コラム:デフレ脱却で始まる「アベノミクス現実相場」=武者陵司氏
製造業の雇用が失われているのは洋の東西を問わないが、欧米では非製造業の雇用が着実に創造され続けている。一方、97年以降の日本ではそうした流れはまったく止まってしまった。それもそのはずで、サービス産業は製造業に比べて生産性向上が容易ではない。したがって、サービス産業に属する多くの企業が収益を伸ばすためには値段を上げるしかない。欧米でもサービス産業の雇用増加や価値創造の推進力は値上げであり、その結果として人々はより豊かなサービスを享受できている。それが先進国内需の中核部分である。
一部には、日本ではもう車やテレビはさほど売れないから、需要増にあまり期待しないほうがいいといった悲観論が聞かれるが、もともとそうした分野に成長の起爆剤を求める必要はない。よりレベルの高い教育や娯楽、介護といった、要するに「クオリティ・オブ・ライフ」を高めてくれるような分野にこそ有望な需要はある。
政府に必要なことは、そうしたクオリティ・オブ・ライフの実現のために、需要と供給のミスマッチを解消してあげることだ。モノはもうそれほどいらないと言っている人に、同じモノを押しつけても何も生まれない。必要とされる分野へと資源の再配分を促すことこそが正しい成長戦略の姿である。
*武者陵司氏は、武者リサーチ代表。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。87年まで企業調査アナリストとして、繊維・建設・不動産・自動車・電機エレクトロニクスなどを担当。その後、大和総研アメリカのチーフアナリスト、大和総研の企業調査第二部長などを経て、97年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを歴任。2009年より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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