バークレー白熱教室 大統領を目指す君のためのサイエンス 第4回  2014.06.06

アメリカ屈指の名門校…その創立は1868年。
10校あるカリフォルニア大の系列でここが本校。
最も古い歴史を誇っています。
サンフランシスコのベイエリアを望む4.8平方km。
東大の4倍を超える巨大なキャンパスで3万6,000人が学んでいます。
バークレー出身の物理学者はアメリカ科学史のキーマンとなってきました。
核開発の中心的人物だった…1997年ノーベル物理学賞を受賞したチュー博士はクリーンエネルギー推進の中心的な人物。
現在エネルギー省の長官を務めています。
今バークレー校で物理学の教鞭をとるのが…教授の講義は…大統領なら…あらゆる危機にも瞬時に判断を下さねばならない。
そのために必要な知識や数字をレクチャーします。
今回の講義は「原子力」についてです。
原子力についても正しく知らねばなりません。
ただ恐れているわけにはいかない。
背を向けたままではいられないからです。
最も重要な事は何が危険で何が危険でないのか。
誰にとっても良い決断を下すためには客観的に原子力の事を知る必要があるのです。
今回はムラー教授が原子力にまつわるサイエンスを解き明かします。
(拍手)ありがとう。
講義に参加してくれてうれしいよ。
今回のテーマは誰もが心配し恐れている事について。
核兵器と放射能を取り上げる。
ここにあるのは「ガイガーカウンター」だ。
この装置は放射能を検知する。
ここでクリックと鳴っている理由はこの部屋の中に放射能があるからだ。
ガイガーカウンターがここに放射能がある事を検知している。
我々は放射能に囲まれている。
アメリカペンシルベニア州スリーマイル島での原発事故後の放射能漏れでたくさんの人がガイガーカウンターを買った。
1979年当時500ドルもしたがみんな心配で買った。
そしてガイガーカウンターを使ったところ地域の全てから放射能が検出された。
大きな恐怖の原因となった。
本当は事故前に放射能を測りそして事故後数値に違いがあるかどうかを見るのが一番いい。
この教室の放射能はかなり低いようだ。
放射能とは何だろう?「放射性がある」というのはどういう意味か?最初に分かってほしいのは放射能を持つ物質は自然に崩壊する物質だという事だ。
…と言っても物質自体が崩壊しているのではなく個々の原子が崩壊している。
不規則にだ。
放射能の最も驚くべき点の一つはこの不規則なところ。
どんな物理学者でもどの原子がいつ崩壊するか予測できない。
これは確率的な現象だ。
「半減期」とは半分の原子核が崩壊する時間の事だ。
半減期は10分から100億年以上まである。
しかしいつ崩壊するかは予測できない。
それが予測不可能だという事が物理学的に最も驚くべき事だ。
根本的なところで予測できない。
例えば原子がアメフトスタジアムのサイズだとするとその原子を持つ質量とエネルギーのほとんどを占める原子核の大きさは1匹の蚊くらいになる。
原子の大きさはそのほとんどが電子の軌道で決まる。
電子そのものは非常に軽く原子の質量の大半は中心にある原子核にある。
ある原子核は確率的に崩壊する。
その時放射線を出す。
放射線を出す能力を「放射能」と呼ぶ。
放射能はこれらの原子が自然に崩壊した結果だ。
しかしいつ崩壊するのか予測できない。
同じ原子が二個あったとして物理学ではこの二つを区別する事はできない。
しかし一つは崩壊しもう一つは崩壊しない。
物理学ではこれを予測する事はできない。
これが放射能だ。
そこから出てくる破片は何だろう?放射能のエネルギーは原子核の周りを回っている電子から出てくるのではない。
原子核はぎっしり詰まっているために崩壊する時大きなエネルギーを放出する。
そのエネルギーはTNT火薬の爆発エネルギーより何百万倍も大きい。
ガソリンのようにTNT火薬の15倍ではなく何百万倍。
場合によっては数千万倍だ。
こういうすごい数字のすさまじいエネルギーだ。
しかし放射能がフランスの物理学者ベクレルによって発見された1800年代後半にはこれほどのエネルギーが放出されているとは分からなかった。
理解し難いものだった。
それまでの物理学者の経験とは全く異なっていた。
放射線が出る時エネルギーも一緒に放出される。
