(通用門の開く音)
(犬の鳴き声)
(野々村ゆり子)あっ!ダメ動いちゃああ…。
ハナ座ってちょうだい。
ハナ描けないじゃないの。
そうそういいこだから座ってちょうだいって…。
・もしもし野々村です。
・
(和田修一)和田です。
野々村さん覚えてますか?もちろん覚えてますよ。
さっき…出所ました。
ああそう…おめでとう。
ご迷惑でなければ会っていただけませんか?野々村さんにはいろいろよくしていただいたので〜〜お礼を言いたくて…。
お礼だなんて…。
〜ええ会うことは一向に…。
〜はいはいそれじゃ待ってます。
はい。
〜〜濱口浩司:〜ううっ!ああっ!〜なに…!?〜あなたは…?〜
(店員)いらっしゃいませ!ショートケーキ2つください。
ありがとうございます。
(向井真知子警部補)野々村さん!甘党ですか?申し遅れました。
科捜研の向井です。
何度もお電話くださった方ね?はい。
お電話でもお話しましたが私は野々村さんの後を引き継ぎ交渉人の仕事に携わっています。
交渉人の第一人者で経験豊かな先輩の野々村さんから実践的な交渉術を直接ご教授いただけないかと…。
現役を退いてもう3年になると申し上げたでしょ。
現場に立ってくれと言ってるのではなく未熟な交渉人の私にいろいろご指導願えないかと…。
ご都合はすべて野々村さんに合わせます。
仕事熱心なのには感服します。
でも私ひとりで静かに過ごしたいんです。
あしからず。
頑固者。
(時計の秒を刻む音)
(パトカーのサイレン)〜
(笠原正三郎)儂はこの目でしっかり見たぞ。
〜その階段を儂より少し若いジイさんが下りて来た。
〜黒っぽい服を着ていた。
〜〜
(刑事)黒っぽい服装。
アイツが犯人じゃ。
間違いない。
〜
(刑事)時間は何時頃か〜わかりますか?う〜ん9時頃かな…?〜
(刑事)こっちからも撮っといて。
(鑑識官)はい。
(山下哲夫)仕事が終わって帰ってきたら201号室がちょっとドアが開いててであそこはずっと空き部屋になってたんでおかしいな〜と思って…で中を…。
(勢力昌三刑事)どうぞ続けてください。
部屋を覗こうと思ったら中からドンと人が出てきて…。
顔はちゃんと見てないですけども20歳過ぎの茶髪の若いヤツでした。
今の話ご足労ですがもう一度署のほうでお伺いできませんか?別にかまいませんけど…。
お願いします。
(午後10時を告げる時報音)
(刑事)現場の「さつき荘」201号室は2か月前から空き部屋で入り口の鍵は管理する不動産屋が2本保管していますが鍵はピッキングで解錠可能なものですし実際201号室の鍵穴にはピッキングの跡も残っておりました。
犯人は容易に部屋に侵入できたものと思われます。
(上司)じゃあ斎藤。
(斎藤)はい。
ガイ者の和田修一は腹部を鋭利な刃物で刺されており死因はその失血によるショック死。
凶器の刃物は現在まだ見つかっておりません。
死亡推定時刻は午後8時30分から9時までの間。
以上です。
(上司)伊藤。
(伊藤)はい。
現場近くに住む無職笠原正三郎75歳は午後9時頃現場のさつき荘から出てくる黒っぽい服装の初老の男を確認しております。
以上です。
(上司)勢力。
はい。
さつき荘205号室に住む金属加工業経営山下哲夫45歳は第一発見者でもありますが午後8時55分頃201号室から飛び出してきた20歳代の茶髪の若者を目撃しております。
おいおい初老の男と茶髪の若者といったいどっちなんだい?私見を述べさせていただくなら…。
おう。
205号室の山下哲夫の目撃証言の信憑性が著しく高いと思われます。
現場の201号室から飛び出して来た若者ともぶつかってますし直後201号室の室内でガイ者を発見してます。
ご近所の老人の目撃証言は信用するには足りないと思います。
75歳の高齢です。
(同僚刑事)信憑性ないよ!アッハハ…。
ハハッ…ハハッ…。
(ノック)野々村ゆり子さんですか?蒲田西警察署の勢力です。
和田修一の保護司さんからあなたのことを伺いご連絡を…。
お知らせいただいて感謝いたします。
野々村さんは本庁のほうにいらしたとか…?ええ。
科捜研に…。
お話を伺えますか?和田さんがなんでこんなことに…。
〜10年前和田さんがファミリーレストランに立て籠もり〜逮捕された事件のとき私交渉人として現場におりましてそれで知り合ったんです。
〜刑務所の和田と手紙のやり取りをされていたそうですね?〜現場での交渉過程で和田さんに親近感を抱いたものですから…。
〜〜親近感…!?誤解しないでいただきたいんですけど〜彼の犯行を是認するとか〜罪を許すとかそういうことではなくて〜立て籠もりの現場では交渉人と容疑者が敵対してるんですけど〜交渉を続けている内に〜お互いの気持が…通じ合うことが〜ままあるんです。
〜出所直後の和田から野々村さんのお宅に電話があったというのは事実ですね?〜いったい和田さんに〜何があったんでしょう?〜お帰りなさい。
〜野々村さん…わりとお出かけになること多いんですか?あなたとの話はもうすんでるはずだけど…。
私の気持を聞くだけ聞いていただけませんか?野々村さんもご存じのとおり警察は男尊女卑の社会で未だ科学捜査の軽視経験主義が幅を利かせています。
女性交渉人にとってこれほど分の悪い世界はないと…。
お茶?コーヒー…?それとも紅茶…?どうぞおかまいなく!私も飲むから…。
