できているかを明らかにしつつ計画的に開発及びその実証を進め、実用化への道筋を確保することが肝要です。その際、安全と社会的受容性(パブリック・アクセプタンス)を確保するために、実証試験を丁寧に行い、技術の確証を行うとともに、技術基準の策定等に必要なデータの集積を行うこと、並びに国民の認知度や疑問点などを把握した上で、技術開発の取組状況や成果を分かりやすく情報提供していくことが不可欠です。

また、新エネルギーや省エネルギー技術等では、技術が実用化段階に至り普及が一定のレベルに達することによって本格的な量産体制が整い、それに伴って機器の価格が低下し自立的な普及プロセスに移行するというケースが少なくなく、導入初期段階における支援が必要な場合があります。なお、エネルギー技術の特性を考慮した場合、既存技術の改良が省エネルギー等に大きなインパクトを与える場合が存在するため、既存の技術の改良と将来的な技術開発とを並行して行うことが求められます。

上記の点を踏まえ、省エネルギー等明確な政策目標の下、技術開発によって解決すべき課題を明示し、その解決に向けて求められる技術開発をロードマップの形で提示したエネルギー技術戦略を策定しています。これにより、それぞれに対する国の技術開発の方向性を明確にし、官民一体となった戦略的な技術開発の推進を図ります。なお、技術戦略の策定に当たっては、科学技術基本計画の下策定された分野別推進戦略等との整合性に留意するとともに、原子力に関する技術開発については、「原子力政策大綱」等原子力委員会の決定を踏まえたものとします。

(2)エネルギー関連研究開発プログラム

また、2030年のエネルギー需給展望(2005年3月総合エネルギー調査会需給部会とりまとめ)では、エネルギー政策実現の観点から、技術開発の効率的、効果的な推進が極めて重要であり、長期的、分野統合的な技術戦略を持ちつつ、省エネルギー、新エネルギー、電力、原子力及び化石燃料といった分野毎に具体的なプログラムを作ることにより、戦略的かつ重点的に技術開発の取組を進めることが重要とされています。これらを踏まえ、経済産業省では2005年度より分野毎に関連事業をエネルギー関連研究開発プログラムとして体系化して、技術開発の目標や克服するべき課題、実用化に向けた道筋等を明示し、戦略的かつ重点的に技術開発の取組を進めています。 以下にエネルギー関連研究開発プログラムの概要を示します。

〔1〕省エネルギー技術開発プログラム

(ア)プログラムの目的

長期エネルギー需給見通しで示されている2010年、2030年の省エネルギー効果を政策目標とし、その着実な達成に貢献していく観点から、従来以上に効率的かつ効果的な運営を図ります。

(イ)重点化目標

省エネルギー効果が十分期待できるプロジェクト(2030年時点での省エネルギー効果量が原油換算で10万kl以上を期待できるもの)をベースとして、エネルギー消費の大きい産業部門に対して重点的な支援を行う一方、総合エネルギー調査会省エネルギー部会等で追加対策の必要性が提言されている民生・運輸部門に対しても十分な支援を行うことにより、より一層の省エネルギーに向けての技術的ブレークスルーを図ることとしています。

今後、導入支援スキームとの有機的な連携を進めつつ、本プログラムに基づき、省エネルギー技術の波及効果が大きく、より投資効果の高い技術開発を重点的に推進します。

〔2〕新エネルギー技術開発プログラム

(ア)プログラムの目的

新エネルギーは、エネルギー自給率の向上や地球温暖化対策に資するほか、分散型エネルギーシステムとしてのメリットも期待できる貴重なエネルギーですが、現時点では、出力の不安定性や高コスト等の課題を抱えています。

このため、新エネルギーを当面は補完的なエネルギーとして位置付けつつも、安全の確保に留意し、コスト低減や系統安定化、性能向上等のための技術開発等について、産学官等関係者が協力して戦略的に取り組むこと等により、長期的にはエネルギー源の一翼を担うことを目指した研究開発を実施します。

