皇太子同妃両殿下が帰国した青年海外協力隊員にご接見

2013年7月12日

(前列左から)橋本さん、長谷川さん、宮田さん、辻野さん(後列左から)吉田さん、浅野さん、武下悌治青年海外協力隊事務局長、中村さん、柴崎さん

約2年にわたる活動を終え、帰国した青年海外協力隊員の代表8人が6月25日、東宮御所で皇太子同妃両殿下にご接見を賜り、それぞれの活動について報告した。

今回、ご接見を賜ったのは、アジア、大洋州、中東、アフリカ、中南米の国々に派遣されていた8人の隊員。皇太子同妃両殿下には1999年から、帰国した隊員に対するねぎらいのお言葉を賜っている。

伝統建築の保護と農業振興

芽かきの指導を受けているトマト栽培農家

浅野孝信さん(39歳、東京都出身)は、ブータンの文化局文化財保護部で、伝統建築の実測調査や保護活動に取り組み、文化財保護法立法のための調査や世界遺産登録に向けた同国内のリストの検討にも携わった。

宮田典子さん(25歳、和歌山県出身)は、ネパールの農業開発事務所に配属され、地域の農家グループを対象に農業振興に取り組んだ。ハウストマトの栽培方法指導や農薬に関する意識改善、農業組合づくりなど多岐にわたって活動した。

情操教育の普及と手工芸品の商品開発・販売促進

図工の授業で立体的なカードの製作を指導する橋本さん

橋本真理子さん(30歳、静岡県出身)は、フィジー北部のランバサ教育事務所が管轄する28校の小学校教員に対し、巡回指導やワークショップを通じて、図工と音楽による情操教育の普及や指導力向上に努めた。

辻野恭子さん(28歳、大阪府出身)は、エジプト社会連帯省ハルガダ支局で三つのNGOと共に手工芸品の商品開発や宣伝、店舗運営改善などに取り組んだ。新規販路を開拓して、受注数を増やし、同僚の品質や納期に対する意識を改革した。

都市計画とオリジナルブランドのはちみつ

同僚と採取したはちみつをこして、びん詰めする吉田さん(左)(写真提供:久野武志)

長谷川真紀さん(30歳、千葉県出身)は、タンザニアの世界遺産都市ストーンタウンのザンジバル区役所で都市計画に取り組んだ。住みよい街づくりを心掛け、足しげく現場に通って測量や調査を行った。同僚との情報共有を図り、都市計画の円滑な推進に貢献した。

吉田晃輔さん(27歳、静岡県出身)は、ルワンダ地方自治省カランガジ地方セクター事務所で、農家の現金収入の向上や市場の活性化、特産品の生産に携わった。養蜂(ようほう)組合設立に取り組み、現地の国立公園の資金援助で生産したはちみつは、高品質のオリジナルブランドとして好評を得た。

職業訓練指導とボリビア日本人移住資料館整備

中村浩さん(29歳、滋賀県出身)は、エクアドルの職業能力開発機構のセンターで「電気製図コース」を開講した。電気回路実習装置などの教材を生徒自身に作成させ、自主性や主体性を引き出したほか、刑務所で受刑者に対しても職業訓練を行った。

柴崎太久郎さん(32歳、山形県出身)は、ボリビアのラパス日本人会で活動した。ボリビア日本人移住110周年を記念して設置された移住資料館の常設展や運営管理体制構築に取り組んだほか、同会発足90年史の編さんに携わった。

ご接見の後、JICA本部(東京都千代田区)で行われた報告会では、「ご接見を賜り、ボランティア事業が国を挙げた事業であることを再認識した」「日本人を代表して精一杯活動してきたので、このような機会をいただき非常によかった」「両殿下が温かいお言葉をかけてくださり、うれしかった」などと口々に述べた。

ボランティア経験を生かし、派遣国にかかわる企業への就職を果たした人、海外の大学院への留学を決めた人、現職参加制度を利用して参加前の企業に復職した人など、進路はさまざまだが、それぞれの舞台で活躍する8人のさらなる飛躍が期待される。