安倍政権は「株価」を強く意識した政権だ。官邸は、株価を、ビジネスの世界で言うところの「KPI」(Key Performance Indicator)の一つと考えているような節がある。
何と言っても株価に「効く」のは、金融緩和の追加によって、さらに円安に導くことだが、この他に、首相官邸は「3つのG」を手段として考えているようだ。
成長(Growth)戦略のG、企業のガバナンスのG、そして、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用方針見直しの3つの「G」である。
「GPIF運用見直し」には、問題が多い
これらの中で、市場が最も注目し、また政府も期待をかけているように見えるのは、GPIFの運用方針見直し(による株式等の買い増し)だ。あれこれ発表される成長戦略も、「日本版スチュワードシップ・コード」を梃子に使った企業のガバナンス見直しも、それぞれに「株高親和的」な政策で、望ましい面も備えているが、事の性質として株価に対する効果の表れ方はゆっくりで、即効性に乏しい。
これに対して、GPIFの運用方針見直しによるリスク資産の積み増しは、市場におそらく数兆円単位の「買い」の資金が直接投入されるので、即効性があるように見える。
但し、GPIFの資金による株式の買い増しが望ましい政策かといわれると、幾つかの疑問符を付けざるを得ない。
先ず、大もとの問題として、日本の公的年金は賦課方式であり、130兆円に迫る巨額の積立金を持つ必要がない。積立金によるリスク運用は、いわば国民からお金を召し上げて、投資信託を買わせるような奇妙な効果になっている。有識者会議は、積立金を所与のものとしてその運用方針を考えるのではなく、積立金の適正規模を考えるべきだった。根本的な問題を考えてこそ、「有識者」の名に値しよう。
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