今、動物園の人気者が全国で次々と姿を消しています。
32年間愛されたゾウが死んだ福岡県の動物園。
代わりのゾウが来る予定は全く立っていません。
背景にあるのは動物の高齢化です。
ゾウやキリンは最盛期から4割以上減少。
ゴリラやコアラも半数以下になりました。
海外から新たに動物を買おうとしても価格が高騰しています。
数百頭のキリンを飼育するタイの動物園。
売り先は、動物園の建設ラッシュが続く新興国です。
岐路に立つ日本の動物園。
生き残りの道を探ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代です」。
今、全国各地の動物園は人気動物の高齢化。
そして動物園を所有している自治体の財政難に直面しています。
海外から珍しい動物を主に海外から購入する形で展示してきた日本の動物園。
ワシントン条約によって最も絶滅のおそれが高いゴリラやゾウ、そしてサイなど1000種に関しては売買が原則禁止されています。
キリンや、ホッキョクグマそしてカバといった3万4000種に関しましては取り引きは認められていますけれども価格が高騰しています。
これまでのように死んでは買う、死んでは買うといったことが厳しくなる中でこれまでどおり動物園を維持することができなくなるのではないか。
そんな可能性がささやかれています。
例えばアフリカゾウですけれども最盛期の1992年国内に71頭いましたけれども現在では38頭。
このままの状況が続けば2030年には7頭になると見られています。
ゴリラですけれども現在25頭いますけれども2030年には6頭。
比較的、数の多いキリンですけれども半数近くに減ると見られています。
海外から購入することが難しくなっている希少動物。
種の保存に積極的に取り組んでいる欧米の動物園では繁殖しやすい環境群れで飼育したりそして動物園どうしが連携を取りながら計画的な繁殖を行っています。
対応が遅れ、厳しい事態に直面している日本の動物園。
動物園として持続可能になっていくためには今、動物園そのものの在り方が問われています。
まずは岐路に立つ動物園の現状からご覧ください。
福岡県の大牟田市動物園。
去年、一番の人気者だったゾウのはなこが死にました。
アフリカゾウはワシントン条約で厳しく売買が禁止されています。
動物園では、新たにゾウを手に入れることを断念せざるをえませんでした。
ゾウに代わる動物園の新たな看板として期待されているのがキリンです。
キリンも、今1頭しかいません。
将来を考え、もう1頭買い入れることを検討しました。
ところが、思わぬ事態に直面しました。
海外の相場を調べたところ手数料や輸送費を合わせて1700万円。
7年前にキリンを購入したときの5倍近い価格です。
キリンを増やす計画は白紙のままです。
なぜ、動物の価格が急激に高騰しているのか。
先月、バンコクで行われた取り引きの現場に同行しました。
この動物園ではキリンの繁殖に力を入れています。
その数、数百頭。
世界中の動物園から注文が殺到しています。
動物の取り引きを仲介する日本の業者です。
最近、日本の動物園よりも海外からの依頼が急増しているといいます。
この日は、ドバイとヨルダンの動物園から依頼を受けて買い付けにやって来ました。
業者を出迎えたのはキリンの売買を取りしきる動物園の会長です。
話し合いを始めて、すぐに強気の交渉を持ちかけてきました。
会長は、その場で値段を計算し始めました。
6頭で、50万ドル日本円にして5000万円です。
去年までの相場のおよそ3倍。
輸送費などを合わせると必要な金額は、倍になります。
価格高騰の背景には新興国で進む、動物園の建設ラッシュがありました。
世界の動物の取り引きは日本の常識をはるかに超える相場で行われていました。
はい、いきますね。
はい、チーズ。
海外からの買い入れが厳しくなる中残された道は国内での繁殖です。
宮崎市の動物園。
ゾウのみどりは、現在13歳。
繁殖に最も適した年齢です。
ことし1月つがいのオスが死にました。
動物園は新しいオスと引き合わせたいと考えています。
しかし、日本で繁殖可能なオスは14頭。
それぞれ別々の動物園で繁殖活動を行っています。
繁殖を中断してまで、オスを借りてくることは通常ありません。
専門家は、みどりをどこかに貸し出すほうが現実的だと指摘します。
しかし、みどりの貸し出しは手続き上、簡単ではありません。
動物園を所有する宮崎市。
すべての動物を市の備品として台帳に登録しています。
アジアゾウは1500万円の重要備品です。
さらに、みどりは動物園の集客の要にもなっています。
