土曜ワイド劇場「司法教官・穂高美子3」 2014.05.31

(銃撃音)
(銃撃音)ああっ!
(銃撃音)ヒット!
(銃撃音)大丈夫?おいトモコ!あんまり深追いするなよ。
わかった。
(銃撃音)
(女性の悲鳴)
(悲鳴)大丈夫ですか?大丈夫ですか?救急車を呼ぶわ。
トモコ!どうしたんだ?駄目よ。
救急隊が来るまで1時間かかるって。
そんな…!死んじゃ駄目だ。
死んじゃ駄目だよトモコ!こうなったら俺がやる!あなたが…!?出来るの?ああ。
私は医者ではありませんが救命講習を受けた事があります。
お願いします。
妻を…トモコを助けてください!トモコ…!あんたが下手な処置さえしなければ妻は死なずに済んだんだ。
こうなったら訴えてやる!はあ?
(穂高美子)事件の概要を説明します。
サバイバルゲーム中に山奥で心肺停止となり死亡した女A。
その夫男Bは救命措置に失敗した男Cの責任を追及しました。
もしあなたがこの事件の担当検事なら誰をなんの罪で起訴しますか?
私穂高美子は検察出身の司法研修所教官です
司法研修所とは司法試験に合格した年齢も経歴も様々な修習生たちが裁判官検事弁護士になるために一緒になって学ぶ場所の事です
修習生は司法研修所で講義を受けるだけでなく日本全国の裁判所地方検察法律事務所に派遣され各地で実際の事件捜査を通じて生の法律実務を学びます
今日は群馬県前橋市に派遣された修習生を前に教官が出張して講義を行っています
講義では実際の事件をもとに作られた白表紙と呼ばれる問題集を使います
検察教官の講義は修習生たちが検事になったつもりで白表紙を読み被疑者を起訴するかどうかを考えて起案します
前島さんは…男Cは不起訴と起案してますね。
(前島典子)はい。
プレーヤーの中に医師はいないしAEDがある場所まで1時間以上かかります。
この一刻を争う状況の中男Cは最善の策として処置を行っただけです。
男Cには女Aに対する殺意もなければなんの悪意もありません。
よって不起訴です。
いわゆる「善きサマリア人の法」というやつですね。
(花田裕輔)善きサマリア人…?善きサマリア人とは聖書にある話のひとつで敵対するユダヤ人を善意で助けたサマリア人の事をいいます。
その話をもとにした善きサマリア人の法は緊急時人を善意で助けようとした場合たとえ失敗しても罪には問わないという法律です。
でもそんな法律日本にはありませんよね。
だからこの事案の法的根拠にはなりませんよ。
そのとおり。
善きサマリア人の法は訴訟社会のアメリカやカナダでは大半の州で法制化されていますが日本にはありません。
そういう花田さんは…男Cを過失致死罪で起訴すると起案してますね。
はい。
男Cは医者でもないのに勝手に処置を行い結果として女Aを死に至らしめました。
これは過失致死に相当します。
余計な事をせずに救急車を待っていれば罪に問われる事はなかったんです。
でも男Cは善意でやったのよ!それで訴えられてたら助けられる命も助けられないじゃない!僕だって見て見ぬふりがいいとは思っていませんよ。
でも人のために良かれと思ってやった事でも平気で訴えられるのがこの世の中ってもんでしょ!結局正直者はバカをみるんですよ。
この事案のポイントはこの救命行為が善意によるものだったかではなく過失があったかどうかにあります。
まず男Cの処置に過失はなかったので不起訴です。
さらに司法解剖の結果女Aには首を絞められた痕がありました。
女Aに多額の保険金がかけられていた事から男Bを追及したところ…。
男Bは保険金目当てで女Aを殺害した事を認め殺人罪で起訴されました。
うう…!あっああ…!
(悲鳴)男Cの取ったこの善意の行動をどう判断するかは意見が分かれるところですね。
現実に飛行機の中で急病人が出ても責任の追及を恐れて名乗り出ない医師もいるそうですし…。
そういえば白鳥歩美さんは元看護師だったわよね?
(白鳥歩美)はい…。
人の死と向き合ってきたあなたならいろいろ思うところがあるんでしょうけどどうして起案は白紙のままなの?わからないからです。
わからない…?何がわからないのかしら?なぜ人の命を救いたいという思いが罪に問われなければならないのでしょうか?私は弁護士になって男Cのような人たちを全力で支えていきたい。
ただそれだけです。

(智恵の母)誰か!この子助けてください!どうかされましたか?私看護師です。
歩美さん。
弁護士志望か…。
はい。
あなたの過去に何があったのか私にはわからないわ。
でもね法廷で涙を見せたりしたら弁護士としては失格よ。
すいませんでした。
失礼します。

(小宮譲)またやっちゃったみたいですね穂高先生。
小宮先生なんの事ですか?講義でしごきすぎて彼女を泣かせたみたいじゃないですか。
さすがは鬼教官穂高美子略してタカビー。
異議あり!歩美さんの涙と私のあだ名にはなんの関連もありません。
それはわかりませんよ。
彼女も先生同様変わってますから。
実家の大豪邸がすぐ近くにあるのにわざわざマンションで一人暮らしだそうです。
看護師を辞めて弁護士を目指しているのには何か深い理由があるみたいですけどね…。

(飯島誠)今に見てろよ。

(携帯電話)もしもし?
(白鳥弥生)「歩美…あんた一体どういうつもり?」「何度電話しても全然出ないんだから」ごめんお母さん。
(弥生)明日がなんの日か覚えてるわね?
(弥生)おじいさまの誕生日ぐらいたまには家に帰ってきなさい。
でも…私が帰ってもみんな嫌な思いするだけだし。
そんな事言わないで。
とにかく顔だけは出しなさい。
いいわね?わかった。
じゃあ明日。
穂高先生小宮先生前橋出張お疲れさまでした。
いえ。
山根所長私たちのお土産なんだと思います?そうですねおせんべいか何かですか?正解は…クイーンズ白鳥のスイーツセットです。
クイーンズ白鳥…?所長ご存じないんですか?クイーンズ白鳥は前橋から全国展開しているショッピングモールなんですよ。
ああ修習生の白鳥歩美君のご実家が経営している…。
はい。
おじいさんが会長でお父さんが社長です。
そして我らがアイドルスイーツ姉妹。
スイーツ姉妹…?長女の真知子が和菓子で次女のゆりが洋菓子の開発担当なんです。
では白鳥君はその三姉妹の三女って事ですか。
はい。
こちらがクイーンズ大福で…。
こちらが今話題のクイーンズバームクーヘンです。
おおなるほど。
美味しそうですねぇ。
所長もっと美味しそうなのがテレビに出てますよ。

(拍手)」異議あり!女性を美味しいと表現するのは人権侵害です。
異議あり!表現の自由を殊更に脅かす発言は威力妨害に当たりますよ。
静粛に!とにかくいただきましょう。
はい。
はい。
(田所静夫)お忙しい中お集まり頂きありがとうございます。
これよりスイーツ姉妹の新作発表会を行いたいと思います。
(拍手)
(白鳥真知子)長女の真知子です。
今回の新作和菓子は豆乳白玉とおからの入ったきなこをぜんざい風にしてみました。
(女性リポーター)真知子さんスイーツのように甘い恋をされているという噂は本当なんですか?
(拍手と歓声)皆さんご存じですよね?カリスマインストラクターの北森隼人さんです。
(北森隼人)どうも!どうも!
(歓声)
(女性リポーター)もしかしてこれ結婚発表ですか?ハハハハ…結婚だなんて皆さん…気が早いなぁ。
(白鳥ゆり)皆さん次女のゆりです。
私の新作バームクーヘンは少しずついろんな味を楽しみたいという皆さんのご要望にお応えして5種類の味。
高級カカオ…。
今回の新作和菓子はとっても嬉しいサプライズが付いてるんですよ。
ねっ北森さん。
ななななんと!この下には僕が考案した…ワンポイントエクササイズが載ってるんです!フゥ〜!
