日本の話芸 講談「山内一豊出世の馬揃え」 2014.06.07

(テーマ音楽)
(拍手)
(張り扇の音)
(一龍斎貞花)ようこそお越しくださいましてありがとうございます。
戦国の三賢夫人というのがございます。
これは夫を出世させたすばらしい女性の事を言ったもので豊臣秀吉の奥さんお寧々さん前田利家の奥さんお松さんそれに山内一豊の奥さんお千代さんのこの三人の事を申しました。
で一豊がなぜ貧乏だったか。
それは禄高以上に家来を多く持っていた。
これは人件費はかかるんですが家来が多ければ戦いの時に自分を守ってくれるまた敵を倒してくれる。
敵を倒せば禄高が上がる。
それでまた家来を雇う。
そしてアピールというのはこれは何も戦の時だけではございませんでふだんも大切。
立派な馬を飼う。
これは宣伝広告費なんですね。
(笑い)お千代さんも布の端布で見事な小袖を作って献上をする。
これは夫のためにすばらしいアピールです。
信長が浅井朝倉のために挟み撃ちに遭いました時一豊は頬に矢を受けるという重傷。
戸板の上に乗せられて運ばれながら「わしは戦うぞ〜!」。
これは苦しい戦いの中で将兵の心を高揚させてくれるすばらしいリーダーシップですから大将にとっては本当にありがたい家来です。
長浜の城主から掛川の城主になりました。
関ヶ原合戦の前小山会議の時に徳川家康に「私の掛川城を差し上げます。
ご自由にお使いください」。
これを聞いて家康は勝利を確信したとも言われておりますけれどもまぁこれはねM&Aなんです。
(笑い)以前は大が小を吸収する事を言ったものですが今は小が大に対して「どうか我が社を吸収してください。
そのかわり我が社を存続させてください」という事があるわけでだから戦国の武将が戦って領土を広げていったのも現在企業が営業をしてシェアーを広めていくのと全く変わりがないわけでまぁこうしてみますと昔も今も変わりがございません。
(張り扇の音)応仁の元年山名細川の両氏が権力争いを始めた時から起こったのがいわゆる戦国時代と申します。
この長く続いた戦国の世をなんとか平和にしようと大地に理想の杭を打ち込んだのが織田上総介信長でございました。
天正の頃には金華山岐阜の主となっておりました。
(張り扇の音)天正2年弥生半ば岐阜の城下で催されました馬市に見事な馬を曳きました二人の馬喰…。
「なぁ兄弟。
お前とこんないい馬引っ張ってきて商えにならねえのかな〜?ハア〜ッ。
『いい馬だ』と褒めてくれた侍は幾人も居たが『いくらだ?』って値聞いてくれた侍一人も無かった」。
「そうよな〜。
張り合い込んでやって来たがああ〜まったくしょうがねえな〜。
織田様は売り出しだとは言うけれどものべつ無しに戦してるから家来のほうまで金が染み込んでねえんじゃねえかな〜」。
「カ〜ッこんな事だったら他所の国行きゃよかった。
浅井だ朝倉だ越後の上杉甲州の武田三河には徳川と。
ええ?そらぁこの馬の一匹ぐれえな〜…。
まったく情けねえな〜」。
愚痴をこぼしておりますところ通りかかりました一人の若侍黒紋付きは羊羹色に変わり柄糸はほつれ鞘は剥げ見苦しき大小腰に通りすがりにこの馬に目をつけます。
「馬喰」。
「どうでえ?愚痴なんぞこぼすもんじゃねえやな。
『馬喰』と大きな声で来なすった。
こらぁきっといい買い手に違えねえや。
ええ?旦那…。
お〜い。
こらぁいけねえや。
汚え侍汚れた侍『くたぶれ侍』ってんだい。
ウ〜ン。
こんな侍に買えるわけねえじゃねえか。
ええ?旦那。
何かご用でござんすか?」。
人は身なりは整えたいもので馬喰の言葉つきが変わりました。
「いい馬だな?」。
「ええ。
今日の馬市でね〜これだけの馬はねえんでござんす」。
「うん。
ちょっと見せてくれんか?」。
「ええ〜。
見るは法楽ってぇますからどうぞごゆっくりご覧なすって」。
手綱を受け取ってまず第一番に馬相を見ました。
馬ですから馬相。
馬に人相はございません。
(笑い)馬ですから「顔は細長いが器量がいい」としてある。
馬の丸ぼちゃってのもいけませんで。
