(お広)もうええ。
もう…ええ。
(真帆)なあ!なあお母さん!なあ!お母さん!お母さん!
(泣き声)
(和助)真帆はんどないしてはるんやろなあ。
(お里)もうじき四十九日やいうのに…。
見てるんもつらいくらいだす。
松吉は何してるんや?
(善次郎)今蔵だすわ。
そろそろ糸寒天が底つく言うて。
ああもう!歯がゆいなあ…。
お通夜もお葬式も初七日もせっかく顔を合わせてるのに何にもよう言わんと!ホンマにもう…!すんまへん!ごめんください。
原村の半兵衛でございます!伊豆から戻ってまいりました!
(松吉)あ!長い事かかってしもてすんまへん。
よかった。
なあ?よかったな。
ああご苦労はんだした。
伊豆の隅から隅まで歩き回って10日前やっと得心のいく天草に巡り合えました。
ああおおきに。
これで今年も商いができます。
おおきにおおきに。
ありがとうございました。
いや〜おかげさんで。
あんさんのおかげさんだす。
いやいや何をおっしゃいます。
ありがとさんでございます。
いやもうもったいない。
いやいやおおきにおおきに。
いやいやもうホントこちらこそありがとうございました。
ホントにおかげさんで。
けんぱけんぱ。
けんけんぱ。
ここらでええで。
もうちょっと先まで送らせて下さい!ええて。
松吉。
へえ。
わては井川屋はんが出してくれはった銀二貫で生き返った。
あんさんと同じや。
へえ。
原村に戻ったらわては糸寒天の技を若い者に伝える。
ほんで今まで以上に心を込めて作る。
恩返しできるようにな。
行くわ。
おおきに。
お気を付けて。
松吉。
へえ。
生きるっちゅうのはしんどいけど楽しいなあ。
え!?な…何だす?
(お咲)何だす?え!?
(梅吉)いつまでウジウジウジウジしてるんや?何がや!何がや?いやせやから…。
何で真帆さん一人にしとかはるんだす?それは…。
会わへんっちゅう約束が…。
この天下一のアンポンタン!う…梅吉!お咲ちゃん!お咲ちゃん!ここまで人の気持ちの分からん男やとは思わんかった。
いつまでグズグズしてるんだす!?その…行ってもその…どないしたらええんか…。
分かった!女の事はわてが教えたる!やかましい!すんまへん…。
何もせんでええんだす。
とにかく会いに行きなはれ。
(お広)おおきに。
もうええ。
もうええよ。
・ごめんやす!早う元気になって下さい。
みんな心配してまっさかい。
3年前の火事の時…もし…もしも松吉が死んでしもたらどないしよう。
そない思たら…居ても立ってもおられんようになって気ぃ付いたら走っとった。
松吉に会いとうて…会いとうて会いとうて…。
うちは…松吉にふさわしない。
うちは…。
旦さんも言うたはりましたやろ。
これは真帆さんが一生懸命生きてきはった証しだす。
気持ち悪ないか?何もかも全部いとおしいおます心から。
ホンマに…うちでええんのんか?わてと一緒に…一緒に…生きとくれやす。
松吉。
ウウウッまだ寒おますなあ。
けど井川屋はんとこには一足先に春が来たみたいだっせ〜!半兵衛はんから初荷の糸寒天が届いたんだす!これがまた期待以上の味と歯応え!更に更に…!
(泣き声)何やて?わて耳遠なったんや。
もういっぺん大きな声ではっきり言うてんか?わては…この真帆さんと夫婦になりとおます!どうぞお許し下さい!遅いわあ!なあ善次郎?遅うても早うてももうどっちでもよろしいわ。
おめでとうさん。
(2人)ありがとうございます!祝言はこの春やで。
お里はん。
真帆はんの支度頼んまっせ。
任しといておくんなはれ!あ…旦さん。
へてからな2人がめでとう夫婦になったらこの井川屋の暖簾あんさんに譲るつもりや。
え!?あんさんの事ず〜っと見てきたつもりや。
頼んだで松吉!精いっぱい務めさせて頂きます!うん。
それやったらなおさらまだ祝言は挙げられまへん。
(一同)え?天神さんに銀二貫寄進してからにしとおます!天神さんに?銀二貫!商人としてその始末をきちんとつけてから真帆さんと一緒に生きていきたいんだす。
松吉…。
よいしょっと!真帆はん機嫌よう帰ってくれはったか?へえ。
皆さんホンマにありがとうございました。
松吉っとんもよばれ。
真帆さんまたぎょうさん作ってくれはったなあ。
へえ。
旦さん何個目だす?おなかこわしまっせ!ほな餡だけでもな。
いやもう行儀の悪いこと!けどなあこの餡がまたおいしいんや!