(拍手)美味しく食べて嬉しく痩せる。
2倍楽しめるスイーツなんです。
(女性リポーター)お二人一緒に考案されるなんて結婚間近という事でよろしいでしょうか?結局新作スイーツって一体なんだったのかしら?
(白鳥太一)歩美。
何?お父さん。
(太一)実家の近くで研修をやってるのになぜ家に顔を出さないんだ?それは…。
忙しくて…。
歩美がのこのこ家に帰ってこれるわけないじゃない。
ゆりお前は黙っていなさい。
はーい。
で弁護士になったらその後どうするつもりだ?まだ何も決めてません。
うちには立派な顧問弁護士がいるんだから今さら弁護士になったって歩美の居場所なんかないんだからね。
おじいさま私のバームクーヘン召し上がって。
今日の生菓子の餡はおじいさまの誕生日のために京都の丹波から黒豆を取り寄せたんですよ。
真知子姉さんまた邪魔するのね。
今日の会見の時だってこれ見よがしにあんな男なんか連れてきて。
真知子姉さんの和菓子より私のバームクーヘンのほうが売り上げがいいからああでもしないと話題作れないのよね。
高級カカオ1箱5000円のイチゴ京都宇治の高級抹茶…。
それに今度の新作では金粉を使うって聞いてるわよ。
ゆりのバームクーヘン売れば売るほど赤字になるのわかってるの?ねえおじいさまおじいさまが隠居される時は私と真知子姉さんのどっちを社長にするつもり?
(白鳥健蔵)うるさい!私の腹は決まってる。
お前たち2人に会社を継がせるつもりはない。
(太一)歩美!帰るのか?うん。
明日も朝から実習があるから。
父さんたちも会合に出かけるところだ。
ついでに送っていくよ。
いいよまだバスがあるし。
たまには親の言う事を聞きなさい!実はうちの会社を乗っ取ろうという動きがあるんだ。
家族が力を合わせなきゃならないのに真知子やゆりは相変わらずあの調子だ。
そんな事私に言われても…。
歩美家に戻ってこないか?えっ…?それとも…まだ俺の事を嫌ってるのか?そんな…。
あっ…!?
(タイヤのスリップ音)
(衝突音)
(下山伸行)ああーっ!おじいさま!お父さん…!?お父さん!お父さん大丈夫?しっかりして!
(歩美)お父さん!そんな…。
ああ…。
(歩美)お父さん!お父さん…。
お父さん!
(アナウンサー)「次のニュースです」「昨夜9時頃前橋市内の路上で…」歩美さんが交通事故で病院に運ばれたって本当ですか?ええ。
(アナウンサー)「ドラム缶が落下し流れ出た液体で乗用車がスリップしてガードレールに衝突する事故がありました。
乗用車に乗っていたクイーンズ白鳥会長白鳥健蔵さんと社長の白鳥太一さんの2人が搬送先の病院で死亡が確認され一緒に乗っていた太一さんの三女白鳥歩美さんは軽傷を負った模様です」歩美さん大丈夫かしら…。
穂高先生白鳥君の入院先です。
お二人で白鳥君の様子を見に行って頂けませんか。
はい!わかりました。
お願いします。
先生急いで!はい!
(大林公子)クイーンズ白鳥顧問弁護士の大林と申します。
事故については現在警察が捜査中ですので詳しい事はまだ申し上げられません。
今日のところはどうかお引き取りください。
(男性記者)会長と社長を失ったクイーンズ白鳥は今後誰が舵取りをしていくんですか?会長の財産を狙った殺人事件の可能性は考えられますか?今の発言は全て記録してあります。
あらぬ憶測で記事を書いたらただちに告訴しますよ。
(男性記者)どうなんですかね?
(女性記者)ご存じですよね?なかなかやりますな。
敏腕弁護士同士ピピッときましたよ。
はあ?大林先生!すいません。
あの…どなたですか?私司法研修所で歩美さんの教官をしている穂高と申します。
同じく民事弁護教官の小宮です。
ああそうでしたか…。
遠くからわざわざご苦労さまです。
あの…歩美さんの怪我の具合はいかがですか?車の左側に乗っていた歩美さんには幸い大きな怪我はありませんでしたが救急隊員によると車の右側面の損傷が激しく会長と社長のお二人はほぼ即死状態だったようです。
それは本人も相当ショックを受けたでしょうね。
ええ。
でも精密検査の結果に異常がなければとりあえず明日にでも退院出来そうです。
そうですか…。
お忙しいところありがとうございました。
もう検査を終えて病室に戻ってる頃です。
よかったら少し会って歩美さんを励ましてあげてください。
はい。
歩美さん…。
大変だったわね。
先生…。
ご心配おかけしてすみません。
ニュース見て驚いたよ。
でも顔を見て安心した。
とりあえずゆっくり休め。
(岸谷和久)失礼します!群馬県警岸谷です。
白鳥歩美さん?少しお話を伺いたいんですが…。
ああ…。
あれ?穂高検事!ああ岸谷刑事…。
お久しぶりです。
私今司法研修所の教官やってるんです。
それで…。
こちらは小宮教官です。
お知り合いでしたか。
はじめまして。
ああ…失礼しました。
白鳥歩美さん覚えてる範囲で結構ですので事故の状況について少しお聞かせ願えますか。
はい。
暗い坂道を走っていたら急に車がスリップして何かにぶつかった衝撃がありました。
(岸谷)ああ…。
その時の周りの様子は何か覚えてますか?横に座っていた祖父は頭を強く打ちすでに死亡していました。
それから運転席を見るとドアが開いていて…外に出ると父が道路に倒れていました。
お父さん!お父さん大丈夫?しっかりして!
(歩美の声)父は救急車を呼ぼうと携帯を手にしたところで気を失いかけていました。
もしもし!あの救急車をお願いします!
(歩美の声)私はその携帯で119番に通報し父の心臓マッサージを始めました。
(歩美)お父さん!お父さん!お父さん…!その時父が…「歩美大丈夫か?」って…。
でもそれが父の最後の言葉になりました。
君は出来る限りの事をしたんだ。
そんなに自分を責めるんじゃない。
岸谷刑事今回の交通事故本当に事件性はないんでしょうか?はい。
鑑識によるとブレーキなどに細工された跡はありませんでした。
事件性を示す痕跡は今のところ見つかっておりません。
車をスリップさせた原因は軽トラックが荷台から落としたドラム缶にあるんですよね?ええ。
トラックを運転していたのは下山伸行という小さな運送会社の社長で…。
すいません。
すいません。
本当にすみません!
