タクシードライバーの推理日誌 2014.06.09

(電話)
(夜明日出夫)はい…。
(電話)はい…。
(電話)はい?
(電話)何何?はい夜明です。
(あゆみ)「お父さん?」あゆみ?
(ガラスが割れる音)「助けて!」えっ?「すぐ来てお願い」「お父さん助けて!」あゆみ何があった!?どうした…?どこにいる!?はっ?
(あゆみ)下着が盗まれたの。
もう参るわよ。
この1週間毎日のように盗まれてるの。
私のだけじゃなくてお母さんのも。
そんなことで俺呼び出したの?だってお母さんが電話しろって言うんだもん。
あっちゃんとね警察に被害届けは出したのよ。
でもねまともに取り合ってくれないのよ。
そしたらお母さんがお父さんに犯人捕まえてもらおうって。
ほらお父さん元刑事だし張り込みは得意だからって。
何でさ俺がお前の下着泥棒捕まえなきゃいけないの?何で俺が別れた女房を張り込まなきゃいけない…?下着だけじゃないんだから!無言電話までかかってくるの。
気持ち悪くてしょうがないのよ。
だからそういうことはちゃんと警察に…。
私もう何か嫌になってきちゃった。
ちょっと待てよ…。
嫌になったから留学したいなんて言わないよね?今度はね真剣に考えてるの。
お願いヘルプして!ちょっと待てちょっと待て…。
お前さ…お父さん助けてって来たら何?「ヘルプして」ってお金のことばっかだなお前。
お金のことはお母さんのほうが心配してる。
ほらお父さんもいずれ定年になるわけでしょ。
そしたら養育費払ってもらえるのかなって。
お前さ…今日本当に気持ちよく寝てたんだよね。
お前嫌み言うためにここに呼び出したの?ねえもうちょっとここにいてよ。
お母さん来るから。
えっ…来るの?うん。
あいつが?冗談?いいじゃない。
たまにはさお母さんと…。
いや…よろしくお願いします。
ちょっと…!よろしくお伝えください。
ちょっと待って…お父さん!あっ!ちょっとごめんね。
本当今日はついてねえや。
血圧が上がりっぱなしだよ。
もう!・
(クラクション)
(島田誠吉)夜明さん。
島田さん。
ああいいとこで会った。
ちょっといいっすかね?折り入って話したいことがあるんだ。
はい。
早いもんだねぇ。
あれからもう10年だ。
ええ。
僕が初めてタクシーの運転手になったとき島田さんに指導員としてついていただいて…。
あのあと俺は個人タクシーを始めたからね。
短い間だったけどね。
どうも本当にいろいろお世話になりました。
いや…。
島田さんお先です。
失礼します。
ああお疲れさん。
でお話ってのは?うん…。
じつは俺タクシーの仕事辞めようかと思ってるんだ。
えっ?俺もう68だからね。
体のあちこちにガタがきてんだよ。
いつまでも続けて客に迷惑をかけちゃいけないからね。
そろそろ潮時かなぁなんて思って。
ついてはタクシー稼業を辞めるにあたって俺…俺の持ってる個人タクシーの営業権を夜明さんに譲渡したいと思って…。
いや夜明さんはもう立派な10年選手なんだから個人タクシーを始める資格も持ってるし。
いやそうですけど試験とか何かいろいろありますし…。
大丈夫だよ!夜明さんなら。
あの…気持ちうれしいんですけどまだお辞めになることはないんじゃないですか?娘がね来月結婚するんだよ。
お嬢さんたしかレコード会社に勤めてクラシックのほうやってらっしゃるんでしたね。
結婚相手は有望なピアニストなんだって。
へえ〜お嬢さん結婚ですか。
散々俺に心配かけやがって…。
本気になって結婚する意志があるのかどうかね…。
いや娘とは相変わらずなんだけどね。
もっとも俺にも責任はあるんだ。
若いころ娘にはずいぶん迷惑をかけちまったからね。
でも…だからこそ俺はあいつのために必死になって働いてきたんだ。
新婚旅行はアメリカに行くんだって。
夜明さん俺ね来月娘を成田まで送ってやりたいんだ。
俺のタクシーでさ…。
俺の運転で…娘の門出を祝ってやりたいんだよ。
それから幕を引きたいんだよね。
そうか…。
俺もタクシー運転手になって10年か…。
よく頑張ったなぁ。
けどやっぱ個人タクシーだよな。
定年がないし養育費も…。
よし…個人タクシーだ。
ええっと…試験は法令と地理。
よし!やるぞ!!夜明タクシー!夜明タクシー!明日からやろう。
(パトカーのサイレン)
(小出)ご苦労さまです。
売上金が紛失していることから強盗による犯行と思われます。
(国代)刃物でひと突きですね。
(東山)凶器は?いえ。
発見されておりません。
タクシー強盗…。
(ラジオ)「本日午前港区の埠頭で放置されたタクシーの車内から男性の死体が発見されました」「死亡していたのは個人タクシーの運転手島田誠吉さん68歳です」「島田さんはタクシーの運転席で左の脇腹を刃物で刺され死亡していた模様です。
売上金がなくなっていることから…」・警部!
(神谷)おおどうだ?ダメです。
今のところ目撃者は1人も…。
目撃情報は期待出来ないんじゃないですかね?