ではお茶を…!失礼します!現場に行っても先着の所轄の脂ぎった警部補が容疑者と交渉していることが1度ならず毎度のようにあるんです。
その交渉も喧嘩腰だったりテレビの人情刑事みたいに泣き落としの説得だったり…理に適った交渉術が行われた試しがありません。
後を引き継ごうにも私を邪魔者みたいに扱って…。
ケーキ食べる?ああ私は…。
昨日買ったの。
もう食べてしまわないと…。
私甘い物は一切控えているんです。
そんなにスマートなのに…。
あの私は…お茶汲みのネエちゃんくらいしか思ってないオヤジどもを何とか一泡ふかせてやりたくて…。
それだけ?ええ!?あなたが私に聞きたいのはオヤジ撃退法?いえ違います!そんなの二の次です。
交渉術の実際を教えていただきたいんです。
私やるからにはこの世界で一番の交渉人になりたいんです。
誰にも負けたくない。
野々村さんみたいに…。
思い込みが激しい人ね。
交渉人の資質としてどうかしら?野々村さんの理想の交渉人の資質って?ちょっと待って私はあなたに教えるつもりもないし何も教えることはないわ。
でもこうやって歓待してくださって…。
あなたのガッツに敬意を表しておもてなしをしているだけよ。
今日は私疲れてるのお茶を飲んだら帰ってください。
ごめんなさい。
わかりました。
頂いたら帰ります。
〜
(雨戸を閉める音)〜〜このお茶おいしいのでお代わりを…。
〜帰るとき声かけてね。
戸締まりしなくちゃならないから…。
〜〜わかりました。
〜〜
(雀の鳴き声)〜〜
(蛇口から出る水の音)もう朝ですか?私の話なんか参考になるとは思えないけど…。
ええ?話せることがあったら話します。
ありがとうございます!協力してほしいことがあるの。
あっはい!何ですか?その前にケーキ一緒に食べてくれない?和田修一の死因は失血によるショック死です。
凶器は現場では発見されてません。
死亡推定時刻は午後8時半〜9時の間…。
和田さんの出所した後の足取りはつかめてないのね?はい。
現場のアパートとの関連も今のところ不明です。
やっぱりいるわね。
野々村さんと殺された和田修一どんな関係が…?できたら現場見ておきたいわ。
わかりました。
本庁の向井です。
ちょっと現場を…。
はっ!先生!どうぞ。
あの…現場保存は終わってますけど…。
〜第一発見者の山下哲夫留守みたいです。
会社はわかってますからそっちに行きましょう。
犯人を目撃した人もう1人いたわね?はい。
(笠原)そうあそこのほらさつき荘の階段をね下りて来たんだよ。
儂よりちょっと若いジイさんがね。
午後9時頃ですか?そうそう。
そろそろ寝ようと思って戸締まりをしていたらね表で猫がギャアギャアうるさいもんだから出てみたら…。
こんな所で立ち話もナンだからちょっと入ってくれコーヒーでも…。
我々はこの後回る所が…。
うちはお客が多いからいつも用意してあるんだ。
どうぞ。
せっかくですから…。
失礼します。
どうぞ〜。
うちはね教え子が取っ替え引っ替え出入りするものだからいつも賑やかでね。
先生をしてらしたんですか?ああ…。
小学校の校長を20年ばかり。
最初40代の若い校長だったもんだから新聞が取り上げてくれて…。
ねえ…切り抜き見るかい?ええ是非…。
そう。
「庭の千草も虫の音も…」笠原さんはお独りなんですか?はあバアさんは5年前に…。
しかし毎日毎日教え子が大勢「先生先生」言うて来てくれるから寂しいことはちっとも…。
メガネがないと…。
電話料金の請求です。
通話料がゼロです。
見つからんなぁ。
どこへやったかなぁ?この次の機会に見せていただきます。
(町工場の騒音)「山下金属」…ここですね。
すみませ〜ん!お邪魔します!
(中村辰信)お宅らは…!?〜〜山下社長ですか?いやいや…。
〜あの哲夫は今ちょっと…。
〜すぐ戻られますか?〜いやそれ…。
〜あのこちらの…?いや。
〜〜あんたらなんだ?〜〜警察の者ですが〜山下さんですね?〜ああ…。
〜ちょっとお話を…。
〜表で話そう!〜
(チェーンの触れ合う金属音)〜〜俺にぶつかってきたから間違いないよ。
茶髪のイマドキのガキだよ。
警察もそれで動いてるんじゃないの?あの複数の目撃証言があるものですから…。
あのジイさんは近所でも有名な嘘つきだぜ。
信じるほうがおかしいよ。
匂い…しませんでしたか?匂い!?イマドキの若者は大体コロンか何かつけてるでしょう?匂いなんか覚えてねえな。
もういいだろう?納期が迫ってて…。
あの会社はあなたおひとりで…?ひとりで切り盛りしてらっしゃるの?人なんか雇う金ねえよ!新事実なしですね。
うんそうね。
〜・もしもし…。
・
(ボイスチェンジャーの男の声)これ以上首を突っ込むな。
もしもし野々村ゆり子ですけど間違いでは…?・間違っちゃいないよ。
(玄関の戸が開く音)和田の事件に首を突っ込むな!わかったな。
(電話が切れる音)いらっしゃい。
イタズラ電話ですか?「和田さんの事件に首を突っ込むな」って…。
そういう電話何度も…?心当たりは?ないわ。
野々村さん…和田さんのこと話してください。
10年前の三鷹のファミリーレストランでの立て籠もり事件ですよね?そのときの容疑者が和田修一当時40歳。
調べたの?ざっと…。
忘れられない事件だった…。
〜TVレポーター:本日2時頃三鷹の「バディーズ」にて立て籠もり事件発生。
犯人から何らかの要求があったようですが未だ膠着状態が…。
〜ええっ!死ぬか?〜みんなでほら!
