憎き従兄と不思議な男性
鼻息荒く王城に来てみると、沢山の女性達が集まっていた。
皆、綺麗なドレスを着て美しく着飾っている。
それと反対に、私はと言うと薄いピンクの質素な服である。もっと綺麗な服はあったが何せ訳も分からずまま追い出されたのだ。仕方がない。
周りを見渡していると「あら、どこの家柄の者ですの」「そちらこそ」オホホホホ、と早くも女の戦いが始まっている。何となく怖いので、その集団から遠く離れた所で観察する事にした。やはり、王の側室とあって美女だらけだ。その中に、14歳ぐらいの少女までいる。…陛下がロリコンで無いことを祈るばかりね…それにしても、これが私のライバル達か。勝算はない、が何とかなるだろう。キョロキョロと周りを見渡していると、文官の中に見知った顔を見つけ驚きで「ゲッ」と声に出してしまった。
レイファス・シュナイダー
私と同じ長い栗色の髪と瞳。
少し俯いた顔は整っていて、王の側室で来た女性達からチラチラと熱い視線を受けている。仮にも側室希望で来たのに、そんなんでいいのかお嬢様方。と、頭の片隅で思いながら視線を集めている男を私は睨んだ。
にっくき叔母の長男であり、私の従兄ーーいわば敵である。
なっんっで!レイファスが此処にいるのよッ!
地団駄を踏みそうになる足をこらえ、私は心の中
で叫ぶ。
あいつ、王城で働いているとは聞いてたけど文官だったとは。
一番(いや、一番は叔母だった)会いたくない奴に会うなんて今日はとことん運が悪い。
従兄に見つかる前に逃げよう、そう考えた私は後ろに人がいるのにも気付かず勢いよく振り返ってしまった。
「うわっ!」
「へぶっ!!」
顔に衝撃が走るとともに、手に持っていたグラスから水が飛び出る。
その水は一滴残らず只今ぶつかった男性へと盛大にかかった。
「…………」
「…………あ」
「…あの子、終わったわね」
クスクスと私を指差し嗤う声が聞こえたが、丁度私もそう思ったので言い返せない。
呆然とした私に男性は、最初驚きはしていたものの気にしてないという風に肩をすくめて笑った。
「…っ!あの、すみません!」
「いや、君こそ大丈夫?濡れてないといいけど……っくしゅん!」
自分より私を心配そうに気遣ったが、男性の口からくしゃみが飛び出した事により私は慌てた。
「風邪を引いて…!?」
「だ、大丈夫。朝からこんな調子だったし…くしゅん!」
「全然、大丈夫じゃないじゃありませんか!
ちょっと待って下さいね…っと」
困惑気に私を見る男に少し微笑んでバックを取り出す。
カザゴソとバックを探ると今朝、優しいおじさんに買ってもらった(脅したともいう)花柄のハンカチを取り出す。買ったばかりだったが、これは仕方ないよね。
それで男性の濡れた顔をそっと拭く。
「え、あの…」
「風邪を引きます。というか、既に引いているので悪化しますわ」
そう言って拭いていけば、慌てたように手を掴まれた。
「大丈夫ですので。拭いて下さらなくても結構ですよ」
にっこり微笑まれハンカチを取り上げられた。
「これは、俺が洗って返しますので名前を教えて貰ってもいいでしょうか?」
有無を言わさないようなオーラを感じ、私は自分の名前を言うことにした。
「メリア・シュナイダーと申します」
「メリア嬢ですね?分かりました。お気遣い感謝します」
また、にこりと笑って「健闘を祈ります」と去っていった。
……もしかして、偉い人だった?
タラリと背中に流れる冷や汗を感じながら、どうかあの人の記憶から消えますようにと願ったが、残念な事に消えることは無かったのだった。
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