巨大都市東京。
その目の前に広がる東京湾が今日の舞台です。
おっと!高級食材・クルマエビを発見。
こちらはおなじみのカレイです。
更になんとマンボウ!ジンベエザメまで現れました。
実は東京湾は魚だけでもおよそ700種類が見られる生きものの宝庫。
その知られざる自然を2回にわたってご紹介します。
1回目の今日は湾の北部。
大都会に接する「内湾」と呼ばれる海です。
生きものたちが織り成す命のドラマ。
その頂点に君臨する最強の「王者」に密着。
そして海の環境を支える「縁の下の力持ち」も登場します。
大都会の海でたくましく生きる生きものたち。
驚きの素顔です。
(テーマ音楽)今回の取材スタートはこちらから。
いらっしゃいませ!江戸前ずしのおすし屋さんです。
こちらが江戸前のアナゴでございます。
ふっくら軟らかく煮上がります。
よく聞く「江戸前ずし」という言葉。
一説によれば江戸の前の海つまり東京湾でとれたネタを使ったことから生まれました。
このお店では今も江戸前のネタにこだわっています。
こちらは…なんとこれ全部東京湾でとれたものなんだそうです。
江戸時代はともかく現在の東京湾でこんなに豊富な海の幸がとれるなんてちょっと意外ですね。
東京神奈川千葉に囲まれた東京湾。
その範囲は房総半島と三浦半島を結んだ線の内側です。
そしてこの線より北が「内湾」。
南が「外湾」と呼ばれています。
今日の舞台は内湾です。
埋め立てなどの開発にさらされてきたこの海。
一体どんな生きものがどんな暮らしをしているんでしょうか。
魚の水揚げ量が多い横浜に向かいました。
工場などが立ち並ぶ海岸線は自然とは程遠い光景ですが何はともあれ漁師さんが魚をとっているというポイントで調査開始です。
水深は10メートル。
砂地が広がっています。
あ何か泳いでいます。
シャコです。
エビやカニの仲間でこれも江戸前ずしの代表的なネタ。
生きがいいですね!おや?砂の中からじろりと鋭い視線。
一体何者?ああこの平べったい体。
皆さんおなじみのカレイです。
ここにも魚を発見。
どこにいるか分かりますか?これが目。
マゴチというさっきおすし屋さんで見た魚です。
いや〜見事に砂に紛れていますね。
この砂や泥の海底こそ内湾の特徴。
30本以上の川が注ぐため土砂がたまり浅い海になったんです。
だから内湾には砂を巧みに使う生きものたちがいっぱいです。
そこで…解説はこの方!ぎょぎょぎょ!さかなクンです。
東京湾のお魚のことは私にお任せ下さい!さあまず最初に登場したのは?シロギスです。
まだ若いシロギスちゃんですね。
おっ!消えましたよ。
はい。
細い体を震わせながら砂に突き刺さりましたね。
姿が見えなくなりました。
はい。
さあこちらは随分ぷっくりしてますね。
はい。
クサフグです。
ぎょえ〜!体を激しく振って強引にもぐりました。
フグの仲間は尾びれの瞬発力がすぎょいんです。
すぎょいんですか。
はい。
あら目だけ砂から出してますよ。
かわいいですね。
目をキョロキョロして辺りを見回しています。
さあ今度は随分変わった名前の魚ですね。
そうなんです。
形がウシのベロみたいなのでウシノシタって呼ばれるんですよ。
おっと!これ何が起きたんでしょうか?はい。
ひれで砂を巻き上げてその砂に埋もれたんです。
おみぎょとですね。
見事に姿を消しています。
器用なものですね。
うん!さあ今度はクルマエビの登場です。
はい。
おなかの脚をすぎょく速く動かして砂を掘っていますよ。
うん掘ってます掘ってます。
でもその割にはなかなか隠れませんね。
あれ?実力はもっとすぎょいはずなんですがおかしいですね。
どうかしたんでしょうか?あれ?脚にアサリがついていますよ。
アサリ?はい。
挟まれてしまったようですね。
あらららこれはクルマエビも想定外か。
でも各選手お見事でしたね。
はい。
内湾では実にいろんな生きものが砂をよりどころにして生きているんでぎょざいます。
この内湾の海底に君臨する「王者」とも言うべき魚がいます。