(携帯電話)はいもしもし?夜明さん!?島田さんが殺されたって本当なの?捜査はどうなの?状況はどうなのって訊いてるのよ!いや…だから先輩言えるわけないじゃないですか。
同業者が事件に遭って…。
いえその気持ちはわからないじゃないですよ。
でも捜査の情報をいくら先輩だからって民間人に漏らすわけにはいかないでしょう。
お願いします。
今回だけは事件に首を突っ込まないでください。
うわっ!どうして怒鳴るかな!?俺間違ってないよな。
ええ。
夜明さん現場まで来ていただけますか?遺体はすでに搬送されました。
鑑識の車両検分も終わったんですが被害車両はそのまま動かしてません。
神谷警部がどうしても夜明さんの意見を伺ってこいと。
まあ…加害者と被害者には何の因果関係もない通りすがりの殺人です。
しかも指紋足跡といった物証はタクシーである以上犯人のものかどうか特定するのも難しいですし。
先輩…同業者としてこの状況から何か犯人の手がかりつかめないでしょうか?どうして窓が開いてるんだ?犯人タバコを吸っていたのかな?吸殻はありませんでした。
1本も?はい。
自分もそっちのほうが気になります。
タクシーの灰皿に吸殻が1本もないというのは…。
島田さん言ってたな…。
吸殻が灰皿にあるのは気になるものだって。
だから島田さんお客さんがタバコ吸うたびに灰皿掃除したって。
ずいぶん律儀な運転手さんだったんですね。
しかしもし犯人がタバコを吸ったのなら灰皿を掃除する暇はない。
吸殻があってしかるべきです。
出たよバカバカ…。
あのな犯人がそんなものあそこに残すわけないだろ!窓から捨てるんだよ。
(雑音)あれ…?犯人2人組かな…。
どうしてわかるんですか?ちょっと座って。
はい。
左側の窓際に座ってタバコを吸ってたとしたら…。
けどバックミラーは右向いてる。
本当だ。
つまりもう1人乗っていた…。
それと気になるのがこのラジオだ。
雑音だけのラジオ…。
東山乗務日誌は?はい。
あの日俺島田さんと晩飯を食って島田さんが仕事に戻ったのが8時過ぎ…。
銀座から芝公園。
新橋から赤坂が21時48分…。
問題はその後ですよね。
犯人をどこで乗せたのか…。
国代お前島田さんのことを律儀な運転手さんと言ったけどそんなもんじゃない。
この業界で島田さんのことを知らない人はいない。
俺が初めてタクシーの運転手になったころ…。
焦ることはないよ。
ルートがわからなかったら地図を見る。
大事なことはお客さんの気分を害さないことなんだから。
はい…。
まああんたなら大丈夫だと思うけどさ。
島田さんはいつも俺を励ましてくれた。
夜明さんこれだけは憶えといてね。
客の気持ちがわかって初めて一人前。
目配り気配り心配り。
タクシードライバーってのはそういうもんだ。
島田さんに言われたことは今でも覚えてるよ。
島田さん俺にとって恩人みたいな人だった。
東山必ず犯人挙げてくれ。
はい。
(携帯電話)もしもしあっ警部。
はい終わりました。
その件は後ほど。
ちょっと…。
神谷今回無理言って悪かった。
本当にありがとう。
ちょっと待って…。
警部が夜明さんの協力を仰いだのは何も夜明さんに気を使ってのことじゃないんです。
点数稼ぎです。
じつは警部来月警視の昇任試験を受けるんです。
試験といってもペーパーテストとかそういうのはないんですけれど面接で何を訊かれるかわからないからって。
だから最近はもう現場になんか出ないでお勉強忙しくてね。
なあ。
そこに今回の事件です。
もしこれが迷宮入りにでもなったら評判がガタ落ちじゃないですか。
だからです。
(神谷)「東山また何か言ってます?」東山だけじゃないよ。
国代も言ってるよ。
神谷お前そんな奴!?最低!最悪!!違いますよ。
私はただこの事件を何としてでも解決したいと…。
(不通話音)もしもし?もしもし!じゃあ。
失礼します。
(島田貴美子)ここで父は殺されたんですか…。

(貴美子)夜明さんですよね?ご無沙汰してます。
いえ。
先日埠頭の現場で。
夜明さんちょっと…。
夜明さんどうしてあの現場にいらしたんです?ええ警察から話聞きたいって言われまして…。
そういえば夜明さん以前刑事をなさってたんでしたね。
ええ。
父は強盗に遭って殺されたんですか?何か?いえ…。
隣に座ってた方は婚約者の方ですか?ええ。
ピアニストだとか…。
父は結婚には最後まで反対してました。
元々父はクラシックが嫌いでしたし。
そんなことないと思います。
10年前あなたがレコード会社に就職が決まったころ島田さん急にクラシックを聴き始めて…それまで北島三郎の歌しか聴かなかったあの島田さんがですよ。
夜明さんとお会いしたのもそのころでしたね10年前…。
島田さんから連絡を受けて…。
お前をナイフで切りつけたその男は誰だと訊いてるんだ!?島田さん!とっかえひっかえ男を替えやがって!お前が男にだらしがないからこういうことになるんだ!おい!お前ないくつになっても大人になりきれないんだよ!!医者は警察に知せたほうがいいって言うんだよ。
だけどね貴美子は就職が内定したばっかりなんだ。
これが表沙汰になったら…俺はそれを考えるとどうしていいかわからないんだよ!やっぱり警察に届けるべきだと思いますよ。
幸い傷は軽くて済みそうですし事件が公表されることはありません。
警察に知り合いもいますし…。
とにかくうやむやにするのは一番よくないと思います。
他人が余計な口はさまないで!かすり傷受けただけなのに大げさだわよ。
お父さんあなたのこと心配して…。
腕の傷より頬の傷のほうが痛いわよ!父なんて死んでしまえばいいんだわ!お父さんが亡くなったというのにあなた…。
(尾崎治雄)事件のことニュースで聞いて驚いたよ。
失礼します。

(高見沢恵一)あの人誰?以前同じ職場にいた人。
そう…。
亡くなった島田氏と娘の貴美子親子仲はよくなかったそうです。
島田氏がタクシーの運転手になったのが今から21年前。
島田氏47歳のときです。
以前は鎌倉に住み横浜で貿易関係の会社を経営していたんですがその会社が倒産。
当時13歳だった貴美子と共に東京へ来てタクシーの仕事を始めたそうです。
そのころ妻が病死したこともあって…。
娘としては昔のしこりがあるんだと思います。
貴美子のほうは神奈川の音大に入学と同時に島田氏のもとを出て自活。
東京のレコード会社就職の後も父親と会うことはほとんどなかったと…。
婚約者を紹介したのもつい最近だったようです。
(島田)バカヤロウ貴美子!何が結婚だ!?突然男連れてきて俺は許さんぞ!貴美子…お前はまだ大人になってないよ。
私父さんの許しを得るために彼連れてきたんじゃないの!父さんがどうしても会いたいって言うから。
もういいでしょ?高見沢さん行きましょう。
貴美子!お前他の男とは手を切ったんだろうな?私のことは放っといてよ!お互いいがみ合ってたといいますか…。
男親ってのは娘の結婚には反対するもんだよ。
島田氏の経歴家庭の状況はわかった。
それで怨恨のほうはどうなんだ?島田氏の周辺に島田氏に恨みを持った人物はいないのか?今のところそういった人物は浮かんできません。
夜明さんも言ってました。
島田氏は立派な運転手で人に恨みを買うような人間じゃないって。
それにもしホシが2人組だとしたら…。
警部自分も怨恨のセンはないかと思うんですが…。
それにしても夜明さんはさすがですよね。
バックミラーの位置に気付くなんて…。
だろ?夜明さんはそのへんにいる刑事とはわけが違うからな。
夜明さんを民間人にしておくのは惜しいですよね。
ですね〜。
何だお前たち!夜明さん夜明さんって。
犯人が2人組と決まったわけじゃない。
あらゆる可能性を考えて行うのが捜査ってもんだ!つまらないこと言ってないで聞き込みに行ってこい!
