柳亭市馬の演芸図鑑「すず風にゃん子・金魚、春風亭一朝、毒蝮三太夫」 2014.06.01

おはようございます。
市馬でございます。
前座の大事な役目の中にお囃子の手伝いとこういう事があるんですがもちろん三味線はこれは専門にやってくれる御師さんがおります。
しかしながら太鼓ですとかかねは必須なんですけれども笛はやるものだけがやる好きな人がやるというものでみんながやるもんじゃないんですけどもこのしの笛というしの竹で出来ました祭り囃子なんかをこういうものでやるんですけれどもこんな音がするってえとこで…。
なんてね。
これが入るとまたお囃子の方も随分にぎやかになっていいもので私は前座から二つ目の頃これでだいぶ稼がしてもらいましたがそんな事をしながら前座も日々を送るというところで今日の出演の方をご紹介致しましょう。
まず漫才のすず風にゃん子・金魚のご両人。
テンポのある漫才をお楽しみ頂いて落語は春風亭一朝さんでございまして今笛の話をしましたがこの一朝さんほどはなし家の中で笛のうまい方はありませんで江戸前の粋な芸をお楽しみ下さい。

(拍手)温かい拍手ありがとうございます。
にゃん子・金魚と申します。
お待たせ致しました。
レディー・ガガです。
誰が!ずうずうしいでしょ?世界の歌姫ですよレディー・ガガって。
確かにあの人って衣装もメークも奇抜ですけどこんなの頭に載っけないよ。
何考えてんだかね。
今回は金魚でございます。
ヤッホーヤッホーヤッホー!まあこれに命懸けているもんですからね。
漫才に命懸けてくれないかな。
あらそうだわ。
じゃあうちのにゃん子ちゃんも見てって下さい。
あらそうですか?ニューハーフでございます。
ちょっとやめて!今そんなキャラクターいっぱいテレビに出てるからニューハーフって言ったら信用しちゃうよね?やったじゃん。
うなずくなよそこで!
(笑い)ねえ最初からちゃんと紹介して。
じゃあいくよ。
漫才界のオネエはるな愛。
(2人)言うよね〜!違う!すいません私うそついてませんよ。
正真正銘女の子ですよ。
うそだよ〜ん!何でうそ?その証拠に喉仏リボンで巻いてる。
(観客)ああ〜!「ああ〜」じゃない違う!これファッションで巻いてるの!いやいやニューハーフは何だって首に巻いてんだ。
ああいいよそんな事…じゃあ今日取って見せてあげるからちゃんと見てってよ。
ほら!何にもないでしょ。
おお〜男らしい。
(笑い)「男らしい」言わないでよ。
向こう行ってて。
今知ってます?あのね日帰りバスツアーってのがすごいはやってるのよ。
今すごいんだよ。
知ってるの?金魚ちゃん。
知ってるよ。
今女性に向けてすごいんだから。
言ってごらん人気があるやつ。
人気のあるやつ?いちご食べ放題。
そうそう…。
かに食べ放題。
そう。
豚食べ放題。
食べ放題ばっかりやん!大体ねふだんから金魚ちゃんって食べ過ぎなのよ。
いいじゃないの。
食べれるって事は幸せな事なんだから。
駄目だってあんまり食べちゃ。
だってもう若くないんだから。
じぇじぇじぇ。
「じぇじぇじぇ」じゃない!確かにドラマにはまってたから。
そういう言い方したら傷つくの!女の子なんだから頼むよ。
女の子。
男の子。
男の子じゃない!女の子だもん。
大体女の子とか言ってますけどねもう年金もらってるんだよこれ。
(観客)ええ〜!私は年金もらうよ!年金!ゴ〜ゴ〜年金!年金〜!食べ放題っていうのもいいんだけどやっぱり私は女の子だから太っちゃうんじゃないかなって…。
イエイイエイ!ハア〜!ハア〜!ねえ話聞いてんの?聞いてない。
聞いてよ!バスツアーの話してんじゃないのよ!私は食べ放題は太っちゃうってそれが心配で嫌だって言ってんの。