(岸谷の声)調べに対して下山は積み荷を荷台に固定したかどうかの点検を怠ったまま運転していたと全面的に認めています。
下山は業務上過失致死で送検となるでしょう。
故意に事故を起こしたわけでもなく本人も反省しているのなら恐らく執行猶予付きの判決が出るでしょうね。
岸谷刑事あともう一点だけいいですか?クイーンズ白鳥の関係者は一応洗ったんですよね?あ…ハハハさすがは穂高検事。
いや穂高教官。
実は会社の経営を巡って一族の間で口論が絶えなかったとの噂がありまして今から念のため例のスイーツ姉妹に会いに行くところなんですよ。
下山は執行猶予…!?おじいさまとお父さんを殺しておいてなんでそんな軽い罪にしかなんないのよ!下山が故意に車をスリップさせたという証拠が警察の捜査で見つからない以上執行猶予はやむをえません。
じゃあ私たち遺族は泣き寝入りしろって事なの?刑事事件で執行猶予になっても民事で損害賠償請求は出来ます。
少しでもお二人の無念を晴らせるよう努力します。
それと許せないのは歩美よ。
ゆりさんそれどういう意味ですか?だって救急車が来るのを待ってればお父さんは助かったかもしれないんでしょ?歩美が余計な事をしたからお父さんは死んだの。
歩美がお父さんを殺したも同然よ。
ゆりさんそれはさすがに言いすぎですよ。
いいから公子さん歩美を訴えて。
そうでもしないとあの子自分が周りにどれだけ迷惑かけてるのかいつまでたってもわかんないままよ!いや確かに救命処置の失敗で社長が亡くなったとの理由で民事で訴える事は出来ますが…。
大林先生も落ち着いてください!身内同士で訴えるなんておかしいですよ!あら田所部長は私たちより家を捨てて出ていった歩美の肩を持つのね。
そういうわけではありませんが…。
ゆりもういいわ。
公子さんは訴訟の手続きを進めてください。
あとクイーンズ白鳥の経営に空白の時間を作らないためにもおじいさまたちの遺産の整理と新社長の決定を急ぎましょう。
(足音)真知子姉さん声が大きい。
(ノック)失礼します。
お取り込み中のところすいません。
ちょっとお話を伺えますか。
お母さん。
何?私車の中でお父さんたちに家に帰ってこいって言われたの。
えっ…?もし私が帰るって言ったらお母さんどう思う?今はそれどころじゃないわ。
そうだよね。
ごめん。
失礼します。
(弥生)はい。
お母さん司法研修所の先生よ。
歩美がいつもお世話になっております。
母の弥生と申します。
穂高です。
小宮です。
歩美さん。
今小宮先生と2人で実務修習先に行ってしばらくお休みするって伝えてきたわ。
ありがとうございます。
失礼します。
大林先生…どうかなさいました?ええ…実は大変申し上げにくいんですが真知子さんとゆりさんのお二人が歩美さんの救命処置がなければ社長は助かったかもしれないというお考えのようで…。
それは一体どういう事ですか?姉さんたちは私を訴えるつもりなんですね?なんですって…!?私は考え直すように説得したんですが…。
力不足で申し訳ありません。
歩美が必死になってお父さんを助けようとしたっていうのにあの子たちは何考えてるの…?せめて今夜の家族会議の前にお伝えしておいたほうがよろしいかと思いまして…。
失礼します。
大林先生!もういいんです!私が悪いんです…。
私が余計な事ばかりするからみんなが不幸になるんです。
君は何も悪くないから。
先生お願いです…。
もう帰ってください。
親族を2人亡くして動揺しているのはわかりますが姉が妹を訴えるだなんてとんでもない話ですね。
歩美さんのご家族には何か複雑な事情でもあるんでしょうか。
ちょっとちょっと…。
知り合いにしてはなんか不自然ですよね。
ストーカーか写真週刊誌か…。
今やクイーンズ白鳥のスキャンダルはマスコミ格好のネタですからね。
よく顔が出せたわねこの疫病神。
ゆりやめなさい!私やっぱり帰る。
歩美!座りなさい!あなたも白鳥家の人間ですよ。
(弥生)はい。
では遺産の分割方法をご説明します。
(公子)まず社長の遺産は現預金が9300万ほどで奥さまの弥生さんにはその半分の4650万そして残りの半分を…お嬢さまたち3人のものとなります。
それでおじいさまの遺産はどのくらいになるの?会長の遺産については不動産現預金美術品などを合わせておよそ30億円は下らないと思われます。
(2人)30億…!?
(公子)まず会長が先にお亡くなりになりその時点では生きておられた社長が会長の遺産全てを相続します。
しかしそのあとで社長も亡くなられたためご自分の預貯金を合わせた30億余りの遺産のうち奥さまの弥生さんにはその半分の15億余りそして残りの半分を真知子さんゆりさん歩美さんの3人で約5億ずつ分ける事になります。
えっなんで私と歩美が同じ額なのよ?納得いかない!私だってこれまでの人生全てを白鳥家のために尽くしてきたのよ。
それを考えれば家を出て好き勝手生きてる歩美と同額になるのだけは私も納得出来ません。
歩美あんたのせいでおじいさまとお父さんは亡くなったのよ。
だから相続を放棄しなさい。
姉さんたちの気持ちはよくわかります。
でも自分の法定相続分は受け取るつもりです。
歩美がそんな大金もらって一体何するのよ?まだ何も考えてないけど全額どこかに寄付するかもしれない。
(ゆり)そんなきれい事言って歩美本当はお金が欲しくってお父さんたちを殺したんじゃないの?ゆり!いいかげんにしなさい!遺産の分割については警察の捜査が終わるのを待ってからでも遅くはありません。
ですから今日は会社の舵取りを今後どうするかをお決めになったほうがよろしいのではないでしょうか。
それもそうね。
だったら当面は私がやるわ。
なんでそうなるのよ?私は白鳥家の長女よ。
私にはこの家を守る義務がある。
何よ!男にのぼせ上がってるような人には任せられません!ゆりあんたに経営なんて絶対に無理!儲けも考えずにケーキだけ作ってるあんたに会社任せたらあっという間に倒産するわよ。
(ゆり)何偉そうな事言ってんのよ!白鳥のスイーツをここまで全国的にしたのは私のおかげでしょ!「遺産三十億を巡る女達のバトル」…。
どこがスイーツ姉妹なんだ。
全然甘くない!父親を蘇生出来なかった妹を訴える姉というのは実に悲しい話ですねぇ。
所長私これから前橋へ行って歩美さんへの訴えを取り下げるようお姉さんたちに頼んできます。
(読経)よっ!真知子社長。
まだそう決まったわけじゃないわ。
大丈夫だよ。
僕がついてる。
(ゆり)まだ用意出来てないってどういう事よ!なんなのよこの写真は!今度の新作バームクーヘンは金粉が売りなのよ!すいません。
すぐに撮り直します。
しっかりしてよ。
穂高と申します。
司法研修所の教官…。
お願いです。
歩美さんに対する訴えを取り下げてもらえないでしょうか。
教官のあなたには関係のない話だと思いますが。
歩美さんはお父さまを助けようとしたんです。
そんな善意の行動がとがめられるのは悲しい事です。
何が善意の行動よ。
歩美は看護師の時にも同じ過ちを犯してるんですよ。
同じ過ち…?
(飯島)また殺したんだな?
(女性たちの悲鳴)やっぱりお前の仕業だったんだ。
この人殺しが!やめてください!
(飯島)逃げられると思うなよ!いつか化けの皮をはいでやるからな!大丈夫?大丈夫です。
あの人確か病院にも来てたわ。
誰なの?飯島誠。
飯島…?歩美に恋人を殺されてストーカーになった男よ。
(真知子)歩美のせいで私たち白鳥家の人間がどれだけ迷惑をこうむってると思ってるの?あなたたち実の妹を陥れるようなまねはやめなさい!あっ…歩美さん!歩美さん!もしよかったら過去に何があったのか教えてくれない?6年前にハイキングに出かけた時…。
(智恵の母)誰か!この子助けてください!どうかされましたか?すいません。
あの娘が呼吸困難を起こして倒れたんです。
心拍数が低下してる…。
救急車を呼んでください!呼びました。
でもここに来るのに1時間もかかるって言われて…。
もうどうしたらいいかわからないんです。
私看護師です。
お願いです!娘を助けてください!
(歩美の声)でも残念ながらその女性の命を救う事は出来ませんでした。
(智恵の母の嗚咽)あんた智恵になんて事してくれたんだ!あんたが余計な処置をしたから智恵は死んだんだ!お母さんこれでいいんですか?