(イ)重点化目標

経済性の向上による市場拡大を目的とした低コスト化・高効率化の研究開発を重点的に進めるとともに、新たな主体によるエネルギー供給への参画を促すべく、バイオマスや風力等の技術開発を積極的に推進します。

〔3〕電力技術開発プログラム

(ア)プログラムの目的

今後、規制緩和に伴う電力自由化が進展する我が国において、社会を支える重要なエネルギーである電力の一層の安定供給を支えるため、分散型電源の有効活用を可能とし、安定的かつ高効率な電力供給に資する技術開発を行うことにより、系統電力と分散型電源との調和のとれた安定的かつ高効率な電力供給を実現します。

(イ)重点化目標

エネルギー基本計画を踏まえ、電力の一層の安定供給を実現するため、分散型電源の系統連系が容易となるような系統制御技術の研究開発を推進するとともに、高効率送電・電力品質維持等の研究開発を推進します。

〔4〕原子力技術開発プログラム

(ア)プログラムの目的

原子力発電は、資源の供給安定性に優れ、海外への依存度が低い準国産エネルギーとして位置付けられるとともに、発電過程で二酸化炭素を排出しないという特性を持っています。また、核燃料サイクルにより、供給安定性を一層改善することが可能です。このため、今後のエネルギーの安定供給及び地球環境問題への対応を考えると、2030年以降も、原子力発電を基幹電源と位置付け、現在と同じ発電電力量の3~4割程度もしくはそれ以上の役割を目指すことが必要です。一方、原子力発電所の運転に伴い発生する放射性廃棄物については、適切な処理処分に取り組むことが必要です。

以上に鑑み、原子力発電関係、核燃料サイクル関係、放射性廃棄物の処理処分関係の技術開発を行うことにより、原子力利用の推進を図ります。

(イ)重点化目標

2030年前後から始まる国内既設原子力発電所の大規模な代替炉需要や、海外市場も見据えた、次世代軽水炉開発のためのフィージビリティ調査を着実に進めます。また、高速増殖炉サイクルの早期実用化を図るとともに、全炉心MOX燃料原子炉施設等の原子炉関連技術開発、ウラン濃縮技術等の核燃料等の核燃料サイクル関連技術開発、地層処分事業の円滑な推進等に係る放射性廃棄物関係の技術開発を引続き推進するとともに、提案公募方式により、新たなシーズ発掘に資する革新的原子力技術開発への支援を実施します。

〔5〕燃料技術開発プログラム

(ア)プログラムの目的

エネルギーの安定供給を確保し、環境問題への対応を図るため、エネルギー源の多様化と、石油の高付加価値化を進めます。このため、精製プロセスの効率化、石油、石炭の利用に係る環境負荷の低減、天然ガス及びGTL・DMEといった新燃料の導入促進に資する技術開発を推進します。

(イ)重点化目標

2030年前後から始まる国内既設原子力発電所の大規模な代替炉需要や、海外市場も見据えた、次世代軽 水炉開発のためのフィージビリティ調査を着実に進める。また、石油コンビナート全体として一層の生産性向上と環境負荷低減のため、異業種異企業間の運営機能を高度に融合させる技術開発を実施します。また、燃料の多様化の観点から、GTL・DMEといった新燃料の開発、導入促進、天然ガスの普及促進を実施します。また、石炭ガス化等の高効率な石炭利用技術や新たな用途開発につながる改質技術等の開発・普及を実施します。

(3)エネルギー技術戦略

「新・国家エネルギー戦略」(2006年5月)や「エネルギー基本計画」(2007年3月)において、技術によって解決すべき課題を明示しその解決に向け求められる技術開発をロードマップの形で提示した「エネルギー技術戦略」を構築することが示されました。