(笑い)「蹄は?」と見ると銀の椀も伏せ上がったかと思われるような実に手入れが行き届いている。
後ろへと回って参りましたこの侍が尻の辺りをいきなりピシャ。
これは臆病な馬か心持ちが強いかどうか試したわけ。
武士が戦場で使う馬ですから臆病な馬はいけない。
「いい馬だ。
出はどこだ?」。
「越前でございます」。
「雪立馬か。
まだ若いな?」。
「3歳でございます」。
「これからだな。
いくらだ?」。
「どうも旦那。
うれしいじゃござんせんか。
『いくらだ?』って値聞いてくだすったのは旦那初めてだ。
あ〜もうこりゃせっかくでござんすからねギリギリいっぱいのところで金十枚で」。
「金十枚か。
かかる名馬が金十枚とは安いな」。
「おい。
こりゃ駄目だよ。
値切るんならまだなんとかなるけれどもよ安いと言った客に買った例がねえじゃねえか」。
(笑い)「あのね旦那どなたかいい方ご紹介くださいましてね馬売れましたらいくらか手数料差し上げますから」。
「黙れ!武士に向かって何たる雑言」。
腹を立てて行き過ぎようといたしましたがこの馬によほど未練があるものか振り返り振り返り立ち去ったこの侍織田信長の家来でいまだ20貫取りの小身者山内猪右衛門一豊でございました。
(張り扇の音)この当時は何石と言わないで何貫と言っておりました。
今のお金に換算をして1貫20万円といたしますと20貫ですから400万円。
まぁ貨幣価値が違うといえ小身でございます。
我が家へと立ち戻って参ります。
倒れかかった門をくぐりますと左手が厩になっております。
主の姿を見て馬が一声ヒヒ〜ンと力なく鳴きました。
(笑い)これが馬でしたら「ヒヒ〜ンと一声高くいななきました」こうやるんですがそんな大した馬じゃない。
「ハア〜ッこれも馬先ほどのも馬同じ馬でもこうも違いのあるものかな〜」。
馬の鳴き声を聞いて夫の帰りを知り玄関先に両の手を着いて出迎えましたのが3年前一豊の所へ嫁いで参りました家中若宮喜助友興と言って一豊よりずっと上役の方の愛娘でお千代さん。
嫁ぐ前は大変でした。
天性の美人女性の仕事である炊事洗濯裁縫お掃除何でも出来る。
女性の芸と言われます生け花茶の湯琴三味線ゴルフマージャンチンチロ…こんなのはございませんけれども。
(笑い)もう若侍の人気投票はナンバーワンただ今ならさしずめミス岐阜といったところ。
(笑い)縁談の申し込みがいっぱいですが一向にお千代さん首を縦に振りませんで今日もおせっかい焼きの叔母さんが来て…。
「お千代さんどうかしらね?こんな話があるんだけど」。
「叔母様。
私山内一豊様の所へ参りとうございます」。
「まあ〜お千代さんあそこは貧乏だからお手伝いさんを雇う力もなしあなたが嫁いだら水仕事をはじめ家事万端しなければなりませんよ。
叔母さんがもっといい所探してあげるから」。
「お言葉ではございますがあのお方は品行正しく文武両道に秀でてあそばすお方。
今でこそ小身ではございますが後には必ず名を揚げ家を興すお方と心得ます。
また夫に仕えまして水仕事をはじめ家事万端いたしますは世の女子の常かと心得ます。
お父様お母様。
どうぞ私を一豊様の所へお遣わしくださいませ」。
偉いもんですね〜。
今はこうは行きませんで耳の痛い方いらっしゃるんじゃないかと思いますが。
(笑い)「家の事は女房が全部…」そんな事言ったらセクハラと言われかねませんで。
「安全」という字ちょっと考えてみてください。
「安」は「家」の中に女房がでんと据わってます。
「全」は「家」の中に男である「王様」が居るんです。
男上位なら「全安」なんですが女性上位つまり女房の尻に敷かれているのが一番「安全」だとこういう訳でございます。
ご納得の方は多いと思います。
(笑い)なにしろ亭主はね「関白」です。
ところが奥さんは「嬶天下」天下様。
おまけに「山の神」。
神様ですからこりゃ崇めなきゃいけませんね。
「家の事やれ」なんてそんな事言っちゃいけない男も協力をしなければいけない。
(張り扇の音)そんな事を言いながら私は何もいたしませんで。
(笑い)「あなたお帰りあそばせ」。
「うん」。