(2人)はい!俺とお前は聞き込みへ。
(2人)警部は残ってお勉強!ちょっとすみませんよろしいですか?警察です。
このドライバーさんの目撃者を捜してるんですが10日の夜10時ごろなんですけど…。
いや〜ちょっとわかりませんね。
そうですか。
すみません。
夜明さん俺ねあんたに俺の車使ってほしいんだ。
来月俺娘を成田まで送ってやりたいんだ。
俺のタクシーで俺の運転でさ。
で娘の門出を祝ってやりたい。
それで幕を引きたいんだよね。
そうなの。
例の下着泥棒が捕まったの。
よかった〜!ねえちょっと聞いて!犯人誰だったと思う?近所の人!大学生。
お母さんも私も見たことあるの。
もうびっくり!あのさ来たなりガンガンしゃべんないでくれる?俺起きたばっかりなんだから。
私お父さんには感謝してます。
何しおらしいこと言ってんの?だって知らなかったんだもん。
お父さんが個人タクシーに向けて勉強してたなんて。
あっ…見るなって。
まだ決めてないって。
お母さんに言っとく。
これで養育費は安泰だって。
まだ決めてないって言ってんだろが。
ある人に勧められてちょっとやってみようかと思ったんだけどさ…。
ほら知ってるだろ島田さん?島田さんって昔お父さんがお世話になった?ウソ…こないだ新聞に載ってたタクシー強盗に遭って亡くなった人って…。
そう。
だから勉強どころじゃないんだよ。
でもさ俺のこと考えてくれた島田さんのために試験だけは受けたほうがいいかなと思ったりして…。
受けるべきよ。
簡単に言うなって。
個人タクシーって資格があるんだっけ?もちろんだよ。
法人タクシー会社に10年以上勤務。
過去3年間無事故無違反。
俺の場合は正確に言うと来月でまる10年。
だからあと1か月無事故無違反を頑張ってさ…。
お父さんなら大丈夫。
応援する!俺は応援しないよ。
お前の留学。
あっちょっと…あれどうなった?何?あれ…無言電話。
それは相変わらず。
昨日もあったの。
はあ…一体犯人誰なんだろう?犯人なぁ…。
《犯人は一体誰なのか…?》《どうして窓が開いていたのか?》《バックミラーはどうして右側に向けてあったのか?》《そしてラジオ…》《あの中に何か手がかりがあるはずなんだが…》
(電話)
(斎藤美奈)はいサンライズレコード。
はい。
少々お待ちください。
貴美子さん2番にお電話です。
もしもし?はい私ですが。
はい…?父がですか?
(津村)はい。
先月当社にお見えになって娘さんの婚約者高見沢恵一氏の素行調査をお願いしたいと…。
これが高見沢氏に関する調査報告書です。
依頼者の島田様が亡くなられてまあどうしたものかと思ったんですがこれはやはり…。
それはそちらで処分してください。
私はそんなもの見たくありません。
失礼します。

(ピアノ演奏)『別れの曲』
(ピアノ演奏)
(ピアノ演奏)少し休憩する?いや。
じゃあもう一度。
お疲れさまでした。
お疲れさま。
お疲れさま。
ああ。
悪いけどちょっと伝票を書いていかなきゃいけないの。
わかったじゃあ僕は先に…。
(山下)「16461646どうぞ。
夜明さん?」はい1646夜明です。
どうぞ。
夜明さんに迎車の指名が入ってます。
可能ですか?可能ですが木下課長風邪ひいたんですか?違います。
私今回この営業所に配属されました山下と申します。
一応係長でございます。
ではこれからすぐにですね赤坂のサンライズレコードまで行ってください。
葉山までお願いします。
はい。
葬儀の折はありがとうございました。
いえ。
こちらこそ指名いただいて。
父の事件その後どうなってるんでしょう?今のところ捜査の進展ないようです。
そうですか…。
葉山から通勤って大変ですね。
レコード会社のお仕事大変でしょう。
けど今クラシックが流行ってるんでしょ?癒し系が求められる時代とか…。
クラシックは3万枚売れれば大ヒットって言われる世界なんですよ。
好きでなければやれません。
失礼ですけど婚約者の方は?デビューアルバムは好評でした。
今2作目をレコーディング中で。
来月にはニューヨークでピアノコンサートを開くことになっています。
新婚旅行でアメリカってそれですか…?ええ。
その仕事を兼ねて。
ああそうなんですか。
結婚は延期することにしました。
世間の常識って嫌ですね。
ありがとうございました。
(ノック)コーヒーでも飲んで行かれません?いや…。
どうぞ。
どうぞ。
夜明さんのことは昔父がよく話してました。
「元刑事だけあって男っぷりがいい」って。
失礼ですけどどうして刑事をお辞めになったんです?捜査に係わった女性とのこと誤解されて。
週刊誌にまで書かれてそれで…。
奥様は…?離婚しました。
娘がときどき遊びに来てくれます。
母です。
お父さんのはないんですね。
男ってずるいですよね。
自分に都合の悪いことは話さない。
夜明さん父から何も聞いてないでしょ。
昔私たち家族は鎌倉に住んでました。
家にはピアノが1台あって…。
私は母と一緒にピアノを弾くのが好きでした。

(ピアノ演奏)
(貴美子)でも母との時間はあまりありませんでした。
お母さん大丈夫?お母さん!