(歩美の声)そして私はその女性の母親に訴えられたんです。
父が先方にお金を払って示談になりましたが私は勤めていた病院から退職を促され結局看護師も辞めてしまいました。
その女性の恋人があの飯島さんだったのね。
それ以来飯島さんは私を恨んでつけ回すようになり実家にはいられなくなりました。
次第に会社のほうにまで悪い噂が流れ始めて…。
経営を立て直すために姉たちが始めたのがあのスイーツ姉妹だったんです。
そうだったの…。
だから今度こそは自立して誰にも迷惑かけないように自分で自分を守れるようにって弁護士を目指したんです。
でもまたこんな事になってしまって…。
バッグの中に現金がたんまり入ってるんだろ?分けてくれよ!ヘイ。
おお〜ハッハッハ。
待って!そのお金は田舎で待ってる弟たちへの大事な仕送りなの!そんなの知らねえよ!ちなみに聞くけども何人きょうだいだ?10人よ。
実は俺んちも10人なんだ。
あんた故郷は?新潟よ。
奇遇〜!俺も青森だ。
遠くない?同じ雪国出身ね。
すまなかったな怪我させちまって。
ううん大丈夫。
でもそのお金だけは返してね。
ああもちろんだ。
お前も金輪際足を洗ってちゃんと真面目に働け。
俺はこちらさんを病院に送ってから警察に自首する。
ありがとう。
よし。
お前は先に警察に行って洗いざらい全部しゃべってこい。
事件の概要を説明します。
帰宅途中のクラブホステス女Aを男Bと男Cの2人が襲い現金600万円を強奪。
その後女Aと心を通い合わせた男Cは自首を決意し男Bにも自首を勧めた上で女Aを病院に連れていく事にしました。
そして男Bはそのまま近くの警察に出頭して自首しました。
ではあなたは男Bと男Cになんの罪が成立すると思いますか?そしてあなたはこの2人を起訴しますか?えー長野さんは…男Bと男Cの2人を起訴猶予と起案してますね。
(長野悟)はい!確かに男Bと男Cは女Aから現金を奪い怪我までさせているので強盗傷害罪が成立します。
でもその場で改心し現金を女Aに返し病院にも連れていった上で速やかに自首しようとしたんです。
心を入れ替えた男Bと男Cには起訴猶予が妥当と思います。
えー一方高橋さんは…男Cは起訴猶予としたものの男Bは強盗傷害罪で起訴すると起案してますね。
(高橋明子)はい。
男Bは男Cの説得で自首しましたが女Aに対する強盗傷害について自発的に反省し自首したわけではありません。
再犯の可能性も鑑み男Bは強盗傷害罪での起訴が妥当です。
でも男Cは男Bに自首を勧めただけでなく女Aを背負って病院まで送り届けようとしました。
自分の犯した罪を深く悔いているので起訴猶予としました。
検察官はこの事案で男Bと男Cの2人を強盗傷害罪で起訴しています。
ここで注目すべきは男Bと男Cの2人が別々に警察に出頭しているという点ですね。
例えば女Aと男Cが病院に行く間に恋仲になり…。
2人は恋の逃避行をしたのです。
女Aと男Cは2人で暮らそうとしましたがしかし2晩で破局。
男Cは改めて警察に出頭しました。
男Cが女Aと逃避行をしている2日間に男Bは警察に出頭して犯行を全て自白しています。
そうか!自首とは犯罪事実と犯人が誰かわかる前に自発的に罪を認めて届け出る事です。
犯人が誰かわかったあとに警察に出頭しても自首には当たりません。
男Bに自首は認められそれにより刑が軽くなる可能性はありますが男Cに自首は認められず自首による刑の減軽は認められません。
まあ情状による酌量減軽は考えられますけどね。
そして女Aは犯人隠避罪で起訴されました。
恋は罪なものですね。
それで損するなんて。
罪を犯した人も自首しようと気が変わった時点ですぐ警察へ行けって事ですよ。
(携帯電話)穂高です。
何かありましたか?実は先ほど例の事故で在宅起訴になったトラック運転手の下山が新たな供述を始めたんです。
事故直後は気が動転してわからなかったんですが後部座席にいた男性の手がしばらくの間助けを呼ぶように動いていたような気がするんです。
太一さんだけじゃなくて健蔵さんも即死じゃなかったって事ですか?下山はそう証言したようです。
でも一方で歩美さんは健蔵さんは即死状態だったと証言しています。
元看護師の白鳥君が生死の判断をそんなに簡単に間違うとは思えませんね。
となるとなぜ今になって下山はそんな供述をし始めたのか?理由のひとつとして考えられるのは健蔵さんの遺産狙いの線でしょう。
はい。
下山の供述が認められると遺産配分は大きく変わってきます。
これまでは健蔵さんよりも太一さんのほうが長く生存していたと考えられてきたため先に亡くなった健蔵さんの遺産30億はいったん全て息子の太一さんに渡ります。
そしてその後に太一さんも亡くなり預貯金9000万と健蔵さんからの相続分も合わせた太一さんの遺産30億円余りは妻の弥生さんが半分の15億余りを受け取り残りを三姉妹で約5億ずつ分け合う予定でした。
ところが下山の新たな供述によって健蔵さんと太一さんのどちらが先に亡くなったのかがはっきりしなくなります。
そこで浮上してくるのが…。
同時死亡の推定。
事故などでほぼ同時に数人が亡くなったものの亡くなった順番までは厳密にわからない場合その人たちを同時に亡くなったものと推定する法律上の制度ですね。
これによって健蔵さんと太一さんは同時死亡となり2人の間に相続は発生しなくなります。
つまり健蔵さんの遺産30億円は孫の三姉妹に10億ずつ渡る事になるのです。
下山と歩美さんの供述でこれだけ大きな違いが出てくるとなるとあの事故を再検証する必要がありますね。
下山の運転する軽トラックからドラム缶が落下してこの白い線の内側に液体が流れ出ました。
そこに歩美君が乗った車が走ってきてスリップし…。
ここで停止しました!先生よろしく!はい!ああやっぱりおかしいわ。
この場所からは健蔵さんの乗っていた右後部座席は見えませんね。
(岸谷)本当だ。
見えました!岸谷刑事。
はい。
この撒かれた液体の上を踏んで歩いたような足跡は事故現場に残っていましたか?いやあそんな足跡はありませんでした。
そもそもその液体の上を歩くのは無理です。
つるつる滑りますから。
やはり下山の供述は嘘でしたね。
同時死亡の推定でより多くの遺産を手に入れようとした人物が下山に嘘の供述をさせたんでしょう。
となるとこの交通事故自体が計画的犯行である可能性が出てきますね。
至急下山の身柄を確保して取り調べます。
歩美さん下山が嘘の証言をした事を知ってるのかしら…。

(下山)よく来たなお嬢さん…。
下山さん本当の事を話してください。
あなたは誰に頼まれてあんな嘘の証言をしたんですか?どうしても話してくれないんですね。
だったら私にも考えがあります!ああ…!ああ…!あの女またやりやがった…。
(パトカーのサイレン)
(飯島)あの女が犯人ですよ。
はあ?白鳥歩美が突き落としたんです。
(岸谷)白鳥歩美さん。
あなたが下山と言い争ってるところをあそこの社員に目撃されていたんですよ。
どうして祖父が生きていたなんて嘘を言うんですか?私の大切な2人の命を奪っておいてまだあなたはそんなひどい事を…!俺は嘘なんかついちゃいない。
変な言いがかりはやめてくれ。
迷惑だ!ちょっと待ってください!そしてあなたは今夜再び下山と会い殺害した。
違います。
下山さんから夜8時に会社の屋上に来るように呼び出されて…。
でも行ったらいきなり自分で飛び降りたんです!私は殺してなんかいません。
(岸谷)下山が自殺したって?わざわざあんたを呼び出してか?どうせならもっとマシな嘘をつけ!嘘なんかじゃありません!信じてください刑事さん。
信じられませんねぇ。
あんた人を死なせたのは初めてじゃないんだろ?あ…岸谷刑事!歩美さんが下山殺害容疑で逮捕されたって本当ですか?はい。
現在取り調べ中ですが彼女が下山を転落死させたとみてまず間違いありませんね。
証拠はあるんですか?下山を突き落とす瞬間を目撃されています。
でも歩美さんが犯行を認めたわけじゃないんですよね?最初は下山が自分で飛び降りたなんて苦しまぎれの供述をしていましたがまあ自白は時間の問題でしょう。
岸谷刑事。
歩美さんと少しだけ話をさせて頂けないでしょうか?お願いします。
(ドアの開く音)先生…どうしてここに?君は弁護士志望のくせに真面目でバカ正直なところがあるからな。
穂高先生は心配しているんだ。
歩美さん。
あなたは殺人を犯すような人じゃない。
最後まで諦めちゃ駄目よ。
私は下山さんを突き落としてはいません。
