サイエンスZERO「心と体を支配する!神秘の物質ホルモン(1)〜性ホルモン」 2014.06.08

筋骨たくましいこちらの男性。
実はある秘密があります。
産まれた時は女性だったのにそのあと男性に変身したっていうんです。
一方こちらの女性はなんと子どもの頃は男だった?体の性別が変化するなんて一体どういう事?実はこんな不思議な現象を起こす物質誰でも体の中に持っているんです。
その姿を世界で初めて鮮明に捉える事に成功しました。
細胞の中を特殊な顕微鏡で見ると…。
白く光る無数の粒が!細胞が作り出す化学物質…これが今回の主役。
私たちの体内にあるホルモンは実に数百種類。
新たなホルモンの種類やその機能も次々発見されています。
そんなホルモンには細胞の形や働きを激変させちゃうすごいパワーがあるんです。
例えばあるホルモンを脳の細胞に振りかけると…。
たちまち腕を伸ばして神経細胞が回路を作り始めました。
こんな細長い骨髄の幹細胞もホルモンでたちまち円い形に大変身!このホルモン実は最新研究でなんと私たちの感情や人間関係までも操っている事が分かってきています。
「サイエンスZERO」はそんな神秘の物質ホルモンを2週にわたって大特集!第1回の今日は男女の体を形づくる性ホルモンの驚くべきシステムに迫ります。
ようこそ神秘のホルモンワールドへ。

(テーマ曲)今日どこにいるんですか?これ。
これですね我々の体の中の細胞の世界なんですね。
この煙みたいに出てるのが化学物質のホルモンなんですよ。
これが?だけど性別が変わるってそんな事あるんですね。
すっごい不思議です。
何かよくホルモンバランスが崩れると肌が荒れちゃうとか聞きますよね。
この性ホルモンの話については4月に放送しましたNHKスペシャル「人体ミクロの大冒険」でも取り上げまして多くの反響があったんです。
今日は私たちの体を大きく変えてしまう性ホルモンの不思議なパワーについて「NHKスペシャル」よりも深くとことん掘り下げていきます。
うわ〜楽しみですね。
楽しみにしてて下さい。
まずは男女の性別が変わるという謎の現象。
見ていきましょう。
訪れたのはドミニカ共和国。
首都サントドミンゴから西へ200kmの山あいにサリーナス村があります。
ここで男女の性別が変わるという実に不思議な現象が起こっているのです。
なんと10歳のころまでは体の作りが女性でしたがその後急速に男性器が発達。
男性に変身したといいます。
こちらの女性ルイスさんも子どものころは…。
なんとこんな男の子!それが思春期に入ってから女性の体に変化したというんです。
そんな事本当にありえるのか?村人の出産に立ち会ってきた看護師のレイナさんに話を聞くと…。
この村で体の性別が変わる経験をした人はなんと数百人に上るといいます。
なぜこんな事が起こるんでしょうか?そもそも生物学的には性別は遺伝子で決まります。
X染色体だけなら卵巣が作られて女性に。
Y染色体があれば精巣が作られ男性になります。
しかし遺伝子の働きはここまで。
ここから先男女それぞれの体を作るのは卵巣と精巣の細胞が出す性ホルモンの働きなんです。
お母さんのおなかの中にいる胎児のうちに性ホルモンが出て女の子には女性器男の子には男性器を作ります。
ところがサリーナス村の人々の場合この段階である問題が。
一体何が起きたんでしょうか?え〜っ何が起きたんですか?性ホルモンがうまく作られなかったとか?とか?どうなんでしょうか?その辺り専門家の方に詳しく伺ってみましょう。
麻布大学獣医学部の菊水健史さんです。
原因って何なんですか?1970年代にアメリカと現地の共同研究チームが調査を行いました。
そうすると…5α還元酵素を作り出す遺伝子。
ちょっと初めて聞いたんですけど。
こちらご覧下さい。
これが5α還元酵素です。
テストステロンというホルモンに対して働く酵素なんです。
テストステロンというと筋肉を増強したりする働きがあるホルモンですよね。
そうですね。
筋肉を強くしたりとかあるいは毛深くしたりという作用を持つホルモンです。
実は5α還元酵素がテストステロンにくっつくと…。
おっ。
あれ?光りましたね。
そうなんですよ。
これテストステロンがですねジヒドロテストステロンという別の男性ホルモンに変わったという事なんです。
へえ〜。
これは元のテストステロンとはどう違うんですか?その効果が5倍から10倍強いホルモンだというふうにいわれてます。
パワーアップするんですね。
(菊水)そうですね。
そうなんだ。
お母さんのおなかの中で…その作用で男性器らしい形がどんどん作られていくという事になります。