これを受け策定されたエネルギー技術戦略においては、エネルギー分野の技術開発を、長期のリードタイムとそれを実現する息の長い官民連携の努力が必要という認識のもと、2030年頃までに実用化が見込まれるエネルギー技術を抽出し、 1)総合エネルギー効率の向上、 2)運輸部門の燃料多様化、 3)新エネルギーの開発・導入促進、 4)原子力利用の推進とその大前提となる安全の確保、 5)化石燃料の安定供給確保と有効かつクリーンな利用、の5つの政策目標別に整理しました。その上で、「技術マップ」、「ロードマップ」、「導入シナリオ」を作成しました。

また、エネルギー分野全体に加え、「省エネルギー技術戦略2007」、「燃料関連分野の技術戦略」、「電力・ガス総合技術開発戦略」といった、個別分野における詳細な検討も実施しました。

エネルギー技術戦略の策定についてを参照)

COLUMN

超長期エネルギー技術ビジョン(2100年エネルギー技術ロードマップ)

経済産業省では、2005年度に、将来において真に持続可能なエネルギー需給構造を実現する技術を示したエネルギー分野の技術戦略マップ「超長期エネルギー技術ビジョン」を発表しました。

エネルギー技術は幅広い関連技術を統合しシステムとして構築する必要があるという性格上、革新的な技術開発には長期間を要します。また、実用化した技術が普及して効果を上げるまでには、社会システム変更に伴うコストが大きいため、更に長い時間がかかります。よって、エネルギー技術の技術戦略マップを策定する際は中長期的な視点が重要となります。このような理由もあり、超長期エネルギー技術ビジョンは、石油やガスの生産量がピークを迎える可能性がある2050年や2100年において、エネルギーや地球温暖化の問題を克服した将来像をいくつか検討し、その際、必要となる技術の姿を示し、その技術を開発するためには、例えば2030年までにはどの程度まで技術を開発する必要があるのかといった目安を示す「バックキャスト」といった手法を用いて作成されています。

発表された超長期エネルギー技術ビジョンによると、世界の人口が増加し、経済が急速に発展しても、

  • 車や電気機器などの効率を更に改善し、必要となるエネルギーを70~80%まで削減する。
  • 石油・ガスの代わりに原子力や再生可能エネルギーをエネルギー源とする。
  • 車などの燃料はバイオマス燃料に転換する。究極的には燃料電池(水素)自動車、電気自動車に転換する。

といった技術を中長期的に徐々に開発することで、2100年には、豊かで、真に持続可能な社会を実現することが可能となることが示されています(第381-2-1)。

【第381-2-1】超長期エネルギー技術ビジョンの概要

3. 平成18年度において長期的、総合的かつ計画的に講ずべき研究開発等に関して講じた施策

(1)省エネルギーに関する技術における施策

産官学や異なる事業分野など様々な主体間での連携を促すとともに、今後想定される社会的経済的ニーズに対応していくために、目指すべき技術開発のステージを広く関係者間で共有していくために、2030年に向けた中長期的な省エネルギー技術戦略を策定しました。

エネルギー使用合理化技術戦略的開発(6,200百万円)

省エネルギー技術の基盤研究から実用化開発、実証研究まで、民間団体等から幅広く公募を行い、需要側の課題を克服する技術開発を効率的に行う技術開発スキームとして2003年度から開始しました。2006年度においては、先導研究4件、実用化開発12件、実証研究6件、フィージビリティスタディ10件のテーマを採択し、技術の波及効果が大きく、より投資効果の高い技術開発、省エネ法におけるトップランナー方式の効果的な実施に資するような技術開発等を実施しました。

(2)新エネルギーに関する技術における重点施策

〔1〕太陽光発電の技術開発

再掲 第3章第4節3.(1)〔1〕(ア)~(カ)参照

〔2〕風力発電技術開発

風力発電電力系統安定化等技術開発(再掲 第3章第4節3.(1)〔2〕(ア)参照

〔3〕バイオマスエネルギー技術開発

バイオマスエネルギー高効率転換技術開発(再掲 第3章第3節2.(1)〔1〕参照

〔4〕燃料電池技術開発

再掲 第3章第4節3.(5)〔1〕(ア)~(カ)、(ク)~(ケ)、(シ)~(ツ) 参照

〔5〕クリーンエネルギー自動車の技術開発

革新的次世代型低公害車総合技術開発(再掲 第3章第4節3.(1)〔3〕参照

(3)電力に関する技術への取組

〔1〕 超電導電力ネットワーク制御技術開発(1,915百万円)