でも…私があそこまで追及しなければ下山さんは死なずに済んだかもしれないんです。
歩美さん…。
今までも良かれと思ってやった事が周りの人をかえって不幸にする…その繰り返しで。
いくら誤解だと訴えても誰も信じてくれなかった。
だから君はそんなバカ正直な人たちの力になろうと思って弁護士を目指したんじゃないのか?あなたの事誰も信じてなかったわけじゃないわ。
少なくともあなたのご両親はあなたの事を信じてる。
お母さんから聞いたわ。
飯島さんたちに訴えられたのをお父さんが示談に持ち込んだのは決してお金で解決したわけじゃなかったの。
あなたが人一倍優しい娘さんだってお父さん知ってたから必死にご遺族を説得して回ったのよ。
(太一)歩美は心の優しい子なんです。
お嬢さんを見過ごす事が出来なかったんです。
どうか信じてやってください!子供の言う事を信じない親がどこの世界にいるんだよ。
君が弁護士を目指してる事を知った時のお父さんはきっと喜んでいたはずだ。
どうして先生たちは私の事をそこまで気にかけてくださるんですか?困っている人を助けたいと思うのは罪な事なの?この先に何が待ち受けているのかわからないけど私たちは目の前で苦しんでいるあなたの力になりたい。
ただそれだけ。
俺たちが君の無実を絶対に証明してみせる。
だから負けるなよ。
そんな…無理ですよ。
きっと無理に決まってます。
一緒に頑張りましょう。
小宮先生お昼ですけどどうされますか?そんな場合ではありません。
そうですよね…。
歩美さんの事を思うと食事も喉に通りませんよね。
私もあれから食欲なくて。
穂高先生最高裁の事務局へ行ってきました。
このまま拘留が続くようだと白鳥君には依願免職届を書いてもらう事になるそうですね。
まあ小宮先生が白鳥君の無実を証明してくだされば依願免職届なんて必要ありませんからね。
今度の事件の発端が白鳥家の遺産争いにあるとすれば下山は白鳥家の誰かと繋がっていたんでしょうか。
それが仲間割れしたのかもしくは口封じされたのか…。
やっぱり苦しいです!苦しいの私も一緒ですよ。
小宮先生とにかく力を合わせて歩美さんの無実を晴らしましょう。
それはそれとして…お腹が…!えっ?小宮先生どうなさいました?昨日妻の手料理を食べたら食あたりになったようです。
もう!教え子が被疑者になって苦しんでるって時にどういう神経してるんだか!仕方なかったんですよ。
結婚記念日だったのを忘れて帰ったら最後の晩餐だと思って食べてねって嫌味を言われたから必死で食べたんですから…。
(ため息)最後の晩餐ね…。
小宮先生お手柄です。
(電話の操作音)
(呼び出し音)岸谷刑事?穂高です。
申し訳ないんですが下山の解剖所見から胃の内容物を教えて頂けませんか?なんなのよこの写真は!今度の新作バームクーヘンは金粉が売りなのよ。
もしかしたら金粉が含まれているかもしれません。
ありがとうございました。
発売前のゆりさんの新作スイーツ金粉入りなんです。
下山は殺される直前に金粉入りバームクーヘンを食べていたって事ですか?となるとその新作を作る事が出来た人物が…。
なんで私が下山との関係を疑われなきゃならないのよ。
あんな男2人きりで会った事もないし新作を作って食べさせた覚えもない。
(岸谷)ところが金粉以外にもあなたと下山の接点が見つかったんですよ。
(岸谷の声)下山の部屋で発見された封筒の指紋があなたの指紋と一致したんですよ。
(岸谷)あのスリップ事故のあと下山は闇金からの借金をきれいさっぱり返済してましてね。
だったらなんなのよ?会社を継がせるつもりはないと言われた事に腹を立てたあなたは会社も財産も一気に奪おうと考えた。
そして闇金からの借金に追われていた下山を金で雇い偶然を装った事故を起こさせて2人を殺害した。
違うわ!なんで私が祖父と父を殺さなきゃいけないのよ!?私は何もやってない!はいありがとうございました。
捜査本部は祖父健蔵さんと父太一さんを殺害したのはゆりさんと下山の共犯下山を殺害したのは歩美さんの線で捜査を進めていくそうです。
同時死亡の推定を悪用してより多くの遺産を受け取ろうとしたゆりさんが下山に嘘の証言をさせたとみているわけですね。
でもゆりさんの相続額は当初の5億から10億に跳ね上がってはいますから一応筋は通っています。
それにしても封筒の指紋といい胃の中の金粉といいゆりさんが犯人だと示すものが随分都合よく出てくる気がしますね。
あなたこの前葬儀の時に…。
司法研修所の教官をしている穂高と申します。
司法研修所…。
同じく小宮です。
飯島さん白鳥歩美の事でお話を伺いたいんですが。
あの女の教官ね…。
で僕に一体なんの用ですか?歩美さんが下山さんを突き落とす瞬間を見たと証言したのは飯島さんあなただそうですね。
その時の現場付近で何か気になった事や思い出した事どんな小さな事でも結構です。
教えて頂けませんか?僕が知ってる事は全て警察に話してあります。
あなた方にお話しする事じゃありません。
確か今日は智恵さんの月命日ですよね。
どうしてそれを?6年前から毎月欠かさず白鳥歩美は智恵さんのお墓をお参りしているそうです。
今日あなたがここに来た時いつものように掃除されてなかったんじゃないですか?歩美さんきれい好きだから。
このままではあなたが6年前の事故に縛られているのと同じように歩美さんも6年前の事故にとらわれて新たな一歩を踏み出せないままなんです。
飯島さんお願いします。
本当の事を教えてください。
俺が転落現場に着いた時には遺体はすでに地面に横たわってる状態だった。
実際に落下する瞬間を見たわけじゃない。
(飯島の声)だけど屋上を見てみるとあの女がいてしかも俺を見ると急に逃げ出したんだ。
あの女が突き落としたに決まってる。
だから警察にもそう証言した。
確かにビルの裏口で人影が動いたような気もするけど…。
(飯島)俺の思い違いに決まってる。
下山の転落現場近くに謎の人影ですか?はい。
下山さんの転落現場には歩美さんとは別の人物つまり真犯人がいた可能性があるんです。
しかし目撃者の証言ではそんな人影の話は出てきませんでしたし初動捜査でも何も引っかかりませんでしたが。
それは初めから白鳥歩美を犯人だと決めつけて捜査していた事に問題があったのかも。
岸谷刑事事件関係者の事件当日のアリバイを洗い直して頂けませんか?わかりました。
ヘヘッ。
なんだか懐かしいですねえこの感じ。
穂高検事が戻ってきたみたいです。
あっ…。
(カメラのシャッター音)
(カメラのシャッター音)
(田所)本日はお忙しい中お集まり頂きありがとうございます。
これよりクイーンズ白鳥新社長就任の記者会見を始めさせて頂きます。
この度社長に就任致しました白鳥真知子です。
「若輩者ですが従業員一丸となって今まで以上に愛される白鳥となるべく…」歩美さんとゆりさんがいない間に真知子さんが社長に就任するなんて…。
なんだか「鬼の居ぬ間に」って感じがしますね。
もし歩美君とゆりさんが会長と社長殺害に関与していたとすれば2人とも相続権を失いますよね。
妹2人が警察に捕まって結果得をしたのは真知子さんだったって事か。
社長就任おめでとう!ありがとう北森さん。
ようやく君の時代が来たって事か。
ええ。
でもまだこれからよ。
僕も協力するよ。
今まで以上にね。
真知子姉さんが会社を引き継ぐ事になったんですね…。
妹2人が取り調べされているタイミングでの会見だからマスコミは真知子さんについてある事ない事書いてるみたい。
でも真知子姉さんは決してそんな人じゃないんです。
意外だなあ。
3人は仲が悪いと思ってたよ。
今は3人すれ違ってばかりですけど昔は仲が良かったんです。
3人で走り回って…よく父や祖父に叱られてました。
でも6年前私があんな事になってしまって…。
そういえばひとつ気になる事があるんです。
あのスリップ事故が起きる直前に父たちが言っていたんです。
うちの会社を乗っ取ろうという動きがあるんだ。
会社の乗っ取りか…。
もしかしたら真知子姉さんは誰かに利用されているのかもしれません。
真知子さんが誰かに利用されてるとしたら…。
確か真知子さんスポーツインストラクターの北森さんと付き合ってるって話でしたね。
岸谷刑事に聞いたところ下山が殺害された時真知子さんは北森さんとドライブをしていたと言っているそうです。
ドライブですか。
はっきりしないアリバイですね。
直接本人に会って聞いてみましょう。
はい。
すみません。
今日こちらに北森さんいらっしゃいますか?
