NHK短歌 題「家電製品」 2014.06.03

ご機嫌いかがですか?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第一週の選者小島ゆかりさんでございます。
今日もどうぞよろしくお願い致します。
この一首はかたつむりが歌われてますね。
かたつむりの季節でもありますがこの歌は具体的には大好きだった伯父が亡くなった時に作ったんですが次第次第に大切な人が一人づつ亡くなる年齢になりました。
でもかたつむりはいるよというので誠に不思議なこの世そういう歌です。
さあそれでは今日お迎えしましたゲストをご紹介致します。
作家の池永陽さんでございます。
ようこそお越し下さいました。
お願いします。
池永さんは1998年「走るジイサン」によって小説すばる新人賞を受賞されデビューされました。
数多くの作品があるわけですがわりと最近の作品ですね。
こちらです。
「珈琲屋の人々」という作品。
あっドラマで見たと思われる方いらっしゃるでしょう。
BSプレミアムでこの4月5月にドラマとして放送をされていました。
その池永さん小島さんとはどういうご縁でございましょう?もう十数年になるんですけれども新聞で書評を書いて頂きましてそれ以来ですねいろいろお世話になっております。
本当に作品が大好きで旧知の人という感じです。
愛読されてるんですね。
はいそうです。
池永さん短歌の方は?短歌はですねほとんど縁がなく小学生の頃一つだけ短歌に関する思い出はあるんですけれどもそれ以来はという感じですね。
しかし小学生の頃短歌にまつわる思い出が強いのがあるんですね。
はい5年生の時に少し。
後ほどその5年生のエピソードを聞かせて頂きましょう。
短歌とは何ですかって短い言葉をいつもお願いしておりますが池永さんどんなお言葉になるでしょうか?これは作家池永さんらしい言葉になりました。
いいお話が伺えそうですね。
後ほどよろしくお願い致します。
さあそれでは今週の入選歌でございます。
テーマが家電製品または自由でした。
小島ゆかり選入選九首です。
一首目。
早速池永さん伺いましょう。
これはまさに僕たち私たちの当時の頃を克明にスケッチをしているなと思います。
我々思い出しますよね。
こういう事ありました。
それから私事なんですけれども「桜舞い散る」の「桜」にちょっと目が行きまして…。
何でですか?実は娘が今日辺り孫を産むのではないかという。
それはもしかして初めての…?初めてなんです。
これは楽しみですね。
もう女の子という事分かってますので産まれたら桜という名前に決まってるんですね。
ですから自然にここへ目が行っちゃいました。
すごくおめでたい事がくっついてよかったじゃないですかこの歌。
「やって来た」という表現ですよね。
当時のテレビはでっかい箱でしたからいかにも「やって来た」という感じぴったりです。
下の句の方が高度成長期の明るい空気というんですかそれをよく表現してると思いますね。
では二首目に移ります。
詰るでしょうそれは。
韓ドラとも韓ドラともお読みになってよろしいかと思うんですがファンなんでしょうね。
しかしこの歌そのものがまるで現代のドラマの一場面のようでお二人の様子が大変生き生きと描かれているなと思いました。
私は詰られる側がちょっとかわいそうですけどね。
同情しました。
はい三首目です。
「お笑い三人組」懐かしいなと思われる方多くいらっしゃるかと思うんですが一龍齋貞鳳さん江戸家猫八さんそれから三遊亭小金馬さんですね。
その3人の方が舞台で繰り広げたコメディー番組。
あっこれこれ。
懐かしいですね満腹食堂。
そしてこの時代は全ての家庭にテレビがあったわけではなくてテレビのある所にみんなが集まって見たというような池永さんもそうでしょ?うちもなかなかテレビは買ってもらえずにどこかへ押しかけるよりしょうがなかったという。
ですからどこへ押しかけたらいいのかいろいろ考えました。
子供が集まってましたね。
ほんとに時代を映してると思います。
それでは次です。
