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12 Jun 2014 21:25

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長崎・平和公園の朝鮮人追悼碑 政治利用される慰霊の場 市の姿勢が助長

産経新聞 6月12日(木)23時12分配信

 長崎市・平和公園に、日本の戦争責任を一方的に追及する長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼碑が、設置許可の更新もせずに30年以上、放置されていたことが明らかになった。碑の前では設置団体が日本を非難する集会を開いていた。公園用地の所有者であり管理責任もある長崎市は、更新の手続きを設置団体に促すこともしておらず、この姿勢が、慰霊の場であるべき平和公園の政治利用を助長したといえる。(田中一世)

 追悼碑と説明板は、爆心地公園と呼ばれる「平和公園・祈りのゾーン」に「長崎在日朝鮮人の人権を守る会」が建立した。その後、「南京大虐殺」や「従軍慰安婦」を紹介する私設資料館「岡まさはる記念長崎平和資料館」の広告看板を説明板近くに無断掲示していた。岡正治氏は守る会の設立者だ。

 日本軍が強制連行したとする証拠はない「従軍慰安婦」はもとより、説明板にある「(日本は)武力で威かくし朝鮮半島を植民地化した」「人々の土地を強制的に奪った」などの事項は、専門家の間でも、歴史的事実かどうか意見が分かれている。

 市有地に掲げられた文章としては、一方的であり、極めて不適当といえる。ところが、長崎市は市のホームページ「平和・原爆」のコーナーで、この説明文全文を紹介している。碑は昭和57年に、説明板は平成10年に設置期限を迎えたが、市は更新手続きをするよう、守る会を指導することもなく、放置した。

 それどころか、守る会は毎年8月9日に追悼碑前で政治色の強い集会を開催し、昨年は代表の高實康稔長崎大名誉教授が「日朝平壌宣言に基づいて国交を正常化する努力を怠った日本の責任は重大だ」などと述べた。

 慰霊の場が政治利用されてしまう−。この状況を憂慮し、昨年11月、長崎市在住の会社経営、小川茂樹氏が住民監査請求を実施。私設資料館の看板撤去や慰霊・追悼目的に反する使用を認めないことなどを求めた。

 今年1月の監査結果で請求自体は認められなかったが、監査委員は意見として「更新申請の指導をすぐに行わないなど対応に積極性が見られなかった」「説明板の記載内容のチェックについて、どこの部署が判断したのか不明確」などと是正を求めた。

 守る会はようやく広告看板を撤去し、市も更新申請を行うよう指導した。

 監査請求した小川氏は「純粋な慰霊目的とは思えない。市営公園であり、被爆者慰霊の場である平和公園に建つ施設なのだから、そこに書かれた内容は日本の公式見解として利用されてしまう。修学旅行生や外国人観光客も訪れる場所であり、更新を認めるべきではない」と語った。

 一方、守る会の高實氏は産経新聞の取材に「市から何の連絡もなく、許可されたと思っていた。説明板や集会はまったく正当だと考えている」と述べた。

 平和公園内では、駐福岡韓国総領事館と在日本大韓民国民団(民団)が1月、「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」設置許可を申請した。

 旧日本軍による強制連行を追及してきた韓国首相直属の対日抗争期強制動員調査・支援委員会が「国なき民として受けたさげすみと仕打ちによってずたずたに裂け散った悲しい心はどうしてつなぎ合わせることができましょう」という碑文を起草した。

 こちらは現在、長崎市が設置の可否について検討している。

 市は、被爆者の冥福を祈り、平和を祈念する場の政治利用を、決して許してはならない。

【長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼碑の説明文全文】

 1910(明治43)年8月22日、日本政府は「日韓併合条約」を公布し、朝鮮を完全に日本の植民地支配下に置いたため、自由も人権も、さらに貴重な土地も奪われ、生活の手段を失った朝鮮人たちは日本に流入した。その後、日本に強制連行され強制労働させられた朝鮮人は、1945(昭和20)年8月15日の日本敗戦当時は、実に236万5263人、長崎県全体に在住していた朝鮮人は約7万人という多数に上がった(内務省警保局発表)。そして長崎市周辺には約3万数千人が在住し、三菱系列の造船所、製鋼所、電機、兵器工場などの事業所や周辺地区の道路、防空壕、埋立て等の作業に強制労働させられ、1945(昭和20)年8月9日のアメリカ軍による原爆攻撃で約2万人が被爆し、約1万人が爆死した。

 私たち、名もなき日本人がささやかな浄財を拠出して異郷の地長崎で悲惨な生涯を閉じた1万余の朝鮮人のために、この追悼碑を建設した。かつて日本が朝鮮を武力で威かくし、植民化し、その民族を強制連行し、虐待酷使し、強制労働の果てに遂に悲惨な原爆死に至らしめた戦争責任を、彼らにおわびすると共に、核兵器の絶滅と朝鮮の平和的な統一を心から念じてやまない。

最終更新:6月12日(木)23時12分

産経新聞

 

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