(テーマ音楽)いよいよ開幕が迫るワールドカップブラジル大会。
4年に一度のサッカーの祭典に熱気が高まっています。
サッカー大好き芸人の又吉さんも居ても立ってもいられない!実は又吉さん高校時代インターハイ出場経験を持つ名プレーヤーなんです。
そこで今回の「オイコノミア」はサッカーを経済学でひもときます。
お相手は経済学界きってのサッカー好き。
東京大学教授松井彰彦さん。
専門はゲーム理論。
相手との読み合いや駆け引きを研究する経済学の分野ですがなんとサッカーにも深〜く関わっているんです。
まずは究極の読み合い。
キッカー又吉直樹ゴールキーパー松井彰彦のPK対決!…の「オイコノミア」特別ルールです。
イェーイ!
(笛)絶対に負けられない戦いが今始まる!注目の1本目。
止めた〜!キーパーナイスセーブ!1本目は松井選手に軍配が上がりました。
見てください。
完全にコースを読み切った動き。
先取点を逃した又吉選手。
次はどうか?2本目も止めた〜!この時の両選手の作戦は?先生左にフェイントみたいの入れてますよね。
はい。
キーパーの動きを見て蹴ろうと思ったら左に動きはったんで同じ所蹴ったんですよ。
キーパーのフェイントですね。
(メンバー)緊張しないでください。
頼みますよ又吉さん。
いつもどおり。
(笛)あとがなくなった又吉選手このあと連続ゴールを奪います。
僕はもう2本止められた時点で下は無理だなと。
基本上だなと。
なるほど。
私は逆に2本止めた時点であと1本止めればいいんだから一回はゴロが来るんじゃないかと思ったんですよ。
(審判)はいラスト!勝負はこの最後の1球に委ねられました。
勝つのはどっちだ?
(笛)決まった〜!ゴール右下!これはね…。
これはどういう読みだったんですか?これはゴロに賭けようという事でそれは読んでたんですけれども。
僕も上は2本蹴ったんで最後ゴロで左と右どうしようかなで。
右に強く蹴ったら読まれてももしかしたら入るかもしれない。
で僕は右に強く蹴ったんですよ。
最終的には右かなと思ったんですがもう反応ができませんでしたね。
ほぼ読んでたんですね。
半分ぐらいは読んでたのかもしれませんね。
なるほど。
PK対決。
読み合いを制したのは…ではこのPK戦をゲーム理論で読み解いてみましょう。
PKの構造を少し考えてみましょう。
はい。
まず非常に簡単な状況から。
キッカーは右に蹴るか左に蹴るか?このふたとおりのどちらかを選ぶとしましょう。
もしキーパーがシュートと逆方向に飛べば1点獲得。
同じ方向に飛べば得点は無しとします。
この単純な状況を次にこちらのボードで表してみたいと。
又吉さんが左へシュートを打ちます。
その時に私が右に飛んだとしたら…。
これ1点ですよね。
はい。
そこでここに「1」という数字を書き入れておきます。
はい。
はい。
次に又吉さんが左へシュートを打って私が左に飛んだとしたら…。
これは0ですね。
はい。
そこでここに「0」という数字を書き入れておきます。
同じように又吉さんが右にシュートした場合先生が左に飛べば1点右に飛べば0点です。
この時のキーパー松井先生の失点はこうなります。
読みが外れシュートと逆方向に飛んだ場合マイナス1点。
シュートと同じ方向に飛ぶとボールを止めるので0点です。
このような数字を「利得」と言います。
利得表でキッカー又吉さんの戦略を考えます。
この時に又吉さん左へ蹴るか右へ蹴るかどういうふうに考えますか?同じ方向に蹴るとアレなんでまあ左右バランスよく蹴り分けるっていう事ですかね。
そうですね。
そのとおり。
この場合は左右半々に蹴り分けるのが一番いい戦略…なのですが…。
それじゃあ簡単すぎません?確かに現実だともうちょっと複雑でもしかしたらコースを狙って外れる場合がありますからね。
又吉さんはどちらに蹴るのが得意?僕は向かって右へシュートの方が左利きなんで蹴りやすいんですよね。
左へ蹴るともしかしたら外してしまうかもしれないという心配があると。
苦手な方に蹴った場合ですね。
その時に入る確率どのくらいになりますかね?半分ぐらいになっちゃうかもしれないですね。
そうですね。
苦手な左へのシュートは2回に1回しか入らないので0.5点と考えます。
このとき先生の失点もマイナス0.5点になります。
こうなると戦略が変わってくるような…。
うん。
今度はこの表を見ながら右へ蹴るか左へ蹴るか?まあ5回蹴るなら右に3回は蹴っていくぐらいで。