(貴美子)母は肝臓に持病があって入退院を繰り返していたんです。
学校が終わると私は毎日病院に行きました。
なのに父はろくに見舞いにも来ませんでした。
お父さん仕事で忙しかったんじゃないんですか?そのころ父は別の女性と付き合ってたんです。
あげくに父の会社が倒産して家を手放すことになりました。
私は父に1つだけ頼みました。
ピアノだけは守ってほしいって。
父は「わかった」と言いました。
そのピアノを…。
(貴美子)ダメーッ!おい邪魔だ!このクソガキが!恨むんだったら親父を恨めよ。
(島田春江)お父さんいい人よ。
お父さんを恨まないで。
貴美子にはわかってもらえないかもしれないけど…。
お父さんとお母さん…。
男と女には長くいるといろいろあるのよ。
何度も別れようと思ったわ。
そして離婚してほしいって頼んだの。
でもお母さんが病気になってお父さん離婚はしないって言ったの。
病気のお前を放っておくことは出来ないって。
お父さん…そういう人なの。
お父さん私と貴美子のためにこれまで一生懸命働いてくれたの。
(貴美子)その翌日母は亡くなりました。
今度の事件のことで警察の人に家族のこと訊かれて母は病死したと答えましたけど…。
お母さん!お母さん!!本当は違います。
母は父が殺したんです。
あなたがお父さんを嫌う気持ちはわかります。
父は家族の気持ちなんかどうでもいいんです。
自分本位で横暴で…。
いえ違います。
今度の結婚にしたって父は私に内緒で高見沢さんの素行調査を頼んでいたんです。
そういうのを横暴と言わないで何と言うんです!?いえ違います。
島田さん来月あなたを成田まで送っていくのを本当に楽しみにしてました。
島田さんはあなたを育て上げるためにタクシーの運転手になったんです。
この21年間あなたのためだけに働いてきたんです。
夜明さんに私の気持ちはわからないわ。

(パトカーのサイレン)ご苦労さまです。
(勝本剛)ガイシャはこの家に1人で住んでたのか?はい。
で発見者は?婚約者です。
よし行こう。
島田貴美子さんですね?はい…。
発見されたときの状況をもう一度話していただけますか?発見した時刻は?7時半ごろです。
今日は午前中に雑誌の取材が入っていて私も一緒に行くことになっていたものですから。
(ノック)開いてる開いてるよ!神谷これどうなってるの?これ!?これどうなってるの!?詳しいことはわかりません。
管轄じゃありませんから。
神奈川県警に問い合わせて死亡の状況だけはわかりました。
死因は背中を刃物で刺されての失血死。
死亡推計時刻昨夜午後10時から深夜0時の間。
ですが高見沢氏は昨日レコーディングがあり午後9時ごろスタジオを出たといいます。
鎌倉の自宅まで1時間では着かないでしょうから犯行時間はおそらく午後11時から深夜0時の間。
で犯人の目星ついてるの?いえ。
捜査本部としてはとりあえず発見者の貴美子から話を聞いているようです。
貴美子さんが発見者?はい。
おいちょっと待て。
話聞いてるってことは神奈川県警貴美子さんを疑ってるの!?第一発見者を疑うのは捜査の基本です。
バカ!アリバイの確認ぐらいしますよ。
じつはその件で明日あたり捜査員がここに来ると思います。
ここに何しに?我々も気になったんで電話で貴美子に話を聞きました。
事件のあった午後11時から深夜0時の間彼女夜明さんのタクシーに乗ってたっていうじゃないですか。
それは本当ですか?そうだよ。
たしか11時ごろ乗っけてそれからずっと一緒だよ。
ずーっと?じゃあアリバイは完璧ですね。
お前たちも貴美子さんを疑ってるの?そうじゃありません。
何よりこの事件は管轄外ですし。
でも妙だとは思いませんか?うん…この間島田さんが事件に遭ったばっかりだしな。
父親に続いて今度は婚約者が殺されるだなんて…。
はい。
自分も偶然とは思えません。
2つの事件つながってるんじゃないでしょうか?だとしたら管轄外だからと放っておくことは出来ません。
同一犯の犯行ということも…。
島田さんと婚約者を殺す。
つまり貴美子さんに恨みを持つ人間の犯行…。
その可能性は十分考えられます。
じゃあ島田さんの事件は強盗の仕業じゃなかったんですね。
強盗の仕業に見せかけた…。
だから言っただろ?バックミラーがどうだとか2人組だとか。
民間人の推理を鵜呑みにするなって!夜明さんもヤキが回りましたかね?ふ〜ん…。
そんでお前たちどうするの?はい。
貴美子を恨んでいた人物はいないかそのセンも当たってみます。
ですがまず明日鎌倉へ行こうと思います。
高見沢氏の殺害状況がわからないことには捜査の進めようがないんですよ。
鎌倉行くの?はい。
そう。
そうって…。
どうして毎回毎回こうなるかなぁ。
先輩が捜査のスケジュールなんかベラベラしゃべるからですよ!警察車両いっぱい余ってるのに!ごめんね…。
何ブチブチ言ってんのよ?こないだ俺が捜査に協力したんだから今度はお前たちが俺の営業に協力すればいいのよ。
請求書神谷に回すから大丈夫。
東山…俺さ貴美子さんの気持ち考えたらじっとしてらんないんだよね。
先輩どうしてそんなに貴美子のことが気にかかるんですか?あゆみ見てるような気がしてさ。
10年間彼女何も変わってない。
父親を憎んだまんまだよ。
それがたまんないんだよ。
(勝本)ご苦労さまです。
すみません。
いやとんでもない。
こっちこそ東京へ行く手間が省けました。
そうすると事件のあった20日の夜島田貴美子は間違いなくあなたのタクシーに乗車していたんですね。
間違いありません。
高見沢氏はピアノのそばで殺されていた。
弾いてるときにやられたとすればホシは面識のある人物…。
室内に物色の跡もないし物盗りの犯行でないことだけは確かです。
あの…ここは高見沢氏の実家ですか?ええ。
高見沢の両親もピアニストで自宅でピアノを教えてたんですが3年前に交通事故で両親共死亡しています。
それで高見沢が実家に戻ってきたというわけです。
あの事件当夜の目撃情報は?それに関しては今のところ…。
あのガレージに車ありますけど…?仕事で車は使わなかったようですね。
事件の日もガレージに車があるのを近所の住人が見ています。
ということは電車で帰宅…。
やはり犯行が行われたのは11時から0時の間…。
高見沢氏の女性関係はどうだったんでしょうか?問題はそこですよ。
それはすごかったんですよ。
毎晩違う女性と帰ってきて。
それいつごろのことですか?えっとね…半年くらい前かしら?でもそれからはもうピタリと止んで。
半年前…?ええ。
貴美子と付き合い始めたころですね。
最近誰かともめていたということはないですか?高見沢さんがですか?さあ…。
私はあの人のことは何も。
娘は知ってるみたいなこと言ってましたけど…。
知ってるというのは?1年くらい前に横浜のライブハウスであの人が演奏してるところを見たことがあるって。
横浜?はい。
店の名前訊いとけ。
はい…。
そのお店名前はわかりますか?たしか元町にある「まんだら」とか…。
まんだら?はい!
(国代)どうもすみません。
(川上康利)ええ高見沢君はうちで演奏してましたよ。
あの失礼なんですけれどこちらのお店ではどういった音楽を?ジャズにブルースシャンソンにポップス。
要は大人の音楽ですよ。
彼は重宝しましたよ。
とにかく譜面なしでどんな曲でも弾いちゃうんですから。
シャンソンにポップス…。
その高見沢さんがどうしてクラシック界でデビューを?それは貴美子さんですよ。
島田貴美子さんですか?彼女は以前からうちによく来てくれてましてね。
高見沢君の才能に目をつけたようです。
半年前彼は掛川秀美という女性シンガーと組んでシャンソンをやってたんですがあるときお客さんにリクエストを尋ねたんです。
そしたら客席にいた貴美子さんが…。

(拍手)
(貴美子)ショパン!『幻想即興曲』
(川上)秀美はムッとしてましたよ。
ショパンなんて言われたって歌いようがない。
断るかなと思ったらおもむろに高見沢君が弾き始めたんです。
一度お会い出来ないかしら?