大容量の電力を瞬時に出し入れできるなど有力な電力系統制御技術として期待される超電導電力貯蔵(SMES:Superconducting Magnetic Energy Storage)システムについて、更なる高性能と低コスト化を実現するため、高信頼性冷凍等システム構成技術の開発やトータルシステムとしての実用化レベルでの機能検証を実施しました。

また、風力発電や太陽光発電等の分散型電源や鉄道在来線等に係る電力系統安定化技術として期待される超電導フライホイールシステムについて、実用化に必要なシステム構成技術の開発を実施しました。

〔2〕 電源利用対策発電システム技術開発費補助金(459百万円)

夜間の周波数変動を抑制し、円滑な電力供給を図るため、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)向けの水素製造工程(ガス改質)に水電解を併用した電力負荷調節システムの開発に取り組んでいます。

また、MCFCの二酸化炭素濃縮機能を活用した石炭火力発電所排ガスからの二酸化炭素回収技術の開発も併せて取り組んでいます。

〔3〕超電導応用基盤技術研究開発(3,278百万円)

電力ケーブル等の電力機器における高性能化・高効率化を図るため、イットリウム系超電導線材の作製要素技術を基に、実用化レベルの線材作製が見通せる基盤技術の確立に取り組んでいます。

〔4〕 新電力ネットワークシステム実証研究(1,175百万円)

新エネルギー等の分散型電源が大量に導入される場合においても、系統電圧を適正に維持し、円滑な系統電力の供給を可能とする系統制御技術の実証試験に取り組んでいます。

また、新エネルギー等の分散型電源と系統電力を相互補完的に活用することにより、需要家ニーズに対応する高品質の電力供給を集中して行うことが可能な品質別電力供給システムを開発し、特定の地域内の実需要家に対する品質別の電力供給の実証試験に取り組んでいます。

〔5〕 噴流床石炭ガス化発電プラント実証(7,000百万円)

供給安定性に優れた石炭の高効率かつ低環境負荷での利用を図るため、石炭をガス化してコンバインドサイクル(ガスタービンと蒸気タービンの組合せ)の燃料とする発電技術(石炭ガス化複合発電技術(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle))の開発を実施しているところです。2004年度からは、出力25万kWの実証プラント建設に取り組んでいます。

〔6〕 高効率ガスタービン実用化要素技術開発(729百万円の内数)

電力産業用ガスタービンについて、発電効率の向上を目的として、大型機(25万KW(コンバイン出力40万kW程度))のガスタービン入口温度の高温化(1,500℃級→1,700℃級)及び中型機(7万kW程度)の高湿分空気利用ガスタービン(AHAT)システムの実用化のための要素技術開発に取り組んでいます。

〔7〕 新世紀耐熱材料プロジェクト(独立行政法人物質・材料研究機構運営費交付金16,246百万円の内数)

エネルギーの効率利用のための高効率複合発電用1,700℃ガスタービンや高効率コージェネレーション用小型ガスタービンの開発を目指し、超高温、高応力環境に耐える超耐熱材料の設計開発、精密部材成型、新コーティング開発、仮想タービンシミュレーションによる特性評価技術の研究開発を実施しました。

(4)原子力に関する技術への取組

〔1〕安全確保に向けた取組(18,292百万円)

原子力の安全確保に係る技術政策については、第3章で詳述したとおり、原子力安全に係る最新の技術的知見の蓄積及びその安全規制への反映、検査技術や手法の高度化を目的とした実証事業、委託による技術調査等を行っています。

