NHKスペシャル「攻め抜いて勝つ〜日本代表“新戦法”への挑戦〜」 2014.06.09

(実況)本田入ってきた!チャンスになった!そのまま決めた!チーム一丸となってゴールを目指す。
失点を恐れず全員で攻め上がる。
間もなく開幕するFIFAワールドカップ。
出場チームの中で下から4番目の日本。
指揮官ザッケローニが選んだのはどんな相手にもひるまずに攻め抜く超攻撃型サッカーだ。
それを可能にするのがコンパクトな陣形。
ディフェンスラインからフォワードまでの距離は僅か20m。
味方が近くにいる事で細かいパスがつながり攻撃が連動する。
守備を固めたこれまでのワールドカップとは全く違う戦法だ。
しかし新たな戦法は大きなリスクも併せ持つ。
強豪相手に厳しい結果を突きつけられた。
やってきた中で多分…どうすればこのチームよくなっていくんだろうっていう迷いだったり悩みっていうのはすごくありましたね。
それでも指揮官が与えた課題に選手たちは最後まで向き合い続けた。
日本のサッカーを世界レベルに引き上げたい。
思いは一つだった。
目の前に起こる出来事に対して…「攻め抜いて勝つ」。
新戦法でワールドカップに挑む日本代表。
挑戦の日々を追った。
先月行われた代表メンバーの発表。
指揮官が明らかにしたのはこれまでにない攻撃的な布陣だった。
オオクボ。
(どよめき)オカザキ。
ホンダ。
23人の選手のうちフォワードはこれまでで最も多い8人。
そのほかのポジションも攻撃力のある選手を優先して選んでいた。
ランキング46位から番狂わせをねらう日本。
「攻め抜いて勝つ」とはどのような戦法なのか。
国内最後の強化試合キプロス戦にその特徴が表れていた。
相手陣内に攻め込んだ日本の選手は10人。
ゴールキーパーを除く全員が攻撃に参加している。
決勝ゴールを奪った場面も8人で攻めた。
最後に押し込んだのはディフェンダーの内田だった。
フォワードからディフェンダーまで一体となった攻め。
それが日本がワールドカップで目指すサッカーだ。
新戦法の基本となるのがこの3本のライン。
黄色がフォワード。
緑はミッドフィールダー。
そして青がディフェンダー。
それぞれの距離をおよそ10m全体で20mに保つのが目標だ。
これまでの日本代表ではなかった超コンパクトな布陣だ。
コンパクトな陣形で可能になるのは正確でスピーディーなパス回し。
たとえ1対1で勝てない相手でも連係を生かして崩す事ができる。
陣形をコンパクトにする事でディフェンダーも攻撃に参加しやすくなる。
ディフェンダーからゴール前へのパスもダイレクトにつながる。
3本のラインによるコンパクトな陣形。
それが強豪を打ち破るための新戦法の根幹だ。
ザッケローニが目指す攻め抜くサッカーに欠かせないのがこの男。
エース本田圭佑。
この4年間日本のサッカーを引っ張ってきた。
え〜!本田がプレーするのはフォワードとミッドフィールダーの間。
2つのラインの間を動き回り攻撃の起点となる。
(歓声)一番の強みは世界を相手にしても負けない強力なフィジカル。
複数のディフェンダーに囲まれても奪われない。
前線でのキープ力はほかの選手が攻め上がる時間を生み出す。
全員で攻め抜く新戦法の要の役割を本田は担っている。
ランキング下位の日本にあえて攻め抜く新戦法を課したザッケローニ。
そこには日本のサッカーを世界のトップレベルに引き上げたいという強い思いがあった。
1998年のフランス大会以来ワールドカップに連続で出場してきた日本。
これまでは強豪相手に守備を固める戦法で戦ってきた。
(実況)危ない!高さとスピードに対抗するためひたすらゴール前を固める選手たち。
ボールを奪っても攻撃はカウンターの繰り返し。
(実況)縦へ中山。
サポートがちょっと遅い。
失点を少なくする事を最優先した戦い方だ。
前回の南アフリカ大会でも守備的な戦いを貫いた日本。
1次リーグは突破したものの決勝トーナメントでは一点も奪えず敗退した。
(実況)日本ベスト8進出はならず!この試合を見たザッケローニ。
守りを固める戦い方では限界があると感じていた。
その一方で可能性も見いだしていた。
それは守備のために見せた豊富な運動量とチームプレーに徹する献身的な姿勢だった。
(場内アナウンス)「背番号5長友佑都」。
ザッケローニが目指す攻め抜くサッカー。
そのもう一つの原動力がサイドバックの長友佑都だ。
圧倒的な運動量で繰り返し攻め上がる。
ディフェンダーでありながら前のラインを突き抜けるほどの積極的な攻撃参加を見せる。
監督が言うのは…スイッチを入れてくれっていう事は言われますね。
更に長友に求めたのは献身的な動きで攻撃のチャンスを作り出すこと。
例えばスムーズにパスがつながったこの場面。
ボールを持たない長友が全速力で駆け上がり相手ディフェンダーを引き付けスペースを作り出していた。
このプレーでもおとりとなって相手を引き付けシュートをサポートする。
ボールを持っていてもいなくても常に攻撃のために動き続ける事を求められている。
前回のワールドカップの直後長友はイタリア1部リーグに移籍。
その攻撃力に更に磨きをかけている。
冷蔵庫はまさかの展開ですけど…。
(長友)ヨーグルトぐらいですね。
あと水と。
今では強豪インテルのキャプテンを任されるまでになった。
ザッケローニの期待に応えるために続けてきた事がある。
チームに作ってもらった自分専用の坂道。
練習が終わったあと一人残ってダッシュを繰り返してきた。
ワールドカップまであと1年となった去年6月。
本番の舞台ブラジルで日本の新たな戦い方を試す機会が訪れた。
世界各地域の王者が集まるワールドカップの前哨戦。
日本はワールドカップ4回の優勝を誇るイタリアを相手に生まれ変わった姿を見せた。
コンパクトな陣形で攻める日本。
スピーディーなパスワークで翻弄する。
(実況)日本がここもテンポよくパスをつなぐ。
ボールを取れないイタリア。
豊富な運動量で何度も攻め上がる長友。
次々とチャンスを作り出していく。
(実況)さあ香川からクロスボールは逆サイド本田のヘディング。
更にディフェンダーも積極的に前に出てボールを奪う。
(実況)吉田ファウルなしで奪って右の本田を見ている。
(実況)長谷部だ!長谷部のミドル。
そして人数をかけた攻撃からゴールが生まれる。
(実況)まだこぼれている。
日本シュート!来た〜!イタリアの堅い守備を破って3点を奪った。
(実況)シュートが来た〜!1点差で敗れたものの最後まで強豪イタリアを苦しめた日本。
攻め抜くサッカーを世界にアピールした。
この日日本が成功させたパスはイタリアを大きく上回る448本。
豊富な運動量で主導権を握りボール支配率でも相手を凌駕した。
強豪にも自らの信じた戦い方を貫く。
ザッケローニにとってそれは監督人生を通してこだわり続けてきた信念だった。
イタリア北部の町ルーゴ。
24年前ここで今も語り継がれるある出来事が起きた。
5部リーグの弱小チームが強豪を次々と打ち破り2年連続で上のリーグに昇格したのだ。