そのエネルギーは原子核の破片が持つ。
その破片は生物にダメージを与えるだろうか?細胞のある箇所に正確に作用するか体に取り込まないかぎり害は少ないと言えるだろう。
この音が鳴るのは放射線を検知している事を示す。
この部屋の中にある原子核が崩壊しているかあるいは宇宙船かもしれない。
土から出ているかもしれない。
崩壊の際かけらが放出されている。
この「ウインドー」と呼ばれるものは薄い金属で放射線が入るように作られている。
原子核の破片が入るのだ。
入るとそれをきっかけにして放電が起こり検知できる。
かつてガイガーカウンターはマイクとつながれクリックの音が聞こえた。
今はより高感度でコンピューター回路を通して同じクリックの音を出す。
みんなこの音に慣れているからだ。
見てくれ。
クリック音がしているね。
この部屋にも放射線があるからだ。
ここにいろいろなものを用意した。
石もある。
私が集めたものだ。
(クリック音)
(クリック音)放射線が出てこの中に入っていく。
手に持っている。
見てくれ。
(クリック音)手で遮蔽できる。
私の腕時計にも放射能がある。
この腕時計が大好きだ。
放射性物質が使われている。
中の原子核が崩壊し放射線を出すが遠くまでは届かない。
ほら私の手で遮れる。
腕時計のケースで止まるようにデザインされている。
針からたくさんの電子が放出されている。
その電子は暗闇で針を発光させる。
そうするとボタンを押す必要はない。
暗闇で光らせるのは放射能の最初の利用法の一つだった。
こっちはもっと古いものでコンパスだ。
これは放射線が出る。
見て聞いてくれ。
これは違うタイプの放射線だ。
(クリック音)時計からは出ないが古いコンパスからは出る。
これはラジウムという物質だ。
最初に研究された放射性物質の一つ。
この研究でキュリー夫人はノーベル賞を受賞した。
ラジウムを分離し精製した。
このコンパスはそんなに危険ではないのだが今アメリカでは違法となり製造禁止だ。
フリーマーケットのような所で手に入る。
こんな古いものが手に入るのは珍しい。
本来はそんなに危険ではない。
だが作った作業員には危険だった。
塗装用の筆でラジウムを針に塗った。
この作業をした人たちは…筆を使った事があれば知っていると思うがしばらく使うと筆の先がバラバラになってくる。
そして先を舌でなめて改めて10個に塗る。
そしてまたバラバラになってまたなめる。
ラジウムを扱った作業員の多数が舌のがんにかかった事が後に明らかになった。
1900年代前半の頃だった。
だからもうラジウムは使わない。
代わりに使われたのはトリチウムだ。
放射能レベルがとても低いので時計から漏れない。
ケースを割っても塗料の中でとどまり外に出る事はない。
この腕時計が私は大好きだ。
寝ていて暗闇の中で起きて「もう起きる時間か?」と思ったら時計を見ればすぐ分かる。
これは面白い。
これはランプで使われているマントルと呼ばれるものでランプの中に使われている。
これが燃料を吸収して火がつくとキャンプの時とても明るい明かりになる。
(クリック音)
(クリック音)なぜランプのマントルは放射線を放射するのか。
(クリック音)トリウムという物質が使われている。
放射線をたくさん放射する。
トリウムをランプに使う理由は熱せられると目に見えない赤外線を目に見える光に変えるからだ。
とても便利な科学的性質を持っているが放射線を出すためアメリカでは禁止されつつある。
もう販売されていない。
これは古いものだ。
放射能はとても長く続く。
質問だね?はい。
ガイガーカウンターでは石とカウンターの間に手を入れる事によってクリック音が鳴らなくなりました。
(クリック音)そうです。
止まりましたね。
どんなものが放射能を遮れるのでしょうか?これくらいの放射能だとほとんど何でも。
これはアルファ線を放射する。
アルファ線の粒子はかなり重い。
物質を通る時電子がたくさんぶつかってエネルギーはなくなる。
そのため手の中で止まる。
でもある種類の放射線例えばX線は簡単に体を通る。
放射線はその種類によって違う性質を持っている。
アルファ線は私の手にダメージを与えるがX線は通ってもほとんどダメージを与えない。
ダメージの量はその性質による。