だったら女性向けのトレーニングバスツアーってのがあるよ。
えっそんなのあるの?そうだよ。
あんた知らないの?私さ今年ジムに通おうと思ってたのよ。
ピッタリじゃんそのツアー!おっしゃ〜!よっしゃ〜!何?いらっしゃいませ。
はいはいはいはいようこそお越し下さいました。
トレーニングバスでございます。
ねえこんな狭いバスの中で何しようっていうのかな?アニマルエクササイズでございますよ。
ちょっと私それ知ってるわ。
アニマルエクササイズ。
これって女優とか役者がお芝居の稽古のために動物のものまねするやつよ。
さようでございますがよくご存じで。
だって私元女優よ。
あら〜まあ女優さん?はい。
分かりました。
元女優さんでございますからすぐにでもおできになりますね。
当たり前じゃない。
ちょっと見本見せてごらん。
それではまいりましょう。
アニマルエクササイズ!・「猫のパンチはニャンニャンニャン」・「ウサギのウサちゃんピョンピョンピョン」何やってんの?違う違う!すいませんこんなんじゃないのよ!もっとリアルに猫のまねをしたりするやつなんです。
・「カンガルーのボクサーキックキック」違うってば!もうやめて!・「お馬の親子だタッタカタッタッタ〜パッパカパッパッパ〜」さあ楽しくなってまいりました。
楽しいのあんただけじゃん!はい?見てごらんお客さんボ〜ッとして。
ごめんね置いてきぼりで。
大丈夫でございます。
お客様もこれからでございますから。
ごめんそういうのだったら私恥ずかしくてできない。
難しかったですか?難しいなんて言ってない!恥ずかしいよ!もうお客様恥ずかしいとおっしゃいますがお客様よりも見てるお客様の方がも〜っと恥ずかしいんです。
その気持ちになって一生懸命やりましょう。
金魚ちゃん本当勘弁して。
じゃあ分かりました。
米倉涼子になりましょう。
(観客)おお〜!ちょっと待って「おお〜」じゃないよ。
何でここで米倉涼子が出てくるのか訳分かんないもん。
米倉涼子は私の一番弟子でございますから。
うそ!これ自慢なんでございますよ。
このトレーニングバスに参加してから売れたんでございますよ。
えっ本当?そうですよ。
あの品のよさあの美しさ。
きれいだよね。
スタイルもよろしゅうございますでしょ。
体が軟らかいのもここでやったからでございます。
大丈夫でございます。
すごい!
(拍手)わ〜お!やめて下さいよ。
ちょっと今見た?いや〜脚短い!何だこれ。
ですからねこれを毎日やる事によりまして伸びるんでございます。
ですから第2の米倉涼子になりましょう。
ワンツースリーフォー。
(2人)・「猫のパンチはニャンニャンニャン」・「ウサギのウサちゃんピョンピョンピョンタヌキのおなかポンポコポンポンポコポン」・「象の鼻パフォ〜ンパフォ〜ンカンガルーのボクサーキックキック」・「お馬の親子だタッタカタッタッタ〜パッパカパッパッパ〜」
(拍手)えっ!?拍手きたよ拍手!さすが元女優!ありがとうございます!覚えは早い。
ありがとう。
レベルアップしましょう。
頑張るよ。
今話題のゴリラ。
今日拍手もらってテンション上がったから何でもやる。
(笑い)ちょっと待ってちょっと待って。
ねえ金魚ちゃん。
おいおい!レベルアップし過ぎ!嫌だ超リアルなんだけど!ねえもっとさかわいい動物にしてくんないかな?前通らないでよ!
(拍手)いやいやいや手なんかたたかないで。
もう乗せないでこれ以上。
体軟らかいね。
さっきのY字バランスといいさ。
あのさうっすら汗かいてやる事じゃないでしょ!
(笑い)ねえ金魚ちゃん!ん?「ん?」じゃなくてお願い動物変えて。
もっとかわいいの…いやいや気持ち悪いなもう!来るなよもう!しっしっしっ!向こう行け!
