(テーマ音楽)あれ?部屋が変だ。
草刈さんどうしたんですか?いやいつもの部屋と違うんだよ。
何か足りない気がするんだけどね。
それってとても身近な物じゃないですか?身近な物?何だろう。
ほらあれですよ。
分かった!この部屋に足りないのは…棚だ!皆さんはどんな棚をお使いですか?食器棚に本棚。
和室にも棚がありますよね。
ちょっとお店をのぞいてみましょう。
おしゃれな棚がより取り見取り。
人気は木目がきれいで自然を感じるものだそうです。
こちらは一風変わった棚。
まるで宇宙船のようです。
なんと立てても使えます。
するとお気に入りの物が暮らす城に変身。
棚といえば図書館。
こちらの棚は他とは一味違います。
え〜!壁一面が棚棚棚。
本棚が建物の壁になってしまっています。
でも不思議と開放感がありますね。
手前から奥へずらりと棚。
棚が心地よいリズムを生んでいます。
こんな図書館で勉強したら面白いアイデアが浮かびそうですね。
古代棚は板を単純に組み合わせただけの簡素なものでした。
奈良時代には多くの厨子が大陸から渡来。
見た目にも美しい厨子は日本の棚に影響を与えます。
やがて棚は簡素な実用品から装飾品へと変化を遂げました。
こうして日本に「飾りつつしまう」棚の美学が生まれたのです。
それだけに棚というものには日本の家具文化の精髄が込められてるという。
本当に棚はもっと注目されるべきものだと思いますよ。
「飾りつつしまう」棚。
今日は棚の奥深い世界に迫りましょう。
(くぎを打つ音)草刈さん何してるんですか?え?棚作ってるんですよ。
できるんですか?僕だって棚ぐらい作れますよ。
ほら完成だ。
あれ?台がゆがんでますよ。
さてこれでいいか。
…あれ?あ〜あこれがホントの「台なし」。
まずは棚に秘められた「技」に注目します。
こちらは昭和初期の棚作りの名工前田南斉が手がけた飾り棚の傑作。
目を奪うのは緻密な螺鈿細工をはじめとした四季の花々。
牡丹は白蝶貝。
こちらは象牙。
梅は珊瑚。
ススキに付いた水滴はなんと真珠という豪華さ。
戸棚の内側にも装飾が施され贅を尽くした逸品です。
同じ前田南斉の作品でもちょっと趣の違う棚もあります。
華美な装飾はなく桐の木目が美しいすっきりとした飾り棚です。
先ほどの華やかな棚に比べると桐書棚はおとなしく地味に見えます。
この桐書棚にこそ棚の本質が隠されている。
家具の歴史に詳しい小泉和子さんは言います。
じゃあこれからちょっとこれ飾ってみましょうね。
棚は物を飾った時に初めて真の姿が見えてくるのです。
棚だけでは物足りない印象でしたが飾りを置くと洗練された景色が生まれました。
で飾った時に完成するというように。
棚だけでちゃんと完成したものにしちゃうと載せた時にくどくなっちゃうのね。
だからちょっと空白をしておいてそこに載せるということで棚というのは完成するわけです。
今日最初の壺は…今も昔ながらの棚作りは受け継がれています。
伝統工芸士の井上健志さんは祖父から続く3代目の職人。
井上さんのところには和箪笥や座卓などさまざまな和家具の依頼が来ます。
中でも飾り棚はシンプルながら何よりも難しいと言います。
位置付けとしてはまさにこう職人のセンスを映す鏡のような。
棚作りのポイントは柱にあります。
細くて華奢でありつつも重さを支える強さも必要。
「ほっそりだけど力持ち」それが理想の柱です。
柱を華奢に見せるために工夫を凝らします。
脚先は曲線を描くように削ります。
すると女性がハイヒールを履いたように柱が細く見えます。
柱を更にほっそりと見せるための技。
「面取り」です。
角をほんの1ミリだけ削りました。
柱の角がやわらかくなり少し細く見えませんか?目の錯覚っていうところが多いと思いますよ。
基本的な一番太い所はほとんど…ほとんどというか削ってないので。
目の錯覚を親方からこういうことを教わって。
だからこれも技法の一つですよね。
棚板と柱を組み合わせます。
