タイムスクープハンター「壮絶!雪山の戦い」 2014.05.31

(沢嶋)
戦国時代雪の中の行軍は絶望を意味する。
十分な防寒装備もなく携帯食料も乏しい。
戦いに明け暮れる時代でも雪の中の戦いだけは避けるのが常識であった。
だがそんな無謀な作戦が一人の大名によって決行された。
これはその作戦に巻き込まれた名もなき兵士たちの壮絶な映像記録である
え〜アブソリュートポジションN257W317E391S916。
ポジション確認。
アブソリュートタイムB0565452年85時45分14秒。
西暦変換しますと1583年1月20日7時9分31秒。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー456293これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。
雪深い山の中を行軍する兵士たちがいる。
彼らは庄内尾浦城城主大宝寺義氏の兵士たちである。
庄内地方を治めていた大宝寺家はかねてより北部の由利郡を手中に収めようともくろんでいた。
一方山形の最上家も由利郡への侵攻の機会を狙っていた。
大宝寺軍は先手を打つため春の雪解けを待たずに北への侵攻作戦を開始。
常識外れの真冬の雪中行軍を決行した。
ところが由利郡の武士たちによる予想外の抵抗に手こずり戦は泥沼化していく。
戦国史上類を見ない雪上の戦い。
その戦いに密着。
決死の従軍取材を敢行した
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼らにとって私は宇宙人のような存在です。
彼らに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼らに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
戦いは混乱を極めていた。
仁科勝兵衛率いる部隊。
敵の山城を目指し行軍している最中に敵軍からの攻撃を受け本隊とはぐれてしまっていた。
慣れない土地。
どこに敵が潜んでいるか分からない危険地帯。
しかし本隊に合流するため彼らは前に進むしかない
(銃声)突然の発砲です。
敵軍でしょうか?
(銃声)おのれどこじゃ!?
(銃声)
敵からのすさまじい攻撃
ただひたすら退く事しかできなかった
森の中に逃げ込んだ彼らは敵の目を避け一時野営する事になる。
皆疲労の色が濃い。
雪の中の出兵はもともと無理があった。
庄内地方で権力を振るった大宝寺義氏であったが無謀な戦略に多くの兵士たちが犠牲になった。
そのあまりに強権的なやり方ゆえに領民からは「悪屋形」と呼ばれ反感を買っていたという
さようか。
御意。
聞け!
全滅は時間の問題だった。
本隊を捜索するため兵士を募る事にした
ちょ…あんちゃ!ああ。
(早山)参るぞ。
9時57分野営地を出発。
志願したのは足軽の孫太郎。
その弟孫二郎。
そして2人のいとこ弥助。
皆同じ村から戦に駆り出された農民兵である。
この捜索行動が悲劇の始まりになるとはまだ誰も知らなかった
まずは味方がいると予想される川沿いを捜して山を下る事に。
だがその時だった!
(銃声)
(銃声)
斜面の向こうに敵の姿。
何人いるのだろうか
(銃声)
(銃声)
攻撃が激しくなる
うおっ!くそっ…。
あんちゃ!
逃げるしかなかった
(銃声)んだんだ。
なあ。
そんな…死んじまうぞ!侍になるっつって…生きんだ!あっちゃけ!おめえだ!死んだら何もなんねえ!
(銃声)あんちゃ!
何とか銃弾をかいくぐり林に出る。
だがその先で斜面に阻まれた
無我夢中でよじ登る。
しかし斜面の上にも敵の姿が。
木の陰に身を隠す

至る所に現れる敵兵たちに翻弄され当てもなく林の中を逃げ回る。
指揮官を失った捜索隊。
孫太郎孫二郎弥助。
3人の農民兵だけとなってしまった
その日の午後。
山の天気が急変。
吹雪に行く手を阻まれる
私はこれ以上の取材は危険と判断し本部と連絡を取る事にした
本部本部応答願います。
本部応答願います。
悪天候のためか通信機器にトラブルが発生。
本部との交信ができない。
3人は前に進む事を断念。
待避場所を作るため斜面の雪を削る事にした
二郎。
二郎!二郎しっかりせい!
2時間たっても吹雪が収まる気配はない。
その時孫二郎の体が寒さにより危険な状態に陥っていた
本部本部応答願います!本部応答願います!
タイムスクープ社本部との交信を試みるも反応がない。
身を寄せながら天候が回復するのを待った
吹雪は明け方近くにやっと収まる。
しかし…
二郎?二郎二郎。
二郎!二郎!二郎。
二郎…。
寝ぶたらやじゃがね…。
二郎…。
二郎。
すまねえ。
行くぞ。
二郎…。
本隊を捜すため再び出発。
「義氏繁昌士民陣労」という歌が残されている。
大宝寺義氏が繁栄する一方で領民たちが無謀な戦に駆り出され犠牲となる様を嘆いたのである
え〜今最初の野営地を出発して食事も睡眠もろくにとれていません。
2人の体力も限界に来ています。