放射線医学がこれを研究して何に役立てられるか研究している。
実は私たちの身の回りに飛び回っているという放射線。
ムラー教授がこれから行うのはその放射線の動きを目で見る事ができる驚きの実験です。
我々は自然放射線に囲まれている。
実はこの部屋にも放射線がある。
多くは宇宙から来る。
ここに「霧箱」というものを用意した。
底の部分を冷やしてアルコールを入れてある。
雲が出来かけている。
これはアルコールの雲だ。
小さなアルコールの粒だ。
放射線が中を通ると雲が出来る。
ちょうど飛行機曇のようにね。
放射線の通り道に雲が現れる。
霧箱はウィルソンが発明した。
放射線の動きを目で見えるようにする最初の方法の一つだ。
部屋の電気を消して見てみよう。
霧箱の中はアルコールの蒸気が過飽和状態でギリギリ気体の状態を保っています。
そこに放射線が通ると粒になり雲が出来ます。
これで放射線の軌跡が見えるようになるのです。
ちょうど飛行機雲のようです。
霧箱はスコットランドの物理学者チャールズ・ウィルソンが1897年に発明した装置です。
ウィルソンはこの研究でノーベル物理学賞を受賞しました。
これらはほとんど宇宙から来ている放射線の軌跡だ。
このように我々は放射線に囲まれている。
放射線は人間の体にどのような影響を与えるのだろうか。
少しは体の中に入っている。
分子を破壊する。
分子は生き物に不可欠なものだがごく少量なら放射線が体に入ってもほとんど影響はない。
生体への影響を測る単位はレムremだ。
シーベルトも使う。
更にミリシーベルトもよく使う。
放射線の種類や受けた体の組織によって影響は異なるのでそれを考慮した数値がシーベルトやレムという単位を用いて表される。
1レムは大きな数字だ。
はい君。
ガイガーカウンターはどれくらいのレムを測るんですか?レム放射線の生体への影響は測れない。
カウントするだけだ。
放射線の影響を知るにはその種類も知らなければならない。
この程度のカウントなら放射線は10億分の1レム以下だ。
心配は要らない。
ムラー教授の講義は原子力の核心へと進みます。
原子力に関する科学的な知識がエネルギー問題を議論するうえで欠かせないものだからだと教授は説きます。
原子力では最も重要な放射性物質がウランだ。
その使い道は時計に使われたラジウムとは全く違ったものだ。
二つの使い道がある。
原子爆弾と原子炉で使われている。
これは核爆発の写真だ。
現在放射能が大気中に拡散する事を考慮して地上では核実験は行えない。
これは1957年の写真だ。
原子炉で事故が起きて放射能が漏れるのと同じで大気中に拡散すると我々が吸い込む可能性がある。
ところで放射能で細胞が汚染されるわけではない。
放射性の原子が体に触れると汚染される。
シャワーをよく浴びたらきれいになる。
肺に吸い込んだ場合は深刻だ。
吸いこむと血流にのって細胞に入る。
この時放射能に汚染されたと言えるが細胞が放射能を持つようになったのではない。
細胞に入ったのだ。
このように汚染されるのが核兵器と原子炉の最も大きな危険の一つだ。
まずは核兵器についてその仕組みについて話そう。
そして実験する。
核兵器を可能にした発見は「連鎖反応」というものだ。
中性子が他の原子に当たったら…。
これは本物の中性子ではない。
代わりに使うゴムボールだ。
遅い中性子がウランに当たったらその中性子を吸収して不安定になって10億分の1秒で核分裂する。
それで放射線を出す。
速い中性子が当たるとはじき返す。
速いものでも時々できるが確率を高めたいなら中性子を遅くさせる。
中性子が吸収されたら原子核が不安定になってものすごい勢いで2つに分裂する。
これを「核分裂」と呼ぶ。
細胞分裂と同じなので「分裂」と呼ぶ。
分裂して分かれた破片はすさまじい量のエネルギーを放出するがウランとプルトニウムで重要なのは大きな破片2つが放出される事だ。
核爆発の最大の危険は放射能と分裂の破片つまり分裂によって出来た他の原子核だ。
もちろんエネルギーも。
ウランの場合は2つの破片以外に中性子を2つ放出する。
その中性子が別のウラン原子に当たるとそのウランも核分裂する。
それぞれ更に2つ中性子を放出する。