(唾を飲み込む音)旦さん。
ん?この餡を糸寒天で固めてみたらどないでっしゃろ?そやなあ。
蒸し羊羹やったらつなぎに粉やお米使うからすぐ傷んでしまうけれども…寒天やったらひとつきはもつなあ。
へえ!ああ!ああ…。
あきまへんなあ。
餡と寒天の相性やろか…。
松吉っとんはやり出したら止まりまへん。
糸寒天の時と同じだすわ。
まあ面倒くさい男だす!
(梅吉)今日は大川の向こうの菓子屋まで行ってきたで。
あんまり甘ない餡やて。
おおきに!餡の甘さでも違うてくると思うんや。
あとは水と砂糖と寒天と餡の分量と…。
どや?お〜い!何でや…。
なあまあ松吉っとんそない…。
あ…ううっ…。
お咲ちゃんどないしたん?あ…あかん!え?ああっ!う…産まれる〜!
(2人)ええ!?ああっ!えっど…どないしまひょ!
(松葉屋)スッポ〜ンだしたわ!スッポ〜ン!アハハハハハッ!ああ…。
あっわての名前藤三郎だすけどなあ…。
知ってまっせもう何十年も前から。
藤の字取って藤吉にするてお咲が…。
よろしゅうおましたなあ。
遅うなりました。
ああおおきに。
どうぞ。
ああこれを持ってきたんや。
藤吉のお七夜のお祝いの紅白饅頭だす。
すんまへん。
ご丁寧に。
わては櫻花堂の饅頭にせえとは言うたんやけどなあ。
櫻花堂はんのだすか?これ!いやいや。
そうは言うたいうだけの話で…。
違うんだすかこれ。
櫻花堂はんは町の饅頭屋が1つ1文取るところ5文取りますよってなあ。
やっぱり使うたはるもんが違うんだっしゃろなあ。
(一同)おいでやす。
ああおいでやす。
あの…。
なんぞお祝い事にご入り用だすか?こちらの饅頭に使うたはる餡をちょっとでええんだす。
分けてもらえまへんやろか?餡だけ?へえ。
あっお代は払わせて頂きます。
何をするんだす!?
(2人)お帰りやす!
(お和歌)何の騒ぎや?店先で。
このお客さんうちの餡だけくれて言わはるんだす。
商人のなりしてはるけどあんさんどこの呆け者だす?わては寒天問屋井川屋の者だす。
知らんなあ。
うちは菓子一筋。
足利将軍様の時代から300年続いてる老舗だす。
あんさんとこみたいなぽっと出の吹いたら飛ぶような暖簾掛けたはるとことは違うんだす。
とっとと帰っとくれやす。
うちの暖簾はそない安いもんやおまへん!はあ?何があっても大事にしてきた商人の誇りだす!餡っちゅうもんはな菓子屋にとって暖簾と同じや。
大事に大事に守って育ててきたもんだす。
おいそれと渡す訳にはいきまへんのや!そんな事も知らんとな何を息巻いてはるんやろなあ。
明日の淀屋はんとこのお茶会やけどな茶菓子増やしてほしいて今頃んなって言わはるんよ。
あっすんまへん!遅うなりました。
(お里)お帰りやす。
何かあったんだすか?建部玄武さんや。
安らかに逝かはったそうや。
(善次郎)あの人の奥さんからや。
銀二貫きれいに使うてこの世に生きた証し残さはりました。
(玄武)苗村の小豆です。
銀二貫のおかげで作る事ができた村の宝です。
受け取って頂けませんか?ごめんやす!どないしはったん?すんまへん朝早うに。
この小豆で餡を作りたいんだす。
え?わての郷で取れた小豆だす。
松吉の郷?へえ。
これは半日水につけとかんとあかんのだす。
へえ。
下ごしらえして今晩井川屋はんへ伺います。
待ってます!こないして湯を切って渋みを抜くんだす。