ずらりと並んだ不思議な筒がその魚を捕らえるための道具です。
イワシやイカを筒の中に入れにおいでおびき寄せる仕組み。
筒には円すい形の「返し」を付けるため入った魚は出られなくなるんです。
漁師さんと一緒に向かったポイントは羽田空港の沖合。
600本の筒を一つ一つ海底に沈めていきます。
一体どんな魚が現れるのか?筒に小型のカメラを付けさせてもらいました。
沈めてから30分後。
現れたのはアナゴです。
これが王者の正体。
一見かわいい顔をしていますが実はかなりどう猛な肉食魚なんです。
餌のにおいがするのか筒の中を気にしています。
おっと首を突っ込んだ!…と思ったら引っ込めた。
警戒しているようです。
そして…入りました。
筒の中でイワシにかじりついています。
またアナゴが現れました。
こちらはすんなり入った!効果抜群の仕掛けですね餌のにおいに誘われるのはアナゴだけではありません。
ヒトデです。
筒の入り口に近づいてきました。
その時巨大なアナゴが現れました。
「おい邪魔だ」強引にヒトデをどかします。
続いて現れたのは更に巨大なアナゴ!太さは直径10センチの筒と同じぐらい。
まさに王者の風格です。
無理やり頭を突っ込んでいます。
あ何かくわえた!蓋を破壊して中の餌を盗んだんです。
恐るべきパワーですね。
アナゴが狙うのは死んだ餌だけではありません。
こちらでは石の下に潜んで小魚を待ち伏せしています。
じ〜っと待って…捕らえました!こちらでも…捕獲成功です。
いや〜さすが王者!豪快ですね。
東京湾のアナゴは豊富な食べ物のおかげで脂の乗りがいいと言われています。
いや〜東京湾っていろんな生きものがいるんだ。
びっくりですなぁ。
ねすごいでしょ?ヒゲじい。
はい。
いやでもちょっと待った。
実は私東京湾はとても汚い海というイメージをずっと持っていたんですがそれは誤解だったってことですかね?確かに40〜50年前は東京湾は「死の海」とまで言われていました。
ひどく汚れた廃水が流れ込んで魚が大量に死んでしまうこともあったんです。
あら〜。
でも生きものたちは厳しい環境を何とかこらえて命をつないできたんですよ。
ほうそりゃ大変でしたなぁ。
その後有毒物質やトイレなどから出る有機物をちゃんと処理して流すようになったので水はかなりきれいになりました。
お〜それはよかった!かつて姿を消した生きものの中には復活するものも出てきたんですよ。
こちらです。
うん?な何ですか?これ。
これは高級食材・タイラギです。
きれいな水を好む貝なんですが最近横浜の海に戻ってきました。
お〜そりゃすばらしい!羽田空港の目の前の海でも私たちになじみ深い生きものが復活しました。
ほうほうほうほう。
漁師さんが砂を掘るとたくさんの貝が入りました。
小さな貝に交じってとれたのはハマグリです。
おおこれはご立派!はい。
実はハマグリは全国的に数が減って絶滅危惧種に指定されているんですがここでは数年前から再びとれるようになりました。
う〜ん東京湾の生きものも元の暮らしを取り戻したってわけですな。
そう言いたいところなんですがまだ道半ばなんです。
うん?内湾の漁獲量は汚染の激しかった時代に急激に減ったまま。
これは生きものの量が回復していないからだと考えられています。
水がきれいになったのに何で?大きな理由となるのがこちらなんです。
魚が水面を泳いでいますよね。
ああはいはい。
並んでね。
水中の酸素が少なくなる貧酸素化という現象が起きているため水面に上がってきているんです。
え?じゃ苦しいってこと?そうなんです。
東京湾では主に夏場頻繁に貧酸素化が発生します。
窒息死してしまう生きものも多いんです。
あら〜どうしてこんなことが起きちゃうんですかね?原因は今も下水処理で十分に取り除くことが難しい窒素やリンなどの栄養分です。
栄養が悪いんですか?窒素やリンは本来海を豊かにする大切な物質です。
でも多すぎるとプランクトンを異常発生させます。
