(鳥の鳴き声)未曽有の災害に襲われた人々と町の証言記録。
第29回は宮城県石巻市です。
市町村別で一番多い死者・行方不明者4,000人を出しました。
津波は海沿いに広がる市街地から内陸部に深く侵入し町を破壊しました。
そして石巻市の中で最大の犠牲者400人余りを出したのが日和山の南に広がる…津波は町にあったほとんど全ての住宅を流し尽くします。
山裾に押しつけられた住宅はすぐに火を噴き巨大な津波火災が発生します。
津波で流されがれきから出火した炎の中に取り残された男性がいます。
男性を炎の中から救出するために崖を駆け下りた消防士たち。
消防士たちは日和山の住宅地への延焼を防ぐために過酷な闘いを強いられます。
9,000人が逃げ込んでいた日和山は水の中に孤立していたのです。
応援はなく住民を守る事は困難だと思われました。
津波火災の猛火は一晩中衰えません。
炎の中から助けを求める声を聞いた人がいます。
水と火に囲まれ孤立した山で死の恐怖にさらされた人々の証言記録です。
石巻市旧北上川の河口西側に位置する標高61mの日和山。
展望台からは太平洋を一望できます。
江戸時代日和山は仙台藩の千石船が米を江戸に運ぶための天候「日和」を見る観測地点でした。
江戸で消費される米の半分が日和山の麓から運ばれたといいます。
山は石巻の政治の中心地。
かつては市役所が置かれ今も公民館裁判所測候所そして5つの学校を持っています。
日和山の南に広がる平地につくられた町が…2,000軒の住宅があり5,000人が暮らしていました。
地震から30分後の日和山から見た日和大橋の映像です。
橋脚には黒い水の跡が見えています。
既に川の水は大きく引いています。
その時渋滞する橋を渡って日和山の麓にある自宅を目指していた男性がいます。
日和山に登る緩やかな坂から避難するよう両親を送り出したあと古藤野さんは隣に住む老人の家に向かいました。
老人は数年前に手術をして体が弱っていました。
そのころ古藤野さんの家の近くの高台から撮られた映像があります。
3時50分町の海に面した部分から土煙が上がり始めその奥の建物が見えなくなっていきました。
およそ7mの津波が到達したのです。
土煙と建物の動きで津波の接近が分かります。
道路ではまだ車が走っています。
山にぶつかった津波は東西に分かれ古藤野さんは西に100mほど流されてしまいます。
津波は町にあった木造の建物をほぼ全て流し去りました。
山際に押しつけられた家々はがれきとなりプロパンガスや車のガソリンに火がついてすぐに燃え上がります。
津波のあと火災の恐怖が人々の最大の脅威となります。
この津波火災で全焼した小学校があります。
日和山の山裾にある門脇小学校です。
燃える家が津波に流されてぶつかり延焼しました。
がれきで出入口は塞がれ校舎には避難した住民が閉じ込められました。
これは津波の直後小学校の屋上から撮影された映像です。
町は見渡す限り水に沈み水の中には火を噴く家々が見えます。
燃えながら流れてきた家は校舎にぶつかり炎上しています。
その時屋上に逃れた人々は校庭での爆発音そして燃え盛る炎におびえていました。
小学校の職員駒井清利さんは避難してくる住民のために学校に残っていました。
駒井さんは彼らを校舎から脱出させようと奔走します。
その時避難していたのは40人ほどの大人たち。
子供たちの姿はありません。
子供たちは地震のあとすぐに教師に先導されて日和山の上に避難していました。
津波が心配されるような地震があった時は必ず日和山に避難するように年に何度も避難訓練が行われていたのです。
避難路を探して駒井さんは校内を駆け回ります。
2階の窓とつながる校舎の裏手の屋根に駒井さんは注目しました。
この屋根が墓場の土手の近くまで延びている事に気付いたのです。
狭いと言っても幅は1m50cmほどありました。
避難者の中には飛び越えられない人もいました。
駒井さんは隙間に教壇を掛ける事を思いつきます。
しかし一度は皆パニック状態になりました。
これは今の門脇小学校の中です。
駒井さんたち教職員の機転によって40人の避難者は学校を全焼させた炎の中に取り残されずにすみました。
そのころ津波に流された古藤野さんは日和山の山際で波にもまれていました。
津波に流されずに残っていた信用金庫。
その向かいにあった2階建ての家に古藤野さんはたどりつきます。
ほんと!?すごい…。
午後5時ごろ港で撮影された津波です。
津波は時間をおいて何度も襲来していました。
古藤野さんがいた家の近くの山には多くの住民が避難していました。
その時山に押しつけられたがれきは火を噴き火は燃え広がろうとしていました。
古藤野さんは水に飛び込みがれきと共に東に流されていきます。
崖の上から撮影された当時の様子です。
がれきの中に立つ人影。
古藤野さんです。
周りを火が囲んでいます。
写真の撮影者は古藤野さんに気付きます。
その15分後。
古藤野さんがいた所の火は広がりその姿は見えません。
崖のへりまで降りてくれた人もがれきの中に足を踏み入れる事ができません。
しかし彼は消防隊に救助を要請してくれました。
要請に応えて消防士がはしごを持って斜面を駆け下ります。
火の勢いは増し一刻を争う状況でした。
駆けつけたのは日和山にある中央出張所の消防士…崖のへりで古藤野さんの位置を見ている佐藤さんたちです。
古藤野さんが一度手を振ったのはこの辺り。
佐藤さんは必死で救出ルートを探ります。
佐藤さんが所属していた日和山の…その時消防車は津波で流出。
そこに積んである空気呼吸器は失われていました。
火に入る時は空気呼吸器と援護放水が不可欠。