(女性たちの悲鳴)〜うるせ〜んだよ!〜
(女性たちの悲鳴)〜
(和田)ううっ!*〜・はい野々村です。
・女房はまだか?〜和田さん。
いつまでかかってるんだよ!〜落ち着いて。
奥さんがすぐそばまで来ていることは確かなの。
〜でも今日は月末のお給料日の後の金曜日でしょう。
〜どうも〜道が混んでるらしいのよ和田の要求はただ1つ別居中の奥さんを連れて来ること。
〜でも奥さんの居所は〜なかなかわからずやっとつかめたと思ったら「会いたくない」と拒否された。
〜〜和田修一は〜北海道稚内の出身。
中学卒業と同時に〜東京へ出て来て長年水商売で下積み生活の後ファミリーレストランのチェーン店で成功したの。
〜〜でも御多分に漏れず積極的な多角経営が〜バブル崩壊と同時に破綻。
更に保証人になっていた友人の〜莫大な借金を背負い込み頼りの奥さんにも逃げられて孤独と絶望で自暴自棄になり〜自分のチェーン店の〜1号店に立て籠もったの。
〜この1号店が開店したときはそりゃうれしかったよ。
〜開店した日俺酔っ払っちゃって…〜来たお客さん1人ひとりに抱きついて〜キスしたらしいんだけど〜全然覚えてないさ。
〜和田さんの気持〜よ〜くわかるわ。
でもキスはごめんだなぁ〜ハハハ…。
覚えてないんだ本当に…。
〜後にも先にもあれが初めて…酒で記憶失ったの…〜〜籠城後12時間以上経って私と和田は打ち解けるようになった。
そして和田はようやく人質解放に応じた。
(ヘリコプターの飛ぶ音)警官:はい急いで!いいよ。
行っていいよ。
ご苦労さん。
おおっ!
(ヤジ馬たちの拍手と歓声)おおっ!待てよ!ううっ!ああっ!なに…!?〜殺された人質はレストランに納品に来て〜事件に巻き込まれた食品メーカーのサラリーマン濱口浩司35歳。
〜どうしてそんなことを…?〜いったん解放した人質を〜刺すなんて…?籠城中被害者と〜いさかいでも…?反対よ。
和田さんは籠城中〜被害者の濱口さんと最も頻繁に話をしていた。
〜あんた出身どこ?東京か?〜〜〜いえ…違います。
〜田舎から出て来て東京で頑張ってんのか?〜仕事うまくいってんのか?〜〜ダメです。
〜東京は人が多くて競争が激しくて…。
〜〜厳しいです。
〜〜〜そうか…。
〜そうだよなぁ。
〜〜東京は厳しいよなぁ。
〜はい〜だったらなぜ…?わからない。
和田さんは取り調べでも裁判でもいったん解放した人質をなぜ殺したのかそのことについては何も言わなかった。
なんですか?それ…。
和田さんの手紙。
刑務所の中と外でずっとやり取りしてたの。
随分あるでしょう。
ここに人質を刺した話は…?書いてあるのは事件への反省と稚内で過ごした子供の頃の思い出だけ…。
会ったらいの一番にそのことを聞こうと思ってたのに…。
これ…読ませてもらってもいいですか?私今日から泊まり込むつもりで来ましたから…。
まあ…ウッフフフ…。
和田:「こんなことを書くと嫌われるかもしれませんが〜私はいつも早く死んだ天国の母に聞いてもらうつもりで〜野々村さんに〜手紙を書いています。
〜甘えています」…〜
(勢力)野々村さん!勢力さんでしたね?和田修一の事件を調べ直してみようと思いましてそれで…いずれ野々村さんにはお話を伺わねばと思ってますが…。
本当に不幸な事件でした。
それに…不可解な。
和田が人質を殺してしまったことですか?もしかして野々村さんはまだその点にこだわってるんですか?こだわってるというより真実を知りたいとずっと思っていました。
でももうその謎も永遠に解けないかもね。
野々村さん真実なんて必要なんですかね?時々そういうふうに思うときがあるんですよ。
「会社」に20年以上もいると警察なんて世間に悪を退治してるふりをしてればいいんじゃないかって…。
警察自体真実追求をしたらいの一番に壊れてしまいますよ。
もしかしたら真実以外に大切なものが…。
あると?〜野々村さんももう引退されてるわけですからそう肩肘張らずにもっと楽に生きられたらどうですか?フフフご忠告感謝いたします。
〜これは…。
〜そうはいきません。
〜
(エレベーターのチャイム)お久しぶりです。
(ドアの開く音)
(濱口宏美)ここで待っててください。
・どうぞ。
和田が死んだのはニュースでも見たし警察の方もこられて…。
私が旦那の復讐したとでも思ってんですかねぇ?お宅も私疑ってるんですか?私アリバイありますよ。
いえ私はもう現役ではありませんから10年前の事件を思い出しましてもうすぐご命日ですので濱口さんをお参りさせていただきたいと…。
命日?いつだったっけ?ああもう10年か。
アッという間ね。
そりゃそうだ。
あん時人形抱いてピィピィ言ってたのがもう高校生だもん。
あの…マッチが…。
(17時を告げる夕焼け小焼け)〜あはい。
〜〜お嬢さんはお元気ですか?「お嬢さん」なんて〜もんじゃないわよ。
どこ泊まり歩いてんだか〜帰って来やしない。
やっぱり父親のおもしって〜必要よね。
私の男の言うことなんか〜聞きやしない。
和田修一は出所後こちらに連絡をとってきませんでした?刑事さんにも訊かれたけどイヤよ出所した人間に訪ねて来られたって絶対中に入れない。
仏壇だって拝ませない!アイツのせいでウチがどんな目に…。
さぁもういいでしょ?帰って。
私これからまた仕事なの。
近所のスナックでホステス。
昼間は不動産屋でアパートの斡旋して夜はスナックでパート。
四十女が子供抱えて生きていくのも楽じゃないわよ。
あ〜お宅!ワカメとか干物とか持ってかない?田舎から送ってきたの。
お故郷はどちらですか?答志島。
鳥羽の先の何にもない島。
ご主人も?そう。
無理やりね…くっつけられちゃった。
はい。
すみません。
(杖をつく音)どちらへ?さつき荘殺人事件の捜査本部だ。
重要な目撃者の笠原正三郎が来たと伝えてくれんか?