その大量の死骸を微生物が分解する時水中の酸素を使い尽くしてしまうんです。
使い尽くす?これは貧酸素化現象のシミュレーション。
濃い青の所は海底付近に酸素がありません。
貧酸素化は水がよどみやすい湾の奥のほうで特に発生しやすいんです。
う〜んまだまだ海をきれいにする必要があるってことですな。
東京湾が湾ダフルな海に戻るよう頑張るベイ!第2章は貧酸素化現象に立ち向かう頼もしい生きものが登場。
その正体とは?たくさんの筒を使うユニークなアナゴ漁。
東京湾では昔からさまざまな漁業が営まれてきました。
こちらは50年ほど前の映像。
海にたくさんの棒が立っています。
かつて東京湾中で見られたというこの棒。
何をとるための物か分かりますか?答えはノリ。
棒はノリを生えさせる網の支柱だったんです。
東京湾は江戸時代に日本で最初にノリの養殖が始まった場所だと言われています。
生産量はピークより減りましたが今でも湾のあちこちで養殖が行われています。
こちらも50年ほど前の千葉県木更津の映像。
人々が魚を手づかみでとっています。
観光客向けに行われている…すだて漁は今でも大人気。
海にキノコ形の囲いがあります。
これが漁の仕掛け。
満潮の時に囲いの中に迷い込んだ魚が潮が引くと取り残されるんです。
100年の歴史を持つ東京湾のすだて漁。
今も昔も変わらない楽しみです。
続いてはまるで宇宙飛行士のような格好をした漁師さん。
海に潜りました。
こちらは千葉県の富津で明治時代から行われている…船からホースで空気を送っています。
狙うのは砂の中にいる貝。
これが貝の体の一部です。
海水を噴射する道具を使って掘り起こします。
あとれました!不思議な形をした貝ですね。
「白みる」と呼ばれる二枚貝です。
東京湾でこんなにさまざまな漁が行われているなんて知りませんでした。
今東京湾の生きものたちを脅かしている恐ろしい貧酸素化現象。
毎年プランクトンが増える夏場を中心に湾の奥で頻繁に発生します。
そんな湾の奥の海は一体どうなっているのか?工場が立ち並ぶ千葉県浦安の海に潜ってみました。
水はプランクトンなどの浮遊物でかなり濁っています。
魚の姿はほとんど見当たりません。
貝を発見。
北米原産のホンビノスガイです。
貨物船がバランスを取るために積む海水に混じり外国から運ばれてきたと言われています。
ホンビノスガイは酸素が少ない水にも耐えられるため今急激に数を増やしています。
続いて発見したのは小さなカニ。
こちらも北米原産のイッカククモガニです。
カニが何かを運んでいます。
体の大きなオスがメスを抱えてガードしているんです。
メスのおなかにご注目。
ふ化間近の卵が見えます。
ふ化が始まりました。
子供が次々に泳ぎだしていきます。
繁殖力が強く水の汚れにも強いイッカククモガニ。
貧酸素化でライバルが消えた海で今大繁栄しています。
内湾の奥にはたくましい外来種たちが集う奇妙な世界が広がっていました。
猛威を振るう貧酸素化現象。
その解決に向け注目される生きものがいます。
横浜市の野島海岸。
ここにその生きものが暮らしています。
潜ってみると…海底に無数の穴が開いています。
あ砂が噴き出しました。
一体何がいるんでしょうか?砂をどけてみると…。
現れたのはたくさんの貝。
アサリです。
これが注目される生きもの。
実はアサリは貧酸素化の原因になるプランクトンを食べてくれるんです。
そこで実験。
プランクトンなどで濁った水にアサリを入れてみます。
アサリを入れたほうだけがきれいになっていくのが分かりますか?右の管で水ごとプランクトンを吸い込み体内でこし取って食べた後左の管から水を出すんです。
実験開始から2時間でご覧のとおり。
かなり水が澄んでいます。
1匹のアサリが吸い込む水は1日10リットル。
たくさん集まればそれだけ海の水がきれいになるというわけです。
ここ野島海岸はそんなアサリがいっぱい。
初夏潮が引いて干潟が現れるとたくさんの人でにぎわいます。
おっ大漁ですね!