(歌声)この奇跡を成し遂げたのが若き日のザッケローニ。
病気のためプロ選手の夢を諦め下部リーグで監督のキャリアをスタートさせていた。
当時助監督を務めていたタンブリーニさん。
強豪チームに勝つために自らの戦術を徹底する姿が印象に残っている。
42歳の時初めて1部リーグで指揮を執る。
下位にいたチームを強くするために選んだのは攻撃的な戦法だった。
フォワードを3人並べて攻める。
守備を重視するイタリアでは常識破りの布陣だった。
当時フォワードでプレーしたパオロ・ポッジさん。
おとりになるための細かい動きを徹底的にたたき込まれた。
(歓声)発展途上のチームを次々と成長させてきたザッケローニ。
その情熱を今日本代表に注いでいる。
先月ワールドカップを前に行われた最後の国内合宿。
指揮官が確認していたのはこの4年間徹底してきた3本のラインのポジショニングだ。
特にチェックしていたのは青いディフェンスラインの動き。
ディフェンスラインを上げて攻めると背後には広いスペースが生まれる。
そのためボールを奪われれば一転大きなピンチとなる。
コンパクトな布陣が併せ持つ失点のリスク。
ディフェンダーの動きが新戦法を完成させる上で大きな鍵となる。
そのリスクがあらわになった試合がある。
前回大会3位の強豪…日本はイタリア戦同様格上相手に攻撃的に挑む。
コンパクトな陣形から短いパスをつなぎゴールに迫る。
ディフェンダーの吉田麻也も積極的に攻撃参加。
しかしその吉田の背後が狙われる。
繰り返しディフェンスラインの背後のスペースを攻められる。
4失点での敗北。
守備陣をまとめる吉田に迷いが生まれていた。
大量失点にも強気の姿勢を崩さなかったのはエース本田だった。
ウルグアイ戦での大量失点はチームに更なる亀裂を生んでいく。
2か月後のセルビア戦。
これまでのように前がかりに攻める攻撃陣。
前線でボールを失いカウンターを受けた時の事だった。
(実況)逆に広く空いているサイドを使われる。
ピンチになる。
前がかりで攻めていた攻撃陣。
一方守備陣は大きく引いて守っていた。
そこにスペースが空いていた。
この時フォワードからディフェンダーまでの距離は42m。
理想とする距離の2倍以上に広がっていた。
(実況)なかなか奪えません。
そしてシュート。
いいボールが入った。
一体感を失ったチームはワールドカップ出場を逃したセルビアに完敗。
築き上げてきたチームの根幹が大きく揺らいでいた。
攻めるべきか守るべきか。
セルビア戦の翌日互いの意見をぶつけ合う選手たち。
実は4年前にも日本代表は同じ状況に追い込まれていた。
前回のワールドカップ直前日本は今回と同じように攻撃的なサッカーを目指していた。
しかし大会前の強化試合で連戦連敗。
急きょ守備を固める戦い方に変更せざるをえなかった。
多くの選手に攻撃サッカーを貫けなかった悔いが残った。
ワールドカップをどう戦うのか。
選手だけでの緊急ミーティングが開かれた。
失点のリスクを痛感していた守備陣。
結果を出すためには守りを固める事も必要だと訴えた。
ディフェンスからしたら…そこはやめようとか。
そこは…その時は意見がぶつかり合いましたけど。
一方の攻撃陣。
多少失点してもそれを上回る点を取れば問題ないと主張した。
攻撃陣と守備陣の間で埋まらない溝。
口を開いたのは最年長の遠藤だった。
4年前の悔しい思いを繰り返したくないと感じていた。
長友も訴えた。
目先の結果に左右されるべきではない。
自分たちのサッカーを貫くべきだ。
高い目標に向かう事が成長へとつながる。
指揮官と共有してきた思いがあった。
…という事は話しましたけど。
エースの本田も続く。
その言葉に強く心を動かされたのが自信を失いかけていたディフェンダーの吉田だった。