くぎを使わない「ほぞ組み」。
強度に優れた結合方法です。
上から下へ柱の木目の流れをつなげます。
まるで1本の柱。
切れ目が無いように見えます。
わずかな目の錯覚をも計算に入れた飾り棚。
奥ゆかしい姿です。
草刈さん。
うん?そんな熱心に何やってるんですか?世の中にはいろんな棚があるもんだなと思ってね。
ネットショッピングしてんのよ。
ちょっと!買い過ぎ…「だな」。
これ見て。
かわいいでしょ?ねえ。
色面白いよね。
わ〜これなんかユニークでしょ。
洋梨。
フフフフ…面白いよね。
・洋梨?はぁ…あなたそんな棚「用無し」よ!はぁ…この問題は棚上げにしよう。
次は棚に秘められた「遊び心」に注目します。
いくつもの箱が複雑に組み合わされ独特の存在感を醸し出す飾り棚です。
棚板に使われているのは檜。
銀色の引き戸はアルミの板金です。
温かみのある木材に無機質な金属を合わせることでメリハリが生まれています。
書籍とかオブジェを飾って頂く飾り棚になってるんですけどもこういうふうに開けて頂くことができますし実はこれ向こう側からも開けることができるんですね。
実際は大きな広間を間仕切る間仕切り家具として提案をされていたようです。
引き戸を開閉すればデザインの変化を楽しめます。
遊び心あふれる棚です。
作者はフランスのインテリアデザイナーシャルロット・ペリアン。
1953年の作品です。
この独創的な棚は当時のヨーロッパのデザイン界に衝撃を与えました。
驚くべきことに彼女が棚作りの着想を得た場所はなんと日本だったのです。
1940年京都を訪れたペリアンは運命の棚と出会います。
修学院離宮の床の間脇にある「違い棚」です。
5枚の板が互い違いに配置されています。
この違い棚には「霞棚」という名が付けられ幾重にもたなびく霞を表現しています。
ペリアンはこんな感想を残しています。
ペリアンは霞棚の左右非対称の構造を取り入れ次々に話題作を発表しました。
今日二つ目の壺は…実は大和言葉の「たな」は「水平」の意味。
派生語が「たなびく」です。
雲が水平にたなびく様子から左右非対称の棚の様式が生まれました。
自然にはシンメトリーの物はないんですね。
アシンメトリーでしょ何でも自然の物って。
でこういうふうにしてアシンメトリーのいわゆる違い棚っていうことが古くから日本では出てくるわけですね。
違い棚は現代の建築にも息づいています。
建築家の木原千利さんもまた違い棚を使って斬新な和室を手がけています。
掛け軸が飾られた床の間を飛び出して窓のほうへと伸びているのが違い棚です。
開け放った障子の奥一面に広がるのは水をたたえた印象的な庭。
棚は庭を背景にしてまるで樹木から張り出す枝のようです。
少し視点を変えると波のようにも見えませんか?障子を閉じると今度は夜空にたなびく雲のよう。
見る者の心を和ませるのは自然の景色を映す棚の姿でした。
街の中でね非常にビルがあって高いマンションがあってその中で少しでも四季を通じて自然の風景がここに映りこんでくれるという街なかなんですけど心の故郷みたいなものをね感じて頂いたらどうかなと思ってますけどね。
こちらも木原さんが手がけた和室。
窓を満月に見立て棚は月にかかる雲のようです。
木原さんは戦時中の生まれ。
疎開先で見た豊かな自然の景色が棚に投影されていると言います。
そういうものが少しでも空間にできればという感じに思いつつですね。
違い棚には心に焼き付いた自然が映し出されていました。
へえ〜こんなものに興味持ってたんだ。
草刈さん何見てるんですか?妻の棚をのぞいてるんです。
彼女の性格や趣味がよく分かりますよね。
そうですね。
棚を見れば持ち主のことがよく分かりますよね。
棚はその人そのものなんですねぇ。
奥さんどんなことに関心をお持ちなんですか?え〜?見なかったことにしよう。
草刈さんも大変ですね。
こちらの記念館。
内部には圧倒的な光景が広がっていました。
高さ11メートルに及ぶ壮大な棚は4階建てのビルに相当する迫力。