(笠原)信用できんとは何事じゃ?
(斎藤刑事)そうは言ってないじゃないですか?おジイちゃん。
(勢力)どうした?あ勢力さん。
あんたは責任者か?責任者ではありませんが担当者の1人です。
儂は笠原正三郎じゃ。
儂はこの目で犯人を見た。
黒っぽい服を着たジイさんじゃ。
聞いています。
しかし噂によれば警察は…20歳代の茶髪の若者を追いかけているとか。
まずは聞こう。
その噂の真偽はいかに?捜査内容をお教えするわけにはいかない。
何?斎藤お引き取り願え。
はい。
おジイちゃん行きましょう!こら!さわるな!怖い怖い。
年寄りだと思って軽んじておるんじゃな?こら!
(笠原)儂は見たんじゃ!犯人は犯人はあのジイさんじゃ!・もしもし野々村です。
・
(ボイスチェンジャーの声)首を突っ込むなって言ったろう。
もしもしイタズラはやめてくれませんか?またですか?亡くなった和田修一さんとはどういった関係の…?・そのうちわかるよ。
俺は今人質をとって東京のどこかに立て籠もっている。
まあこんなおばあさんをからかってどうするの?・ケータイ持ってるか?ケータイ?〜あるわよ。
・番号教えろ。
ケータイ持ってタクシーに乗れ。
何をしようっていうの?・人質を死なせたくなかったら言うとおりにしろ!私今日非番でよかった。
(エンジン始動音)〜もしもし。
今どこ走ってる?南通りの公園口の交差点を過ぎた所。
よし。
3つ目の信号を右に曲がった所に喫茶店がある。
そこで待て。
私はあなたの言うとおりにするから人質には決して手を出さないって約束して…。
〜本当ですかねぇ?立て籠もってるって。
とにかくつきあうよりしかたがない。
嘘だとわかる決定的な証拠をつかむまでは…。
3つ目の信号を右ですよね?そう。
〜
(ドアの開く音)〜
(ウェートレス)いらっしゃいませ。
〜
(客)コーヒー。
〜かしこまりました。
はい。
元金だけ今日中に入れさせろ!わかったか!
(急ブレーキ音)ここですね。
(船の汽笛)誰もいませんね。
(シャッターの電動音)どういうことでしょう?もしもし?野々村さん1人じゃなかったんだな?命拾いしたな。
もしもし?近くにいる!〜多分下よ。
はい。
〜見張られてるんですかね?〜あ〜っ!あ〜っ!〜野々村さんお怪我は?いや私は大丈夫。
あなたは?あなたは?まあ酷い!向井さん大丈夫?大丈夫です。
他は?大丈夫!犯人の狙いは何でしょう?和田修一殺しの犯人または関係者だって考えるのが自然でしょうけど…。
恐らく。
でも別の見方もある。
例えば私個人への恨み。
現役の時捕まえた容疑者どころか解放した人質に恨まれたことがある。
「助けに来るのが遅い!」って。
ほとんど八つ当たりじゃないですか!何か交渉人の仕事ってやりきれないですね?ここです。
引っ越ししたばかり?いえもうすぐ更新なんで2年ぐらいいます。
越す予定?ずっとこのままです。
落ち着く?いえ全然。
なんか帰ってきたらゾッとします。
だから野々村さんの家泊まりにいきたくなるんです。
あそこ落ち着くから。
ちょっと片づければ住みやすくなるのに。
あごめんなさい。
飲み物とか出したいんですけどウチ冷蔵庫ないしあとヤカンとか鍋も…。
まな板はないし包丁はないし何も買わないし家では何にも作らないし食べない。
でも時々母が何か作って持ってきてくれます。
お母さんお近くに?両親近くに住んでます。
でも何か愛情湧かなくって…。
どうして?私「おばあちゃん子」だったんですよ。
両親ずっと共働きだったからおばあちゃんに育てられて小さい頃父はもちろん母とも滅多に顔を合わせなくてそれなのに今更「親です」と言われてもね…。
そんなこと言われたらお母さん悲しむわ。
面と向かっては言わないですよ。
でもそれが私の本心だからしようがない。
ヨイショ。
さあ行きましょう…野々村さんの家。
遠慮のない居候ね。
フフン。
あそうだ。
眺めはいいんですよ。
夜の灯が綺麗に見えます。
〜〜寂しくない?みんな同じ〜じゃないですか?〜東京に住んでたら…。
〜野々村さんもそうでしょ?〜
(鉄鈴の音)〜〜アッ…!〜・もしもし野々村です。
あ向井です。
何度かお電話したんですけどお留守だったみたいで…。
例の元校長先生今朝散歩途中に襲われて幸い命に別状はないそうです。
ただ我々の時とどうも手口がよく似てるんです。
そう。
どんどんキナ臭い方向に進んでるわね。
こちらまたあなたに力になってもらいたいの。
1つ調べて欲しいことがあって…。