中性子1つで始まり2つになって4倍8倍16倍32倍128倍と指数関数的に増加する。
はい。
原子炉内の中性子は本来速いものなんですか?そのとおり。
原子炉内の中性子はもともと速いのだ。
速い中性子の場合は次の核分裂を引き起こしにくい。
原子炉では速い中性子を遅くさせる必要がある。
それには水か炭素で囲む。
中性子を減速させるという。
遅くなって別のウランに当たって分裂する。
原子炉の場合は分裂して中性子2つが放出されたら一つは逃がしたい。
そして残り一つの中性子で次の分裂を起こさせる。
そうすると一定の数の核分裂が継続する。
一つが分裂してまた一つの中性子が放出されるのを「1世代」と呼ぼう。
この繰り返しだ。
これが原子炉だ。
放射されている時間あたりのエネルギーパワーは安定した数の核分裂による。
原爆では中性子を2つとも次のウランに当てる。
それにはたくさんのウランが必要だ。
ターゲットの原子核はすごく小さい。
スタジアムの中にいる1匹の蚊に当てるのと同じ。
しかし蚊はスタジアムのどこにいるか分からない。
ほとんど外れる。
だからたくさんのウランが必要だ。
確実に当たる量のウラン。
それが「臨界量」だ。
第2次世界大戦の時ドイツでは臨界量はすごく大きくて連鎖反応を起こすようなものは造れないと考えられていた。
しかし臨界量を集めて組み立てたら2倍4倍8倍16倍32倍64倍128倍256倍と連鎖反応を起こす。
全てのウランを核分裂させるにはどのくらいの世代が必要だろうか?ある質量のウランの中の原子核を全て核分裂させるのに必要なのは…すごいね。
次の核分裂までの時間は1億分の1秒程度なので72世代。
核分裂させるのにかかる時間はざっと…それが原爆の仕掛けだ。
しかしプルトニウムでは1世代の核分裂で中性子は2つではなく3つ放出される。
だからもっと速く反応する。
48世代で全て核分裂させられる。
連鎖反応でもう一つ重要な事がある。
72世代ではなく71世代で止まったらどうなるか。
計算するのは難しそうかな。
放射されるエネルギーはどのくらいだろうか?半分です。
そのとおり。
最後の世代で全ての爆発から2つの中性子が放射され更に2つの原子を爆発させるので最後の1世代でもエネルギーを2倍にしている。
つまり71世代で止まったらエネルギーは半分になる。
3世代減らすと8分の1。
6世代減らしたら64分の1となるので大きな違いだ。
正確に作用させなければ原爆の威力は得られない。
これが難しいところだ。
ネズミ捕りが並べてある。
それぞれは原子核だ。
ちょうどいい所に当たったらはじけてエネルギーを放出する。
加えて中性子を2つ放出する。
丸いボールが中性子だ。
1つの中性子を落とす。
当たるかもしれない。
当たらなかったら失敗だ。
当たれば2個のボールがはじける。
それも当たれば4816とすぐに増える。
気付いてほしいのはこの倍増だ。
だんだんとうるさくなって全てがはじけたら終わる。
これは原子爆発の原理だ。
中性子に当たって連鎖反応を起こせるかどうか見てみよう。
外れるかもしれない。
失敗するかもしれない。
これが原子核の連鎖反応だ。
(拍手)核分裂の連鎖反応の仕組みを確認してムラー教授の講義は原爆へと進みます。
世界の安全保障を考えるうえで現代においてもなお核の問題は避けられないからです。
さあ原爆そのものの話をしよう。
これはアメリカの最初の原爆だ。
広島に落とされた原爆の写真だ。
この机と同じ大きさだ。
右側の赤いものは臨界量の半分のウランだ。
左側のと同じ半分の大きさ。
その裏に爆薬を置く。
まるで大砲だ。
重さは5tくらい。
両側にウランが置かれている。
黄色が爆薬だ。
これが爆発し左側のウランが反対側に突っ込んで臨界量に達する。
ウランの場合は臨界量の半分を用意してそしてもう一つ用意する。
2つを合わせると臨界量に達する。
この時中性子はもう漏れない。
倍になり倍になりそして72世代ですさまじい量のエネルギーが放出され爆発する。
TNTの3,000万倍だ。
ウラン型原爆の場合高校生でも造れるといううわさが広まった。
これは真実だ。
ただし高校生が大砲を扱えたら…だけどね。
でも難しくはない。
7.5kgの塊を2つ用意して当てる。
それぞれを大きく造り過ぎると持っているだけで爆発する。