あとはキーパーと前のシュートが入っている入っていないで考えるんですかね。
はい。
それをもし私が読んでいると恐らく私は右に飛んだ方がいいんですね。
今の私の読みを更に読んだとすると。
それがわかってると左に蹴った方がいいのかなとはなってきますけど外す可能性があるんですもんね。
はい。
そうですね。
かなり難しくなってきましたね。
そうですね。
読み合いが。
そうですね。
ここからは計算が必要なので答えを言ってしまいますが。
3回に2回左へシュートを打って3回に1回だけ右へシュートを打つというのが最善手になると。
それは2回に1回しか入らないということを踏まえたうえでもそうということですよね。
そういうことです。
苦手な方に蹴ると読まれにくいのであえて外すリスクはあっても苦手な方に蹴ると。
へぇ〜!面白いですね!経済学によるPKの分析。
如実に効果を発揮したのは2006年のワールドカップ準々決勝のドイツ対アルゼンチン戦。
試合はPK戦にもつれ込み4対2でドイツが勝利を収めました。
キーパーのレーマンは4本のシュート全てと同じ方向へ飛びファインセーブを連発。
実はドイツはアルゼンチン代表のPKデータを過去2年分も集め戦略を練っていたのです。
その試合の翌日の記者会見でドイツのビアホフマネージャーが「実はあれは研究し尽くしたうえでの戦略だったんだ」と。
そうやって研究していくとどんどんキーパーの阻止率が上がる。
ええ。
場合によります。
まずはキーパーの阻止率が上がっていくと。
ところがそれでどうも研究されてるみたいだぞっていうのがわかってくると恐らくキッカーの側も研究し始めて蹴り分け始めるのでキッカーの成功率が上がってくると。
難しいですね。
はい。
こういう相手との読み合いというのは職場でも学校でもいろいろな場面であります。
そういった人間関係を読み解こうというのがゲーム理論なんですが。
はい。
サッカーとかだと駆け引きというか相手をだますことが正義みたいな部分あるじゃないですか。
人間関係になると例えば恋愛とか仕事とかになると何か駆け引きなかなかしづらいというかしにくいというか。
もちろん恋愛っていうのは非常に難しい。
人間関係で最難関な問題だと思っていて。
一番難しいですよね。
だけれどもなぜ例えば恋愛関係が難しいかと。
よく使う言葉に「女心と秋の空」ってありますよね。
どちらも変わりやすく読むのが難しいものですが天気はこちらが一方的に読むもの。
しかし女性の気持ちは…。
読もうとするとき相手もこちらの気持ちを読もうとし互いに読み合うことに。
これ矢印が2本に増えただけなんですが複雑度は単に2倍になるだけじゃないんですよ。
彼女さんも又吉さんが彼女さんのことをどう思っているかを読もうとするということになります。
ずっと続くという事ですもんね。
理屈で言えばずっと続く。
現実にはそこまでは無理だとしても。
難しいですね〜!読み合いですよねだから。
又吉さんは女性の気持ちがわかる方ですか?いや僕全然わからない方ですね。
う〜ん。
それこそ秋の空はもう最悪傘持ってたらいいじゃないですか。
人間関係の場合「どうせ雨やろ」と決めつけて僕なんか嫌われもんですからっていうふうにいくとそんな嫌ってなかったのにホンマに嫌われるパターンいっぱいあるんですよね。
わかります。
でもそういう時こういう理屈が頭に入ってたらいろいろ考えるわけですか?やっぱり。
う〜ん。
そうかもしれません。
私よく深読みしすぎと言われましたから。
(「アイーダの凱旋行進曲」)この日行われたもうひとつの戦い。
(一同)お願いしま〜す!又吉さん率いる芸人チーム鴉。
宮平さんけんじるさんてつみちさん瀬山さん。
相手は平均年齢21歳の大学生チームです。
(笛)前半戦芸人チームは奮闘するも防戦一方。
(笛)無得点のまま前半終了。
何とか1点もぎ取るため戦略を練り直します。
(メンバー)きったないボール出します。
取ったらもうすぐ投げるんで。
ルーズボールしてください。
追っかけて。
ルーズボールとはどちらもキープしていない状態のボール。
又吉さんなら奪い取ってくれるはず!きました!アーッ!攻撃にはつながらず…。
このルーズボールも…。
ああ惜しいけど取れない!又吉さん諦めないで!全力で取りに行きますが体力が…体力が削られるばかり。
いかん。
そしてまさかの…又吉さんダウン!
