さあ皆さんお待ちかね!登場するのは日本生まれのイッピン。
優れた技が生み出す珠玉の宝。
きょうはどんな技が飛び出すのか。
1200年にわたって文化を育んできた町京都。
「将来はここで暮らしたい!」というほどの京都好きです。
きょうのイッピンをこちらで見せて頂けるという事ですがとても楽しみです。
じゃ早速行ってきます。
訪ねたのは懐石料理で知られる京都を代表する老舗旅館。
(女将)お待たせしました。
お願い致します。
すごい。
何でしょう?お風呂。
お風呂!?まさかこの箱の中に秘密が?かわいい。
お風呂だ…。
と思ったら中は湯豆腐!ではきょうのイッピンは…?この金網でどうぞ。
これですくうんですか?そうなんです。
これは何ですか?京都の伝統的な金網屋さんが作らはった…手作りなんですよこれ。
湯豆腐をすくう?湯豆腐すくいですはい。
なんか崩れそうだったんですけど崩れないもんですね。
そうですよね。
きれいですし丈夫ですしずっと使わせて頂いても全然変わらない。
丈夫なんですか?丈夫でっせ。
本当にきれい。
きれいに編んでありますね。
ねぇ。
きょうの「イッピン」は京都の金網細工。
職人がひとつひとつ手で編んだ繊細さが何より魅力です。
金網細工をカジュアルに楽しめるお店もあります。
日本茶専門の喫茶店には金網細工の茶こしが。
銅の針金で編まれ使うほどに深い飴色に変化するといいます。
こういう茶こしで入れたのは初めてですけどね。
本当にお茶をおいしく頂けるっていう感じがしますね。
何となくおいしいなって。
フフフ…。
家で主人に注ぐのとは別。
手編みの茶こしはお茶を飲む人をちょっと贅沢な気分にしてくれます。
京都の金網細工は昔ながらのキッチンツールとして人々に愛されてきました。
きょうはその奥深い世界をじっくりとご堪能あれ!牧瀬さんが訪ねたのは先ほどの湯豆腐杓子を作った職人の工房。
こんにちは。
お邪魔いたします。
創業80年という歴史があります。
きれい。
これ全部金網になるんですね。
いろんな物があるんですね。
(店主)そうです。
へぇ〜。
全部が手作りです。
あなるほど。
職人が手編みで作った金網細工はおよそ40種類。
皿や籠。
そしてコーヒードリッパーまで。
こちらがよく見る憧れの湯豆腐…湯豆腐杓子でいいんですね?
(店主)はい。
この網目の形はなぜ六角形になったんですか?2本の線をねじって編んでいくと自然に六角形の形に。
自然になるもんなんですか?なるんです。
六角形になるんですか?それが亀甲編み。
「亀甲編み」とは六角形の網目のこと。
形が亀の甲羅の模様に似ていることから名付けられました。
こんなにきれいに揃った六角形を作るのに技術が要りますね。
やはり技術が要りますね。
そっか…。
う〜ん全く想像がつきませんこれが自然な形とは。
手編みの製品にはどれも亀甲編みが使われています。
この六角形こそが職人がたどりついた究極の模様です。
湯豆腐杓子を作るのに欠かせないのがこの板。
さて何に使うのでしょうか?まずこれは何ですか?木ですよね。
そうなんです。
針金を曲げる台ですね。
太い針金を曲げ外枠を作っていきます。
きれいに曲がった。
この釘はランダムに打ってるんじゃなくてちゃんとここに挟んで…。
いやこれは全部寸法が決まってます。
え!釘も寸法が決まってるんですね。
そこを支点にグイッと。
この穴は虫食いではなくて釘を刺した跡なんですね。
はい。
でもこここんなに印って付いてないじゃないですか。
分かるんですか?これを作る時はこことこことここって。
そうですね。
大体ちょっと寸法を見て…。
あら。
一見適当な釘穴に見えますが実は職人にとっては設計図代わり。
どの穴を使えば針金を正確な寸法に曲げられるのか?全て頭に入っているといいます。
外枠ができたら網目模様が描かれた台に固定し細い針金で編んでいきます。
すぐに六角形が姿を現しました。
針金を1回巻くだけでは網目は四角形にしかなりません。