(江川蘭)レッスンのご予約はお済みでしょうか?いえあの…私たち実は北森さんにちょっとお話伺いたいだけなんです。
大変申し訳ありませんがレッスン以外のお客様には中にお入り頂く事が出来ないんです。
夫婦で体験レッスンもいいですね。
美子やっていくか!美子って…ちょ…。
あの北森さんのレッスン僕たち入れますか?ではこちらの契約書にご署名お願いします。
はい。
出来ました!はい。
では受け付けを完了しましたので体験レッスン料として2名様で2万円頂きます。
えっ?体験レッスンって普通タダでしょ?いえ。
ここに小さくですが確かに書いてございます。
そんな小さな文字は普通読まないぞ。
こんな契約は錯誤で無効です!いいじゃない2万円ぐらい。
お願いねあなた。
こんにちは!北森です。
フリークライミングは初めてですか?ええ。
わたくしどもは全くの初心者ですのでまずはじっくりお話でも伺いながら。
北森さんは先週の木曜日は…。
(北森)いえ。
僕のレッスンは実践あるのみ。
プラクティスプラクティス。
ではいってみましょう!レッツゴーカモン!!フーフウ!フウー!ウーフウ!よしこうなったらついていくまでだ!アッハッハー!ちょっと…。
ああ…。

(北森)ハハハハ…。
はいは〜いは〜い。
手は上そこ右。
あ〜!よっ!足は足は…。
それ以上私に触ると迷惑防止条例もしくは強制わいせつ罪で告訴しますよ…!あっ…。
大丈夫ですか?ややや…ちょ…。
大丈夫です!大丈夫です…。
美子!お前相変わらず堅物でどん臭いなあ。
ハハハハハ!ところでお二人はご結婚されてどのぐらいなんですか?3年です。
僕も妻も晩婚で。
なあ美子!晩婚って…。
いやでも2人とてもお似合いでうらやましいですよ。
お似合いですか?そういえば北森さんももうすぐ結婚されるんじゃなかったですか?よくご存じですね。
誰に聞いたんです?えっと…クイーンズ白鳥の真知子さんから。
参ったな…。
(舌打ち)彼女には誰にも言うなって言ったんですけどね…。
真知子さんおしゃべりだから。
なあ美子!
(笑い声)お願いですからこの事は内緒にしといて頂けませんか?あら何か世間にバレたらまずい事でもあるんですか?あっ!例えば財産目当ての逆玉の輿狙いだとか?
(せき払い)今日のレッスンはここまでにしましょう。
では!おいおいおい!ちょっと待ってくださいよ!惜しい逃げられた!ちょっと待ってよ〜!あと少しってとこだったのに。
(ため息)いいんでしょうか小宮先生私たちこんな事までして…。
エリート検事出身の穂高先生にはわからないでしょうがこういう地道な捜査こそが事件解決へと繋がるんです。
いわゆる捜査の基本は足で稼ぐってやつですね。
(3人)お疲れさまでした!先生ノリノリじゃん!北森さ〜ん!会いたかった…。
し…静かに…!あれは…。
さっきの受付嬢じゃないですか。
なるほど。
この事を大っぴらにされたくないわけだ。
あっちょ…先生あれ!真知子さんじゃないですか。
結婚直前にいきなりの修羅場ですか。
これは新たな殺人事件の幕開けですよ。
田所さん…!?危険ですね。
早く乾杯しよ。
結局お父さんたち最後まで私たちの結婚に反対だったわね…。
仕方ないさ。
でもいつかきっとお父さんたちもわかってくれるよ。
真知子さんを陰で操っていたのは北森ではなく田所だったんですかね…。
念のため下山が殺害された日の田所さんのアリバイを調べてみましょう。
(社員)どうぞ。
この応接室にこもりきりですか…。
はい。
その日の夜でしたら田所部長はずっと弁護士の大林先生と打ち合わせをしていましたね。
はい了解しました。
あっ!何度か田所部長がトイレに出てきました。
(田所)こんな時に無理に急いで社長を決めるべきじゃないと思います!
(公子)その考えが甘いと言ってるんです!
(社員の声)そのあとも打ち合わせをしている声が時折聞こえてきました。
田所はアリバイ成立か。
…となると一体誰なんでしょうね。
こうなると北森の線も捨て切れませんね。
白鳥グループを乗っ取ろうとしてる人物ねえ…。
(エレベーターの到着音)
(カメラのシャッター音)
(カメラのシャッター音)泥棒ー!何やってんの…。
何よ!何をする…!事件の概要を説明します。
ラーメン店を経営する女Aが女Bのライバル店に客を取られた事に腹を立て人気のもとであるオリジナルスープの秘密を盗もうと店に忍び込んだところを現行犯逮捕されました。
ではあなたは女Aをなんの罪で起訴しますか?えー…高橋さんは女Aを住居侵入罪のみで起訴すると起案してますね。
はい。
女Aは他人の店に無断で忍び込んだ罪で住居侵入罪です。
しかしスープ自体を盗んだわけではないので窃盗罪では起訴出来ません。
一方で長野さんは女Aを住居侵入罪並びに窃盗罪で起訴すると起案してますね。
はい。
女Aは女Bの店に無断で侵入した上女Bの大切な所有物であるオリジナルスープとそのスープに使われる材料をカメラで盗み撮りしました。
大切な情報を盗み出した女Aの行為は窃盗罪に当たります。
では長野さんそもそも窃盗罪とはどういう罪なんでしょうか?他人の財物を盗む行為です。
ではその財物とは一体なんですか?財物とは…。
あっそうか!そう。
財物とは財産上の価値があるもの有体物の事をいいます。
つまり窃盗罪とは情報が書かれた紙や資料ファイルの入ったUSBなど物体を盗んだ場合に成立する罪なのでスープと材料を撮影しただけでは財物を盗んだ事にはならず窃盗罪にはなりません。
よって女Aは女Bの店に忍び込んだ住居侵入罪での起訴となります。
本屋さんみたいに盗み撮り禁止の張り紙をしておけばよかったんでしょうけど…ラーメン屋さんですしね。
わざわざ店に忍び込んでスープを盗もうとするぐらいなら共同経営でも持ちかければよかったのに。
でもそれって聞こえはいいけど女Aの店が女Bに吸収されて店自体がなくなるのがオチだよ。
そうなったらスープを盗むぐらいの恨みじゃ済まないわね。
店がなくなる…恨み…。
クイーンズ白鳥は健蔵さんが興した小さなスーパーから始まったそうですね。
ええ。
白鳥健蔵がゼロから始めて一代で財を成しました。
ここまでの大企業に成長するまでには色々なトラブルがあったかと思うんです。
例えば大型スーパーが出来て小さな商店街が潰れてしまうなんて話も聞きますし。
今まで誰かに恨みを買うような事は?どんな些細な事でも結構です。
我々は事件の真相に繋がる手がかりが欲しいだけなんです。
昔小さな食品卸会社を経営していた健蔵は白鳥出店の足がかりとしてあるスーパーと合併したそうなんです。
合併?でもそれは合併とは名ばかりの…いわゆる乗っ取りでした。
乗っ取り…。
それで…そのスーパーを経営されていた方は?兎野さんというご夫婦でしたが亡くなりました…。
自殺だそうです…。
その兎野さんご夫婦にご家族はいらしたんですか?お子さんがいたそうですがそれ以上の事はわたくしも存じ上げません。
亡くなった兎野さんところのお子さん?ああ覚えてますよ。
うちの息子と同級生でよく遊びに来てたから。
その子は兎野さんご夫婦が亡くなったあとどうなったかご存じありませんか?施設に預けられたらしいけど…。
確か最近うちの息子が街で偶然会ったら名字が変わってたとか言ってたな。
えーっと…。
北森?ん?どうだったかな…。
田所?あっそうそう。
確か田所。
当時の写真か何かお持ちではありませんか?ちょっと待ってください。
これこれ。
すいません。
確かその右側の男の子ですよ。
田所さんのご両親白鳥家にスーパーを乗っ取られて自殺していたんですね。
その時の憎しみをずっと抱いてきた田所が今回の一連の事件の黒幕だとしたら…。
下山と共謀し事故を装い白鳥家の2人を殺害したのも田所。
そして田所は口封じに下山を殺した。
でも下山が殺害された夜田所さんにはアリバイがありましたよ。
大事な話があるから電話があっても取り次がないで。
はい了解しました。
だとしたらそこにはなんらかのトリックがあるのかもしれませんね。
うん…。
(携帯電話)はいもしもし!あっまだ前橋です。
はい今すぐ帰ります。