へえ。
今まで松吉が試してたんはいろいろな菓子屋で作らはった漉し餡だすな?…はあ。
これが晒し餡だす。
漉し餡はこの晒し餡に水と砂糖を加えたもんだす。
…なあ。
へえ。
一遍砂糖を後から混ぜてみたらどうやろ?え?今まではもう餡の中に砂糖が入ってましたやろ?その順番を変えてみたら…。
それだす!松吉の郷で取れた小豆やなあ。
へえ。
苗村の小豆と井川屋の寒天だす。
どんなとこ?苗村て。
美濃の山奥だす。
周りを低い山が囲んでておかげで冬でも昼のうちは温おました。
裏手の山にものすごう大きいアカマツの木があったんだす。
てっぺんまで登ったら御料地全体が見渡せるくらいの。
子どもの頃は誰が一番に登れるか競い合いました。
登ったん?へえ。
てっぺんはまるで…空の上みたいだした。
へえ…。
その時父のように武士として苗村を守りたいと思いました。
わてはず〜っと父のような立派な武士になりたいと思うてました。
松吉は松吉や。
お侍でも商人でも松吉は松吉や。
だんない。
だんない。
父上!母上!買わせて頂きとうございます!銀二貫おまっせ!
(半兵衛)確かめてみたらどや?何者なんか。
松吉!
(数馬)鶴之輔お前は…生きよ!わては大坂・天満の商人だす。
それでええ。
そうだすな。
武士も商人も…同じだすな。
何もかも…寒天がつないでくれる気がしてなりまへん。
朝や!松吉っとん新しい朝だっせ〜!
真帆さん。
…へえ。
おお!ああ!アハッ!松吉…松吉!固まった!すごい固まった!固まった!松吉真帆はん。
(2人)へえ。
(お和歌)井川か淀川か知らんけどわてこれから鴻池はんとこ行かんならんのだっせ。
淀川やおまへん。
井川屋でおます。
何のご用だっしゃろ?うちの糸寒天で作った羊羹でおます。
蒸し羊羹やのうて練り羊羹でおます。
一口試して頂けまへんか?あんさんならな菓子屋も出したら?そんな気はおまへん。
わてはいろいろな菓子屋が井川屋の糸寒天とそれから苗村の小豆を使うて競い合うてもっとおいしい日もちする羊羹を作ってくれはったらそれが一番うれしいおます。
ん?んん!?ほんでこれどないしはるおつもりだす?菓子屋の暖簾出すおつもりだすか?いいえ。
この羊羹作り方お教えしますよって。
何だすて!?櫻花堂はんは大坂中の菓子屋さんを取りまとめてはります。
そのお力でこの羊羹広めて頂きとうおますんや。
あんさん商人だすなあ!この羊羹作るにはあんさんとこの糸寒天が要りますさかいなあ。
ご寮はん商人は始末と才覚へてから…。
神信心だす。
はあ〜!商人の町いうてもこのごろは始末とケチの区別もつかへん商人ばっかりでうんざりしとりましたけど何や久しぶりにええ気持ちにさせてもらいましたわ。
(松七)旦さん!
(竹吉)番頭さん!
あれ?この2人は昔井川屋を逃げ出した手代と丁稚だすがな
(松七)いろいろ…いろいろありまして今は2人ともここ櫻花堂で働かしてもろてます。
苦労させてしもたなあ。
堪忍してや。
あれからわてら井川屋はんに足を向けて寝た事一遍もありまへん!旦さんと番頭さんが言うてはった事が身にしみて…。
もうええ。
もうええ。
(松七)ホンマに身にしみて…!早う立ち。
店先でこんな事してたらあかん。
な?あんさんらに出会えて櫻花堂はんに来たかいがあった。
なあ善次郎?