ちょっと複雑なところもあるが賢い高校生か大学生なら造れると思う。
難しいのは必要な量のウランを手に入れる事だ。
普通のウランではなくウラン235が必要だからだ。
これはウランの中に0.7%しか含まれていない。
その特別なウラン235を抽出するにはどうすればいいか。
すごく難しい。
第2次世界大戦中のアメリカでは「カルトロン」という装置が発明された。
この大学バークレー校のローレンス教授が発明した。
カルトロンでウランを分離する事ができた。
1945年ごろ戦争が終わりそうになった時ウランを分離して爆弾を1つ造れるぐらいのウラン235が出来た。
爆弾は全くテストなしで造られアメリカの大統領は日本に落とすと決断した。
死者は14万人と推定されている。
都市が完全に破壊されたため正確には算出できていない。
私はイラクのサダム・フセインとイランの原爆を「潜在的な爆弾」と捉えている。
フセインは第2次湾岸戦争以降は造っていなかったが第1次湾岸戦争のあとは原爆を造ろうとしていた。
証拠の写真がある。
フセインは原爆を造っていた。
イラクではこのカルトロンを使って核兵器を造っていた。
これは国連の写真だ。
第1次湾岸戦争後核兵器を設計し造っていたのは間違いない。
国連の報告もそう伝えている。
だから2回目にイラクが査察をさせなかった時フセインはまだ造っていると思われた。
ところが第2次湾岸戦争後は実際には造っていなかった。
アメリカは間違えたのだ。
だがイランはこれから造る危険はある。
未来の大統領が知らなければならない事はこれだ。
原子炉を動かすにもウランを濃縮する必要がある。
ウラン235を抽出する必要がある。
イランは必要量の25%を抽出した。
25%抽出したら100%までは簡単だ。
90…80%なら十分だ。
今そうしている。
遠心分離機でウランを精製している。
爆弾に使えるほど良質ではないが近い。
イランが言うには「我々は爆弾を造る予定はない」。
それは本当かもしれない。
しかしその20%を持つ以上気が変われば数週間で原爆を造れる。
現実的には数か月だろうが。
「爆弾造りに興味はない。
爆弾は造りません。
爆弾に使う材料を作りません。
20%を限界とします」と言いながら爆弾にすごく近づいてきた。
20%まで作るのは難しいが20%から80%に上げるのはごく簡単だ。
気が変わればすぐに爆弾を造れる。
それがイランの問題だ。
だからイランが地下に設置している遠心分離機について心配している。
もう一つの原爆はプルトニウム爆弾だ。
長崎の原爆はこれだ。
これも5tだ。
プルトニウムの原爆では違う種類の材料を用いる。
プルトニウムだ。
プルトニウムは原子炉で作られる。
原子炉から出る。
それを科学的に分離する。
それは簡単だ。
原子炉さえあればかなり簡単だ。
北朝鮮も原子炉を持っているからプルトニウムを分離しないように調査した。
しかし北朝鮮は査察に不満を抱き「査察はもうさせない」と言いきった。
そして孤立し始めた。
核実験を行ったからだ。
原爆を爆発させたからだ。
しかも2つ。
開発に成功した事を世界に見せたのだ。
北朝鮮は核保有国だ。
でも北朝鮮を核保有国と呼ぶ意味を理解しなければならない。
君たちが考えているのとは少し違うかもしれない。
アメリカが持つ飛行機に搭載できる原爆。
それともロシアが持つ原爆がニューヨークに落とされたと考えてごらんなさい。
どれくらいのダメージを与えるだろうか?これがその範囲だ。
被害は広範囲に及ぶ。
ニューヨークに詳しくないかもしれないがマンハッタンの重要な場所を丸ごと破壊できる。
郊外の住宅街までは届かないがその破壊力は強大だ。
半径7〜8kmだ。
だから人は原爆を恐れる。
アメリカがデザインした近代的な原爆ではなく北朝鮮が1回目に実験した原爆がマンハッタンの真ん中で爆発したとすると起こる被害を見せよう。
あの赤い点だ。
1回目の核実験は失敗した。
アメリカのものほど出来はよくなかったので数世代届かず威力は小さいものだった。
もしセントラル・パークの真ん中に落ちても両側のビルまでは届かなかっただろう。
これが重要だと思う。
私は北朝鮮はまだ核保有国ではないと見ているが近づきつつある。
その原爆の開発を阻止すれば危機は避けられるかもしれない。