(笛)結果は0対11。
芸人チーム惨敗!倒れるまで追いかけたルーズボール。
これもゲーム理論で読み解くことができます。
互いにルーズボールを追いかける状況というのは「チキンゲーム」と呼ばれる状況なんです。
チキンゲーム?ええ。
漫画とか映画とかでよくあるチキンレースっていうやつですね。
チキンレースです。
なるほど。
じゃあせっかくなんでちょっと遊んでみましょうか。
はい。
こちらに2台のミニカーがあります。
はい。
又吉さんと松井先生車に乗り込みスタート!強引に崖のふちまで行った方の勝ち。
落ちてしまったら失格です。
じゃあこれ同時にやるんですね。
同時に。
いっせ〜のせ!あっ!強すぎましたね!自分の思ってたよりだいぶ行きましたよ。
本物の崖だったら大変なことになってましたよ〜!あ〜!じゃあこのゲームをどういうふうに分析できるかということを先ほどの利得表を使って見てみましょう。
はい。
自分だけが強引にいくと勝つことができるので仮に利得を3。
負けた方は利得をゼロとします。
両方とも妥協したら引き分け。
利得は1とします。
で問題はここですね。
はいはい。
ここどう書き入れたらいいですかね?お互い強引ですからね。
はい。
崖から落ちちゃいますよね。
そうですね。
2人とも悲惨な目に遭ってしまう。
なのでここは思いっきり低い数字にしておきましょう。
まあ例えばマイナス10。
はい。
又吉さんもマイナス10で私もマイナス10と。
こういうゲームを「チキンゲーム」といいます。
ではこのチキンゲームで又吉さんがとるべき戦略はど〜っちだ?例えば私が妥協するタイプだとわかっていたら読めていたら又吉さんどうされますか?命に関わらない程度に強引にいきますよね。
相手がほどほどのところで「や〜めた」と降りるんであれば強引な戦略をとってくると。
じゃあ今度は逆に私が強引に来るやつだと。
とにかく強引だというふうにわかっていたとしたら又吉さん?そうなると強引強引だとどっちみち無理なので妥協するかもしれないですね。
そうですね。
又吉さん実際にこういう状況に直面したらどんなふうに行動しますか?だまし合いですよねだから。
とにかく強引にいく感じでやるでしょうね。
はい。
相手が「こいつはもう死ぬことを恐れてない」と思ったら妥協しやすくなるんじゃないかなと思いますよね。
もう俺は絶対強引にいくんだっていうフリをした方が相手が結局は妥協せざるを得ないというところに追い込まれると。
これがチキンゲームという。
なるほど。
先ほどの試合のルーズボール争い。
又吉さんは必死に追いかけ体力を消耗してしまいました。
強引にいきすぎるとひどい目に遭うチキンゲームに当てはまりませんか?確かにルーズボールも読み合いありますよね。
ええ。
まあこのお互い本気出たときに死ぬわけじゃないですからちょっと数字が変わるぐらいですかね。
そうですね。
まあ例えばゼロ1個取っちゃいましょうか。
こんな感じでマイナス1ぐらいずつという感じでも…。
そうですね。
いいと思います。
でも構造は全く同じで相手がほどほどのときには自分は本気で取りにいってまあ逆は逆という構造は変わらない。
こういうふうに全然一見違う状況に見えるものが同じチキンゲームというものでまとめて読み解く事ができるというのがゲーム理論の面白いところ。
実はこのチキンゲームを使うと先日のクリミア紛争の話も読み解くことができるんです。
世界情勢というのは複雑で一筋縄ではもちろん読み解くことはできません。
しかしその側面があったんではないかと思われます。
今年3月ロシアはウクライナの南にあるクリミア自治共和国の編入を宣言。
これに対し欧米や日本は強く反発しています。