でもそのあと…それはどうして?それが大変身のように見えていたという事になります。
じゃあ逆に産まれた時男性だったのに思春期で女性に変わったというのはあれはどういう事なんですか?お母さんの体の中で男性ホルモンがそんなに増えるという事があるんですか?お母さんが例えばストレスを受けると男性ホルモンを作る。
あるいは環境ホルモンというものがあると思うんですがそういうホルモンを食べてしまった時にお母さんの体から胎児の方に男性ホルモンらしいものが伝わってしまったんじゃないかとも考えられます。
へえ〜。
性ホルモンの体を作り替えるパワーってすごいですね。
ねえ。
神秘的ですよね。
今まで見てきたのは性別が変わるというある意味特別な例でしたが実はですね性ホルモンによる体の大変身というのは私たち誰もが体験しているんです。
ええっ!本当ですか?実は誰もが体験する性ホルモンによる大変身。
それがいかに劇的なものかをつぶさに捉えたデータがあります。
ここは下着メーカーの研究所。
毎年同じ女性の体の変化を写真に記録し続けています。
数多くの女性の成長を何十年も追跡した世界にも例のない貴重なデータです。
これはある女性の4歳の時の写真。
それから40歳まで撮影を続けました。
毎年の写真を並べるとこのとおり。
10歳までは体は単純に大きくなっていくだけ。
しかし10歳を過ぎると…突然胸やお尻が膨らみ僅か数年で体つきががらりと変わる事が分かります。
これが…こんな変身をもたらすのが性ホルモンの実に巧みな働きです。
思春期の体の中を見ていきましょう。
目から入り込んで脳を目指すと…。
脳の下の方に不思議な形の組織が突き出しています。
脳下垂体です。
その上側視床下部という部分に思春期のスイッチを入れる細胞があります。
現れたのは細長い形をした細胞群…細胞は下に向かって長い尻尾を伸ばしています。
その内部に透けて見える粒状のものが大量のホルモン。
その名も…10歳を過ぎた頃GnRH細胞は突然このホルモンを大量に放出し始めます。
これが思春期の始まりです。
性腺刺激ホルモン放出ホルモンはすぐ下にある脳下垂体へ向かいます。
ここの細胞がホルモンを受け取ると今度は性腺刺激ホルモンという別のホルモンを放出します。
いわばホルモンのリレーです。
性腺刺激ホルモンは脳から体へと出ていきます。
目指すのはおなかの下にある臓器。
卵巣です。
その中心部にあるのは卵子のもとになるおよそ20万個の卵母細胞。
ここに性腺刺激ホルモンが到達するとそれを受け取ったいくつかの卵母細胞が反応します。
外側にある卵胞細胞が激しく分裂。
1,000倍にまで大きくなるのです。
そしていよいよ卵子が卵巣の外へと送り出されます。
人生で最初の排卵です。
その後卵子は卵管へと迎え入れられその先にある子宮で受精の時を待ちます。
しかしホルモンのリレーはこれで終わりではありません。
排卵の瞬間まで時間を巻き戻してみましょう。
卵子の成熟に伴って出てきたこのもや。
新たに放出が始まった女性ホルモンです。
出しているのは卵子を包んでいたあの卵胞細胞です。
女性ホルモンは血流に乗って全身へと広がっていきます。
そしてこれを受け取った体のあちらこちらの細胞がいよいよ大変身を始めるのです。
女性の場合真っ先に変化を始めるのは胸。
母乳を作る乳腺細胞が女性ホルモンを受け取ると激しく分裂を始め乳腺を形づくります。
続いて発達した乳腺細胞から別のホルモンが放出されその働きで脂肪細胞が増殖。
乳房は完成するのです。
更にお尻の方では…骨盤の骨芽細胞が女性ホルモンを受け取って活性化。
骨盤を大きく横に発達させて胎児を支えるための準備をします。
これが思春期に女性のお尻が発達する理由です。
少女から大人の女性への大変身。
それは脳の細胞が出すホルモンを振り出しにした幾度ものホルモンのリレーによって引き起こされていたのです。
私も中学生ぐらいになって体の変化って結構感じてたんですけどそれが性ホルモンのリレーによってだったとは。
びっくりしました。
うまくできてますよね。
だけどホルモンがあんなふうにリレーする必要あるんですかね?こちらをご覧下さい。
(菊水)もしですねその脳の中にあるGnRH細胞が直接性ホルモンを体に分泌したとします。
何かのきっかけで間違ってですね性ホルモンを大量に分泌してしまったとそうすると性ホルモンというのは非常に強い作用を持ってますのでいろんな所で不具合が出てしまう。
だけれどもGnRH細胞というのは脳下垂体という所で1回バトンタッチします。