イランと北朝鮮はまだ5tの弾頭を運べるミサイルは持っていない。
今アメリカの原爆は小さい。
写真はないがこれくらいの大きさだ。
それはたくさんの研究と科学者たちの研究の結果だ。
爆弾の研究ができる科学者だね。
私は造る気はない。
ミサイルに載せられるほど小さい原爆をデザインするのは難しい。
プルトニウム型原爆には高度な技術が必要となる。
この場合は内に向けて爆破させなければならない。
プルトニウムを爆発物で囲んで風船を握り潰すみたいにしかも指の間から漏れないように完璧に握らなければならない。
風船だったら絶対に漏れるだろう。
それがものすごく難しい技術だ。
北朝鮮はそれに挑戦しようとしている。
教授の懸念はすぐに現実のものとなってしまいました。
この講義が行われたあと北朝鮮は2013年2月3度目の核実験に踏み切りました。
その威力は広島に投下された原爆の1/2ほどに迫ったとされています。
更にミサイルの性能も向上してきています。
ムラー教授の指摘する危険性は現実味を帯び始めています。
教授の講義は放射能の持つ危険性へと進みます。
大統領を目指す君ならば放射能が人体に及ぼす影響は必ず知らなければならないサイエンスだからです。
では放射能を浴びる危険について話そう。
起きる事は2つ。
体の中の分子が崩壊する。
酵素が破壊される。
大量に浴びると病気になる。
病気になるほどのレベルだとそのダメージはレムで測れる。
体全体が受ける影響を表す単位だ。
それを浴びたら半分の人は病気になる。
それ以下だと割合は減る。
3.5シーベルトを受けると半分の人は回復できるが半分の人が死に至る。
放射線治療というものがあるがそれはこの放射線障害を利用しているのだ。
放射線治療では放射線を照射する。
がんの位置が分かればその部分だけに照射するのが理想的だ。
普通の細胞は放射線による障害から回復できるががん細胞はできない。
普通の細胞ほど回復力が強くないからだ。
だから体の一部または体全体に放射線を照射するとがん細胞は死に他の細胞は回復する事が多い。
しかし3.5シーベルトを超えると治療なしでは半数の人は死ぬ。
1,000レムつまり10シーベルトを超えると手の施しようはない。
確実に死ぬ。
体はもう動かない。
体内の複雑な仕組みが壊される。
これが放射線障害だ。
チェルノブイリでは悲劇的な事が起きた。
数十名の消防士が放射線障害で亡くなった。
福島では放射線障害をある程度防げたのではないかと思う。
もう一つの現象がある。
放射能を少しだけ浴びた場合でもまだ細胞が壊される可能性がある。
ダメージを大きく受けると細胞が変化し細胞は死ぬだろう。
しかしあるレベルで放射線が当たって細胞が変化すると「自分をコピーする」という遺伝子のスイッチが入る。
コピーし始めがんになる。
がんだ。
細胞が倍増し続け72回目の倍加で体の大部分が覆われる可能性がある。
それががんというものだ。
あるレベルでダメージを与えられるとこの増殖が始まる。
確率はすごく低い。
1つのがん細胞をつくるには平均的にどのくらいの放射線量レム数が必要だろうか。
確実に1つがんをつくるには25シーベルトが必要だ。
大量の放射線だ。
でもこれでは死んでしまう。
だから放射能を浴びせてがんを引き起こす事は無理だ。
なぜなら3.5シーベルト以上を浴びるとがんになる前に半分が死ぬ。
がんを発生させるには25シーベルト必要だがそれは無理なんだ。
25人それぞれが1シーベルトずつ浴びると全員具合が悪くなるが回復する。
ここでは全員が浴びた放射線量の合計は同じ25シーベルトだ。
合計では同じ量だが25人で受けたわけだ。
ところががんになる確率は高まる。
25人のうち1人はがんになる。
浴びる放射線が1シーベルト増えるごとにがんになる確率は4%ずつ上がる。
放射能によるがんつまり危険性とはこの事だ。
即死するような大きな放射線量ではなく小さい量の放射線が何人に広がるのか。
トータルで受ける放射能からの影響が深刻なのだ。
それは人それぞれが受けた放射線量掛ける人間の数だ。
これが危険性を表す数字と言えるだろう。
それがチェルノブイリでは起きた。
チェルノブイリでがんになった人は2万4,000人だ。
どのように起きたのだろうか。