まるで書物の聖堂のようです。
棚に並ぶのは生前司馬遼太郎が集めた2万冊の蔵書。
ここかしこに辞書辞典全集。
一個人としては破格の量。
あたかも作家の書斎に忍び込んで創作の秘密をかいま見るようです。
ここにたたずむと文豪の莫大な知力をまざまざと目の当たりにしただ圧倒されるばかりです。
今日最後の壺は…棚を使ってユニークな空間を生み出すデザイナーがいます。
長岡勉さん。
長岡さんのアトリエは球体の棚。
お気に入りの物にぐるりと囲まれていたいという棚です。
更にもう一つ長岡さんには棚の哲学があります。
物が魅力的に生き生きと見えるような場所を棚を介して作ってあげることでそこに…人が自然に集まる棚。
長岡さんは子供たちのための棚を作りました。
こちら「郷土資料室」と名付けられた棚です。
アリの巣のような設計。
あちこちに腰掛けられます。
並べられているのは地元の伝統工芸品。
ふだんなじみのない郷土資料と何気なく触れ合えるように知恵を絞りました。
物や人に出会える棚です。
あのフランスの巨匠も棚の魅力に取りつかれていました。
20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエです。
コルビュジエは「近代建築の父」と呼ばれモダニズムを牽引しました。
数々の大型建築を手がけ国際的に大きな影響を与えた人物です。
建築界の巨人が愛した究極の棚があります。
それは晩年を過ごした別荘に残されていました。
コルビュジエがそう語った空間です。
よく見ると正面の壁から一枚の板が張り出しています。
これこそコルビュジエがたどりついた棚だというのです。
この棚をどう使ったのでしょうか。
今日本で注目を集める建築家中村好文さん。
部屋の一枚の板はコルビュジエの飾り棚だと考えています。
やっぱりああいう所に自分のお気に入りの物を置く場所があると家がその人の「匂い付け」になってるというと変だけど匂い付けのための場所になってるような気がして。
不思議なものでね旅行なんかしててもホテルなんかで浜辺で拾ってきた石いくつかの石をこう並べたりすると何となく自分の住まいって感じがするんだよね。
たとえ板切れ一枚でも好きな物を飾れば自分らしくいられる。
この棚はコルビュジエにとってかけがえのないものだったのかもしれません。
(中村)やっぱり人の住まいには「精神のための場所」っていうかそういう飾り棚みたいなものが要るんだなというのを感じましたけどね。
それがないとただのあれになっちゃうんじゃないですかね…人が人らしく暮らすための棚。
皆さんは何を飾りますか?う〜ん…。
草刈さん何を悩んでるんですか?うん…僕にとって究極の棚って何だろう?はぁ…分かんない。
ちょっと!どこ行くんですか?うん…。
う〜ん…あ分かった!筋骨たくましいこちらの男性。
実はある秘密があります。
2014/06/08(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「棚」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「棚」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
“飾りつつ仕舞う”という日本独特の美学が棚にはあります。そんな日本の名作がヨーロッパのデザイン界に与えた影響とは!?近代建築の巨匠ル・コルビィジュエを巡る、究極の棚の物語とは!?‘物を置いたときに始めて完成する’棚の真髄とは!? もちろん、職人の細やかな手業も満載。「好きなものを置いて自分だけの空間を演出」そんな棚の奥深い魅力に迫ります。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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