かいわれ大根とお豆腐2丁。
かしこまりました。
それでは失礼致します!奥さまには頭上がらないんですね。
超特急で東京に帰りましょう!あっ先生!あれ?ない…。
ちょっとどこ行っちゃったんだろう?え〜?穂高先生どうしました?いやなんか今買ったばっかりの切符がどっか行っちゃったんですよ。
ああそういうのよくありますよね。
…あれ?ない。
僕のもない!ないないない!あった…ありました。
違いますよ。
この切符は僕のです。
いや私のでしょ。
ほら見てください窓際の席。
さっき僕ジャンケンで勝ったじゃないですか。
僕の切符の窃盗罪で訴えますよ。
いやこれは落ちてすでにあなたの手元から離れてたのでせいぜい占有離脱物横領罪止まりでしょ。
あっ!えっ?あっ…。
自分が落とした切符を自分で踏んづけておきながら人が落とした切符を先に見つけるとはさすが芸が細かい。
一人何役やってるんですか?ああ…!小宮先生犯人のトリックわかりました。
(ゆり)こんなとこに呼び出して一体どういうつもり?白鳥健蔵さん太一さんそれと下山さんを殺害した犯人がついにわかりました。
皆さんまずはこちらにお越しください。
なんなのよ一体。
もったいぶってないで犯人が誰かさっさと言いなさいよ。
小宮先生!
(歩美)小宮先生!なんだい?歩美君。
山根所長。
お役に立てましたか?穂高先生。
山根所長ありがとうございました!小宮先生が屋上から落下しても田所さんは大して驚かれませんでしたね。
穂高さんあなたのおっしゃってる事がわかりません。
私の決死のダイビングを田所さんに喜んで頂けなかったのは残念ですが無理もありません。
今回の一連の事件は全てあなたが仕組んだものですからね。
変な言いがかりをつけるのはやめてください。
下山さんが転落死した時刻私にはアリバイがあるんです。
私には下山さんを殺害する事は絶対に不可能です。
確かにこんなに手の込んだトリックをあなたが一人で行う事は不可能でしょうね。
トリック?ここに古い写真があります。
ここに幼い頃のあなたが写っています。
そしてここに写っているのがあなたのお姉さん。
田所さんのお姉さんそれは…あなたですね大林先生。
あなたたち姉弟だったの?あなたたちは一体何を言い出すんですか?私にはその時間会社にいたという確固たるアリバイがあるじゃないですか!でもそのアリバイとやらもあなた方ご姉弟が協力して作ったものですよね?下山さんが転落死した時刻田所さんはクイーンズ白鳥の応接室で打ち合わせをしていたと社員さんが証言しています。
確認したところその打ち合わせの相手は大林先生だったそうですね。
ええそうよ。
だから私たちは下山さんの事件とはなんの関係もありません。
いいやとんでもない。
大林先生の存在抜きにしてこのトリックは成立しませんよ。
まずあなたたちは2人で応接室に入るところを近くにいる社員さんに見せておいて…。
大事な話があるから電話があっても取り次がないで。
はい了解しました。
田所さん1人を部屋の中に残し大林先生は窓からクライミング用のロープを伝ってビルの外に出た。
そして下山さんを会社の屋上に呼び出し突き落として殺害。
(悲鳴)下山さんが着ていたのと同じ制服に着替え顔が見えないように柵の前で後ろ向きに立って歩美さんが来るのを待った。
でも…あの時私は確かに下山さんの声を聞いたんです。
歩美さんが聞いた下山さんの声は恐らくあらかじめ録音しておいたものですよね。
例えばICレコーダーのようなもので。
ICレコーダー?大林先生いつも持ってらっしゃいますものねICレコーダー。
今の発言は全て記録してあります。
(下山の声)「よく来たなお嬢さん…」下山さん本当の事を話してください。
あなたは誰に頼まれてあんな嘘の証言をしたんですか?どうしても話してくれないんですね。
だったら私にも考えがあります!そして歩美さんが近づいてくるのを見計らい下山さんになりすました大林先生は屋上から飛び降りたように見せかけたんです。
あの女またやりやがった…。
ロープで壁を伝うとか屋上から飛び降りるとかそんな事私に出来るわけがないでしょ?ところが大林先生。
わたくしこの度フリークライミングを始めてみようかと思いましてね。
弁護士仲間のフリークライミング同好会を探してみたところ大林先生がフリークライミングの上級者だったとわかりました。
そんな趣味をお持ちの大林先生なら高いところから飛び降りるのもわけないですよね。
飯島さんが警察に通報したのとほぼ同じ時刻現場近くで女性客を乗せたタクシーが見つかりました。
その車内を映したカメラには下山物流の制服が入ったバッグを抱えたあなたの姿が映っていたんですよ。
大林先生が下山さんのふりをしている間会社の応接室に1人残って2人分のアリバイを作っていた田所さんもきっと同じICレコーダーをお使いになったんじゃないですか?
(田所の声)「私は反対です!こんな時に無理に急いで社長を決めるべきじゃないと思います!」
(公子の声)「その考えが甘いと言ってるんです!」
(公子の声)「このまま信用を失い続けると取り返しのつかない事になりますよ!」
(ため息)あなた私をだましてたのね?ひどい…。
ひどい?なんの不自由もなくのうのうと暮らしてきたお前なんかに何がわかる?俺たちの両親はなお前らのじいさんのせいで心中したんだよ!公子姉ちゃん僕たちこれからどうなるの?これからは2人だけで生きていくのよ。
(田所の声)施設に引き取られた俺たちは別々の家に養子として引き取られた。
俺は田所家に姉さんは大林家に。
学校を卒業後あえて白鳥さんの会社に入ったのもその復讐をするためだったんだな。
白鳥家の連中に取りつくために死にもの狂いで働いて出世した。
弁護士になった姉さんを俺が顧問弁護士に推薦した。
そして私たちは復讐の時を待った。
私たちの両親を死に追いやった会長を殺害し白鳥家の全財産を奪い取るチャンスをね。
その第一歩として田所さんあなたは真知子さんに近づいた。
信じられない…。
私の事愛してるって…あれも全部嘘だったのね!俺の目的は長女のあんたと結婚する事だけだった。
そのためだったらそんな嘘つくくらい簡単だよ。
あんたなんて事言うのよ!けれど真知子と付き合っている事が社長と会長に知られ俺が会長の乗っ取りで心中に追い込まれた兎野の息子だとバレた。
それで下山さんを金で雇って偶然を装った事故を起こさせて2人を殺害したのね。
あなたが闇金の前で下山に声をかけている姿が近くの防犯カメラに映ってました。
借金で追い詰められた下山は二つ返事で引き受けてくれたよ。
ところが想定外の出来事がひとつ起きてしまった。
それは歩美さんがその車に乗ってしまった事。
ただその時にはまさかそのあとで大きく計画が崩れるような事になるとは思いもしなかった…。
あなたたちの当初の計画では同時死亡の推定が適用される状況で事故を起こし健蔵さんの遺産30億を三姉妹に相続させようとしていた。
でも奇跡的に生き残った歩美さんの証言によって健蔵さんよりも太一さんのほうが後まで生存していた事が明らかになった。
お父さん!同時死亡の推定が歩美さんの証言で覆され遺産30億のうち半分の15億しか相続出来なくなってしまった。
そこで今度は真知子さんとゆりさんを巧みに誘導して歩美さんを訴えるだけでなく下山の新たな供述で同時死亡の推定にもう一度結論を持っていこうとも画策した。
よくもここまで法律を悪用してくれたもんだ。
でも…どうして下山さんまで殺害したんですか?それは君が下山のところに押しかけて追い詰めたからだよ。
ちょっと待ってください!あんたが絶対バレないって言うから俺は協力したんだよ。
しかもほんのちょっと路面濡らすぐらいって話だったのにまさかあんな大事故になっちまうなんて…。
もう限界だよ!あの娘が警察駆け込んで全部しゃべっちまったらおしまいだよおい!落ち着いてくださいよ。
下山には歩美さんを油断させるために必要だからと嘘をついてICレコーダーで声を録音させたあと…。
よく来たなお嬢さん…。
(公子の声)屋上から突き落とした。
(公子)フッ!