(笑い)やだちょっと待って。
ねえ今さ離れてみて始めて気が付いた。
この人三頭身しかないんだね。
どっかのゆるキャラ?こんなのいるわね。
「三頭身も」にして下さい。
さあ皆さんお待ちかねです。
やってみましょう!嫌です!大体ね言いたくないけどそういう事やってて恥ずかしくないの?仕事ですから。
やめさせてもらうわ。
(拍手)
(出囃子)
(出囃子)
(拍手)いらっしゃいませ。
(拍手)ありがとうございます。
春風亭一朝でございます。
名前が一朝でございますんで今日はいっちょう懸命にやりますのでどうぞひとつよろしくお願いします。
ありがとうございます。
のんきな商売でございますけどまあ昔ご大家の若旦那がよく道楽が過ぎておとっつぁんから勘当されましてでまあ行く所がないんで出入りの職人のうちへ転がり込むというまあよく居候なんてな事をいいますがこれはまあ様付きの居候なんてえんでねあるじよりえばってたりなんか致しまして…。
「じゃあ何かい?私に奉公にでも行けって言うのかい?」。
「行けとは言いませんけれどねあなただって何でしょうちの2階でただブラブラしててもしょうがないでしょ。
あなたにその気があるなら話をしますがあなたあっしの知り合いで日本橋の槇町っていう所で奴湯っていう銭湯をやってましてあそこで奉公人が一人欲しいなんてそう言ってましてね。
どうです?おいでになりますか?」。
「えっ銭湯?湯屋か?それはお前女湯もあるな?」。
(笑い)「そりゃ女湯ありますよ」。
「行こう。
行かせて」。
「何だ気味が悪いな。
おいでになりますか。
よかった。
じゃあここにね手紙が書いてありますんでこいつを持っていくと向こうはすぐに分かりますんで。
奴湯っていいますから」。
「ああそう。
分かった分かった。
じゃあ行ってきますよ。
行ってきますよ。
とうとう追い出されちゃった。
まあいいや。
うちでブラブラしてるよりはたまには表に出た方がいい心持ちだ。
え〜っと奴湯奴湯と…。
あっここだここだ。
奴湯。
こっちが男湯だ。
こっちが女湯。
じゃあごめんください」。
「ああ〜もしもしそっち女湯女湯。
女湯ですよ」。
「ええそう女湯。
好きです」。
「駄目だよ。
冗談じゃねえ。
あのこっち行くとそこから回れますからね。
手紙を持ってきた?ああそうですか。
はいはい…。
あっ大熊のとこからですか。
返事がありましたらすぐに書きますんでねしばらくそこでお待ち下さい。
ああ〜なるほど。
この間話をしてたんですよ。
奉公人があったらお願いをしよう。
あなたが奉公してくれる?そいつはありがたいな。
じゃあ何をやってもらおうかな」。
「もうね何でもやりますんでひとつよろしくお願いします」。
「そう。
じゃあそうねじゃあ外回りか何かやってもらおうかな」。
「外回り!結構ですね外回り。
外回りっていうのは何でしょ札の束ふんだんに懐に入れて女の子2〜3人も連れて全国各地の温泉を回って湯加減の研究…」。
「ばかな事言っちゃいけないよ。
そんな外回りがあるかい。
車引っ張って普請場へ行って木くずやかんなくずをもらってくるんだよ」。
「ああ〜あれですか。
あれはよしましょうよ。
あれは色男はやらない」。
「そんな事言ったらやるもんがないよ」。
「どうです?そこやりましょう。
番台」。
(笑い)「見えるでしょ?」。
「何が?」。
「『何が?』なんてまたしらばっくれちゃって。
一人で見ようと思ってもう!すけべえ」。
「しょうがねえなこの野郎。
いや番台っていったってただここへ座ってりゃいいってもんじゃねえんだけどね。
そうかいや実はね今昼飯を食べに行こうと思って代わりが来ないんで困ってたんだがじゃあその間だけでもいいからここへ上がっててもらおうか」。
「えっお昼?あっそうですか。
じゃあ私が上がって…」。