こうする事で性ホルモンというのは急激に増える事はないという安全のリレースイッチを持ってるという事になります。
安全のためになんですね。
更に脳から体に伝わったあとのホルモンリレーにも大きな意味があるという事ですよね。
卵巣まで伝わったホルモンというのは一番大事な役目というのは排卵を促す事です。
その卵が育つ時にですね女性ホルモンを体の中に放出します。
例えば乳腺に働いたりあるいは骨盤に働いたりして子どもを産むため妊娠するための準備を始めるという事が分かってきてます。
女性ホルモンってこれ以外の働きというのはあるんですか?えっ。
ちょっと気になりますよね。
気になりましたよね。
気になりますよね。
女性が体の中で赤ちゃんを産める準備ができましたよというのを男性に対してアピールする時に肌艶を変えるとか声色を変えるとかというふうにして伝えると。
そういう女性に男性は引かれるようにできてるというふうにも考えられています。
竹内さんいかがですか?あんまりそういうの考えないでしょ普通ね。
だから意識的に考えてないけどやっぱりそれに引かれちゃうんですかね?そうですね。
進化の過程でそういうふうに巧みに組み込まれてる訳です。
これって女性だけじゃなくて男性の場合にもホルモンのリレーというのはあるんですか?はい。
あります。
そうなんです。
男性の場合も脳のGnRH細胞から脳下垂体へとホルモンがリレーされ性腺刺激ホルモンが分泌されるところまでは女性と同じ。
しかしそのホルモンが向かう先は精巣です。
精巣の内部には精細管という管が詰まっています。
その中にあるのがゴノサイト。
精子のもとになる細胞です。
脳から届いたホルモンを最初に受け取るのは周囲にある白いセルトリ細胞。
増殖してゴノサイトを包み込みます。
こうしてゴノサイトは外部から守られた中で分裂成熟していきます。
やがて丸かったゴノサイトに尻尾が生え10週間もの時間をかけてついにあの精子の形へと変貌を遂げます。
この時同時に性腺刺激ホルモンを受け取るのが精巣のライディッヒ細胞。
ここから新たに男性ホルモンが放出されます。
これが血流に乗って全身に広がりさまざまな細胞を大変身させます。
骨が伸びたり筋肉が発達したり毛深くなったり。
男性特有の思春期の体の変化もやはりホルモンのリレーが引き起こしているのです。
そっか。
男性もホルモンのリレーがあったんですね。
やっぱり大事なんですね。
そうですね。
女性に対してはセックスアピールの一つだといわれていて昔は毛深い男性がモテた時期があっただろうという事で。
そうなんだ。
人間というのはやはり非常に大きな脳を進化の過程で獲得してきたと。
脳が成熟するまでってすごい時間がかかる。
その成熟するまで待たなきゃいけないんです。
もう一つは体がちゃんと子どもを作る体力栄養が足りてるかどうかですね。
痩せてたりとか脂肪が足りないといやもうちょっと待ちましょうと。
体のいろんなところから情報をもらってGnRH細胞は思春期を決めてるという。
例えばダイエットをし過ぎてちょっと痩せちゃってるという女性が初潮が来なかったりとか生理が遅くなったりとかそれはやっぱり「まだ子どもを産む準備ができてないですよ」というそういう事ですか?そうですね。
実は脂肪の摂取量が多い国というのは早く性成熟をすると。
逆にアフリカなんかのですねあまり食べ物が豊かでなくて厳しい環境で育った場合思春期のスタートが遅いんです。
場合によっては何年も違うというふうな事も分かってます。
ところでここまで見てきてちょっと不思議な事がありませんか?えっ何ですか?ホルモンって血流に乗って全身の細胞に届くんですよね。
なぜでしょう?実は…生きた細胞を分子レベルまで観察できる全反射照明蛍光顕微鏡を使ってホルモンに反応する細胞の秘密を探ります。
黒く見える部分が1つの細胞です。
特殊な光を当てると緑色に光る粒が見えてきました。
これこそが細胞がホルモンを受け取る仕組み受容体です。
受容体は細胞の表面や内部にあるたんぱく質。
特定のホルモンがここにくっつくと細胞はスイッチを押されたように変化を始めます。
つまり受容体のある細胞だけがそのホルモンに反応するのです。
でも受容体はどうやって細胞の活動を変えるんでしょうか?これはある1つの細胞です。
その中央丸で囲んだ部分は遺伝子が収められた細胞の核。
細胞内に広がる緑のもやが受容体です。
ここにホルモンがくっつくと…。
見て見て!受容体が動き始めました。
そして細胞の核に集合していきます。
一体何が起きているんでしょうか?核の中に集まってきましたね。
(竹内)動くんですね。
何か働きかけてるのかな?実はこういう事なんです。