四首目にまいります。
さて池永さんこの歌はどう鑑賞されましたか?これは好きな歌なんですよ。
どういう点が?「私は静かに腐る気のする」ってこの辺りがすごいですね。
僕は以前「水の恋」という作品で短歌ではないんですけれども「深夜の包丁はよく切れる。
コロコロと指転がる」というのを考えた事あるんですけど…。
怖いですね。
何かそれに通じるものがあるかなという気がしますね。
ですからこの方は僕に感性が似てるんじゃないかという。
本当にねすてきな作品…すごい作品ですよね。
上の句は厳密に言えば冷蔵庫に入れるものを忘れるという事なんですがそんなちょっとした表現の弱いところを補って余りある下の句の斬新な展開で体感が迫ってくるという感じですね。
それでは次の歌五首目です。
これは戦後でしょうね。
恐らくテレビのドラマとかアニメとか映画とかそんな場面が上の句に反映されてるかと思います。
豊かなアメリカという感じですね。
大きい冷蔵庫にでっかいハムの塊というのでね。
「われは夢見し」というのが遥けさをよく出してると思います。
ハムは塊ですよね。
薄いスライスではない。
でっかい冷蔵庫にでっかい塊。
これがアメリカの豊かさなんですね。
それでは次六首目です。
切ない歌ですね。
洗濯機は回るけれどもそこに妻がいなければ健やかな生活のサイクルではないんですよね。
そこの心理をうまく回るから「けれど」っていうふうに反転していく作り方これがいいと思いますね。
それでは次が七首目です。
各部屋のみならずトイレの中にまで子機がある豪邸にお住みでしょうか?それにしてもトイレの中に「ビバルディの春」が響くというのは何とも楽しくてそしてリズムもいいですよね。
春はどんなメロディーだろ?チャンチャンチャンチャララチャンチャンチャンチャララという感じ?それです。
それでトイレから慌てて電話出る?あっトイレの中に子機があるのか。
という事でございます。
弾むような歌でございます。
さあそれでは八首目にまいりましょう。
池永さんいかがですか?「しばらく耐えて」というここですよね。
これがすごく心に響きましてこういった大きな事が起きると人間もそうですしこういったものもそうですし植物…そういったものもそうですしけなげになるんですよね。
その辺がすごくけなげさというのが胸に響いてくるというそういった感じ受けましたけれどもね。
大変いい鑑賞ですよね。
おっしゃるとおりしばらく耐えてそして動かなくなる。
この辺りに言葉以上の思いが込められているんですね。
「しばらく耐えて動かなくなる」のこのあとですね。
このあと更にどうなったのかな?ひょっとしたらと…。
蹴飛ばしたら動いたかみたいなね。
いずれにせよ「震災に共に揺られた」というところがやっぱりきますよね。
心に刺さるといいますかね響いてきますね。
ではおしまいの歌です。
九首目です。
猫は本当に耳が敏感でありますからとりわけ大好きなものが出てくる冷蔵庫や戸棚が開く音はすぐに反応します。
猫は階上にいるんでしょうね。
「音すなり」「動きたり」この「なり」「たり」のリズムが非常に絶妙の呼吸を生みだしていると思います。
このあとトンと階段を降りていく猫が浮かびますね。
以上入選九首でした。
それではこの中から小島さんがお選びになった特選三首の発表です。
まず三席からです。
三席は宮本次雄さんの作品です。
では二席です。
二席は宮崎江美さんの作品です。
ではいよいよ一席の発表です。
一席は橋本英幸さんの作品です。
「冷蔵庫」とか「ハム」とか「アメリカ」という言葉。
この言葉が今とは全然違う質感を持って感じられた。
空腹少年にとってそれは遥かな遥かなものであったかと思うんですよね。
ですから時代と言葉というのはやっぱり一つであって時代の中で言葉の空気も変わってくる。
そんな事を教えられた一首でした。
以上今週の特選でした。
今日ご紹介しました入選歌とその他の佳作の作品はこちら「NHK短歌」のテキストにも掲載されます。
是非こちらもご覧下さい。
さあそれでは続いて「うた人のことば」です。