(川上)高見沢君は貴美子さんのおかげで道が開けたんです。
でもそんなことでプロデビュー出来るんですか?元々彼はクラシックをやってましたからね。
音大を出て若いころはポルト国際音楽コンクールで賞を取ったこともあるんです。
ところがチャンスに恵まれなかった。
私生活のほうはどうだったんですか?高見沢さん女性関係には派手だったとお聞きしているんですが。
以前はね。
音楽家はもてますからね。
でも貴美子さんと会って彼変わりましたよ。
若いころは芽が出ないことでやけになってそれこそばくちに狂って荒れた生活を送ってたとも言ってたけど。
で半年前貴美子さんと出会って道が開けた。
あの…その貴美子さんですが彼女を恨んでた人いませんか?高見沢さんと結婚することで。
秀美は恨んでたでしょうね。
秀美ってさっき言われた…。
変わった子でね資産家のお嬢さんらしいんですけど刺激のある生き方をしたいとか言って…。
じゃあ秀美さんも高見沢さんと?付き合ってました。
結局秀美は歌手を辞めて今は銀座のバーで働いてるそうです。
秀美にすれば貴美子さんにすべてを奪い取られたわけですからね。
でもそれを言うならば貴美子さんのほうにもいるんじゃないですか?高見沢君と知り合う前彼女この店に来るときはいつも違う男性と来ていましたから。
それもみんな年上の男性で。
しかし今度の事件が男女関係のもつれだったとしたらそれこそ容疑者は山と出てくるんじゃないですか?貴美子のほうにも男が複数いたか…。
それもみんな年上ですって。
けど1つだけはっきりしたことがある。
事件と貴美子さんは無関係だ。
過去はともかくこの半年間貴美子さんと高見沢は真剣に付き合ってきた。
それに仕事の上でもお互い大切なパートナーだった。
それにひと月後ニューヨークでコンサートを開くはずになってる。
そんな高見沢を貴美子さんが殺すわけがないだろ?だろ?はい…そうですよね。
ご苦労さまです。
朗報です。
来月夜明さんに表彰状が出ます。
表彰状?はい。
勤続10年当社のために夜明さんは本当に頑張ってくれましたから。
何だそういうこと。
私前から一度言おうと思ってたんです。
言いそびれちゃって。
シャイなもんですから。
上司として私は夜明さんのような部下を持って幸せです。
いやその…いろいろ考え方はあると思うんですよ。
10年を節目に新しいことを始めようという考えといやこれからも会社のために頑張ろうという考えと。
何言いたいの?個人タクシー始めようと思ってません?思ってたら何なの?思わないでくださいよ。
夜明さんのようなベテランは会社にとって貴重な戦力なんですよ。
いやそんなことよりタクシー業界もっと防犯対策に力を入れたらどうなの?わかってます…。
島田さんにしても今回が初めてではなかったですからね。
そういえば俺も前に聞いたことがある。
10年前夜明さんが入社するふた月ほど前です。
そうです…島田さんタクシー強盗にあって幸いあのときは未遂で済みましたけど…。
辞めないでくださいよ…!とにかく当社は今人手不足で猫の手も借りたいほど忙しいんで。
えっ…猫?猫。
何?俺会社にとって猫!?いやいや…。
わかったわかった…。
いえそういう意味じゃ。
猫も忙しいから。
猫とかシャム猫とかいう意味じゃ…。
(秀美)おはようございます。
(浦野幸代)遅かったじゃない。
秀美ちゃんにお客様よ。
掛川秀美さんですね?高見沢氏の事件でちょっとお訊きしたいことが…。
最近高見沢さんとお会いになったのはいつですか?最近ってどれくらい前のことを言うのかしら?ここ半年です。
いいえ。
一度もお会いになってない?ええ。
20日の夜あなたお店お休みになってますね。
風邪をひいて自分の部屋にいました。
いけませんか?尾崎治雄…。
それは確かですか?ええ…。
すみません。
ちょっとよろしいでしょうか?はい…。
半年前まで尾崎治雄という男性と交際されてたそうですね。
交際というほどのものではありません。
食事した程度で…。
半年前高見沢さんとお付き合いするようになった。
でもその後も尾崎はあなたにモーションをかけ続けた。
あなたそのことに迷惑して…。
ええ。
あとをつけたりマンションの前で待ち伏せしたりするようになったので上司に相談しました。
あの…そのことを島田さんにお話しになりましたか?同僚が心配して知らせたみたいで…。
お前が尾崎か?島田貴美子の父親だ。
娘に手を出すな!バカヤロウ!!父さん何してるの!?てめえ!やめてよ…父さん!そのことで騒ぎが大きくなり…。
結局尾崎は会社を辞めざるをえなくなった。
ええ…。
そのことが何か?えっ…そんなヤツがいたの?はい。
そうです。
やっぱり留守ですね。
尾崎は会社をクビになった後音楽関係のソフト会社を興したらしいんですがうまくいかず先月倒産してます。
「その尾崎が島田さんの葬式に来てたっていうんですよ」ああ…いたいた。
「まあストーカー行為はこの半年なかったとはいうんですが…」でも尾崎はいまだに貴美子に執着しているようですから…。
はい。
島田さんに対しても恨みを持ってたはずです。
そういう男なら…。
だったらそいつで決まりだよ。
父親と婚約者を殺す。
同一犯ならそういう奴しか考えられない。
はい。
今尾崎の行方を追ってます。
夜明さんとの約束守れそうです。
尾崎治雄さんですよね?警察。
(国代)待て!尾崎!コラッ!コラッ!逮捕!!逮捕!公務執行妨害!!何だよ…。
どうして逃げた?職務質問に答える義務はないでしょ。
答えたくないから刑事さんたちから離れた。
それがどうして公務執行妨害になるんですか?10日の夜あなたどこにいました?貴美子さんのお父さん…つまり島田さんが殺された日ですよ。
そんな前のこと憶えてませんよ。
じゃあ4日前は?だったら憶えてるだろう?うん?高見沢さんが殺された20日の夜11時ごろ。
飲んでました。
どこで?新宿。
店の名前は憶えてませんよ。
6時ぐらいから飲み始めて店を何軒か変わりましたからね。
それに酔ってたし。
サンライズレコードの人が最近あなたを何度も見かけてるんですよ!会社の前に立って誰かが出て来るのを待ち続けてた。
あなた今でも貴美子さんのことが好きなんでしょ?まあそんな彼女が結婚するんじゃたまんないよな。
しかも島田さんに恨みを持ってた…なっ?僕は人殺しなんかしてませんよ。
