柔らかい皮みずみずしい果肉。
一口かじると梅の香りと酸味が口じゅうに広がります。
料理研究家藤巻あつこさん92歳。
梅干し作りの達人として知られています。
70年間にわたり作り続けてきた梅干しや梅酒は合わせてなんと…常に試行錯誤しながらおいしさを追求してきました。
「こんな梅干し食べた事ない」って言われるとこう…。
初夏梅の実の塩漬けから始まる梅干し作り。
梅雨にはカビの発生と闘い夏は強い日ざしの下で梅を干します。
時には不意の雨に見舞われる事も。
自然と向き合う事で極上の梅干しは生まれます。
ちょっと食べてみますね。
梅干し作りに懸ける藤巻さんの4か月間を追いました。
去年の5月。
この日藤巻さんは1年ぶりの梅の実の到着を待っていました。
(チャイム)は〜いどうぞ。
「宅急」です。
あ〜ご苦労さま。
この年初めての梅が和歌山から届きました。
まずは50kg。
これから続々と梅が届きます。
黄色く熟した梅がそろうといよいよ梅干し作りです。
ちょっと色が違いますでしょ?こっちの方が「早く漬けて」って言ってる感じで。
かわいいでしょ。
梅干し作りが始まりました。
まずは梅を塩漬けにします。
梅は2〜3コずつ手のひらの上にのせ優しく転がしながら洗います。
水けをしっかりと拭いて梅を傷つけないよう丁寧になり口を取ります。
ここが梅の実に塩がしみこむための通り道になります。
水けが少しでも残っているとカビの原因に。
布巾の角も使いしっかり拭き取ります。
地道な作業ですがお弟子さんと共に和気あいあいとこなしていきます。
怒られないようにチッチッチ…。
これでいいですよね。
中拭いてないでしょ。
中ちゃんとこの角でこうやって…最後に。
よく見てるから。
分かりました。
梅に粗塩をふり塩漬けを始めます。
そしたら焼酎を入れます。
焼酎…お酒って言った方がいいのかな。
これを入れます。
梅に焼酎をまぶすのは消毒のためと塩をしみやすくするためです。
梅が傷つかないよう一粒ずつ丁寧に。
容器のまわりから隙間を空けずに並べていきます。
最後は塩を多めに。
少しずつ溶け落ちて梅全体に行き渡ります。
カビたら後が大変だからどうしたらカビさせないかというのをよく考えてからこれに取りかかった方がいい。
そうするとやっぱり最初の洗い方も丁寧に拭くのも丁寧にお水もきれいにとって…ってそういう事に全部つながってくるわけね。
だからそこで自分が面倒くさく「このぐらいやったら大丈夫よ」っていってやると後からちゃんとツケが回ってきますから。
中蓋をのせてから袋の空気を抜くようにして口を留めます。
梅が潰れるのでおもしは使わずこのままの状態で水分が出てくるのを待ちます。
藤巻さんの家には一日に何度ものぞくという特別な部屋があります。
藤巻さんはここを「梅蔵」と呼んでいます。
棚にはこれまでに作ってきた3,000本の梅干しや梅酒。
毎年少しずつ梅干しの塩の分量を変え出来上がりを比較したり梅の種類を変えたり塩以外のものも加えてみたり今も試行錯誤をしています。
素直な梅もいるんですけども反抗的な梅もあるわけですよ。
そういう時には自分の子供の事思い出したりしてね「駄目じゃないの」とか言って。
藤巻さんは梅干しを作り続けてもう70年になります。
始めたのは22歳の時。
結婚し家事と育児に追われる中梅干しを作る時間だけが自分の時間だと感じていたのだと言います。
逃げ場だったのかもしれない。
自分のね。
梅を漬けてて楽しいから一時の嫌な事苦しい事つらい事そういうものも全部梅に託した。
我慢とか辛抱強さとかそういうものも全部梅干しですね。
梅に当てた塩が溶け水分が出てきました。
これが白梅酢。
こうなったら次の段階に進みます。
まずは赤じその葉を押し洗いし汚れやほこりを丁寧に取り除きます。
いきますよは〜い。
ほら!布巾や洗濯袋などに包んで水けをとります。
赤じその葉は塩でもむときれいな色が出やすくなります。
白梅酢を加えて発色させた赤じそを加える事で梅は色や風味が良くなり保存性も高まります。
漬けた梅は100kg。
20の漬物容器20コ分です。
92歳の大仕事です。
梅雨。
梅干しの大敵カビが発生しやすい季節です。
ちょっとこういう所に…これは焼酎を霧吹きの中に入れてあるわけね。
拭いて…。
藤巻さんは梅雨の間じゅうこうして何度も梅蔵に行き梅にカビが生えないよう注意を払います。
8月待ちに待った梅雨明けです。
梅は赤じそで真っ赤に染まっていました。
梅酢から取り出して水けをきりいよいよ干す準備をします。
梅を干すために必要なのは太陽の日ざしと風。
藤巻さん天気を気にしながら気をもんでいます。
やっぱりお天気が心配です。
この時はもう寝てもいられないというか。
(取材者)どうですかね今日の天気は。
ねえ。
晴れるといいですけどね。
こっちいらっしゃい。