〔2〕 核燃料サイクルの確立に向けた研究開発(7,582百万円)

我が国における核燃料サイクルの確立に向け、ウラン濃縮に関し、ウラン濃縮技術や生産能力の維持・向上等のため、世界最高水準の性能を有するなど国際的に比肩し得る経済性と性能を有する新型遠心分離機の開発を行いました。また、MOX燃料加工に関し、国内商用MOX燃料加工施設に採用する技術の確証試験を推進するとともに、高レベル放射性廃棄物等の地層処分技術信頼性向上のための技術開発等を継続、最終処分地選定のための地質等調査評価技術の開発・実証への重点化を行いました。ウラン廃棄物、発電所廃棄物のうち比較的放射能レベルの高い放射性廃棄物については処分技術等の調査を継続しました。

〔3〕軽水炉関係の研究開発(6,433百万円)

2030年以降に必要となる既設発電所のリプレースを視野に入れつつ、将来の原子力発電に求められる要件を満たす日本型次世代軽水炉開発のための実現可能性調査を実施しました。また、原子力発電及び核燃料サイクルの安全性・経済性を向上させるため、提案公募方式による革新的・独創的な実用原子力技術の研究開発を推進しました。さらに、プルサーマルの促進のため、既存の軽水炉に比べ約3倍のプルトニウムを装荷することができる全炉心MOX燃料軽水炉技術開発等を行いました。

〔4〕高速増殖炉の研究開発(15,517百万円)

高速増殖原型炉「もんじゅ」については、1995年12月のナトリウム漏えい事故以降運転を停止していますが、2005年2月には、改造工事着手についての地元の了解が得られたことから、早期の運転再開を目指して、9月から安全性を一層高めるための改造工事を進めています。

また、原子力機構が、電気事業者や関連する機関の協力を得ながら、高速増殖炉サイクル技術の適切な実用化像と実用化に至るための研究開発計画を提示することを目的として、「実用化戦略調査研究」を推進しました。

また、高速実験炉「常陽」を活用しつつ、安全性・経済性の向上や、環境への負荷の低減、核不拡散等に配慮した実用化候補を明らかにするための研究開発に取り組んでいます。

(5)石油に関する技術への取組

〔1〕環境負荷の少ない新たな石油燃料の開発

石油燃料次世代環境対策技術開発(再掲 第4章第2節3.(2)〔2〕参照

〔2〕石油残さ油の有効活用技術の開発

重質残油クリーン燃料転換プロセス技術開発(再掲 第4章第2節3.(1)〔3〕参照

〔3〕 国際競争力を確保しつつ環境対応を図るための石油精製関連技術の開発

(6)ガス体エネルギーに関する技術への取組

〔1〕 石油・天然ガス開発・利用促進型大型・特別研究(3,217百万円)

大水深、複雑な地層といった悪条件化が進む石油・天然ガスの探鉱・開発技術、利用拡大が見込まれる天然ガス田の開発促進に資する天然ガス有効利用技術等について、独創的・革新的なテーマで、民間ニーズに直結した研究開発を、提案公募により11テーマ(うち、新規6テーマ)実施しました(研究期間1~2年)。さらに、天然ガスの導入及び利用拡大を促進するため、GTL・DMEの普及促進に資する技術開発であって、大規模かつ長期の開発期間を有するテーマについても、2テーマ実施しました(研究期間4年)。

〔2〕 天然ガスの液体燃料化(GTL)技術実証研究(1,710百万円)

アジア地域を中心として世界的に原油需要が急激に拡大している中で、供給安定性や環境特性に優れる天然ガスから輸送に適した液体燃料(軽油等)を製造するGTL技術の実用化に向けた実証研究を実施します。天然ガス中の二酸化炭素(CO2)の除去が不要等の強みを有する我が国独自のGTL製造技術について、日量500バレル規模の実証プラントによる商業化規模での実用化技術の確立を図ります(2006年度~2010年度)。

〔3〕 DME燃料利用機器開発・実用化普及促進研究(588百万円)