細胞の核の中には遺伝子が詰まっています。
ホルモンがくっついた受容体これが遺伝子の一部にくっつきます。
光りましたね。
その部分の遺伝子のスイッチがONになって細胞の活動が変わるんです。
へえ〜。
今度は違う受容体がやって来ました。
わあ消えた。
受容体はですねこうしてさまざまな遺伝子のスイッチを自在にONOFFにする事で細胞の活動を変化させているという訳なんです。
へえ〜ホルモンって遺伝子の働きまで変えちゃうんですね。
ただ全てのホルモンが遺伝子の働きを変える訳ではないですね。
性ホルモンというのは非常に特殊なホルモンでその遺伝子の発現を大きく変えるホルモンとして知られています。
その作用というのは一生それが続くという事まで知られています。
へえ〜。
生物というのは進化の中でホルモンの数を増やしあるいはホルモンの受容体を発現してる細胞の種類も増やしてきたと。
体のある部分?どこですか?大昔私たちの祖先が狩りをして生きていた頃の事。
男どもの喉仏は大きくなく女たちと同じ高い声だったそうな。
ある時男の子が生まれた。
その喉仏の細胞は突然変異によってそれまでなかった男性ホルモンの受容体をたんと持っていた。
この子の喉仏は思春期になると大きくなり声がこんなふうに低くなったんだと。
やがてこの子は仲間と狩りに出るようになった。
ある日おっかない獣に襲われてさあ大変。
仲間が高い声で叫んでも獣はちっともひるまない。
その時この男の子が叫び声を上げた。
「うお〜!」。
獣はその野太い声に恐れをなして逃げ出したそうな。
その男の子は低い声のおかげで獣にも襲われず長生きしてたくさんの子どもを作ったんだと。
こうして喉仏に受容体を持つ子孫が増えていったというお話。
めでたしめでたし。
へえ〜本当なのかな?じゃあという事は喉仏が思春期に変化するのは人間の男性だけって事ですか?そうですね。
思春期に声変わりをする明瞭なものというのは人間だけです。
今見たように威嚇するためなんですか?そうですね。
基本的には体が大きい動物というのは声が低いんですよ。
私は立派だよというそういうシグナルを出す事によって例えば動物は逃げていったりとか相手の敵がひるんだりすると。
実際は弱くても物陰に隠れて「うお〜!」と言えばいいんですか。
そうですね。
じゃあ今私たちの中にある受容体も変化してるかもしれない。
つまりホルモンとか受容体というのは私たち人間を進化させてきた非常に強い原動力だったというふうにも考えられます。
なるほど原動力か。
私もやっぱり昔はすごい細かったのに腰回りとか大きくなってきて嫌だなとか思ってたんですけどやっぱり子孫繁栄とかちゃんと生きていくための理由があったという事を知ってちょっと納得しましたね。
こんなにうまく巧妙にホルモンに操られてるのかなみたいな。
確かに。
(竹内)うまくできてますね。
さあ来週は「ホルモン特集第2回」。
今度はですね体ではなく私たちの心にまで大きな影響を与える不思議なホルモンに迫っていきます。
今度は心ですか?またまた気になりますね。
そうですね。
菊水さん来週もよろしくお願い致します。
こちらこそよろしくお願いします。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2014/06/08(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「心と体を支配する!神秘の物質ホルモン(1)〜性ホルモン」[字]

生まれた後で男女の性別が変わる!?不思議な現象を起こす驚異のパワーを秘めた「性ホルモン」が、私たちにもたらす意外な進化とは?ホルモンが支配する男女の神秘に迫る。

詳細情報
番組内容
生まれた後で男女の性別が変わる!? 私たち誰もが体内に持っている物質「性ホルモン」には、そんな不思議な現象を引き起こす驚異のパワーがあることが判明。実はそのパワーが思春期の私たちの体内で驚くべき連鎖反応を起こし、男女の体を形作っている。しかもそのホルモンは、人類進化の中で今なお変化し続けているというのだ。男女の性差を支配する性ホルモンの意外な働きとは? 男と女の神秘がいま最新科学で徹底解明される!
出演者
【ゲスト】麻布大学教授…菊水健史,【司会】南沢奈央,竹内薫,【キャスター】江崎史恵,【語り】土田大

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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