父が私が歌を歌うならば寝てるんだから外に出て風景を見るわけにいかないからお前さんが寝たまんまで歌えるようにというのでそこに天窓を作ってくれて。
天窓を空に組む父の足がゆらりとそこで揺れる時私も一緒になって揺れている。
というところから一梁ゆらとこっちの目が揺れるのは楽しい事でした。
何を告げようとしているつもりの歌とも思わないけどしかたなかんべと思ってた。
寝てるんだからね。
こんな時歌詠んで何になるという気持ちがありましたけれどね。
とにかく「星に向き北に向き耳冴ゆる」。
これが自分の力かと思ってましたね。
続いては「入選への道」のコーナーです。
ご投稿作品から一首取り上げて今日は小島ゆかりさんが手を入れて頂きますがさあどの歌でしょう?今日はこの歌です。
なかなか味わいのあるいい作品なんですが最後「恋ひとつ終ふ」という終わり方。
これが音の響きとして少し弱々しい気が致します。
受話器を置いてあ〜終わったという感じなのですからこんなふうにしてみました。
終わったんですね。
何かこの方が切なくなりましたね。
でも入選です。
深いため息の味わいの歌になったような気が致しますね。
皆さんも是非参考になさって下さい。
さて投稿のご案内を致しましょう。
黒と白?どちらかでも結構ですし黒白なんていう言葉もありますから両方入れて頂く歌もどうぞお出しになって下さい。
黒猫白猫。
さてそれでは選者のお話「うたを読む楽しみ」今日は「舞え舞え蝸牛」というお話です。
「梁塵秘抄」というのは平安時代後期の歌謡集なんですね。
後白河法皇という方が非常に力を尽くして集められたと言われていますがこれはその中の有名な童謡です。
「舞へ舞へ蝸牛」マイマイという蝸牛の別称がありますから掛けことばですね。
舞え舞え蝸牛よ舞わなかったら馬の子や牛の子に蹴っ飛ばさせちゃうぞ踏み破らせちゃうぞ。
でも本当にかわいく舞ったならば花園にまで遊ばせるよという歌なんですが蹴っ飛ばしたり踏み破ったり随分ひどいじゃないかと思われるでしょうがよく見ると「馬の子や牛の子に」とあるのでやっぱりかわいらしい子供の歌になっているんですね。
蝸牛っていうのはかわいい季節のものでもありますが一方でちょっとエロチックな神秘的なイメージもありますでしょ?両性具有というか一つの個体の中に雄と雌の両方がある。
そういう神秘的な面も含めて詩歌の中では非常に興味深いテーマだと思います。
「舞え舞え蝸牛」と子供たちがはやしたてるような様子が目に浮かびますね。
そうですね。
選者のお話でした。
それではゲストにお迎えしている作家池永陽さんにもいろいろとお話伺ってまいりますがまず短歌とは何ですかという短い言葉を先ほどお見せ頂きましたがもう一度拝見致します。
こちらでございますね。
「短歌は極限の短編小説」とお書きでございます。
やはり作家の目でございますね。
短歌の中には全て詰まっているなという書いた人あるいは短歌に出てくる人の心理状況景色事件いろんなものが全部短歌の中に詰まっていてこれを発展させれば短編小説が書けるかなと思います。
先ほどの「大切に入れて忘れる冷蔵庫私は静かに腐る気のする」という僕の好きな歌。
これだと中編書けるんじゃないかという。
人の心の動きがね。
いかにも池永さんの得意そうな。
逆に言いますと小説の方のエッセンスを絞って絞って絞りまくれば短歌に行き着くんじゃないかなという考え方もできるかなと。
深夜の包丁はよく切れて指がコロコロみたいな。
怖い歌になりますけどそれほど三十一文字の中に物語がギュッと凝縮されているという事なんですね。
うれしいですね。
ところで池永さん冒頭ですね短歌あんまり縁がないんだけど小学校時代忘れられない和歌が一つあってという事がありました。
小学校5年とおっしゃいましたね。
小学校5年生なんですけれども。
どんな歌かまずご紹介下さい。
これは著名な「百人一首」の一首なんですがなぜこれが小学校の時に?小学校5年生の時の担任の先生田中先生というんですけれども授業の時にこの歌を教えてくれたんですよ。