放射能が広がったが人々は作物を食べ続けた。
最初は原子炉で働いていた人々以外に放射線障害はほとんどなかったのに。
この広がった放射能が死の原因となった。
がんが確実に発生する数字は25シーベルトだったね。
表を見よう。
左はがんになる確率の増加と放射能の量だ。
この数字は実際に人が放射線を浴びた外部被ばくのケースを表している。
これほどのレベルの放射能を浴びた人は少ないのでまだ分からない事がたくさん残っている。
でもこれによるともし1シーベルトの放射能を浴びると半数くらいは放射線障害になるしがんになる確率は4%となった。
ところで我々は低い放射線量がどう影響するかまだ分かっていない。
低い数値を見ると数字は0.03シーベルトでがんの発生率は0だ。
低い放射能だと細胞は自分で回復できるからかもしれない。
誰にもまだ分かっていない。
質問?はい。
放射線障害になった場合どう治療しますか?放射線障害の治療は基本的に命を保つ事だ。
血液は機能しなくなる。
酵素は破壊されて通常の体のプロセスは働かない。
輸血をしたり安静にさせて水分を補給したりなどだ。
放射線治療を受けた人も同じ事をする。
どうぞ。
がんの放射線治療はどのようにするんですか?放射線治療の基本的な概念は人体の細胞は回復力がいいという点だ。
がん細胞は増殖力が強いがエネルギーの全てを増殖に使う。
細胞にダメージを与えるとやり過ぎないかぎりあなたの体の細胞は回復するががん細胞は回復できない。
化学療法も同じ概念だ。
化学療法と放射線治療。
がんに集中できるから放射線治療はよく使われている。
甲状腺にがんがある場合化学療法を使う。
薬品は甲状腺に行きがん細胞にダメージを与える。
現代医学の最先端の治療と言える。
ところでチェルノブイリの写真を見ると近くのビルは無傷だね。
暴走的な核爆発だったのでビルは破壊されなかった。
その理由は原子炉での中性子は遅くダイナマイトレベルの爆発で原子炉のビル自体が破壊されて爆発が止まったからだ。
中性子の遅い原子炉では時間がかかりダイナマイトと同じレベルになるとビルが破壊されてプロセスは終わる。
チェルノブイリではそれが起きた。
こちらは福島第一原発だ。
爆発があったがそれは化学的な爆発だった。
水素ガスがビル内にたまり天井が吹き飛ばされた。
原子炉からはたくさんの放射性物質が放出された。
原子炉で起きる危険はそこに放射能が存在するからだ。
これは放出された放射線量を表している。
福島第一原発の周辺海岸地域の地図だ。
濃い赤の部分は放射線量が最も高いところ。
放射能が広がった。
多くは海に流れた。
内側の黄色の点線は避難地域となった30km圏を示している。
放射能のレベルを見ると高い地域では20ミリシーベルト以上になっただろう。
「20ミリシーベルト以上」とあるのであるところではもっと高い数値になるかもしれない。
どうぞ。
その地図では陸上の放射能は分かりましたが海洋環境の影響を表していません。
海は陸上と同じように回復しますか?魚はいつになったら食べても大丈夫ですか?そう魚を測らなければならない。
最初は魚の放射能の増加が見られた。
禁止するほどまでにはならなかったのだがでもこれも濃度が低すぎて測定が難しい。
ほとんどの放射能はヨウ素131のような早く崩壊する放射性物質から来る。
ヨウ素131の半減期は8日だ。
8日後放射能レベルは半分になる。
次の8日で残りのうちの半分が消える。
1か月後ほとんどのヨウ素からの放射能は残っていない。
最初から早く避難させたらその放射能のほとんどが消える。
チェルノブイリではそうしなかった。
他に半減期の長い放射能もある。
セシウムはその一つで長く残る事になる。
はい。
胸のレントゲン検査ではどれくらいの放射線を受けますか?普通0.1ミリシーベルト以下だ。
でも胸のレントゲンを撮らないと病気を発見できない危険があるから検査を受けるね。
危険性を比べている。
だが歯のレントゲンを断る人もいる。
歯のレントゲンでは0.01ミリシーベルト。
本当に小さな放射線量だ。
あなたの体のごく一部にミリシーベルト単位以下で放射線を当てるだけだ。
なのになぜ人は歯のレントゲンを怖がるのか。
理由は簡単だ。