(2人)えらいすんまへん!よかったよかった。
(一同)寒天寒天寒天!糸寒天!
…へてから大坂中の大店が競い合って練り羊羹を売り出したさかい井川屋はんとこの糸寒天は売れに売れて売れまくって〜!
3年たちました〜!
善次郎はん天神さんに寄進するんやてな。
へえ!
(松葉屋)ご苦労さんでございます。
よっ井川屋!よかった!ようやった!井川屋!おめでとさんでございます!
銀二貫ワオ〜ン!
(一同)お〜!うわ〜!痛い痛い痛い!痛い!痛い!松吉と真帆が夫婦になります。
ようやくこの日を迎える事ができました。
皆々様ホンマに…温こう見守ってくれて背中たたいてくれて…ありがとさんでござりました!これからはわてと真帆で力を合わせてここ大坂・天満で商人として精進してまいります!どうか井川屋を末永うよろしゅうお願い致します!よう言うた!頑張りや!井川屋!2代目!ほなそろそろ参りまひょか?天神さんへ。
2代目!おめでとう!おめでとう!
松吉っとんおめでとう!幸せになるんやで〜!
商人の心得は始末才覚神信心でおます。
(一同)へえ。
始末っちゅうもんはケチとは違いまっせ。
身を慎んで始末して知恵を絞る。
それが大事だす。
早う仕込まんと間に合いまへんで。
すんまへん!商いの話に来はる方に虫養いやら羊羹を食べてもろて得心して買うてもらうんが親旦さんからのやり方や。
心込めて作るんやで。
へえ!お母ちゃん今日も忙しそうやなあ。
毎度!毎度おいでやす!親旦さん今日もぎょうさんのお客さんでにぎやかだした。
寝たり起きたりだすなあ。
あら?笑たはる!どんな夢見てはるんやろ。
店始める前の…若い頃の夢やろか。
・
(足音)旦さん櫻花堂のご寮さんが来られました。
すぐ行きます。
親旦さんまた後で。
うちもご挨拶しますわ。
お里さんすんまへん。
はいおいで。
はいはいはいはい!はい!お庭行って遊ぼか。
はいよしよし。
ほな行こ。
よいしょ。
よっこいしょ!ほいしょ!はいはい。
へてからな…。
へえ。
棒手振始めたんや。
旦さんが15の時だしたな。
うん。
天神さんのお祭りであれでな…。
ご寮さんに一目ぼれしはったんだす。
おおそや。
優しいお人だした。
井川屋の暖簾…。
大丈夫だす。
松吉がしっかり守っとります。
松吉はわての目利き…。
さすがでおます。
言わしたった。
ハハハハハハッ!ほんに安うてええ買い物だした。
2014/06/11(水) 01:25〜02:10
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 銀二貫(9)[終]「井川屋の暖簾(のれん)」[解][字][再]
真帆(松岡茉優)のもとを訪れた松吉(林遣都)は、ついに思いを告白。井川屋が晴れて「銀二貫」を寄進した折には真帆と夫婦になりたいと和助(津川雅彦)に申し出る。
詳細情報
番組内容
お広(映美くらら)が他界し気落ちする真帆(松岡茉優)のもとを訪れた松吉(林遣都)はついに思いを告白。和助(津川雅彦)に夫婦になりたい旨を報告しにいくが、祝言を挙げるのは井川屋が晴れて「銀二貫」を寄進してからにしたいと申し出る。和助はその願いを受け入れ、さらにその折には井川屋ののれんを松吉に譲りたいと言う。和助と善次郎(塩見三省)の信頼に胸を熱くする松吉は糸寒天を使った新たな羊かんづくりに取り組む。
出演者
【出演】林遣都,松岡茉優,いしのようこ,尾上寛之,板尾創路,映美くらら,浦浜アリサ,佐藤太一郎,中村大輝,団時朗,萬田久子,塩見三省,津川雅彦,【語り】山口智充
原作・脚本
【原作】