大刀を右手に提げまして己の居間へ。
これは自分の家へ帰るんですから右手に提げる。
友人知人の家を訪れる時も右手に提げるんですがこれが初めての所とか信用できない相手の時にはいざという時にパッと抜くためにこれは左手に提げるものなんです。
私の講談は分かりやすいでしょ?解説入りでございますから。
床の間に大刀を立てかけます。
広くもあらぬ庭に目をやりますと薄紅に咲き初めし桜の花が風にハラリと散っております。
誠にえも言われぬ風情。
「『年々歳々花相似たり歳々年々人同じからず』。
春が来れば花は開くがこの一豊に花咲く春はいつ来ることであろうか。
思えば花が羨ましいな」。
思わずホッと漏らすため息。
「ため息は命を削る鉋かな」と申します。
「あなたいかがなさいましたか?」。
「うん?別段加減の悪い所はないがいかがいたしたか?」。
「はい。
いつもと違ってお顔の色が優れませぬように存ぜられます」。
「なるほどのう。
『思い内にあらば色外に表る』と譬にも言うとおりいささか心の内に悩みがある。
それが表に出たかのう」。
「あの〜心のお悩みも病の種になりはいたしませぬか?お尋ねをしてもよろしい事でございましたらどうぞお聞かせくださいませ」。
へりくだった中にも優しい言葉に…。
「千代。
よく聞いてくれた。
わしはのう今まで貧しい暮らし少しも気にはならなんだが今日ほど貧しい暮らしが嫌になった事は無い」。
「まあ〜日頃のご武勇にも似合わしからぬお言葉。
またたとえ貧しく暮らせばとて夫婦このように楽しく暮らしていけましたならば仲睦まじく暮らしていけましたならばこの上何の楽しみがございましょう。
また近づきました戦場には立派なお働きによって貧しい暮らし向きも昔物語となる事でございましょう」。
「うんうん。
いかにものう近づいた戦場には他人には負けぬ武勇の嗜みは有しておるつもりだが『勇士戦場の功は馬にあり』と申すであろうが良き馬一頭宅はやむなく無念に心得ていたが実は今日ご城下で行われた馬市に実に名馬値を聞けば金で十枚。
あれほどの馬十枚とは高いとは思わぬがだがこのわしには一枚の工面もつかん。
他人手に渡り他人が功名手柄を立てるのかと思うと手をつかえて見ておらねばならんかと思うとそれが残念だがのう」。
「それではそのご乗馬金十枚でお求めになられますか?ちょっとお待ちくださいませ」。
次の間へと立ちました千代が取り出して参りました一面の鏡。
「はて鏡などどうするのか?」と見ておりますと蓋を取り裏を返します。
しっかりと貼ってあります大高檀紙の白紙を剥がしますと中より出て参りましたのが七重八重色の変わらぬ山吹色で金十枚。
一豊がびっくりする。
「あの少ない給金のうちから一体いつの間にこんなにへそくり貯めた?」。
まさかへそくりとは思わなかったでしょうが。
「千代。
かかる大金そちは何とした?」。
「はい。
ご不審ごもっともでございましょう。
実は3年前ご当家に嫁ぎます折母親から女の道を教わりました。
『幼くしては父母に従い老いては子に従い。
今日山内家に嫁ぐからには実家ありと思うな。
夫に嫁して土となれ。
ついては鏡の裏に金十枚披露くれやもし山内家に万一の事あらば取り出して用いよ』とのお教えにございました。
ご当家に参りましてから殊の外の貧しい暮らし向きに『今日は出そうか明日は出そうか』と思いましたが『いや。
そうではない。
貧しい暮らしを切り盛りするは妻の務め女の仕事』と心得て今日まで。
ただ今お尋ねをいたしますればそのご乗馬求める求めぬこれこそご当家にとって一大事と心得て取り出しました。
金子の出所にはいささかのご懸念にも及びません。
どうぞお使いくださいませ」。
「千代。
かたじけないぞ」。
思わず一膝乗り出した一豊が千代の手をしっかりと握りしめました。
これが我が国における握手の始まり。
(笑い)「あなた。
そうこうしておりまして買い手がつきましては一大事でございます。
一時も早く」。
「もっともじゃ」。
この金子を懐に早暮れなんとする中を一目散。
(張り扇の音)「な〜兄弟そろそろ店仕舞えとしようじゃねえか」。