金網細工ではより頑丈にするために2回以上巻いていきます。
すると自然と六角形が形作られていくんです。
動きとしてはすごくシンプルだと思う。
2回ねじってまた下に通してねじって…。
単純作業。
アハハハハ…。
見ているとなんだか簡単そう!そこで牧瀬さん挑戦してみることにしました。
面白いですね。
なんか無心になれます。
あ…なんか…うそでしょ。
六角形にならないんですけど!自然に六角形になるとおっしゃっていたのですが…。
(店主)六角形にはなってます。
正六角形になってないってことですね。
(店主)そうです。
ハハハハ…。
なるほど。
この2個の幅が全然違う。
まぁいいや。
(店主)そうなんですよ。
でもご主人も最初はこんなんでした?ここまでひどくなかった?そうですねここまではひどく…。
(笑い)やっぱりそうか。
そうですよねここまでは…。
う〜ん想像以上に難しい。
辻泰宏さんはこの道25年の職人。
いとも簡単に正確な六角形を編んでいきます。
秘密は針金の持ち方。
親指と中指でしっかりと持ちねじる時人さし指で力強く針金を押さえるのです。
こうすることで隙間を作らず正確に巻いていけるといいます。
一方牧瀬さん。
うまく3本の指を使っていないため針金に余分な隙間ができてしまいます。
巻く力も一定でないため網目の位置や形がメチャクチャになってしまいました。
辻さんの六角形は下絵とピッタリ。
作業もリズミカルです。
一定の速さと力で編むことで美しい亀甲編みが生まれていきます。
きれい。
これで完成ですね。
仕上がりの違いは一目瞭然!さらに熟練の職人技は網目の美しさを作っていただけではありませんでした。
金網細工の技を科学的に分析している…熟練の職人と経験の浅い職人それぞれが編んだ網目の顕微鏡写真。
経験の浅い職人の針金にはたくさんの細かい傷があります。
熟練の方はですねできるかぎりそのままの状態でねじっていく。
一方未熟の方はどうしても力が入りすぎますので針金に損傷を与えるあるいは形がゆがむ。
そうすると表面上に傷がいったりということになる。
その結果経験の浅い職人のものは使い続けているうちに錆が出やすいことも分かりました。
美しさだけではなく丈夫さをも生み出す。
ここにイッピンの技あり!ここに特別な金網細工が伝わっています。
よろしくお願い致します。
こんにちは。
はじめまして。
こちらが華籠皿になります。
華籠皿?はい。
法要の時にこの華籠皿を使うんですけども。
華籠皿は法要の時まくシキミの葉を入れるための仏具です。
良かったらどうぞ。
いいですか触って?軽いですけどしっかりしてる感じがありますね。
そうですね。
何枚もあるってことなんですか?華籠皿というのはたくさんあるんですけどもこの金網のものというのは少し珍しくてこちら延暦寺でも数枚しか。
20年ぐらい前に作って頂きました。
京都の職人が丹精込めて仕上げた華籠皿。
外側には亀甲模様。
中心には菊の花をモチーフにした模様「菊出し」が施されています。
金網細工はその繊細な美しさから仏具など特別な用途にも使われてきたのです。
金網細工の最盛期は昭和初期。
30軒以上の工房がありましたが今は数軒を数えるのみとなりました。
そんな金網細工が気鋭のデザイナーの手で大胆に生まれ変わろうとしています。
モダンなデザインのランプシェード。
伝統的な亀甲模様がアレンジされています。
手かげたのは佐藤オオキさん。
数々のデザイン賞を受賞し今世界が最も注目するデザイナーの一人です。
実際にやっぱり手で編んでる姿を見た時にものすごくシンプルな工程なんですけれどやってる事は単純なんですけれど最終的に出来上がるものがあれになるというそのギャップにすごく驚きました。
格好いいから六角形ではなくて蜂の巣とかもそうですよね。
力が均等に分散するとなると六角形なんですよね。