(女性)大きいのね〜。
いや〜皆さん楽しそう。
どんな料理で食べるんでしょうね。
ちょっとちょっと待った!何ですかヒゲじい。
こんな楽しい時に怖〜い顔して。
いやアサリは海をきれいにする大事な生きものなんですよね。
こんなに大勢でとったらいなくなっちゃうんじゃないですか?あのこの程度の人数なら大丈夫なんです。
ここには毎年たくさんの人が来ますがアサリがいなくなったなんてことはないんです。
えそうなの?はい。
ほら砂の中にはアサリの赤ちゃんがたくさん控えているでしょ?あ〜ホントだ!アサリは1匹が一度に数百万もの卵を産みます。
環境さえ良ければ爆発的に増えていくんですよ。
へ〜でもね人がとった分だけ海をきれいにする力が弱くなっちゃうんじゃないですかね?いやいやむしろとったほうがいいんです。
はあ?なんで?アサリが海の中で寿命を終えたら腐って水を汚してしまいます。
人がとってこそ間接的に海からプランクトンを取り除いたことになるんですよ。
えっそうなの?はい。
ちなみに自然界では鳥などがアサリを食べることで海がきれいに保たれるんです。
あなるほど。
アサリだけにあっさり納得。
よ〜しでは私も潮干狩りに行ってみようっと。
アサリが水をきれいにすると海中に光が届くようになり植物がよく育ちます。
これはアマモという海に生える草。
アサリの多い野島海岸の浅瀬には大草原が広がります。
アマモにたくさんの泡が付いています。
これは光合成で作られた酸素。
こうして貧酸素化を和らげることにもつながるんです。
更にアマモの草原は小さな生きものたちの隠れがにもなります。
メバルの稚魚がいました。
ここは魚たちにとって揺りかごのような場所なんです。
夜。
そんな小魚たちを狙うハンターが姿を現します。
スズキです。
草原から無用心に出ていたこの稚魚。
食べられてしまいました。
あっ!こちらでも。
また狙われています。
食べられてしまうのか?おお!アマモに逃げ込んで助かりました。
水を浄化するアサリ。
酸素を作り稚魚の隠れがとなるアマモ。
干潟や浅瀬の環境が豊かな海を作る原動力です。
しかし内湾の干潟や浅瀬は埋め立てによってほとんど失われてしまいました。
このことが漁獲量の低迷や貧酸素化の大きな要因になっていると考えられているんです。
干潟や浅瀬に支えられてきた東京湾の豊かさ。
それを取り戻そうという試みが埋め立て地の真っただ中で行われています。
人気の観光スポットお台場です。
お台場には人工的に造られた小さな干潟があります。
海に段階的に砂を入れ6年ほど前に完成しました。
なんと天然のアサリもとれます。
小さいながら干潟の自然が取り戻されたんです。
日暮れとともにお台場の海は夜景を楽しむ屋形船でにぎわい始めます。
同じころ海の中も何やら騒がしくなってきました。
砂の中に隠れていた小さなエビが群れをなして泳ぎ始めたんです。
それを狙って周辺にいたハゼが続々と押し寄せます。
いつの間にか海底はハゼだらけ。
盛んに小エビを食べています。
こちらはボラやクロダイの稚魚の群れ。
砂をつついて食べ物を探しています。
夜が更けるにつれ稚魚の数はどんどん増えてきました。
水深が浅いこの場所には大型の肉食魚がやって来ることはありません。
人が造った小さな干潟がこんなに多くの稚魚のよりどころになっていたなんて驚きです。
環境さえ整えば立派に回復できる力を生きものたちは秘めているんです。
東京神奈川千葉。
大都市に囲まれた海東京湾。
埋め立てや貧酸素化現象。
今も続く厳しい環境の中で生きものたちはたくましく生き抜いていました。
「死の海」から復活しつつある東京湾。
これからもしっかり見守っていきたいですね。
2014/06/01(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「東京湾(1) 生きものいっぱい!大都会の海」[字]
東京湾の生きものに迫る2回シリーズ。1回目は、大都会に隣接する湾の北部が舞台。アナゴやシャコなど、すしネタでおなじみの生きものが続々登場。湾を救う謎の生物とは?
詳細情報
番組内容
東京湾の生きものたちに迫る2回シリーズ。1回目は、大都会に隣接する湾の北部“内湾”が舞台。汚い海というイメージを持たれがちだが、アナゴやシャコなど、江戸前ずしのネタとしておなじみの生きものたちがたくましく生きている。内湾の特徴は、浅く、砂や泥の海底。クルマエビやカレイなど、「砂の達人」たちの“潜りのスゴ技”にも迫る。羽田、お台場、横浜、浦安などを舞台に、都会の海で生き抜く命を見つめる。歌:平原綾香
出演者
【出演】東京海洋大学客員准教授…さかなクン,【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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