「そうよな〜他の奴らは変な馬引っ張ってきて儲けて今頃宿へ入って一杯やってる時分だ。
こちとらぁ商えにもならねえでこの上野宿でもした日にゃたまらねえからな〜」。
「おっ?兄ぃ。
大変だ」。
「どうしたぃ?」。
「さっきの侍顔色変えて飛んでくるじゃねえか」。
「あ〜来る来る」。
「来る来るって落ち着いてやがん。
手前さっき何つった?『汚えの汚れてるのくたぶれ侍』つっただろ?あ〜あの侍腹立てたのに違えねえや。
『な〜に相手はくだらねえ馬喰のこった』我慢して家へ帰った。
飲み残りの酒があったんで一杯こいつをキュ〜ッとひっかけて酔いが回ってみるってぇと『あの馬喰癪に障る。
斬ってしまおう』とやって来たに違えねえ」。
「おらぁ斬られるの嫌だ」。
「嫌だったってしょうがねえ。
よくお詫びをして頭下げろ」。
「どうも旦那さっきはとんでもねえ事言っちまってどうかご勘弁を願います。
どうぞ命ばかりはお助けを願います。
何しろあっしは家へ帰りますと3人の女房と1人の子供が…」。
「あべこべじゃねえか落ち着け」。
「え〜え〜。
もう何でも…命ばかりはお助け…」。
「馬喰。
この馬まだ買い手はつかんか?」。
「えっ?ええ〜。
まだでござんす」。
「そうか。
急いで来たかいがあったと申すもの。
金で十枚と申したな?身どもが求めてつかわすぞ」。
「旦那が?ハア〜ッありがとうございます。
ありがとう…」。
「ばかだなこいついい気になって頭下げやがって。
この侍に買えるわけねえじゃねえか」。
「そんな事言ったって手の上へ金載っけてこっち出してるじゃねえか」。
「ウ〜ン?じゃあこっちもらって確かめてみろ偽金じゃねえか?このところ偽金出回ってねえからな確かめてみろ」。
「兄ぃいけねえ性質だぜ。
身装が悪いと銭がねえと決めつけるなんざいけねえやな。
この旦那なんぞな〜身装には一切お構いなし。
そのかわり懐にはいっぱいおありなさろうってんだ。
さぁここで『もし?』はええ。
ありがとう存じます。
ええ。
もうあっしどもね〜諦めていたもんでござんすから『あぶれ』と。
もうせっかくでござんすからいくらかおまけをいたしますんでお引きをいたします」。
「黙れ黙れ黙れ。
武士が戦場で使う馬じゃ。
まけの引くのとは忌み言葉と申すもの。
値切らず金十枚にて求めてつかわす」。
「お〜旦那気前がいいね〜。
へえ。
ありがとうござんす。
するとねこの馬お求めになるってぇと前の馬ご不要になるんじゃござんせんか?あっしどもね馬を売ったり買ったりが稼業の馬喰でござんすからそれじゃあ今までの馬拝見もしねえんで金一枚でお引き受けしようと思うんでござんすがええお引き取りしようと思うんですがいかがでござんすか?」。
「いや。
それほどの馬ではない。
今日はな心に適った馬を求める事が出来こんなうれしい事はない。
そうじゃ。
この馬を連れて身どもの屋敷まで参れば今までの馬は祝儀としてそちたちにつかわそう」。
「ただ?カ〜ッいよいよ気前がいいね〜。
もうただとなりゃどこまででもお供いたしますから。
ええ。
ありがとうございます」。
馬喰二人喜んで手綱を取って一豊のあとについて参ります。
「これが身どもの屋敷だ」。
「へっ?これでございますか?見ねえな。
ええ?身装にお構いなされねえくれえだからお住居にもお構いなさらねえや。
風流なもんじゃねえか。
ご門がおじぎしてるぜ」。
「おじぎしてるなんて門は無いでしょう」。
千代が待ち受けております玄関先。
「千代。
この馬だ」。
「まあ〜たくましい」。
「うんうん。
その昔佐々木梶原が宇治川に先陣を争った池月磨墨にも勝るとも劣らぬ名馬であろうが」。
「はい。
さぞおうれしい事でございましょう」。
「うん。
それもそちの志のおかげじゃ。
このとおり礼を申すぞ」。
手を取り合って喜んでおりますから…。
「も〜し旦那。
ご褒詞したごろしいのはね夜通しなさろうと幾日なさろうと結構でござんすがもう日も暮れかかっておりますんであっしども宿も取りてえんでござんしてお約束の馬を」。
「お〜そうであったな。
約束の馬はこちらにあるこの馬だ。