2時間近くに及んだ話し合い。
ザッケローニと共に築いてきた攻撃サッカーを貫く事でチームはまとまった。
ミーティングで攻めの姿勢を強く訴えた本田。
自らに新たな課題を与えていた。
それは利き足ではない右足でのシュート。
日本代表では一度も決めた事がない苦手のキックだった。
課題を克服する事で成長できる。
ずっと持ち続けてきた思いだ。
ミーティングの1か月後最後の海外遠征に臨んだ日本。
相手は前回大会準優勝のオランダ。
選手たちは最後まで攻め抜く決意で臨んでいた。
コンパクトな陣形で戦う日本。
高い位置からボールを奪い素早く攻撃する。
オランダは日本の高いディフェンスラインを見逃さない。
更に世界屈指のストライカーロッベン。
リードを広げられる。
大量失点を喫したウルグアイ戦と同じ苦しい展開。
しかし吉田に迷いはなかった。
前半終了間際。
ディフェンスラインからボールを奪いに行ったのは吉田だった。
吉田を起点にパスがつながる。
最後はフォワード大迫が決めた。
更にコンパクトな陣形からの攻めが続く。
内田から岡崎本田内田そして大迫再び本田。
チーム一丸となった理想的な攻め。
攻め上がるサイドバックの内田。
選手の目線で見てみる。
内田がボールを受ける瞬間連動して走りだす本田と岡崎の姿が目に入る。
選択したのは岡崎。
それに合わせて本田もディフェンダーを引き付けスペースを作り出す。
その意図を感じた内田がボールを受けゴール前のスペースへ。
飛び込んできたのはフォワードの大迫。
内田を信じて走っていた。
大迫の視界に入ってきたのはゴール前に走り込む本田。
そして…。
チームが一つのイメージを共有して生まれたゴールだった。
新たな戦法を信じて戦い抜いた選手たち。
ザッケローニは確かな成長を感じていた。
続くベルギー戦でもチーム一体となった攻めがゴールを生む。
ディフェンダーからパスを受けた遠藤。
素早く本田へ。
振り抜いたのは右足。
代表戦初の右足でのゴールが勝利を呼び込んだ。
ワールドカップ開幕まであと僅か。
(実況)流してスルーしてシュート!日本代表は攻撃サッカーに更に磨きをかけている。
(実況)すばらしい展開から日本のチャンス。
決めた〜!指揮官が示した新たな戦法を苦しみながらも自らのものとしてきた選手たち。
4年をかけて築き上げた攻め抜くサッカーで世界に挑む。
いざ決戦の地ブラジルへ。
日本代表の新たな歴史を刻む戦いが始まる。
不服だな〜。
BSプレミアムで絶賛放送中…
2014/06/09(月) 00:50〜01:40
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「攻め抜いて勝つ〜日本代表“新戦法”への挑戦〜」[字][再]

ザッケローニ監督率いるサッカー日本代表に迫るドキュメント。長友が、香川が、長谷部が、日本独自の攻撃サッカー構築の舞台裏にあった苦闘を語る。語り:香川照之

詳細情報
番組内容
ザッケローニ監督率いるサッカー日本代表のW杯への戦いに迫る。1年前に経験したチーム分裂の危機とは何か。長友が、香川が、長谷部が、日本独自の攻撃サッカー構築の舞台裏にあった苦闘を語る。W杯を日本代表はどのように戦おうとしているのか、1次リーグ突破のカギはどこにあるのか、徹底取材で迫る。【語り】香川照之
出演者
【語り】香川照之

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – サッカー
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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