くらしEYE
「くらしEYE」のコーナーは、共同通信社生活報道部が毎週末、新聞用に出稿している「暮らしアイ」と「暮らしコンパス」「そもそも解説」を47NEWS向けに再構成したものです。
2014.05.12 16:00
【内部障害】 「見えない障害」理解を マークやバッジで啓発
「見えない障害バッジ」を手にした作家の大野更紗さん
心臓や腎臓の疾患などによる機能障害は「内部障害」と呼ばれ、日常生活に困難が伴う。しかし外見からは障害が分かりづらいため、周囲の理解を得られずに困っている人も多い。当事者たちはマークやバッジを作って障害を知ってもらう取り組みを始めている。
「生まれてから一度も走ったことがない」と話すのは、重い心臓病で身体障害者手帳を持っている白井伸夜さん(45)。月に1度、埼玉県内の自宅から1時間半以上かけて東京都内の大学病院に通院している。
体力がないため混雑した電車で立ち続けるのはとても苦しい。さらにつらいのは、優先席に座ろうとすると「なぜ?」と問うような視線を向けられるときだ。
内部障害は心臓や腎臓、肝臓、呼吸器などの機能障害を指す。肢体不自由や視覚・聴覚障害などとともに身体障害者手帳が交付される。2011年時点で手帳所持者の24%が内部障害。厚生労働省は93万人と推計しており、手帳所持者の中で肢体不自由に次ぐ人数だ。
周囲に理解してもらおうと、白井さんが代表理事を務めるNPO法人「ハート・プラスの会」は03年「ハート・プラスマーク」を作った。体の内部を表すハートに思いやりの心を加えたものだ。
「オストメイト(人工肛門や人工ぼうこう保有者)で、障害者用トイレを使って怒鳴られた人もいる。車いすのマークは普及しているが、内部障害を知ってもらう手段はなかった」と白井さん。
マークは徐々に広まっている。北九州市は約5年前から、ステッカーやバッジにして交通機関の優先席に貼ったり、希望者に配ったりしている。担当者は「昨年、障害者差別解消法も成立した。身近な場所で知ってもらうのが第一歩」と話す。
長崎県立大の吉田恵理子准教授が昨年、内部障害者の団体の会員471人を対象に実施したアンケート(回収率57%)では、52%が「介助や支援が必要」と答えた。
支援が必要な場面は複数回答で、調理・掃除などの家事が54%、日常の買い物が42%、通院・通勤・通学が42%だった。吉田准教授は「支援が必要と答えていなくても、ぎりぎりのところで努力している人がいるのでは」とみている。
「見えない障害バッジ」を企画したのは作家の大野更紗さん。「自分の障害を周囲と語り合えるつながりの装置になれば」との思いを込めた透明のリボンのデザインだ。
自身も突然、免疫系の難病になり、公的な制度の谷間に陥って支援が受けづらい人たちの状況を、当事者として著書などで発信している。
バッジは一つ350円。これまで3万個の申し込みがあった。難病のほか、発達障害や精神疾患の当事者や家族からも問い合わせがある。大野さんは「自分の障害を語り始めるには勇気がいる。でもバッジを持つ人の数だけ同じ気持ちの人がいる、一人じゃないと思ってもらえたら」と願っている。
(共同通信)
2014.05.05 16:00
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