「むやみに上がってきちゃ駄目だよ!ここは私が下りなきゃ上がれないんだから」。
「ああそう。
じゃあ早く下りて。
早く下りてほら!飛び降りて」。
「何だよ。
冗談じゃないよ本当に。
じゃあひとつお願いしますよ」。
「はい行ってらっしゃい。
どうぞごゆっくり。
もう帰ってくんな」。
(笑い)「ありがたいね。
お湯屋へ奉公に来てはなから番台へ座れるとは思わなかったね。
俺は一遍でいいからここに座って見たいと思ったものがある。
問題の女湯はと…。
あれ?何だよおい。
誰も入ってないよ。
床がからっぱしぎになってる。
何だよ面白くも何ともないね。
俺はねおつな年増か何かが流しのとこでステ〜ンッてんで転ぶところを見たいんだけどね。
あらまたそれに引き比べて男湯は入ってるねおい。
ばかじゃねえかあいつら本当に!」。
(笑い)「昼間っから男が磨いてどうする…。
あ〜あ〜汚えケツ出して洗ってやがんねおい。
毛むくじゃらだよおい。
ああ毛を生やしてどうすんだ?コオロギか何か飼おうっていうのかい?あれねお湯の中で出してるからいいんだよ。
山の中で出してごらんよ。
鉄砲で撃たれちゃうよ本当に。
汚えケツだね本当に。
あれが不潔って言うのかね。
嫌だね全くね。
今日は女湯専門にしちゃおう。
さあ夕方になってくるってえと女湯の方も混んできますよ。
大勢来る女の子の中で私を見初める子が出てくる。
どういうのがいいかね?娘はいけないね。
別れる時に死ぬの生きるの事が面倒になるからね。
といって乳母さんや子守っこはこっちの方で断りたいしね。
主ある女は罪になっていけない。
そうなるってえとないね。
おっそうだ。
芸者衆なんてのはいいね。
一流のねえさんになるってえとお湯屋来るんだって一人じゃ来ないよ。
女中か何かを連れてあずま下駄の甲の薄いのを履いてやって来ますよ」。
「カラコンカラコンカラコン…」。
「ガラガラガラガラ」。
「『へいいらっしゃいまし。
新参の番頭でどうぞひとつよろしくお願いを致します』なんて言うと女は私の方をチラッと横目で見てス〜ッと隅へ行って女中と俺のうわさをしてるよ。
『清やご覧。
今度来た番頭さんだよ。
ちょいとおつな番頭さんじゃないかい』なんてな事を言うかな。
『でもあの人も何だかけんがあって嫌だわね』なんて言われるといけないから帰りにお世辞にせっけんの一つも出して『どうぞねえさんお使いを』。
『まあありがとう』」。
(笑い)「『是非お遊びに』とくる。
これからうちへ遊びに行ってお家の横領。
せっけん一つでお家の横領っていうのは大げさだね。
何かいいきっかけがないかな。
そう休みの日にそのうちの前を知らずに通るなんてのはいいね。
女中さんが格子か何か拭いてる。
『あらそこを行くのはお湯屋のおにいさんじゃありませんか』。
『おおお宅はこちらでしたか』。
『おねえさんお湯屋のおにいさんが』。
奥へ声をかけるとたまらないね。
ふだんから思い焦がれている男だから奥から泳ぐようにして出てくるよ。
『まあ〜』」。
(笑い)「『お湯屋のおにいさんまあよくいらっしゃいました。
今日はお休みなんですか?』。
『へい。
釜が壊れて早じまい』。
あんまりいいせりふじゃねえな。
『釜が壊れて早じまい』ってのは色男のせりふじゃないね。
そう墓参なんてのはいいね。
『まあお若いのに感心な。
お上がりあそばせ』。
『いえわざわざ来た訳じゃありませんのでまた改めて』。
『まあいいじゃありませんの』。
女は行かれちゃ困ると思うから私の手を握って離さない。
『お上がりあそばせ』。
『いずれまた』。
『お上がり』。
『いやまた後日』。
『お上がり。
お上がり』」。
「えっいや番台の野郎だよ。
変な野郎が上がったよ。
てめえの手を一生懸命引っ張って『お上がりお上がり』って。
こっちはつられて湯から上がっちゃったよ。
変なやつが上がったね」。