もういいでしょ。
まあまあ…。
店の名前を思い出してくださいよ。
いいんですかこんなことして?じゃあ電話させてくださいよ。
飲み屋にですか?警視庁にです。
警部!何で尾崎釈放しなきゃいけないんですか!?尾崎は警務部長の遠縁に当たるんだそうだ。
それが何ですか!?奴がやったことは立派な公務執行妨害ですよ!殺しのほうだって奴には動機が…。
東山…。
尾崎の家をガサ入れさせてもらいます。
そうすれば必ず証拠が!自分も同じ意見です。
警部!ダメだ!バカだよ!お前本当にバカ!!東山に聞いてあきれたよ!人事扱う警務部長が出てくると何でも言いなりか!?そんなにお前昇進したい!?出世のために犯人見逃すの!?バーカ!!そうじゃありません!今の状況でガサを入れることは出来ない。
これは私の判断です!何が判断だよ!?物証は何もないんです!指紋の照合をしましたが島田氏のタクシーから尾崎の指紋は出てません。
そんなもん手袋してたに決まってんじゃん!手袋をしたままタバコは吸わないでしょ!?手袋…。
お前そんなに警視になりたいの?だからそれとこれとは違うって言ってるじゃないですか!一般論として出世はしたいです。
夜明けさんが個人タクシーの運転手になりたいのと同じです!夜明けさんにはあゆみちゃんがいるように私にも娘がいます。
それも4人。
上の子はいずれは結婚するでしょう。
そのとき私は花嫁の父として警視でありたい!娘の父親としてそう思うことがいけないことですか!?この歳になって勉強するのは楽じゃないよな?はい。
ああ…どうも。
もう一度例のアリバイの件を確認したいと思いまして。
じつは目撃者が出ました。
目撃者?高見沢氏が殺された夜深夜0時ごろ高見沢の家の近くで不審な女性が目撃されてます。
その女性が事件に係わっているのかどうかはまだわかってません。
女性?深夜0時ごろ島田貴美子は本当に?ええ。
私のタクシーに乗ってました。
まだ貴美子さんを疑ってるんですか?いや…夜明さんの証言を信じてないわけじゃありません。
夜明さんは以前警視庁にいらした。
ええ。
そこが妙に引っかかりましてね。
貴美子にはアリバイがある。
しかも元刑事が運転するタクシーに乗っていた。
じゃあ掛川秀美は?秀美のほうは我々も捜査を進めてます。
そうですか…。
どうも失礼しました。
サンライズレコードさんですか?クラシック制作の島田さんお願いします。
今日休み?すみませんでした。
はい?あの鎌倉までいいですか?ああどうぞ。

(チャイム)会社休まれてると聞いて体調を崩されてるんじゃないかと思いまして…。
心配して来てくださったんですか?大変でしたね高見沢さん…。
私死んだ男の写真飾っていつまでもメソメソしてるような女じゃないんです。
はあ…誰も私のことわかってない。
事件が起きてからというもの刑事さんが会社に来て私のことを調べてるみたいです。
アハハ…笑っちゃうわ。
どうして私が高見沢さんを殺さなくちゃならないんです?私が高見沢さんと結婚したいと思ったのは彼の才能を独占したかったから。
彼が売れれば私も業界で名を売ることが出来る。
それだけのことだわ。
高見沢さんに愛情を持ってなかったというんですか?アハハハ…。
言ったじゃないですか。
愛情なんてものは信じられない。
私は父からそう教わったって。
貴美子さん…。
私今まで父から愛情を受けたことなんて一度もないんです。
父はいつだって私を見下して。
「お前はいくつになっても大人になれない」って。
私は父親にも恋人にも…男には縁がないんでしょうね。
そんなことはありませんよ。
私これからどうすればいいんです?お酒はやめたほうが…。
助けて…。
夜明さん温かい…。
抱いて。
貴美子さん…あなた事件とは無関係です。
私が証人です。
あなたを…島田さんの代わりに私が守ります。
もう一度見ていただけますか?本当にこの男で間違いないですか?間違いないですって。
ありがとうございました!酒癖悪い人でしたからね。
嫌でも覚えてますよ。
じゃあ20日の夜10時ごろこの男は確かにこの店で酒を飲んでいた?閉店時間の深夜1時までですか?ええ。
そうです。
それに島田さんが殺された10日の日もあの店に尾崎はいたようです。
先輩尾崎のアリバイ完璧です…。
《高見沢を殺したのは尾崎じゃない》《すると犯人は一体誰なのか…》貴美子さん何やってるんですか!早く乗って!あんた何なんだよ!義理の兄貴だ!文句あんのか!!なにぃ…?ちょっと!今の何なんですか。
音楽評論家の権藤さん。
一体どういうつもりなんですか。
10年前傷害事件半年前はストーカー。
責任の一端はあなたにもあります。
次から次へ男を替えて。
いつまでこんなことを続けるつもりなんですか!はあ…。
私本当は車はだめなんです。
小さいときから車酔いしやすくて…。
さっき…すいませんでした。
でも島田さんが生きてたら同じことをしたと思います。
あなたに1つだけ言っておきます。
父親を嫌うのは仕方ありません。
でも自分のことを粗末にしないでください。
来週1人でニューヨークへ行くことになりました。
コンサートをキャンセルした件で後処理があって。
そうですか。
そういえば…父が成田まで送ってくれるはずだったんでしたね。
夜明さんに叱られたことはうれしかったです。
でももう夜明さんにお会いすることはないと思います。
窓開けましょうか。
すみません。

(オルゴールの音)『ノクターン』秀美さんが店を辞めた?ええ。
さっき電話があって。
旅行に行くとか言って。
本当にいい加減な子ですよ。
お店を辞めないって言うから私も協力してあげたのに。
えっじゃあ…。
あっ…。
すみません。
高見沢さんうちのお店によく来てました。
それだけじゃありません。
私見たんです。
先月…。
やめて…。
やめてよっ!はあ…。
そんなに怒ることないだろ。
だからどうして結婚するのって訊いてるの。
貴美子さんのことは出世のために利用してるだけじゃなかったの?あなたがそう言うから…。
だから結婚も出世の道具なんだよ。
私そんなの許さない。
あの女と結婚するなんて私は絶対に許さない!高見沢さんの事件があった次の日秀美ちゃんから電話があって警察が来てもあのときのことは黙っておいてほしいって。
それで…。
神奈川県警は今必死になって秀美の行方を追ってます。