みどりが動物園にやって来たのは平成17年。
前の年に比べて入園者は4万人増加しました。
今も30万人以上の入園者を維持しています。
そのみどりを繁殖のために貸し出すとなるとまず市長の承認が必要です。
さらに例えば動物園の経営に影響はないのかという議会からの質問。
人気者のゾウを貸し出さないでほしいという市民の声にも応えなければなりません。
動物を外に出せば集客が落ちる。
経営をにらみながら繁殖を優先させることができない自治体が少なくないと見られています。
しかし、動物の高齢化によって種の保存は待ったなしです。
繁殖をどうすれば戦略的に進めていくことができるのか。
人気動物の飼育、繁殖の先進地といわれているアメリカでは国内で繁殖を行うため動物園が連携する仕組みを作っています。
動物園が連携して繁殖に取り組むアメリカ。
AZAアメリカ動物園水族館協会が中心となり224の動物園が繁殖計画に参加しています。
先月下旬、全米各地でライオンの繁殖を担当するコーディネーターとの電話会議が行われました。
年齢や遺伝のデータをもとにAZAの動物学者が繁殖の組み合わせを調整します。
コーディネーターからの相談はメスの499番とオスの301番を将来、交配させても大丈夫かというものでした。
AZAは、血統を分析。
301番は499番の祖父のきょうだいに当たることが分かりました。
このように、さまざまな科学的データに基づいて作成された繁殖計画。
ライオンや、ゾウチンパンジーなど300種以上で進められています。
繁殖のために別の動物園へ移動させる指示も珍しくありません。
チンパンジーの場合。
ヘンリーヴァイラズ動物園からシカゴの動物園に移すよう指示しています。
チンパンジーの移動を命じられたヘンリーヴァイラズ動物園です。
AZAからはチンパンジーは、1か所に集めて群れを作ったほうが繁殖が進みやすいと説明を受けました。
AZAに加盟する動物園は移動の指示に従う義務があります。
もし指示を拒否すればAZAのネットワークから除外されることもあります。
そうするとほかに繁殖させたい動物がいても融通してもらうことができなくなってしまいます。
ヘンリーヴァイラズ動物園にはほかの園から融通してもらった動物が20頭近くいます。
今後もAZAのネットワークの恩恵を受けるためにはチンパンジーの移動を断るわけにはいきませんでした。
チンパンジーは失いましたがAZAのネットワークは、すぐに新たな動物を融通してくれました。
別の施設で繁殖に成功したワオキツネザルです。
こうした取り組みは着実に成果を上げています。
AZAのコーディネーターに去年、繁殖を指示したチンパンジーに子どもが生まれたと連絡が入りました。
この5年間で生まれたチンパンジーの赤ちゃんは20頭以上。
このペースを維持すればチンパンジーの減少に歯止めがかけられると期待を寄せています。
今夜は、日本全国の動物園をまとめる日本動物園水族館協会の会長を先月末まで務めていらっしゃいました、山本茂行さんにお越しいただいています。
アメリカでは、繁殖の体制を整えて、希少動物を増やすことができているようですけれども、日本では今、取り組まないと、当たり前に見ることができていた動物園での動物が、見られなくなる可能性、どれほど危機というのは、深刻なんですか?
すべての動物だと思ってます。
本当にゴリラ、ゾウなどの希少動物もそうだし、あるいは本当に身近にいたラクダであったり、クジャクであったり、そういう動物たち、そして、つい最近まで、日本人に非常に貢献してくれた日本鶏や、いろんな在来の家畜たち。
そういったもの全体が、もう非常にやっぱり、数が減ってきていて、高齢化してきてて、それがもう繁殖がなかなか思うようにいかないという状態ですね。
ワシントン条約でとりわけ、絶滅のおそれがある動物の取り引きが禁止されたのも30年ほど前のことで、こうした事態が起きるというのも、ある程度予想できたと思うんですけれども、ご自身もこうした動物園協会のトップを務めておられたわけですけれども、なぜ、取り組みはこれほど遅れてしまったんでしょうか。
こういったアメリカのような仕組みは、昭和63年に、アメリカがヨーロッパから学んで、日本動物園水族館協会も作ってきたんですね。
そういった中でやっぱりどの種とどの個体とどの個体を組み合わせたら、遺伝的な多様性を維持して繁殖に貢献できるかっていうふうなプランは作るんだけれども、それの強制力はアメリカほどなくて、なかなか実行が難しかったというのが日本の現実ですね。
なぜ実行が難しい、プランはあるけれども、動かせなかったんですか?