「無理に上げられちゃうね。
『清やお運び』。
酒肴の膳が運ばれてくる。
『あなたお一つ』。
『ありがとうございます』ってこれ飲んじゃうとまずいかな。
あらまあこの男は飲んべえだよ。
こういう飲んべえは苦労するよドンッとくるからね。
といって向こうが飲めてこっちが飲めないとまあこの人は男のくせに酒も飲めないなんてのはやぼなやつだよドンッ。
難しいねこりゃ」。
(笑い)「『ねえさんお酒のとこでございましたならば下さいますれば頂きます。
下さいませんければ頂きません』。
何か締まらねえな。
一口飲んで下へ置いていろいろ話す。
あんまり話をしてると女の方で言うよ。
『あらおにいさん。
さっきからおしゃべりばっかりして。
お杯が空かないじゃないの』なんて言われるといけないからね一口飲んで杯洗の水でゆすいでご返杯。
向こうも飲んでゆすいでご返杯ご返杯といっているうちにうふふ女の方ですごい事を言う。
『あらおにいさん今のお杯ゆすがなかったんですよ。
あなたご存じなんでしょ』ってじっとにらむね。
そのまた目の色っぽいこと!アハハハハ!ああ〜弱った!」。
(笑い)「こいつ弱ってるよおい。
げんちゃんそこでケツなんか洗ってる場合じゃないよ。
面白えから見てようじゃねえか」。
「あんまり長居はいけないよ。
この人もいいけどお尻が重いよなんて言われちゃうといけないから程よいとこでおいとましよう。
『ねえさん今日はどうも』。
『まあそうですか。
じゃあまた是非お遊び』ってこれで帰っちゃ面白くないね。
そうだ雨が降ってくるなんてのはいいね。
『遣らずの雨』。
『あらあなた雨ですわ。
もう少し遊んでいらっしゃいな。
そのうちにやむでしょうから』。
これがやまないというやつ。
どんどん降るやつでね。
そうだ雷に鳴ってもらいたいね。
威勢のいいやつをね。
遠くの方でもってコロコロコロコロコロコロなんて鳴っていたやつが近づいてくるとゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…」。
「何か始まっちゃったよあいつ。
大丈夫かよおい」。
「『清や雷だよ。
怖いね。
蚊帳つっておくれ』。
女は怖いから蚊帳つって中へ入って私を呼んでる。
『あなたお入りあそばせ。
お入りあそばせ』。
どっかへ落っこってもらおう。
あんまりそばはいけませんよ。
こっちも一緒に目を回しちゃうからね。
程のいい所へ落ちてもらおう。
さあ落ちるとなると音も違ってくるよ。
カリッカリカリカリカリカリピシリと来るってえと女は持ち前のしゃくがあるから歯を食いしばるってえと『ん〜』ってんで気を失っちゃうね。
『女中さん大変ですよ』なんつったって向こうは気を利かせて出てこねえんでしょうがねえから蚊帳をまくって中に入って女を抱き起こして杯洗の水を飲ませようと思うんだけど歯を食いしばってるから飲みやしねえ。
しょうがないから杯洗の水を口へ含んでおいて口から口へとこの口移しという事なる!ああ〜!」。
「踊ってるよあいつ。
どうした?げんちゃん。
お前顔から血が出てる」。
「あの野郎が変な格好するから軽石で面こすっちゃった」。
「冗談じゃねえよ」。
おなじみの「湯屋番」でございます。
(拍手)今日のゲストはこの方ぐらいパワフルで元気な方はないという方をお迎え致しました。
おお〜ここか!おお〜市馬!新会長!めでてえじゃねえか。
早くやれよ!ちょっと待って下さいよ!まだ呼んでないんですから。
あっちゃんと言うの?ちゃんと呼びますからそしたらス〜ッとここへ出てきて…。
今呼ばれたと思ったんだよ。
まだ呼んでないんですよ。
こんなに急いで…いいの着てるじゃないですか。
何ですか?これ。
いいだろ。
いろいろ後で説明してやるよ。
いやいや…。
もう呼んだか?まだか!まだですって。