当時田中先生は新婚でその辺の幸せのおすそ分けを生徒にもと。
恋の歌で。
お前たちもしっかりやれよと。
何をしっかりやるんですか?何をしっかりやるのか僕にもよく分かりませんけれど…。
この歌は好き同士であればいつか一緒になれるよというのが歌意ですがそういう事を小学生に?そうですね。
今考えてみれば好き同士であっても一緒になれるわけもなくという…。
でもそうありたいという事ですよね。
ですから田中先生はそういった事を当時小さな子供たちに植え付けたかなという。
田中先生すごいですね。
それをちゃんと覚えてらっしゃるという事は男女の機微とかそういう事が印象に残ったわけですね。
小説で言いますとねまあ人生そうなんですけれども男と女というのが人生の接着剤といいますか親と子供というのもこれも人生の接着剤でこういったものがなければいわゆる情愛ですよねいろんな意味での。
そういったものがなければ世の中成り立ちませんし一番大切なものでもありますしね。
ですからそういったものを植え付けてくれたのかなと。
大げさに言いますとですけれど。
池永陽の原点にあると。
恋は人生のテーマであり和歌のテーマでありますから。
池永作品はどう読んでいらっしゃる?私は長くずっと読み続けていますけれども今人生とか人間っておっしゃいましたけど人間や人生の中にある非常にもの暗いある種無残な沼のようなものとそれから一方で新雪…新しい雪のような聖地のようなもの。
情愛と今おっしゃいましたけどそれも含めて両方必ずお書きになるんですよね。
だから私好きなんですけどそれは意図して?意図ではなく多分天然で降りてくるんだと思うんですけどなかなか計算どおり意図どおりには書けませんのでなかなかその計算しても物語そっちの方向に進んでくれるという事はあまりないですね。
意地悪ですので最初考えたところとは全然別の方向に行っちゃうなという。
連載の途中から方向が変わるって事もあるんですか?しょっちゅうありますね。
だから動いてくれれば一番うれしいですから計算じゃなしにね。
ですから変わっていけばそのまま突き進めば。
最近では時代物もどんどんチャレンジされてね。
その新たな境地ですね今日「短歌は究極の短編小説」だとおっしゃったわけですから短歌そのものもお作りになるというのはいかがでしょう?そうですねひょっとしたら…今まで敷居が高いかなと思ってきたんですけれどもひょっとしたらできるかもしれないかなという気になりつつあるのかな?次回は歌人としてゲストにね。
あるいは私の歌に短編を付けて頂くとかですね。
その方がいいですね。
今日ご覧になった短歌の中からもインスパイアされて短編になりそうだあるいは中編にもなりそうだとおっしゃいましたがそれだけの何か鼓舞するものがあるわけですよね。
ありますね。
言葉の世界ですからね。
是非次回は短歌作品そのものをご披露お待ちしております。
よろしくお願いします。
今日は楽しいお話ありがとうございました。
作家池永陽さんでございました。
ありがとうございました。
では小島さん来月もどうぞよろしくお願い致します。
「NHK短歌」そろそろ時間でございます。
ごきげんよう。
2014/06/03(火) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「家電製品」[字]

選者は小島ゆかりさん。ゲストは作家の池永陽さん。「珈琲屋の人々」が今年ドラマ化された池永さん。忘れられない短歌のエピソードがあるという。題「家電製品」

詳細情報
番組内容
選者は小島ゆかりさん。ゲストは作家の池永陽さん。「珈琲屋の人々」が今年ドラマ化された池永さん。忘れられない短歌のエピソードがあるという。題「家電製品」【司会】濱中博久アナウンサー
出演者
【出演】池永陽,小島ゆかり,【司会】濱中博久

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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