ですが高見沢の事件はそれで筋がとおるんですが…。
けど秀美が貴美子さんの父親を殺す理由ないよな。
はい。
2つの事件はつながってる。
だとしたら…島田さんを殺したのは一体誰なのか!?とりあえず自分たちは管轄内で起きた島田さんの事件1本に絞って捜査をやり直してるんです。
何かわかった?いえ。
まぁ大した情報じゃないんですけれども神谷がどうしても先輩に確認して来いと。
何を?島田さんタクシー強盗に遭ったの今回が初めてじゃなかったそうですね。
10年前にも。
先輩その話島田さんからお聞きになったことは?あるよ。
俺が会社に入る前島田さんのタクシーに…。
金出せ。
この野郎!!幸い事件は未遂に終わり島田さんの命も売上金も無事だった。
だが凶器に指紋が残っていたにもかかわらず犯人は挙がらなかった。
でも島田さんは犯人の顔を見たんですよね?けど強く殴られて部分的に記憶が飛んじゃったんだよね。
ほらボクサーでもよくいるじゃない。
KOされたパンチを覚えてないって。
で島田さんも事件のこと話してくれたときに不思議そうな顔して言ってたよ。
犯人の顔を見てるはずなのにどうしても思い出せないって。
先輩は妙だと思われませんか?何が?いえ同じ人が二度もタクシー強盗に遭うだなんて。
俺だってそういうのあるよ。
まして島田さん20年選手だよ?一度や二度そういう嫌なことだってあるって!はあ…。
そう思わないでもないんですが神谷がどうしてもそこが気にかかると。
《そうだった。
10年前の事件のときは島田さんは防犯灯をつけている》《なのにどうして今回防犯灯をつけなかったのか…》《もう一度1から考えるんだ》《あの夜島田さんは最後の客を赤坂で降ろした》《赤坂…?貴美子さんのレコード会社も赤坂…まさか》客の気持ちがわかって初めて一人前。
タクシードライバーってのはそういうもんだ。
《そうだ。
客の気持ちを考えろ》《客に合わせて行動したはずの島田さんの気持ちを考えろ》《車を見て気になったのは窓バックミラーラジオ》《窓はどうして開いてたのか…》《バックミラー。
後部座席には2人の客が乗っていたはずだ》《そしてラジオ》横浜まで。
はい。
運転手さん。
悪いけどラジオつけてくれない?FM。
はい。
これでいいですか?ああそれでいい。

(FMラジオ)
(ラジオの雑音)あら?
(FMラジオ)成田ですか?だったらお送りしますよ。
ありがとう。
夜明さんとはもうお会いしないと。
ええこれで最後です。
あの1か所寄り道していいですか?貴美子さんにどうしても聞いていただきたいものがあるんですよ。
どうぞ。
どうぞ。
今から話すことはすべて私の推測です。
ですけどこの推測には自信があります。
今度の事件でわからなかったのは防犯灯です。
どうして島田さんのタクシーの防犯灯がついてなかったのか…。
でもそれは島田さんその人物がまさか自分を襲ってくるとは思わなかった。
つまり顔見知りだったんです。
あの夜島田さんのタクシーに乗ってきたのは高見沢さんと…あなただって思ってます。
夜明さん私に聞かせたいものって?ラジオです。
あの夜の島田さんのタクシーのラジオもこの周波数に合わせてありました。
次にわからなかったのは窓です。
どうして窓が開いていたのか。
最初はタバコのためだと思ったんですが…。
貴美子さん疲れてると車酔いするっておっしゃいましたよね。
島田さんも当然それ知ってた。
事件の夜島田さんのタクシーに乗ってきたのがあなただったとしたら島田さんあなたのために窓を開けたでしょう。
夜明さん私には何をおっしゃりたいのか…。
私この事件最初は島田さんを殺したのと高見沢を殺したの同一犯だと思ってました。
でも今は違います。
島田さんを殺したのは高見沢。
高見沢を殺したのは…あなたです。
待ってください。
推測でおっしゃるのは結構ですけど私と高見沢さんが父のタクシーに乗っていたその証拠がどこにあるんです?これはFM関東の番組です。
同じ放送局でも聞く地域によって周波数が微妙に違うんですよ。
ではなぜ島田さんのタクシーのラジオの周波数が神奈川に合わせてあったのか。
もうおわかりですよね?島田さんは東京で殺されたのではなくて乗客を送っていった神奈川で殺されたんです。
島田さんはあなたを降ろした後高見沢を送っていきそこで殺されたんです。
高見沢は島田さんの車を運転して島田さんの遺体を東京まで運んだ。
どうして高見沢さんが父を殺さなければならないんです?バックミラーです。
バックミラーがどうして後部座席右側を向いてたのか。
どうして後部座席右側に座ってた高見沢のことが島田さんそんなに気になったのか。
島田さん記憶取り戻したんです。
10年前自分を襲ったタクシー強盗の犯人が高見沢であることに気付いたんです。
どうして高見沢との結婚に反対したのか。
どうして素行調査の依頼までしたんでしょうか?あなたが島田さんに高見沢を初めて会わせたとき島田さんどこかで見た気がしたんじゃないでしょうか。
それで調べてみようと思った。
事件の夜10年間どうしても思い出すことが出来なかったその顔をバックミラーの中に見ることによって記憶を取り戻したんです。
どうしてそんなことが言えるんです?10年前父を襲った犯人が高見沢さんだという証拠が一体どこに!?警察に頼んで2つの指紋を照合してもらいました。
2つの指紋は合致しました。
高見沢の正体を知った島田さんは当然高見沢は許すわけにいかなかった。
もちろん時効は成立してる。
法律的に罰することは出来なくてもあなたとの結婚を許すわけにはいかなかった。
高見沢にしてみれば昔のことを持ち出されたら自分の将来が潰れてしまう。
だから島田さんを殺した。
じゃあその高見沢を殺したのは一体誰なのか。
私がどうして高見沢さんを殺さなければならないんです。
お父さんを愛してたからです。
あの夜高見沢と一緒に会社を出たときたまたまそこに父のタクシーが通りがかって…。
まさか私の知らないところで父が高見沢を見ていたとは思いませんでした。
私が降りた後父は高見沢を送っていきました。
そのすぐ後でした。
父から電話があったのは。
(電話)貴美子!貴美子よく聞けよ。
いいか…俺はあんな男との結婚は許さない!あいつだったんだよ!10年前俺を襲った犯人は。
調べりゃわかるんだ!指紋をしっ…。
「何言ってるの?」もしもし?もしもし!