何ですか?蒲田西署の勢力昌三警部補の出身が判りました。
三重県の鳥羽のちょっと先の…。
答志島。
あはい答志島です。
鳥羽から船で20分ぐらいの人口約3,000人の小さな島です。
これ答志島出身の人からいただいたの。
勢力刑事ですか?濱口宏美って女性。
10年前和田に殺された濱口浩司の未亡人。
夫婦ともに答志島出身の人らしいわ。
どういうことですか?10年前の事件の被害者とその時の加害者の殺人事件の担当刑事が同じ島の出身…。
これは単なる偶然かそれとも…。
ちょっと私出てきます。
すぐ帰ります。
先に食べてて…。
(カラオケ)
(ママ)宏美ちゃんお客さんよ!お仕事中すみません。
中で呑んでいけば…。
ここんとこ不景気だからさ儲けさせてよ。
すみません。
不調法で。
こんな店どこがいいんだろう?答志島は…いい所ですか?いい所よ。
1年中釣りが楽しめま〜す。
時にはお帰りになるの?全然。
主人の納骨で帰ったきりだから…もう10年帰ってない。
勢力昌三さんてご存じですか?昌三さん?えぇ。
野々村さん知ってんの?同じ職場にはなったことはないけど。
そうだった。
野々村さんも元警察官だもんね。
随分会ってないけど昌三さん元気?元気です。
勢力さんもやっぱり答志島出身だったんですね?そう。
勢力ってね…答志に多い名前なの。
昌三さんとウチの死んだ旦那同級生でね。
東京に出てからも干物肴にウチに集まってよく呑んだ。
宏美ちゃんお願い!いい?どうもありがとう。
そうです刑事課の勢力警部補を。
休み?えっいつからお休みですか?〜
(ケータイのアラーム)おはようございます。
「昨夜は遅くなってすみません。
よく眠っていたので起こさず出かけます。
2〜3日留守にします。
このままでは和田さんが浮かばれませんから」〜では相手の顔は全くご覧になってないんですね?卑怯な奴じゃ闇討ちするなんて。
儂はこれでも剣道3段だからそれなりに警戒はしておった。
それを不意を突かれた。
無念じゃ。
警戒っていうと?予告電話があったんじゃ。
変な声で「一人歩きは気をつけろ」って。
その話捜査本部の者に話されましたか?いいや。
交番のオマワリが2〜3度来ただけで儂の話をろくに聞こうともせん。
あの捜査本部の珍しい名前の…「せい」何とかって。
勢力刑事ですか?その勢力刑事!あの男がことごとく儂のことを「無視しろ」と命令しとるそうじゃ。
もう一人の目撃者に肩入れして儂はただ話相手欲しさに出鱈目ばかり言っとるとそう言い回っているそうじゃ。
もう一人の目撃者って同じアパートの山下哲夫ですか?あの刑事「哲夫」なんて呼び捨てにして親密にしておるところを儂は見た。
え!?まぁなあんたも知ってのとおり儂の毎日は充実しておる。
心配はない。
毎日毎日教え子たちがひっきりなしに…。
失礼します。
あ〜ちょっと待ちなさい!この羊羹を食べていきなさい!
(船の汽笛)
(旅館の人たち)いらっしゃい。
こんにちはいらっしゃいませ。
中村屋です。
いらっしゃいませ。
勢力さんのお宅はどちらでしょ?それでしたらそこ入ってください。
どうもありがとう。
(船の汽笛)・
(勢力)開いてますよ。
アッ勢力さん!島で鍵をかける家はない。
車のキーだってつけっ放しだ。
誰もいませんよ。
皆漁に出てる。
勢力さんとこんな所でお会いできるとは…。
野々村さんは答志島へ何しにいらしたんですか?和田さんの事件を追いかけてたらたどり着いてしまった。
私の言ってること判りますね?島案内しますよ。
(海猫の鳴き声)殺された濱口の家です。
えっ…!両親はまだ元気です。
山下…?忘れましたか?和田修一殺しの第一発見者ですよ。
あ〜ああの山下金属の…。
あんたら何だ山下さんもこの島の出身で?アイツは俺たちと違って出来がよかった。
島1番の秀才でね。
ヘッでも今じゃ潰れかけた町工場のオヤジだ。
ご両親は?2人とも病気で亡くなって…もう5年以上経つかなぁ。
哲も兄弟も帰ってこないんで荒れ放題ですよ。
〜
(工員)山下さんところ?4〜5日前から閉めてるよ。
アパートの方にもいなくて連絡とれませんか?ご家族とか…。
奥さんとは別れちゃったから「金の切れ目が…」ってやつよ。
この不景気いつまで続くのかね?ウチも母ちゃんに逃げられそうで。
ヘェヘヘヘ。
山下さんどこへ行かれたかは?田舎帰っちゃったんじゃないの?お父さん出て来たりしてたから。
山下さんのお父さん?〜
(シャッターを叩く音)中村:哲夫哲夫儂や。
社長ならもう帰られたんじゃないですか?
