禁止鎮静剤投与:63人使用後12人死亡 因果関係調査へ
毎日新聞 2014年06月12日 11時54分(最終更新 06月12日 13時09分)
東京女子医大病院(東京都新宿区)で今年2月、小児への使用が禁じられている鎮静剤を投与された2歳男児が死亡した医療事故で、死亡した男児と同様に禁止薬を投与された63人のうち、12人が死亡していたことが分かった。同大の吉岡俊正理事長と永井厚志病院長が12日、厚生労働省で記者会見して明らかにした。理事長らは男児の死亡と投与の因果関係は「あったとみている」と認める一方、12人の多くは感染症で亡くなったと説明した。今後、外部の専門家らも加えた調査チームを設置して因果関係を調べる。
問題となっている鎮静剤は、人工呼吸中の小児への使用が禁止されている「プロポフォール」。死亡した男児は首のリンパ管の手術後に集中治療室(ICU)で4日間投与され死亡した。
事故後に大学側が同様のケースがないか調査したところ、2009年1月から昨年12月までの約5年間で、15歳未満の63人にプロポフォールが投与されていたことが判明。当初は死亡例はないと公表していたが、さらに調査した結果、新たに12人が死亡していたことが分かったという。
死亡事故を巡っては、同大学の医学部長らが5日、「病院側が説明責任を果たしていない」として独断で記者会見を開いたが、組織のトップの正式な会見は初めて。吉岡理事長は、男児の死亡について「責任を痛感している。亡くなられたお子様と、ご遺族の皆さまに心からおわびします」と謝罪した。
また、新たに判明した12人について、永井病院長は「プロポフォールが原因とは考えていない」と述べた。12人のカルテにはプロポフォールの副作用の症状の記載はなく、投与の3年後に死亡したケースもあるとしている。
男児の死因について、執刀医らはカルテにある「自然死」ではなく、禁止薬を使ったことによる「異状死」と指摘している。これに対し、病院側の弁護士は「男児の体の表面に異常はなく、医師法に基づき警察への届け出が必要な異状死ではなかったと認識している」と説明。事故の内部調査報告書は、遺族の了解が得られていないため公表できないという。【桐野耕一、神保圭作】