連れて行け」。
「へっ?これですか?生きてるでしょうね?」。
(笑い)「動くだろう?」。
「そりゃ動くよ。
旦那。
こりゃ栄養失調の上に神経衰弱でも患ってんじゃねえんですか?どうもひどい馬だな〜」。
大変な馬をもらって戻っていきました。
それからというもの一豊夫婦はこの馬に飼葉を与えるため自分たちの食を詰める日が幾日もございました。
さて時節を待てばその年の秋。
(張り扇の音)織田信長から「桜田馬場におきまして馬揃え」のお触れがございました。
今日で申します閲兵式のようなもの。
華麗なもんです。
この時パッと藩中に噂が立ちましたのが…。
「のう一豊は貧乏だから馬一頭蓄えもあるまい」。
「うん。
今度の馬揃えは病気を理由に休むことだろうな〜」。
いつしかこの噂が信長公の耳に入ります。
「あ〜不憫なものよ」と思し召しておいでになる。
いよいよ当日。
(張り扇の音)信長公一段高きお桟敷にご着座に相なる。
左右にはお気に入りのお小姓森蘭丸弟坊丸力丸を従えまして今や遅しと待ち構えておりますると同時に…。
(張り扇の音)ドド〜ンドンドンドン。
打ち出されました合図の太鼓。
(張り扇の音)まず第一番に柴田権六勝家第二番池田勝三郎信輝第三番前田又左衛門利家続いて佐久間右衛門尉信盛滝川左近将監一益森三左衛門可成丹羽五郎左衛門長秀をはじめとしていずれも自慢の出立にて次から次へと出て参ります。
さてこれでもう終わりかと思うとたん第二十五番目に…。
(張り扇の音)「雁唐花」の紋付いたる幕を引き絞り金海月紫縅しの鎧同じ鶏頭五枚錣の兜を戴き天野九郎勝長が鍛えたる大身の槍を小脇に掻い込み栗毛の駒に一段高しとうち跨り紺と白との手綱さばきもいと鮮やかに堂々と乗り出して参りました一人の若武者。
「おっ!山内だ」。
「一豊ではないか」。
思わず一同上げる驚きの声。
信長公時に馬揃えが終わりますと一豊を御前にお召しになり…。
「そちの噂は余もかねがね耳にしておった。
しかし今日の馬揃えそちが一番の出来であった。
たとえ日頃貧しく暮らさば武人としてはかく嗜みのありたきもの。
褒めてとらすぞ」。
「ハハ〜ッ」。
「なおいかがして求めたるか?」のお言葉に思わず一豊がハラハラとこぼす涙のうちに語る妻の志。
「うんうん。
そちの妻はあっぱれ女の鑑じゃ。
鏡より出し金子にて求めし馬それに因んで余が『鏡栗毛』と名付けつかわす。
なお今日の功により五百貫の加増を得させる」というありがたいお言葉。
なおも数々の引き出物も賜り上々の首尾で我が家へと立ち戻り待ち受けております妻に委細を物語り夫婦手を取り合ってのうれし泣き。
(張り扇の音)明くる天正3年長篠の合戦におきましては敵味方驚くような働きをして兜首7つ挙げましたのもこの馬があったればこそでございましょう。
続く後の戦場に立てる功名手柄は数知れず徳川時代には土佐の国二十四万石山内土佐守一豊と立派に成功を収めました。
もちろん一豊も立派な方に間違いございませんがその陰にはお千代の方の内助の功があったればこそでございます。
高知城へ参りますと馬と共に一豊とお千代さんの銅像が建てられております。
(張り扇の音)本当にいつの時代でも心というものは美しくありたいものでございます。
どうぞ皆様も美人でその上に心掛けが良ければこりゃ言う事ございません。
本当に乱世の時代に麗しき夫婦愛によって立派に家を興しましたというお馴染み「山内一豊出世の馬揃え」の一席でございます。
(拍手)2014/06/07(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 講談「山内一豊出世の馬揃え」[解][字][再]

講談「山内一豊出世の馬揃え」▽一龍斎貞花

詳細情報
番組内容
講談「山内一豊出世の馬揃え」▽一龍斎貞花
出演者
【出演】一龍斎貞花

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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