松井先生はアメリカとロシアの2国に注目してゲーム理論を用いた考察を試みました。
ロシアはまあ本気を出して。
本気でいったって事ですね。
そうですね。
アメリカがほどほどに来るっていうふうに読み切っていたんではないかなと。
実は昨年8月にあったシリアの一件があると思うんですね。
ここで化学兵器を使ったとみられるシリア軍に対してアメリカは警告を発しながらも結局何もしませんでした。
「ここでシリアに軍事介入をすればよかった」と言っているわけではないんですけれども。
あの時オバマが9月10日に行った演説で「アメリカは世界の警察役ではない」と言ってしまったんですね。
妥協戦略をとる国だということを世界中に宣言してしまったような。
大統領のひと言とかニュアンスでいろんなことが変わってくるんですね。
そうですね。
逃げ腰になった瞬間にやられてしまう可能性があると。
いろんな国がやっぱりちょっと強気な発言多いじゃないですか。
「本気だぞ」ということを見せたがるんですね。
だけれどもそれが高じると本当に本気同士になってしまって戦争という悲惨なことが起きてしまいます。
これだけは避けないといけません。
そのための方策を考えるのもまたゲーム理論が必要になってくるかもしれないと思います。
今回のワールドカップでも例えばグループGの初戦これドイツとポルトガルがいきなり当たる。
ガチに勝負いくと思いますか?う〜ん。
そうですね。
そこで消耗することを考えると引き分けといて勝ち点1をもらっといて残り2戦をがっちり勝ちにいくっていう考え方もできるかもしれないですね。
チキンゲームの構造を使ってたぶんドイツポルトガル戦は凡戦になるかなという予想も立つのかな。
お互いそんなに攻めなかったりとか。
はい。
その辺りは次の一戦また最後の一戦を考えながら体力の消耗と合わせて戦略を練ってくると思います。
そうですよね。
ゲーム理論。
サッカーから人間関係から世界情勢まで。
それがふだん僕あまりそこは詳しくないんですけど同じような理論でひもとけるというのがすごく何か新鮮なようでもあり恐くもあり…。
「世の中そんな単純じゃないよ」という声は当然上がります。
でもじゃあ複雑だったらそこからどういうふうに複雑になっていくのか。
それを付け足していくことによって世の中の理解が進む。
それと同時に世の中に対する興味も増していく。
いろいろ考えさせられましたね。
2014/06/10(火) 00:00〜00:25
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「サッカーで勝つ!経済学」(前編)[字][再]
W杯に刺激を受け、サッカー通の又吉直樹が経済学界きってのサッカー通、松井彰彦東大教授とガチでPK合戦。この結果を経済学で分析すると勝利の方程式が見えてきた!
詳細情報
番組内容
いよいよ始まるW杯ブラジル大会。高校時代サッカー選手だった又吉さん、ゴールキーパーを務める松井彰彦東大教授とPK合戦を行った。又吉さんは左右にボールを蹴り分けようとし、松井さんは先読みを試みる。この場面で役に立つのが経済学の「ゲーム理論」。うまく応用すると勝利が呼び込めるというのだ。実際、2006年W杯準々決勝でドイツがアルゼンチンにPK戦で勝利した時も、ゲーム理論が貢献したと考えられる。
出演者
【出演】又吉直樹,【解説】東京大学教授…松井彰彦,【語り】朴ろ美
ジャンル :
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
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