(シャッターの開く音)社長いたの?シャッター閉まってるから。
ああ田舎から親父が出て来たんでね…それはいつ頃の話ですか?そうだなぁ。
おお山下さんのアパートで人が殺されたろあの事件の後だよ。
2〜3日後。
2〜3日後?でもこの島は実の親が死んでも心配いらない。
寝屋親がいるから。
ねやおや?ええこの島の男には親が2人いる。
実の親と寝屋親と。
「ねやおや」ってどんな字書くんですか?「寝る」に「屋根」の屋に親。
まあ一種の養い親みたいなもんですかね。
答志島はまだ寝屋子制度が残ってますからね…。
寝屋子制度?「寝屋子制度」って言うのは中学を卒業したら答志島の男は夜家で晩御飯を食べてから寝屋親の家に泊まりに行く。
昔から続いている習慣よ。
まあ夜だけの下宿って言うか寮ね。
同級生の何人かと寝屋親の家に泊まって寝屋親の話を聞いたり仲間と話をしたり朝になったらまた自分の家に戻って朝御飯食べて会社や学校へ行く。
それを毎日?そう大体結婚する25〜26歳までね。
男性だけですか?うん。
答志島は九鬼水軍という海賊がいたしいざという時にすぐに男の頭数を揃えられるようまとめて寝起きさせておいたのが始まりらしいわ。
亡くなられたご主人と勢力さんは同じ寝屋親だったんですね?そう。
東京にはあと哲夫さんがいるけど…。
〜〜山下哲夫?知ってるの?哲ちゃん元気?離婚したって聞いたけど…。
〜ウチの旦那ね哲ちゃんと〜一番仲がよかったの。
こっち来てからもしょっちゅう〜つるんで遊んでたし…。
〜〜もういい?〜あああと1つ寝屋子は10年以上も同じ所で寝起きするわけだから〜お互いの結びつきは〜かなり強いですよね?そりゃもう兄弟みたいにして育つわけだから〜〜結束はとても固い。
「女は関係ない。
あっちへ〜行ってろ」の世界よ。
・はい「野村不動産」でございます。
〜濱口浩司…勢力昌三山下哲夫…同じ寝屋親。
〜〜俺たちの寝屋親がやってる加工場です。
寄っていきますか?はい。
是非。
(工場の機械音)勢力さんあの人…。
〜どうかしましたか?〜おう昌三!〜来たか。
ハハン。
〜親父お客さんだ。
〜後でまた来ます。
〜〜ようこそ答志島へ。
昔は子だくさんやったからちょっと家に余裕のある所は寝屋になって子供を預かったんですわ。
本当の親には言えへんことでも寝屋親には言える。
実の親も寝屋親を通じて子供に言うてもらう。
まあ寝屋子制はいろいろ利点があるんですわ。
今でも寝屋はたくさんあるんですか?いやもう10数軒になってしもうてウチももうやってまへんけどな。
寂しい話ですわ。
ここですわ。
どうぞ。
女房が死んで独りなもんでおかまいできやへんけど。
どうぞお気遣いなく。
突然お邪魔して申し訳ありません。
あぁそうですか。
あん時東京の哲夫の工場におった方ですか。
いえあん時は東京に用があって哲夫の工場に顔出したんですわ。
そしたらよっぽど忙しかったんか「留守番しとけ」って言って出てったまんまでね。
いやいやその節は失礼しましたよ。
10年前に亡くなった濱口浩司さんもこちらの寝屋子だったんですね。
〜確かに…浩司には可哀想なことを〜しました。
〜まぁどうぞあちらへ。
〜〜どうぞ。
〜私あの濱口浩司さんが〜亡くなられた時現場で犯人の説得に〜当たっておりました。
今は引退しておりますが〜警察官でした。
はぁそうでしたか。
〜その節はお世話に…。
いえ力不足で本当に残念な〜ことになってしまって未だに悔やんでも〜悔やみ切れません。
済んだことですわ。
「十年一昔」忘れることですわ。
〜〜明日は濱口さんの命日でしたね。
はい。
〜それで勢力さんも〜東京から?寝屋子は冠婚葬祭を〜何より大切にしますから。
〜山下さんも東京から?〜えぇ恐らく…。
〜
(洋介)親父来たで。
(光男)あがるで。
(敦)こんばんは。
おぉ来たか早う来いや。
親父酒買うてきたで。
(一同)ハハハハ…。
まぁこの連中が昌三や哲夫や浩司たちと同期の子供たちです。
寝屋子たちは何かあると寝屋親の所に集まってくるんです。
ただ酒飲んでバカッ話してるだけですけど…。
(一同)ハハハハ…。
みなさん中学校を出てここの部屋で毎晩寝泊まりしてたわけですね。
昔はそこの壁が崩れてきそうやったな。
おぉここに10人以上は寝とったで。
俺さいつも押し入れの中や。
(三人)そうやハハハハ…。
みんな聞いてくれ。
こちらは東京からいらした野々村さんや。
10年前の浩司の事件の時に犯人と交渉された交渉人や。
みんなも新聞で見たと思うがな浩司を殺した和田という男がこの前殺されて…その犯人がまだ見つからへんのでいろいろと調べておられる。
協力してやってくれ。
私は殺された和田修一とは妙な縁がありまして何とかこの事件を早く解決させたいと思っています。
私はこの事件はみなさんの寝屋仲間だった濱口浩司さんが10年前に殺された事件と何らかの関係があると考えているんです。
で濱口さんの出身地の答志島にくれば何か判るかと思って取るものもとりあえずやってまいりました。
何かお気づきのことがあったらどうか話してください。
お願いいたします。
ということや。
何か野々村さんに参考になる話はあるか?あんな人殺しが殺されてしもうても俺たち知らんわ。
関係ねえやなぁ。
そうや。
そうや。
(光男)和田なんちゅうのは殺されてもあたりまえの男や。
そうや。
当たり前や。
こんばんは。
昌三遅いで!懐かしいなぁ!何年ぶりやろな?昌三駆けつけ3杯や!今日は久しぶりにジャンジャンやろか!野々村さんいらしたんですか!本庁の大先輩だ。
勢力さん今回は一人でお戻りですか?山下さんと一緒じゃなかったんですね?えぇ哲は仕事が立て込んでるんで別々に帰ろうって話になって。