呼んだらお願いしますよ。
もう〜呼ばねえうちに出てくるゲストは初めてでございますがでは改めてご紹介致しましょう。
お年寄りのアイドルでございます。
おなじみ毒蝮三太夫さんにお越し頂きました。
社長お願いします。
いやいやいやお久しぶり。
いやいやいやどうもありがとう。
お呼び立て頂いてありがとうございます。
今度新会長になる。
おめでとうございます。
まあねどうなるか分かりませんけど。
どうぞどうぞ。
いやついね私も社長っていっちゃうんですけどもまあこれにはいろんな訳があって…まむしプロという社長のプロダクションに私の師匠の小さんをはじめ談志師匠とかそれから今の六代目の小さんとか大勢の人が所属していますよね。
だから柳家かゑるで鈴々舎馬風になってね途中からなってくれて入ってくれたけどね。
ですから私たちにとったら芸能プロの社長なんです。
だから社長っていってたからねついつい今でも…。
それで社長っていうから俺時々じゃあご祝儀はっていう事に…。
ほら昔の…。
三語楼さんにはね随分金貸したよ。
今の六代目の小さんさんだね。
言えないよそんな事。
ほらこれがねそのころの…。
プロフィールだね。
この時にこの順番を考えるのが大変でまあ談志がいる…。
若いですね。
栄橋。
栄橋師匠懐かしいね。
パーキンソンで苦しんで亡くなったんだけどね。
それから新山ノリロー・トリローとかそれからほら。
今の小さんです。
憎ったらしいだろ。
どうしてそういう事を言うんですか。
だけどねいい思いはしてないよ。
いきなり愚痴ですね。
いやいや本当にねだってみんなギャラがあれなの山本リンダなの。
「どうにもとまらない」。
違う違う…。
ギャラがね「ウララウララ」。
あっそっち。
裏なんだよみんな。
取っ払いの裏でもらってきて事務所に一銭も落ちないんだよ。
そんな事であってねだけどそれで今もって東京ボーイズや何か俺に会うと社長って。
市馬ちゃんも社長っていう。
今日はすいません蝮さんで通させてもらいますけど。
この蝮さんといえばどうしたってお年寄りのアイドルですからず〜っとラジオの番組でやってますけど「ミュージックプレゼント」。
昭和44年から始まったの。
44年ですか。
だから1969年。
え〜そうすると45年!はあ〜すごいですね。
こんなに蝮さんほどお年寄りに会ってきた方はそうはいないと思うね。
いや〜それはよく言われるね。
45年前いくつだったんですか?30代でしょ?32〜33。
あったんですねそういう時が。
うん…。
(うがい)立派なジジイじゃないですか今はもう。
いやいや…あのねその時に要するに33ぐらいでしょ。
まだ青年だよね。
だから7080の人は大おじいさん大おばあさんに見えるよね。
最初っからババアジジイとは言ってないよ。
そりゃそうですよね。
俺下町の生まれで育ちで脳天熊のタヌキババアとゴリラみたいな顔してるおやじの子だけども言ってないよね。
御父様御母様で育ったもんだから。
それは無理だ。
乳母がいて…無理だけど。
だからおふくろが死んでもっと元気なババアに会ったんでこのババア元気だななんて言ったのがたまたまそのババアくたばり損ないのババアめって言ったのが評判がよかったっていうか喜んでくれた人がいたのよ。
今やもうねみんなそれ言われたくて集まってくる訳で。
そういう時代になってくれたけどでも俺は…あなたも思ってるかな。
俺口が悪い訳じゃないよ。
いや口が悪いと思ってますけどでもそれはやっぱり腹の中から出る口汚さじゃなくてやっぱり蝮さんの場合は年寄りに対する愛が感じられるんですよ。
だから悪く言われても言われた方は気持ちがいいし言われたいと思う訳ですよ。
だけどあなたね俺の目の前だからそう言ってくれるけど愛情とか何かそんなもんじゃないよ。
本当に汚えババアなんだから。
だから本当に言ってんだよ俺。