それを計算の上でやっているのではなくてやはり代々職人さんたちが試行錯誤をしていく中で気付いていったというか。
なので職人さんの感性によって生み出された合理性みたいなそういう面白さがあるのかなという気はしますけれどね。
佐藤オオキさんとタッグを組み金網細工の新たな一面を引き出しのがこちらの工房。
伝統的なキッチンツールはもちろん佐藤さんとのコラボをきっかけに製品化したものまで多彩なラインナップが出迎えてくれます。
切り盛りしているのは…最近では新しくランプシェードを作ったりしてるんですけどすごい。
ランプシェードっていうと下に明かりが行くように上を覆いかぶさるというイメージが。
(辻)電気を消してみると…。
見たいです見たいです。
わ〜!こういう感じで…。
上に網の模様がさ〜っと行くんですけど。
すばらしいですね。
これは海外用におもに外国の方の。
今もいろんな国で他の国で使って頂いてることが多くて。
きれい!すごい!こちらは佐藤さんのランプシェードをより立体的にした作品。
亀甲模様を生かしたデザインはそのままに。
全体に丸みを持たせ柔らかい印象に仕上げています。
このバスケットもふっくらとした立体感で表現されています。
さまざまな大きさの六角形を巧みな曲線で一つにまとめ上げた職人の技の結晶です。
よろしくお願いします。
立体的な金網細工はどうやって作るのでしょうか?うちの父です。
よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
徹さんの父親…この道48年のベテラン職人です。
賢一さんが手がけた金網籠。
32本の針金を使って大小さまざまな亀甲模様を複雑に編み上げました。
まず底の部分を菊出しで仕上げ「ろくろ」と呼ばれる木型に載せます。
この「ろくろ」は立体的な作品に欠かせない道具。
工房には作品の形に合わせたさまざまなろくろが用意されています。
よく見ると下に行くにつれて大きく広がるマス目が描かれていますが…。
こういった線が入っているというのは?これは一応目安なんですよね。
横線は編み始め。
針金がクロスする所は横線でクロスしてます必ず。
横に引かれた線は2本の針金を交差させる位置を示しています。
一方縦の線は「亀甲模様」の大きさの目安になっているんです。
編むとかねじる作業はマメがどこかにできるものなんですか?そうですね。
これ太いのでゴルフはしないんですけどもこういう…。
あ!ゴルフ用だ。
ゴルフ用なんですよ。
アハハハハ本当だ。
こんなふうにしてると結構ボロボロになるんですよ。
そうですよねそれ。
太い針金を使った作品には手袋が必需品。
この作業ただ普通に針金を巻いているようにしか見えません。
しかしこの手の動きにこそふっくらとした曲線に仕上げる技が隠されているんです。
編む作業のコツというかそういうのありますか?ええ。
こちらの方が6〜7割ぐらい…。
左手の方が?左手の動かし方が非常にポイントです。
そうなんですか。
両方均等ではなく…。
ないんです。
上から持っていく左手の方が7割ぐらいの…。
そう。
7割ぐらいです。
こちらは添えといいますか…。
そうなんですか。
添えるぐらいっていうか…。
このカーブが力を入れると出ない。
え〜!ふっくら感がありますね。
ちょっと湾曲してる。
それが出ない?出ない。
丸みのある立体を作るためには両手で力いっぱい引っ張るのではなく左手で遊びを作るのがコツだといいます。
さらにこのバスケットは下に行くにつれて六角形が大きくなるデザイン。
それに合わせ「遊び」の部分も長くしています。
最後に縁取りの針金を取り付けます。
この取り付け方にもひと工夫。
場所によって針金を巻く回数を変化させ長さを調整しています。
こうすることで優美な曲線を作ることができるのです。
硬い針金から生まれたたおやかなバスケット。
賢一さん渾身のイッピンです。
手作りって作り手も表現できるしまた感覚が違うとアートになったり。
そうですね。