DME燃料を早期に実現化・普及させるため、DME燃料利用機器の開発、LPガス流通インフラの転用における耐久性・安全性等に関する実証試験等を行いました。

〔4〕 環境負荷低減型燃料転換技術開発(DME)

再掲 第3章第6節2.(2)〔3〕参照

〔5〕メタンハイドレート技術開発(3,981百万円)

日本周辺海域に相当量の賦存が期待されるメタンハイドレートを将来のエネルギー資源として利用可能とするため、メタンハイドレート賦存海域の探査及び資源量評価手法の確立、メタンガス生産手法の確立及び現場産出試験の実施、開発に伴う環境影響評価及び経済性評価手法の確立等を図り、メタンハイドレートの商業的産出のための技術を整備しているところです。2006年度は、海上基礎試錐(東海沖~熊野灘)で取得したメタンハイドレート試料の分析及び第2回陸上産出試験等を実施しました。

(7)石炭に関する技術への取組

〔1〕 石炭生産技術の開発

再掲 第3章第6節2.(1)〔4〕参照

〔2〕クリーン・コール・テクノロジーの研究開発

再掲 第3章第6節2.(2)〔1〕(ア)~(キ)参照

〔3〕 環境負荷低減型燃料転換技術開発(DME)

再掲 第3章第6節2.(2)〔3〕参照

〔4〕 二酸化炭素炭層固定化技術開発

再掲 第3章第6節2.(2)〔2〕参照

(8) 長期的視野に立って取り組むことが必要な研究開発

〔1〕 ITER計画をはじめとする核融合に関する研究開発の推進(11,856百万円)

(ア) 核融合研究開発の推進は、未来のエネルギー選択肢の幅を広げ、その実現可能性を高める観点から重要です。現在、我が国の核融合の研究開発は、日本原子力研究開発機構、核融合科学研究所、大学等で、相互の連携・協力により進められています。

(イ) ITER計画は、核融合エネルギーの科学的及び技術的な実現可能性を実証することを目的として進めている国際的な共同研究開発プロジェクトであり、現在、日本、米国、韓国、ロシア、中国、インドの6カ国と欧州の1地域間の国際協力によって進められています。2005年度には、6月にITERの建設地がフランス・カダラッシュに決定するとともに、我が国においては、ITERと並行して補完的に取り組む核融合研究開発プロジェクト(幅広いアプローチ)を日欧協力により実施することが決定しました。また、11月にはITER国際機構の機構長予定者が決定、12月にはITER計画にインドが参加するなど、計画に大きな進展が見られました。ITER国際機構設立に向けた政府間協議についても、建設地決定後、精力的に実施され、2006年4月に東京で開かれた次官級協議において協議終了に至りました。また、幅広いアプローチについては、10月に文部科学省において実施プロジェクトを決定し、欧州との間でプロジェクトの具体化に向けた検討等を実施しました。

〔2〕太陽光発電利用促進技術調査(70百万円)

太陽エネルギーの一層の活用を図るべく、山間部等の不便な地域における利用促進に有効と見込まれる、発・送・受電一体の無線送受電システムに係る課題の抽出を行うとともに、将来的な新エネルギーシステムである宇宙太陽光発電への応用までも視野に入れ検討を実施しました。

(9)人材育成のための取組

上述のとおり、我が国が取り組むべきエネルギー技術開発は多岐にわたるため、産官学が協力しつつ、長期的な観点から、これら多様なエネルギー技術の研究開発及び利用を支える優秀な人材の養成・確保を図ります。その際、エネルギー技術が様々な研究領域の総合技術であるという点を踏まえ、特定領域の研究者や技術者のみならず、多彩な領域に精通した人材の養成にも留意しつつ、大学等における教育プログラムや研究拠点を産学で連携するなどして構築・強化していくことが重要です。さらに、エネルギー技術開発の意義及び特徴を踏まえ、その基盤となる基礎研究を推進します。