皮肉だが放射能の影響が知られ人が放射能に恐れを見せると医療関係者は安全性を見せようとする。
レントゲンを撮る時2つの事をする。
鉛の入った重いシートを体の上に掛ける。
私の考えではごく低いレベルの危険性から守っているのだ。
でもこの重いシートを掛ける。
更にレントゲン技師は毎日そこにいるので撮影する部屋から出る。
技師に放射線を浴びさせたくないからだ。
私が計算したところ危険の確率はごく僅かだ。
こういったやり方が人々のレントゲン検査への恐怖心を生んでいる。
私たちはふだんの生活でどれくらいの放射線を浴びているのだろうか。
自然な状態で年間に受ける放射線量の世界平均は2.4ミリシーベルト。
健診で胸のレントゲン撮影を受けても0.1ミリシーベルトより少ない。
歯のレントゲンでは更にその程度だ。
飛行機で東京とニューヨークを往復すると0.1ミリシーベルト以上を受ける事になる。
はい君。
日本の福島では原発の周辺で野菜などの出荷が一時止められたと聞きました。
それはどう測定しての事ですか?人間は放射性になれない放射性を帯びないという事ですが野菜はどうなりますか?水などは?あなたの肌に放射性物質が付着するか食べたり空気で吸って体内に放射性物質が入れば人の体も放射線を出すようになる。
セシウムが植物の上に落ちてそして動物か魚がそれを食べたとする。
セシウム137の半減期は数十年だ。
あるいは植物の上に落ちてそれを食べて牛や人間の体に入ると放射線を出すようになる。
これは今調査されている。
ある地域で栽培した植物を全て出荷停止にする理由は低いレベルの放射能を測るのは逆に難しいからだ。
皮肉にも放射線レベルが低すぎる。
そこで汚染された土からの作物を食べてもがんの発生率は目立っては上がらない。
極端に低い数字だろう。
国の指導者にとってこれは難しい選択だ。
ごく少ないがんの発生率をどう扱えばいいだろう。
一つの例を挙げる。
我々はカリフォルニアに住んでいる。
バークレーに住んでいる。
ここで何かの事故で医療用の放射能が放出されこの地域が汚染されたとしたら。
数字を一つ挙げよう。
我々は自然状態でも一定レベルの放射線を受けている。
今回その仮想の事故で放射線のレベルが10ミリシーベルト増えるとする。
発生率の増加は0.04%だ。
あなたが生涯でかかるがんの発生率が例えば20%だとするならそれから増えて20.04%になる。
あなたは避難するだろうか。
この増えたリスクで避難したくなるだろうか。
増えた危険性をどう考えるだろうか。
しかし政府が強制的に避難させるから居続ける事はできない。
バークレー市の正確な人口は分からないが今10万人くらいだろうか。
政府は数十件がんが増える可能性があるので避難させると言う。
これは難しいジレンマを多くはらんだ決定だ。
では今回はここで終わりにしよう。
講義のあとにもみんなには考えていてもらいたい。
次回は未来のエネルギーについて話そう。
(拍手)2014/06/06(金) 23:00〜23:55
NHKEテレ1大阪
バークレー白熱教室 大統領を目指す君のためのサイエンス 第4回 [二][字]

原子力を科学的に知ることは、リーダーを目指す君には、必須の知識である。放射線、放射性物質の基礎、リスクを理解した上で、チェルノブイリ、福島原発事故を検証する。

詳細情報
番組内容
ムラー教授はまずガイガーカウンターを教室に持ち込み、教室にあるさまざまな物も微量ながら放射能を帯びているというところから講義を始める。原子力の仕組み、原子炉と原爆で起こる核反応の違い、核廃棄物をどう扱うべきかを学び、チェルノブイリ、福島原発事故のケースを踏まえつつ、事故のリスクの確率をどう判断するべきか考える。また核兵器の原理を理解し、イランや北朝鮮は核開発においてどの段階にあるのかを検証する。
出演者
【出演】カリフォルニア大学バークレー校教授…リチャード・ムラー

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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英語
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