じゃあ何でね…。
だけど本当に言ったんだけど向こうは言い方がすごくストレートで分かりやすくてそれからスカッとしてるというんでそれが皆さんが認めてくれちゃったようなもんなんだろうね。
どうですか?そのころのそういう若い蝮さんが見てたおじいさんおばあさんと今のおじいさんおばあさん何か違います?あのね…おじいさんねジジイがしゃべるようになってくれた。
だいぶ。
30年40年前のジジイはほとんどしゃべらない。
ババアはしゃべるよ元気で。
だけどジジイは後ろの方にいてジ〜ッとしてる人が多かった。
今はババアももちろんしゃべるけどジジイもよくしゃべるようになった。
それはうれしいね。
じいさんが元気じゃないと世の中暗いよ。
そうでしょ。
やっぱりすてきなおじいさん見るとうれしくない?そうですよね。
ちょっとこうおしゃれにして夫婦で…そういうおじいさんおばあさんが歩いている姿なんぞはね買い物している姿なんぞはいいですよね。
それを若い子どもとか孫が見てたらうれしいって。
仲のいいおじいちゃんおばあちゃんを。
ちょっとおしゃれをして。
で手つないで歩くぐらいいいじゃないですか。
足つなぐとひっくり返っちゃうからね。
だから手をつないで…。
どうしてそういう余計な事を…。
それはそうですよね。
でまあね不幸にしてパートナーに先立たれたりして独りになったりなんかした時にかまい合いってよく言うでしょ。
これは近所の…落語でよく言う向こう三軒両隣のつきあいの…。
俺が今思うのは市馬ちゃんは分かんないかな。
隣組の歌知ってる?・「とんとんとんからりと隣組」・「格子を開ければ顔なじみ」・「回しておくれよ回覧板」・「知らせられたり知らせたり」
(2人)・「とんとんとんからりと隣組」・「あれこれ面倒味噌醤油」・「ご飯の炊き方垣根越し」
(2人)・「教えられたり教えたり」これだよ!これが今の日本に一番足りないと思わない?なくなっちゃったんですよね。
こんな国じゃなかったんですけどね。
これがかまい合いだよ。
昔で言えばおせっかいだけどかまい合い。
だからかまい合うという事が今非常に足りなくなったからおじいちゃんおばあちゃんも孤独になり話し相手がいない。
だって携帯電話も使えないよ。
スマートフォンもないパネルもない。
だったら構ってあげるっていう事が一番。
それで元気で年を取れば医療費を落とせる訳じゃないですか。
話が随分大きいところへ進んでますけど実際そうですよね。
医療費の…本当に下の方からそうやってお年寄りが元気でいて医者にかからないで済むようになればね。
すてきな笑顔とちょっとおしゃれして今日も俺こんなの着てるけどね若ぶってる訳じゃないけど少しでも嫌がられないような年寄りになろうと思ってやってる訳なの。
実践してるとこがまたいいですね。
そうかい?2014/06/01(日) 05:15〜05:45
NHK総合1・神戸
柳亭市馬の演芸図鑑「すず風にゃん子・金魚、春風亭一朝、毒蝮三太夫」[字]

落語家・柳亭市馬のナビゲートで、とっておきの演芸と対談をお届けします。演芸は、すず風にゃん子・金魚の漫才、春風亭一朝の落語「湯屋番」。対談のゲストは毒蝮三太夫。

詳細情報
番組内容
落語家・柳亭市馬のナビゲートで、とっておきの演芸と対談をお届けします。演芸は、すず風にゃん子・金魚の漫才、春風亭一朝の落語「湯屋番」。対談のゲストは毒蝮三太夫。
出演者
【出演】すず風にゃん子・金魚,春風亭一朝,毒蝮三太夫,【ナビゲーター】柳亭市馬

ジャンル :
バラエティ – お笑い・コメディ
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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