貧乏暇なし社長なんて名前だけさ哲のヤツは。
ハハハハ…。
勢力さん少しお話できますか?今ですか?はい。
野々村さん久しぶりに昌三も島へ帰ってきてさ寝屋子たちが顔を揃えたんや。
積もる話ってやつをさせてやってもらえまへんか?わかりました。
私今夜島に泊まりますので明日また。
(中村や勢力たちの歌声)〜
(トンビの鳴き声)〜
(船の汽笛)おはようございます。
どうぞ誰もいませんから。
あれは単なる偶然ですよ。
殺しの第一発見者が哲夫だっていうのは…。
私もビックリしました。
現場に行ったら哲夫がいたんでね。
殺されたのは和田修一なんですよ。
10年前にあなたたちの寝屋仲間だった濱口浩司さんを殺した…。
恐ろしい運命のめぐり合わせとしかいえませんね。
では捜査本部は既に犯人を絞り込んでるんですね?もちろん。
逮捕は時間の問題です。
昨日私をいろいろと案内してくださいましたけどあれはどういう意味が…?意味も何もありません。
わが故郷答志島を見てもらいたくてね。
そうですか…。
勢力さんタバコは?えっ!?さっき買ったでしょ?見てたんですか…。
灰皿取ってきます。
あなたはタバコを吸わない。
それ自分で吸うために買ったんじゃないんでしょ?勢力さん今我が家に科捜研の後輩が転がり込んでるんです。
引退した私から交渉人のあれこれを聞きたいっていつの間にか寝泊まりするようになった。
もしかしたら私は彼女の寝屋親ってことになるのかしら。
寝屋親はそんなもんじゃないですよ。
違いますか?寝屋親と寝屋子の関係は島以外の人間に…まして女にわかるとは…。
失礼しました。
とにかく彼女は熱心なんです。
おまけにクソ真面目で…。
融通が利かないのがタマに瑕ですけど。
野々村さんそろそろお引き取り願えませんか?まだ朝飯も食ってないもので。
彼女は警察官としての正義を固く信じています。
警察官は真実を追求して社会正義のための実践者になるんだと固く信じています。
勢力さんこの前おっしゃいましたよね。
「真実よりも大事なものがある」って。
それは何ですか?教えてくださいませんか…。
それは寝屋子同士の絆ですか?あるいは寝屋親との絆ですか?野々村さん今度その正義漢の彼女と会わせてもらえませんか?彼女と少し議論がしたい。
山下哲夫は2階ですね?〜〜彼と話をさせてください。
〜哲夫はもう何年も島には…。
〜勢力さんあなたが私に〜山下哲夫もこの島の出身だと〜教えてくださったのはあなたに〜まだ警官の正義感が残っていたからだ〜と思いたいです。
〜〜「正義」か…。
〜
(船の汽笛)すみません。
すみません。
山下哲夫さんが以前住んでたお宅ご存じですか?
(風鈴の音)
(中村)野々村さん!あぁ中村さん…。
この島で勝手な真似されたら困りますわ。
〜ここで暫くおとなしゅう〜しとってもらえますか…。
〜中村さんが和田修一を?〜そうや!〜何で?〜野々村さん!?〜来るな!来たらアカン!〜来るな言うてるんや!〜〜寝屋子の濱口浩司が殺されたからですか?殺した和田修一に寝屋親として復讐したんですか?黙っとれ!〜〜駐在さん!〜
(駐在)お嬢さんな九鬼嘉隆の「首塚」の場所…。
〜三重県警に緊急配備の要請をお願いします!〜〜あんた何や?〜〜警視庁の向井です。
〜これはこれは〜大変失礼いたしました。
立て籠もり事案が発生しました。
もう急いで早く!〜中村さん話してくださいませんか?何を?濱口浩司さんが殺されたあの時現場にいらしたんですか?あぁおったよ。
みんなおった。
浩司が人質になってもうたとわかって車飛ばして東京へ駆けつけたんや。
(ヘリコプターの飛ぶ音)浩司!浩司!みんなここにいるぞ!頑張ったな!待てよ!?うっ…!浩ちゃん!?浩司!?何であんな酷い殺し方をせにゃあかんのや!わしらの手の届くところに浩司がおったんや…。
私もずっとその事を知りたかった。
なぜ和田さんが濱口さんを一度解放したのに殺したのか…。
でもこの島に来て今中村さんの話を聞いてやっとそれが判りました。
判った?何が判ったって言うねん!?和田修一はあなた方に嫉妬したのだと思う。
彼は「別居中の妻を連れて来い」と要求した。
でも奥さんは来なかった。
それなのに人質の濱口さんには大勢の仲間が答志島から来て…。
浩司!お〜い!みんなここにいるぞ!みんな一緒だ!お〜い!籠城中和田と濱口さんは打ち解けていた。
お互いに田舎から出てきて東京で苦労した境遇を語り合って…。
和田さんは濱口さんのことを自分と同類だと思っていた同じ仲間だと思っていた。
ところが濱口さんには別に仲間がいた。
寝屋子という強い絆で結ばれた仲間がいた。
それで和田さんは濱口さんに裏切られたと思って…。
お〜い!待てよ!?うっ!?私はずっと和田さんと10年間手紙のやり取りをした。
〜〜私は10年前起きた事件に偶然関わった警察官にすぎない。
〜なのに和田さんは私とだけ〜手紙のやり取りをした。
心の許せる自分の気持を〜打ち明けられる友達が私しか〜いなかったみたいで…。
私も似たようなもんだから〜身につまされた。
〜〜私は東京で独りぼっち…。
〜うらやましいわ中村さん…。
私には犬のハナとおばあちゃんの形見の着物があるだけ…。
〜〜山下…山下哲夫!何や!何やお前は?あなたたちの寝屋親が今何しているか知ってるの!何や!何やアンタ?お前かあのオバチャンの秘蔵っ娘っていうのは!勢力警部補たった今三重県警に緊急配備の要請をしてきました。
あなたも刑事だったら野々村さんを早く救出して山下を警察に出頭させなさいよ!離せ!離せ!いつまでこんなことをしてるんです?私だってあなたと同じように手の届くところにいた和田さんを奪われた。