それぞれ、日本の場合は、約動物園の6割から7割が、地方自治体、市立が多いんですけれども、市立の動物園が経営していて、動物はその所有、市の財産というふうになってます。
それを繁殖のために動かしていくというふうなのは、別の価値観、評価を持ってこないと基準を持ってこないとできないわけですよね、市の財産を勝手に動かすことになりますからね。
そういった壁があったりとかですね。
そもそも日本の動物園は昔から、動物をオス1頭、メス1頭展示をして、それを見てもらうということを中心に、組み立てられてきましたから、その群れをなす動物は群れで飼うっていう、そして繁殖数を増やしていくというふうな飼い方は、なかなか日本には昔からなかったんですね。
それを切り替えるには、ばく大な予算がかかりますから、なかなかそれが進んでいないという現状も、背景にはあります。
ただ一方で、アメリカのような仕組みを機能させるために、権限の強化もやられたわけですよね。
私、4年前に会長になったときに、本当にいや、これはいったいどうなるんだと、計画はどんどん毎年毎年、更新されるけども、何も評価がされてないじゃないかということで、評価するために、そういった繁殖計画を実行する権限と、それと責任、そういったものを明確にして、そのために評価もしっかりしていこうというふうに、4年前からそれを変えていきまして、それは遅々としてではあれ、少しずつ成果はありますけれども、まだまだやらなきゃならない数が多すぎますんで、種類が多すぎますんで、もうちょっと待ったが、本当に大変なっていうふうな状態ですよね。
いくつかの種類では、進展があるってことですね?
あります。
今、ことしでうまくいった例はツシマヤマネコの繁殖というのは、その各園側の動物園のそれぞれの思惑をちょっと超えて、協会のほうが、うちの協会が指導力を発揮して、ペアを変えて繁殖に成功したというのは、ことしの一つの成果です。
本当にその自治体の背中を押すようになるためには、何が必要なんですか?集客力がなくなるではないかという声が聞こえますけど。
日本の動物園っていうのは、入園者数っていうのは非常に評価の大きな基準になっていますけれども、その動物、それぞれの地域にある動物がその動物園を維持していくための評価基準の中に、どれだけ社会に貢献するかというふうなことが必要になるかと思います。
要するに今まで日本の動物園は、動物園はなんのためにあるのかというふうな、そういう議論が一切されて、成熟して、そういう議論の成熟がないんですね。
国民の皆さん、市民の皆さんは動物園行ったら楽しい思い、楽しい動物がいるというふうに思ってらっしゃると思います。
しかしこれは、ある段階でもう全部、高齢化して、限界集落のように、パカッとある瞬間から数が減っていくというふうなことが、もうすぐにそこに来ているんですね。
そのときに1種、2種だけを、希少動物や、あるいは成功例があったとしても、動物園全体を維持していくためには、もう待ったが利かないというような状態ですね。
動物園を、種の保存をしていく役割を担っているというふうに位置づけないと、もういけないということですか?
そういうことです。
それが必要だと思います。
それを、地方自治体の動物園は、地方行政の地方サービスとして、税金を使って、地方の市民の税金を使って、やってますけれども、そのやってる事業がグローバルな日本、あるいは地球全体の種の保存だったり、生物多様性保全に貢献するというようなものとリンクしていくわけですね。
それに対する責任、説明をしっかりできなかったら、やっぱり難しい問題があります。
ただ、今、その人口減少が起きている自治体も含めて、財政難に陥っている所が多い中で、本当に自治体の財政でやっていけるのかっていうふうな、さらにその新たな役割も担うということになりますと、厳しいんじゃないかというふうに見えるんですけれども。
私は、基本的には、これ、やっぱり動物園が社会的な役割として、地球の宝、あるいは日本の宝である生き物を保全していくということの、この役割を考えたならば、それは自治体に任せるんではなくて、市民の皆さん、あるいは企業の皆さんのそういった協賛というか、そういった中で運営されていくべきものだと思います。
世界的には?
そういう方向にやっぱり進んでますし、日本がそういう方向に行くためには、動物園がそういう社会的な存在である役割を持っているという、今現在、国の法的な仕組み、制度、そういうのがない。
それはやっぱり裏付けがないと、市民の方も、それに対して賛同してくれないと思います。
もしかして将来、ゴリラを増やすため、あるいはゾウを増やすために、一か所にもう少しゾウを集めて、うちの所にはゾウがありません、しかしこっちには10頭ゾウがいますとか。
そうやっていかないと、日本で動物が維持できないと思います。
そうやっていくためには、一動物園、一自治体を超えて、本当に国民のそういったことに対する理解や共産の声がないと、それは難しいと思いますよね。
あるいはそれがあれば、できるということだと思います。
2014/06/03(火) 19:32〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「動物園クライシス〜ゾウやキリンが消えていく〜」[字]
日本の動物園から人気者が消える日が、現実になるかもしれない。ゾウは30年で2割減。キリンは最盛期から4割減った。多くの種が同じ様な状況。一体何が起きているのか?
詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本動物園水族館協会 前会長…山本茂行,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】日本動物園水族館協会 前会長…山本茂行,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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