(貴美子)私はそんなことがあるはずはないと思いました。
翌朝警察から電話があって父の事件を知りました。
私はすぐに高見沢に電話をしました。
すると高見沢は変な事を言ったんです。
昨日お父さんのタクシーに乗ったことは警察には黙っておこう。
いやだからそれは違うって言ってるだろう!お父さんの思い違いだ。
そんなことを言ったらそれこそ僕は警察に疑われる。
コンサートを前にスキャンダルは致命傷だよ。
あなた高見沢の言うことを信じたんですか?信じました。
だって!10年前の犯人が高見沢だなんてそんなことありえるはずがないと思いました。
嘘だと思いはじめたのは例の素行調査?そうです。
ご覧になったほうがいいと思いますよ。
その夜私は父のアパートへ行きました。

(島田)「貴美子結婚おめでとう。
面と向かっては言いづらい」。
「この手紙に俺の気持ちを記し君に渡そうと思ってる」。
「それからささやかだがこの手紙と一緒に君にプレゼントを渡したい」。
「貴美子大人になったね」。
「この20年君のことだけを考えてタクシーのハンドルを握ってきた。
嘘じゃない」。
「私は貴美子の子供のときから君を傷つけてきたかもしれない」。
「俺は本当に勝手な男だった」。
「君に父親らしいことを何ひとつしてやれなかった」。
「もっと素直に父親として君に接していればよかった」。
「すまない」。
「しかし貴美子。
可愛いんだ。
君が一番大事なんだ!」。
「貴美子本当に結婚おめでとう」。
「どうか幸せになってくれ。
俺はそれだけを願ってる」。
あなたの部屋にあったピアノは島田さんからの…。
私は自分の愚かさを知りました。
初めて父の思いを知りました。
その父が私に嘘をつくはずがない。
高見沢は私に結婚してほしいって言ってくれました。
これまでと違う私が初めて心から信じた人でした。
なのに私を裏切っただけじゃない。
高見沢は私の父をも踏み台にして殺したんです。
許せませんでした。
20日の夜私は父の遺品の整理を手伝ってほしい父のアパートで待っていてほしいと言い…。
残業すると見せかけてすぐに追いかけました。
浮気のことはいいの。
私はただ私に黙ってたことが許せないのよ!父のことも本当のこと言ってくれない?勘違いしないで。
私は父が殺されたことなんか何とも思ってないの。
清々してるくらいだわ。
私はただ嘘は嫌なのよ。
あなたに秘密があるのなら妻として私も守ってく。
だから本当のこと言ってほしいの。
あなたなんでしょ。
ああ…。
貴美子の前でも知らないって言い張る気か。
いいえ。
正直に話します。
ぎゃあー!!仕方なかったんだ。
貴美子を失いたくなかったんだよ!秀美とのことも出来心だ。
許してくれ!そう…。
あっここでは嫌…。
どうして?父親が見てるから?貴美子…。
どうして…。
うっ…。
私は夜明さんを利用しました。
夜明さんと別れた後私は父のアパートへ戻り…。
あなたの部屋に行ったとき高見沢が死んですぐなのに高見沢の写真がなくなってるのを見て妙だなって思ったんです。
思い出を整理するにはあまりにも早すぎる。
あなた私の前で今でも父親を憎んでるふうに振舞いましたよね。
高見沢には愛情がないように振舞った。
夜明さん…。
あなた一度も父親に愛されたことがないっておっしゃいましたよね。
今まで次から次へ男を替えていったのはその父親に対する当てつけだったんじゃないんですか?いやそれとも父親の温もりを交際相手に求めてたのかもしれない…。
父親を求めることが結果として父親を失うことになった…。
男親にも責任はあります。
父親は自分の思ってることをうまく相手に伝えることが出来ない。
思っているだけじゃ伝わらない。
でもいざとなったら娘を守る…。
それが男親です。
父親が娘を思って言った言葉があなたを傷つけたかもしれない。
しかしあなたの行動が島田さんを傷つけたかもしれないんです。
父は…私が生まれてくることを望んでなかった。
そう子供のときから思ってました。
どこにそんな親がいますか!父はいつか私を愛してくれると信じてました。
でも…でも寂しかったんです。
島田さんあなたを愛してました。
あなたのことが大好きでした!親子なのにどうして…。
少しずつでも歩み寄ってればこんなことにならなかった。
夜明さん…。
私を夜明さんのタクシーで送っていただけますか?
(ラジオ)『別れの曲』この曲有名ですよね…。
『別れの曲』。
ショパンが22歳のときに作った曲です。
恋人と別れたときですね?いいえ…。
ウィーンで音楽修行をしていたころ故郷で自分を心配してくれる父親を思いながら作った曲だそうです。
何お前?別れた女房が別れた亭主のとこに電話なんてかけてくるなよ!こんな朝から…えっ?あゆみのとこの無言電話がわかった!?犯人はバイト先の編集マン…?それで?抗議に行った…?1人で!?どこへ!?どっどこへ…!?どうしてあんな電話するの!?あゆみちゃんの声が聞きたくて…。
いい加減にしてよ!お前かおい!下らない電話したの!お父さん!?お父さん!おっバカヤロウてめぇにお父さんて呼ばれる筋合いねぇだろ!立てこらぁ!!立てます?はい…。
あれ?お父さん。
あらっ!?ちょっとおい!ちょっと!!おーい!!ウソウソ!!ちょっとちょっと!明日で3年間無事故無違反なんだ。
頼むよ!ねっ?いや頼みます!ねっ!お願いします!きゃっ!?お願いします!ごめんね。
私のせいで個人タクシー出来なくなっちゃったね。
いいよいいよ。
考え方によってはさ会社勤めのほうが気が楽だもん。
けどすごいね!アハハハ!殴るときさグー絶対ダメだよ!わかった!お父さんがいてくれたからだよ。
私お父さんが側にいてくれたから闘えたの。
フフッあっ!ちょっとお父さん。
フフッ!あっ!ダメ!そんな優しいことしてもダメ!見え見えだもんだって。
何がー!だから留学したいから援助…。
ダメ!留学絶対反対だからね!留学するも〜ん。
絶対反対だからね!ダメッ!!2014/06/09(月) 13:05〜14:56
ABCテレビ1
タクシードライバーの推理日誌[再][字]

〜バックミラーの殺意・開いた窓と音の出ないラジオが暴いたアリバイトリック!

詳細情報
◇出演者
渡瀬恒彦、荻野目慶子、風見しんご、平田満 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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