我々は技術が伝統工芸で。
なるほど。
出来上がった物は伝統工芸というレッテルは貼ってほしくないです。
だから時代に合った物作りをいつも目指しています。
時代に合わせた物作りがしたい。
その思いから新しい作品が次々と誕生しています。
海外でも金網細工を知ってもらおうと6年前からヨーロッパやアジアでの展示販売も始めました。
それを仕掛けたのが息子の徹さんでした。
脱サラし職人の世界に飛び込んで12年。
最近ようやく父親も認めてくれるようになったと言います。
僕も最初就いた時はこんな仕事できるのかなって心配で心配で。
何回やめようかなと思った。
そうですか。
何回も鴨川独りで行きました。
怒られて。
川べりでコーヒー飲みながらタバコを吸ってこれからどうなっていくのかなと思って。
鴨川で独りでいる人ってそういう人とかもいるんですね。
基本的にはそうですね。
病んでる系の人が多いですね。
「言ったもののできるのかな僕」みたいな。
徹さんは今新作の準備にとりかかっています。
今年5月にニューヨークでの販売を計画しているのです。
この日訪ねたのは京木地師綾部之さん。
日頃からろくろ作りをお願いしている職人です。
アハハ。
結構飛んできます。
新作はティーカップのサイズに合わせた紅茶用の茶こし。
浅めのカップに対応するろくろが必要です。
そのため茶こしの深さを決めるリングの位置を変えて作ってもらうことにしました。
(綾部)どうですか?いけてます?これでいける?あんまり動かない感じですよね。
(綾部)うん触ってみて。
(徹)いいですね。
(綾部)これぐらいね?はい。
オッケーです。
ありがとうございました。
離れました!まぁこういうことで。
ありがとうございます。
完成ですか?完成ですね。
洋風の茶こしですが模様はあくまでも伝統的な「菊出し」と「亀甲編み」で仕上げます。
(徹)日本もそうなんですけど物の背景とかその辺がまだまだ外国のほうが伝わりづらいので物勝負のほうが僕らは面白いんですけど。
やっぱり気を使うところは気を使いますよね。
日本みたいに老舗とかどこそこで人気があるとか誰かがどうこうというのは全くないので物が良いか悪いかだけ。
アメリカのマーケットに合わせた新しい茶こしが出来上がりました。
持ち手には滑らかな手触りのつげの木を使用。
伝統を生かし世界を見据えた新しいイッピンです。
とても楽しくて感動した時間でした。
今回この茶こしを買ってみました。
ちゃんと底に菊出しの形があって本当に細部に至るまで繊細で美しさを求めてるというのは自分の日々の生活にも気をつけなくてはいけないと思うぐらい勉強になりました。
京都で脈々と受け継がれてきた金網細工。
ちょっと手を伸ばして触れたくなるそんなイッピンです。
2014/06/01(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「影まで美しい繊細な模様〜京都 金網細工〜」[字]
今回は、京都の「金網細工」。針金で編まれた湯豆腐すくいや茶こしなど、キッチンツールとして愛されてきた。美しく繊細な金網細工を、女優の牧瀬里穂がリサーチする!
詳細情報
番組内容
今回は京都の「金網細工」。銅などの針金を使い、亀甲模様や花模様を編み上げる工芸品だ。湯豆腐すくいや茶こしなど、キッチンツールとして親しまれてきた。リサーチに向かうのは、大の京都好きという女優の牧瀬里穂。一見シンプルでありながら熟練のワザを要する金網作り。そこには美しさや丈夫さを生む秘密が隠されていた。さらには注目のデザイナーが手がけるモダンな金網細工も登場。奥深い魅力を徹底リサーチする!
出演者
【リポーター】牧瀬里穂,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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