しかしあの時は2つともありませんでした。
それでも佐藤さんは古藤野さんを救うためにはしごを伝ってがれきに降ります。
古藤野さんのもとに向かう途中佐藤さんは異常に気付きます。
佐藤さんは一旦引き返しはしごを運んでしっかりしたがれきに見当をつけてはしごを渡します。
それは危険な救出行動でした。
屋根の上にはしごを掛けその上から佐藤さんは声をかけます。
すると炎の中から古藤野さんが体を起こしました。
火を渡るようにして古藤野さんははしごを上ります。
古藤野さんを保護した時彼が発した言葉を佐藤さんは覚えています。
こうして古藤野さんは無事に救出され病院に運ばれました。
佐藤さんたち3人の消防士はこの現場の事を忘れる事ができないと言います。
古藤野さんを救出したあと佐藤さんたちはすぐに消火態勢に移ります。
防火水槽から水を取りホースを延長しその筒口を津波で家屋が押しつけられていた崖に設定します。
そして炎に向けて放水を開始しました。
これは津波直後の同じ場所の映像。
3時間後山際の火はつながり広範囲で燃え始めていました。
日和山には住宅が密集しています。
防火帯となる広い道路はほとんどありません。
住民は6,000人。
当時は地震のあとさまざまな公共施設に避難してきた3,000人が加わっていました。
延焼を防ぐために石巻市の消防力を総動員して消火にあたらなくてはならない状況だったのです。
しかし佐藤さんたちに応援は来ませんでした。
内陸奥深くまで侵入した津波は日和山を取り囲んでいました。
日和山の中に置かれた中央出張所と日和山の麓にある南分署から駆けつけた消防車3台消防署員29人消防団員17人。
それが消防力の全てでした。
佐藤さんたちは1時間放水を続けますが火の勢いは衰えません。
佐藤さんたちは防火水槽を諦め女子高のプールから水を引き直します。
限られた水源で猛火に挑んだ消防士たち。
その手記が残されています。
消防隊の奮闘を間近で見続けた人がいます。
鈴木さんの家は日和山の西の端の崖に立っています。
新築したばかりでした。
しかし更なる危機が日和山に迫ります。
日和山の一番高い部分にある測候所の風向計です。
そこで測られたその日の風向きの記録が残っています。
午後9時まで北から吹いていた風は10時から西風に変わります。
風力も強まります。
日和山に向かう炎を押さえていた風が炎をあおる事になります。
日和山の西の端に津波で押しつけられていたがれき。
午後5時ごろ火が出始めた時の写真です。
その炎は周りのがれきを燃やしていただけでした。
しかし10時を過ぎると西から吹きつけてくる風にあおられてがれきの炎は猛火となって迫ってきます。
日和山は展望台のある東側が一番高く西に行くに従って標高が低くなっていきます。
そして西の端に南浜・門脇地区から上れる唯一の坂があり住宅が密集していました。
そこに火が燃え移れば火は住宅沿いに日和山全体に広がっていく事になります。
震災時水に囲まれていた日和山。
火が延焼すれば避難者を含めて9,000人の逃げ場がなくなります。
日和山の西の崖に立つ鈴木さんの家は延焼防止の最前線だったのです。
真夜中近く火は長さ750mの帯に広がろうとしていました。
佐藤さんも最重要拠点である鈴木さんの庭に移動してきます。
消防は総力を西に結集します。
午前0時半日和山南西部一帯の住民に避難指示が出ます。
西風にあおられた猛火が住宅に迫っていたのです。
消防隊は6つの筒口を駆使して坂の上から延焼を防ごうとします。
火は坂から鈴木さんの家の下にあったがれきに次々と移っていきます。
時間の経過につれて炎が消防隊の背後を回り込み鈴木さんの家に迫っている事が分かります。
空には木の葉ほどの大きさの大量の飛び火が噴き上がっていました。
11時間にわたって9,000人を守るためにギリギリの闘いを続けました。
迫る炎を自宅の庭から見続けた鈴木さん。
その体験は鈴木さんの心に大きな傷となって今も残っています。
声を聞いても鈴木さんはその場を立ち去ろうとはしませんでした。
日和山に延焼の危機をもたらした西風。
データによると午前3時には再び北寄りの風に変わりそれは朝まで続きます。
風にも助けられ消防士たちは絶対的な危機をしのぎきります。
夜が明けた日和山の映像です。
北寄りの風が白煙を南にたなびかせています。
炎はところどころに残っていますが勢いはありません。
坂の下にもはや炎は見えません。
延焼の危機は去り日和山にいた9,000人は救われました。
その時鈴木さんの庭で消火活動を行っていた佐藤さんは白煙に煙る町を見つめていました。
火は5万6,000平方mを焼き尽くし南浜・門脇地区は戦争の焼け跡のような惨状を呈していました。
後に焼け跡からは55人の火に焼かれた遺体が発見されました。
津波と共に発生し消火態勢が整わない中で拡大していった津波火災。
日和山はその悲惨さを人々の心に深く刻み込んでいます。
私は今福島県いわき市に来ています。
いわき明星大学のキャンパスです。
こちらでは今「公開復興サポート明日へinいわき」が開かれています。
これはNHKでおなじみの番組をこちらで収録する事で皆さんにも参加してもらって元気や笑顔をお届けしようという試みなんですね。
これまで福島仙台大船渡石巻で開いてきました。
5回目の今回は13の番組が集まっているんです。
(グッチ裕三)みそに今日は生クリーム入れるんですよ。
(一同)え〜!?ありがとうございます。
「きょうの料理」ではグッチ裕三さんが福島の郷土料理「イカにんじん」や「こづゆ」をアレンジした料理などを披露。
(グッチ裕三)「おおづゆ」の完成!