だからそれが悔しくてしかたがない。
私は和田さんの寝屋親のつもりなんです。
同じ屋根の下に暮らしたことはないけどそのつもりなんです。
だから和田さんの敵をとるまでは帰れない。
お互いに同じことを繰り返すのはやめましょうよ。
寝屋親はそんなもんやない。
勢力さんと同じことを言うのね。
じゃあ寝屋親っていったい何ですか?中村さん。
寝屋子の犯罪に手を貸したり匿ったりすることが寝屋親の務めですか?あんたな何言うとんのや。
和田さんを殺したのは山下哲夫ね。
違うっ!和田を殺したのは儂や。
目撃者の老人に怪我させたのも?儂や間違いない!哲夫は何の関係もあらへんのや。
すべて儂が…。
はい儂や。
何やっとんのや。
何でさっさと浩司の墓参りに行かへんのや。
親父邪魔が入った。
東京の刑事だ。
(中村)何やて?今親父んとこの2階にいる。
野々村さん助けて!野々村さん!やかましい!向井さん!親父どうしたらいいんだ?親父!親父!こんな女俺が殺してやるよ。
昌三…哲を頼む。
かけ直すわ。
中村さんちょっと話をしていいですか?昔の話ですけど…。
私結婚して三月で夫を亡くしました。
自殺でした。
原因は今でも判りません。
おまけに流産までして。
夫と暮らした部屋にいられなくて実家へ逃げ帰りました。
誰とも会いたくなかった。
口もききたくなかった。
母が食事をドアの前に置いてくれておトイレ以外は一歩も自分の部屋から出なかった。
何で今そんな話を…?もう少し我慢して聞いてください。
ある日父が黙って部屋に入ってきた。
タバコをゆっくり吸って〜出て行った。
「よかったら…」って〜タバコとライターを置いていった。
両切りの強いタバコ…。
〜私は吸ってみた。
咳が出た。
煙が目にしみて〜涙が出た。
でも私は我慢して〜父と同じように〜ゆっくりと最後まで吸った。
〜タバコの煙を見ながら…〜私は父が来てくれるのを待っていたのかも〜しれないと思った。
父が手を差し伸べてくれるのを待ってたんだなぁって…。
〜〜次の日から仕事に復帰した。
〜おしまい。
〜みんなもジッと待ってるんだと思うあなたが来るのを…。
〜儂は…どないしたら〜ええんや…。
〜行けばいい彼らの側に。
〜行くだけでいい。
それが〜「親」のL3めだと;dは;Wう。
〜哲…哲夫!他のみんなも聞いてくれ!
(中村)みんなに
Uる。
儂が間違うとった。
やっぱりあの時すぐに哲夫を自首させるべきやったんや。
(中村)哲夫!親父…!〜〜あなたは?保護司の松崎先生の〜使いの者です。
先生は今日突然都合が〜悪くなられまして私に和田さんのお相手をするようご指示がありまして…。
〜私は今日これから〜用もありますので明日松崎先生には〜改めてこちらから伺います。
いえいえ松崎先生からお金も預かってきてるんです。
〜和田さんにつきあって〜いただかないと叱られます。
〜どうぞ。
〜〜こちらです。
〜〜どうぞ。
〜あなたたちは?和田さん。
私ら10年前あなたに殺された濱口浩司と縁のあるもんや。
いやそりゃなぁあんたも社会的制裁を受けられた。
そやけどそれだけじゃ浩司の霊が浮かばれへんと考えとんのや。
納得でけへんのや。
私にどうしろと?あなたはどうされるおつもりですか?その答えを浩司の墓前に供えるつもりなんや。
私は…命日に答志島へお邪魔してお墓参りを…。
そんなことをさせるかっ!〜お前なんかに島の土を踏ません。
絶対に許せん!〜〜やめろ!〜アホ!〜これで良かったんだよ。
〜浩司もきっと喜んでるよ。
〜親父心配すんなよ。
俺何にも〜失うものないからよ!かあちゃんには逃げられるし工場借金だらけだし…!〜〜哲夫!〜〜戻れ!哲夫!〜〜親父どうする?浩司の命日まで〜哲夫を守ってやろう。
命日にみんなで〜墓参りしてさ。
〜〜それからでも遅くない。
〜後は俺に任せてくれ。
うまくやるからなぁ親父!〜〜野々村さんにイタズラ電話かけたのも笠原さんを怪我させたのもあなたなんですか…!?
(中村)哲夫聞いてるか?お前が悪いんやない。
儂が悪いんや。
儂がお前を人殺しにしてしもうた。
儂もこの手で和田を殺したかった。
殺しとうて呼び出したんや。
そやけど儂は出来へんかった。
そんな儂の気持がお前に乗り移って…。
(戸が開く音)哲…哲夫!〜お前昔から「はい判りました判りました」言うて〜儂の言うこと何でも素直に〜聞いてくれた。
そやからいうてな何も儂の〜気持を察してそこまで…!許してくれ。
儂は寝屋親〜失格や…。
〜〜親父!〜〜親父!〜〜
(一同)親父!〜〜親父!〜哲…許してくれよ!〜親父は悪くねえよ!〜〜向井さん!〜野々村さん!〜怪我はない?〜〜野々村さん私怖くて…!〜交渉人は泣かない。
〜泣くならやめる。
〜進むの進まないのどっち?〜〜進みます!〜〜よ〜し!中村さ〜ん。
野々村さんお騒がせしました。
みんなで警察へ行きます。
(山下のむせび泣き)すみませんでした!
(山下のむせび泣き)哲夫のヤツは島にいる時はいいヤツだったのになぁ。
みんな東京へ行っておかしくなっちまった。
俺も同じか…。
お墓へ寄ってからでも遅くはないわ。
(山下のむせび泣き)
(警備艇の警笛)お〜い早うせんかな!
(駐在の叫ぶ声)私話してきます。
時間ください。
〜〜稚内の海に流れ着くかも〜しれないから。
〜誰か彼の友達が〜拾ってくれる…。
〜そうですね。
きっと誰か〜拾ってくれますよ。
〜2014/06/06(金) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス 市原悦子スペシャル 犯罪交渉人ゆり子