理研:社会的責任の自覚希薄…改革委、構造的欠陥やり玉
毎日新聞 2014年06月12日 21時11分(最終更新 06月13日 00時20分)
「大組織にはおよそ似つかわしくない、貧弱すぎるガバナンス(組織統治)」。STAP細胞論文の不正問題をきっかけに、理化学研究所改革を検討してきた改革委員会が12日にまとめた提言は、理研の上層部を「社会的責任の自覚が希薄」と批判した。組織の構造的欠陥を次々とやり玉に挙げ、小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダーが所属する研究機関の解体という荒療治を求めた。【清水健二、八田浩輔】
理研は今年4月、調査委員会による論文の不正認定後、外部識者6人からなる改革委を設置した。提言書は、改革委が事務局の理研職員を排除した会合も頻繁に開き、独立した検証にこだわり抜いたものだ。12日夕から開いた記者会見で、岸輝雄委員長は「世界の(科学研究の)三大不正の一つと研究仲間からメールをもらった」と、2000年代に起きた米ベル研究所の高温超電導や、ソウル大教授の胚性幹細胞(ES細胞)研究の論文捏造(ねつぞう)と並ぶ深刻さという認識を示した。
提言が強調したのが、発生・再生科学総合研究センター(CDB、神戸市)のガバナンスのお粗末さだ。
昨年3月の小保方氏の研究ユニットリーダー採用は、国立大なら准教授クラスの抜てき。この経緯を「英語のセミナーなど手続きをことごとく省略し、最初から(採用が)決まっていたと評価せざるを得ない」と指摘、客観的な研究能力の評価より画期的な成果を優先したCDBを、「成果主義」と批判した。
データの記録や管理も「研究者任せ」と指弾された。今回の論文の実験が進められていた12年当時、理研と雇用関係のない「招へい研究員」だった若山照彦氏(現・山梨大教授)に、小保方氏の管理役を任せていた。小保方氏が研究者としてトレーニング不足であることをCDB幹部が認識していたことなどと併せて、提言は竹市雅俊・CDBセンター長を「指導の責務を負っている認識さえない」と非難した。
提言はさらに、理研本部(埼玉県和光市)の責任について、管理職に義務付けた不正防止の研修の受講率が41%に過ぎないなど「不徹底を放置した」と分析。STAP論文について、今なお疑惑が相次いでいるにもかかわらず調査に及び腰だとして「幕引きを急いでいる感がある」と対応に疑問を投げ掛けた。