(参加者)おおづゆになるとこんな洋風で全く別のお料理だなと思いました。
革命的?あっ革命的です。
Eテレの「ハートネットTV」では「震災を詠む」と題した歌会を開きました。
三十一文字に込められた思いを震災から3年の月日の変化とともに見つめます。
人間は自然とどうしてもいろんな事を忘れていってしまいますから自分自身の戒めの一つとしても忘れないようにしたいなあという思いもありました。
・「アイナふくしま笑顔咲かせよう」・「もういちど」
(秋吉久美子)東北の方々はどんなつらい時にもギャーッて叫ばないでほほ笑みで「ちょっとくたびれてしまったなあ」みたいな言い方をするんですけども…東北は実は「おしん」「我慢」ではなくて「ほほ笑み」の東北だと思うんです。
その中に「品格」とか「我慢」とか「強さ」が秘められていると思います。
「ラジオ深夜便」ではリスナーとの集いを開催。
ゲストはいわきに住むケーシー高峰さんです。
客席は笑顔と笑いに包まれていました。
僕お魚好きだし海藻も大好きなの。
これ根昆布のおかげです。
(笑い)奥さん見てごらん真っ黒でしょ?おととい染めたの。
(笑い)番組の他にもNHKの取り組みを紹介するコーナーも設けました。
ステージでは「ワンワンとあそぼうショー」。
子供たちに笑顔があふれました。
「テレビ・ラジオ体操」では皆さんに心と体をリフレッシュしてもらいました。
1234…。
地元の食材を使った屋台も出て多くの方にお越し頂きました。
子供も喜んでたんですごい楽しかったです。
元気もらえました。
(取材者)そうですか。
この「公開復興サポート明日へinいわき」で収録した番組は全国に向けて放送されます。
詳しくはホームページを御覧下さい。
では被災した地域で暮らす人たちの今の思いです。
震災から3年が過ぎ高台の整備も進んでいます。
私は仮設に暮らしていますが2年3年町づくりに時間がかかります。
それでも私はここに戻ってきます。
この歴史ある土地が大好きだからです。
歌津で水産加工をしています。
津波で工場は流され一度は事業を断念しそうになりましたがお客様からの「待ってるからね」の言葉に気持ちが奮い立ち工場を再建する事ができました。
仮設の子供たちは元気に遊んでいます。
ただ遊ぶ場所が駐車場とその周りくらいしかないのと戸倉小学校が津波で流されて志津川小学校で間借りしているので…みんな元気で〜す!
(子供たち)わ〜!2014/06/01(日) 10:20〜11:08
NHK総合1・神戸
明日へ−支えあおう−証言記録東日本大震災29 石巻〜津波と火災に囲まれた日和山[字]
宮城県石巻市の南浜・門脇地区は津波で壊滅的被害を受ける。さらに住民が逃れた日和山は津波と火災に囲まれて孤立する。消防士たちは応援のない中、救命と消火に奔走した。
詳細情報
番組内容
東日本大震災で最大の犠牲者を出した宮城県石巻市。中でも海沿いに広がる南浜・門脇地区は、津波でほとんどの家が流された。さらに、町の住民が逃げ込んだ日和山は津波と火災に囲まれて孤立した。日和山にあった中央出張所の消防士たちは応援がないまま、限られた機材と人員で9千人の住民を守るために奮闘した。燃え上がるガレキからの住民救助。枯渇する防火用水の手当て。津波火災に追い詰められた、瀬戸際の15時間を描く。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
情報/ワイドショー – その他
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