本部との連絡はいまだにつかない。
更にフィジカルバージョンアップシステムもダメージを受け私の体力も消耗しつつある。
完全に迷ってしまっていた。
疲労がピークに達する
孫太郎と弥助が倒れた
大丈夫ですか?大丈夫ですか…?
そして私も…
あっ…。
目覚めたか?
私が目覚めたのはその3時間後の事だった
あの…。
助けてくれた謎の人物。
一体何者なのだろう。
その時だった!
はいこちら沢嶋。
(古橋)沢嶋さん無事ですか?ええ古橋さん大丈夫です。
そうですか…良かったです。
こちらから一時沢嶋さんの場所が把握できないような状況だったんですが。
ああ…寒さが原因だと思われます。
通信機器にトラブルが発生しまして。
分かりました。
これから代替機を転送します。
ありがとうございます。
この件は開発部に報告しておきます。
その他何か取材に支障が出ている事はありますか?いえ今のところ大丈夫です。
1つだけ調べてほしい事があるんですけど。
はいどういった内容ですか?雪山で遭難してるところを猟師の方に助けて頂いたんですけどこちらから会話をしても何も答えてくれないんです。
一体どういった人物なのか情報があれば教えて頂けますか?東北地方の猟師という事ですか?はい。
少々お待ち下さい。
恐らく沢嶋さんを助けたのは「マタギ」と呼ばれる方ですね。
マタギ?はい。
彼らは山奥に独自の集落生活を営み農耕や狩猟などに従事していましたが冬から春にかけて山に分け入り野営しながら熊やカモシカ猿などの狩猟を行っていました。
ええ。
彼らは山神を信仰し山での厳しい掟を守って独特の生活をしていました。
例えば「山言葉」というものがその特徴の一つです。
山言葉?はい。
マタギ仲間にしか分からないもののようです。
どうしてそんな言葉を使うんでしょう?沢嶋さんと会話をしないのは恐らくそういった理由からだと思われます。
なるほど…そういう事でしたか。
はい。
では引き続き取材を続けます。
あの…くれぐれもむちゃはしないで下さいね。
はいありがとうございます。
その日は日が落ちてしまったので出発を断念。
マタギの小屋で夜を明かす事になった。
マタギはウサギ肉の鍋を振る舞ってくれる
あ〜おいしい。
あんちゃよ。
何だ。
それ以外どうするいうんだ。
んだば…もうたくさんだ!
その深夜私のカメラが異変を感知する。
小屋の外に何者かの気配。
マタギがすぐに警戒態勢に入る

(物音)
小屋のむしろを揺らしている
熊だ!
音を立てないようにじっとしている
行ったか?
(熊のうなり声)うわっ!弥助!
突然の出来事だった
弥助どこだ!どこ行った!?
弥助が一瞬にして暗闇に消えた
雪の上に広がる血痕。
弥助と熊の姿は既にそこにはなかった
弥助は?弥助さんは?弥助がいねえ。
弥助さ〜ん!弥助…。
弥助は?
熊を追って森に入ったマタギが戻ってきた
弥助は!?
だが彼は首を振るだけであった
弥助…。
野生動物の前に人間はあまりにも無力である事を思い知る
その時…
今まで言葉を発しなかったマタギが突然口を開く

マタギは孫太郎に見せたいものがあると言い誘導する
しばらく歩くと川に出た。
そこには…
川面に浮かぶ無数の死体。
雪の中繰り広げられた合戦は死闘に次ぐ死闘であった
ほれ見れ。
食料の入った袋を孫太郎に渡しマタギは再び山へと帰っていく
その姿を孫太郎はいつまでも見送っていた
そして私は取材を切り上げる事に
それでは私はこの辺で失礼します。
おめさん1人で平気か。
ええ大丈夫です。
気いつけてな。
生きれよ。
孫太郎さんも。
んだば。
別れの言葉を残し彼は去っていった。
戦で手柄を立てる事になみなみならぬ思いを持っていた孫太郎。
マタギの言葉に何を感じ取ったのだろうか
以上コードナンバー456293アウトします。
2014/05/31(土) 23:30〜00:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター「壮絶!雪山の戦い」[字]

シーズン6の第8回。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は戦国時代へタイムワープをする。東北真冬の雪上での過酷な戦い。小隊に同行取材する。

詳細情報
番組内容
1583年、東北の出羽国、時空ジャーナリストの沢嶋雄一は雪上での戦いを取材するべく、大宝寺義氏が率いる軍の一小隊に密着している。「パァン、パァン!」突然、山間から発砲音とともに銃弾が飛んできた。「敵だぁぁ!」大宝寺軍が必死に応戦する。だが、雪中行軍で疲労困ぱいの上、想定外の攻撃であったため、反撃がままならない。一時撤退し、早山宗右衛門と孫太郎たち4人に、はぐれた本隊を探すように命令が下る。
出演者
【出演】要潤,杏

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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