毎年この作業が始まると知人も助っ人に来てくれます。
(取材者)梅干し好きなの?ふ〜んそう!お利口さんね。
通気性のいいざるや網の上に載せた梅を一斉に庭に出して並べます。
土用干しが始まりました。
梅を干して水分をとばすという梅干し作りのクライマックスです。
ところが徐々に雲が多くなり日が陰ってきました。
干し具合が気になる藤巻さん。
常に梅から目を離さず梅の状態をチェックします。
この日は日ざしが足りなかったものの風があったおかげで干し具合はまずまずの結果に。
緊張しますねやっぱり。
干すと今度にわか雨を心配しなきゃなんないって…。
仕上がるまではやっぱりね心配というか気を遣うというか…。
夕方。
梅は一度取り込み梅酢に戻し入れて一晩おきます。
干す事で表面が乾いた梅に梅酢を含ませる事で皮がしっとり柔らかく仕上がります。
土用干しの2日目。
この日は朝から強い日ざしと爽やかな風に恵まれました。
太陽の光を存分に浴びる梅干し。
干し具合は上々です。
裏側まだこんなにぬれてますでしょ。
表これ乾いてる…。
これを裏返しに…全部お昼ぐらいに。
こうぬれてる方をね。
いつでもいいんですけど持った時にここん所をつまんでみるとこうやってみると分かりますね。
厚みがあるでしょ。
まだ皮と皮の間に肉があるわけ。
こういう時はまだ干しが甘いわけですから。
若い方は太ってらっしゃるから駄目だけどこういうふうにおばあさんになるとこうやってつまんだ時に皮と皮しかくっつかない。
間に身の入らない。
これと同じ感触になったら「しめた!」と思う…。
一番いいんです分かりやすくって。
夕方。
梅を取り込むのかと思いきや突然物干しざおにシートを掛け始めました。
雨に備えるためのものだと言います。
梅は2日目からは家に取り込まず夜通し干して夜露を当てます。
梅の表面には適度な水分が補われ皮が柔らかくなるのです。
2日目も無事終わりホッと一息。
一切の妥協を許さない梅干し作りは92歳の藤巻さんにとってかなりの重労働です。
それでもやめずに続けられるのは梅干しが持つ大きな力を知っているからです。
藤巻さんの70年にわたる梅干し作りの中で一番と言えるほどうまく出来た梅干しがあります。
それが25年前平成元年に漬けた梅干しです。
じつはこの年藤巻さんは次男の智二さんを突然の事故で亡くしました。
4月。
まさに梅干し作りの準備を始めていた時でした。
集中全部できるんで。
他の事考えないで。
その年のはほんとにうまくいきましたね。
だから徹底すれば人間なんていくらでも嫌な事をいい事に直せるっていう自信もついたし。
中途半端じゃねちょっとあれですけど…。
いろんな…自分の人生の考え方とか何とかっていうのも梅から随分教わりましたんでね。
よかったと思ってます。
雨雨雨。
土用干しの3日目。
突然雨が降りだしました。
梅が雨に当たらないよう素早く部屋に取り込まなくてはなりません。
しそから先なんだっけ?もうこりゃ駄目だ。
まず中に入れてしまおう。
こっちの方が…。
向こうから入れればいい…とにかくぬらさないように。
(取材者)今雨降っちゃいましたけど…。
大丈夫です。
大丈夫ぬれてないから。
(取材者)こういう事があるんですね。
(取材者)でもまたやんだような…。
取り込み終わるとやむんです。
大体ね。
土用干しの4日目。
例年ならこの日の朝で土用干しは終わりです。
しかし藤巻さん梅の干し上がりにまだ満足していません。
日照不足や雨など安定しない天候が原因でまだ干しが十分ではないのです。
(セミの鳴き声)土用干しの6日目。
藤巻さん朝から梅の様子が気になります。
Dialogue:0,0:21:23.87,0:21:26.2014/06/10(火) 11:00〜11:25
NHKEテレ1大阪
きょうの料理 おばあちゃんに教わる保存食「梅干し」[字]
梅の実が出回る季節到来。92歳の料理研究家、藤巻あつこさんは、梅干し作りを始めて70年。人生を懸けて梅干しの味を追求する藤巻さんに密着し、極上の味の秘密に迫る。
詳細情報
番組内容
梅干し作りの達人として知られる、料理研究家の藤巻あつこさん92歳。本格的な梅干し作りをはじめて70年。毎年塩の分量や梅の種類などを変えながら、極上の梅干しを追求してきた。自ら「梅蔵」と呼ぶ梅干しの保存室には3000本の梅干しや梅酒の瓶が並び、まさに人生を懸け、梅干しに向き合っている。番組では、去年の5月から藤巻さんに密着。藤巻流の梅干し作りの極意と、92歳にしてなお衰えない、梅干しへの思いに迫る。
出演者
【講師】料理研究家…藤巻あつこ
ジャンル :
情報/ワイドショー – グルメ・料理
趣味/教育 – その他
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