(下山)ううっああ…!
(悲鳴)じゃあ私が下山との関係を疑われたのは結局なんだったのよ?
(公子の声)金粉入りのバームクーヘンは私が作って食べさせました。
ゆりさんこれお願い出来ますか?ああはい。
(公子の声)ゆりさんの指紋を付けた封筒を下山に渡したのも私たちの計画の一部だったんです。
あなたって人は…。
例えゆりさんと歩美さんの2人に殺人の容疑をかけられなくても警察で取り調べを受けている状況さえ作れば真知子さんの社長就任を邪魔する者はいなくなる。
真知子が社長になったあと頃合いを見計らって失脚させ俺がその座に座れば俺たちの復讐は完成するはずだった。
(田所)こうでもしなければ無惨にも殺された俺たち両親の恨みは晴らせないんだよ!
(山根)それは違うと思います。
あなたが白鳥家に復讐しようとしたように今度は白鳥家の誰かが復讐しようとするかもしれない。
その時命を落とすのはあなたの大切な人かもしれない。
復讐というのは負の連鎖です。
そんなものをあなたたちのご両親は望んでいたんでしょうか?復讐や憎しみからは何も生まれません。
どうか罪を償ってください。
法律は罪を償いやり直すチャンスを与えてくれる最後の希望の砦です。
(岸谷)署までご同行願います。
飯島さん…。
実はあなたにずっと伝えたかった事があるんです。
智恵さんは亡くなる直前にあなたの名前を呼んでいました。
最後にフッと笑ってあなたの名前を…。
お二人は信じ合っていたんですね。
うらやましかったです。
私も父の最後の言葉ちゃんと聞きたかった…。
穂高先生色々とありがとうございました。
いえ。
歩美さん。
ちょっとお話ししてもいいかしら?なんですか?これはあくまでも私の想像よ。
あの事故のあとあなたがお父さんのもとに駆けつけた時すでにお父さん亡くなっていたんじゃないかしら?その時父が…「歩美大丈夫か?」って…。
でもそれが父の最後の言葉になりました。
先生の言うとおりです。
(歩美の声)看護師だった私には父に蘇生のチャンスがないとわかりました。
でもその時父が車の中で言った最後の言葉が私には聞こえたような気がしたんです。
(太一の声)歩美。
家に戻ってこないか?お父さん…お父さん死んじゃ嫌だ!ねえ!私…本当はずっと家に帰りたかったの。
お父さんのいる家に帰りたかったの!ねえ私強くなるから。
もっともっと強くなるから!もう心配かけないようにするから。
ねえお父さん死んじゃ嫌だ!
(歩美の声)私は父に生き返ってもらいたい一心で救急隊員に止められるまでずっと蘇生措置を続けていました。
私はどうしても父に言いたい事があったんです。
車の中で父に聞かれた質問にちゃんと答えたかった。
その時の様子を見ていた救急隊員とお父さんの最後の言葉を聞いたというあなたの証言が同時死亡の推定を使ったトリックを打ち砕く事になったのね。
病院で手当てを受けながら考えたんです。
祖父が言っていたようにもし誰かが会社の乗っ取りを企んでいたとしたら…。
そしてあのスリップ事故がその恐ろしい計画の一部だったとしたらこのままでは姉たちにも危険が及ぶと思い私たち3人の相続分が少なくなるように父の最後の言葉を聞いたと証言したんです。
こんな身勝手な私に父は家に帰って来いと言ってくれました。
だから私は父が大切にしていた家族をどうしても守りたかったんです。
もう一度みんなで笑いたかった。
姉妹3人仲良く遊んでいた頃のように…。
こっちここここ…。
あっ!食べちゃ駄目だよ!もう駄目…。
(歩美の声)それなのにどうしていつもバラバラになっちゃうんだろう…。
(足音)お姉ちゃん…。
歩美…。
あんた1人に色んな事背負わせちゃってごめんね。
あんたバカよ。
私たちの事そんなふうに思ってるならもっと早く言ってくれればよかったのに。
お姉ちゃん…。
迷惑ばかりかけてごめんなさい。
迷惑なんてお互いさまよ。
ねえゆり。
私も歩美に逆恨みしてひどい事ばっかり言って…。
(ゆり)ごめんね。
5歳…。
3歳…。
(真知子)0歳。
三姉妹になった時の気持ちに戻ってまた一からやり直そう。

(3人の笑い声)なんですか?それは。
歩美さんからのお土産です。
あっ!マカロンが3つ並んでますよ。
白玉も3つ並んでますよ。
スイーツ三姉妹の誕生ですか。
(山根)頑張ってますね歩美君も。
私も頑張ろう。
穂高先生スイーツ作りに目覚めるおつもりですか?いえいえ…。
私はあくまでも法に携わる者として人の気持ちを大事にしながら人を救う力として法律を使えるように頑張ろうって改めて思ったんです。
穂高先生のおっしゃるとおりですね。
では早速僕も法に携わる者として…。
あっ!穂高先生のプロポーション崩壊を未然に防ぐため善意の行動を取りました!それじゃあ私も…。
あっ!小宮先生白玉でお腹いっぱいにしたら奥さまの手作り料理入らなくなっちゃいますよ。
あっ夕飯残すと次の日食事なしだそうですね。
所長までご存じでしたか。
でもいつまでもこんな関係でいいわけないですからね。
今日こそはビシッと言ってやりますよ!
(携帯電話)噂をすればその奥さまからじゃないんですか?小宮先生ビシッと決めちゃってください。
もちろんですとも。
はい!ごめんなさい。
今日こそはすぐに帰ります。
らっきょうとトイレットペーパー。
かしこまりました!失礼します!うーん!美味しい。
2014/05/31(土) 21:00〜23:06
ABCテレビ1
土曜ワイド劇場「司法教官・穂高美子3」[デ][解][字]

死亡時刻が二転三転!?遺産30億強奪トリックを“スイーツ姉妹”の空飛ぶバウムクーヘンが解く!!

詳細情報
◇番組内容
水野真紀主演のシリーズ第3弾!遺産30億をめぐり、美人“スイーツ三姉妹”が対立!?高飛車な司法研修所教官=通称“タカビー”が、殺人事件の裏に潜む法律の盲点を暴く!
◇出演者
水野真紀、筧利夫、勝野洋、三倉茉奈、雛形あきこ、遊井亮子、野村真美、河相我聞、岡田浩暉、池内万作
◇スタッフ
【脚本】酒巻浩史
    末安正子
【音楽】瀬川英史
【監督】本橋圭太
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.tv-asahi.co.jp/dwide/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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