うなぎ店や養殖業者から不安の声6月12日 12時29分
IUCNのレッドリストでニホンウナギが絶滅危惧種に指定されたことについて、東京・目黒区にある老舗うなぎ店では、今後、うなぎの仕入れ価格の値上がりを懸念する声が聞かれました。
この店では鹿児島県産や愛知県産のうなぎを使っていますが、仕入れ価格は稚魚のシラスウナギの不漁で3年ほど前から高騰し、去年6月にもうな重の上を200円値上げして3000円としました。それでもことしのシラスウナギの漁獲量が高い水準となっているため、夏以降に仕入れ価格が下がるとみて、4月の消費税率引き上げの際は税込みの販売価格を据え置き、実質的に値下げをしました。しかし、絶滅危惧種の指定をきっかけに、今後うなぎの輸入が規制されるようなことがあれば、仕入れ価格が再び上がるおそれがあると懸念しています。
月に数回はうなぎを食べるという地元の80代の男性客は「値段が上がったら困るが、多少、値上がりしても好きなものは食べる」と話していました。
一方、うなぎ店の松本清社長は「仕入れ価格がようやく落ち着いてきたところなのでショックだ。値上げするのは難しく、今後、仕入れ価格が上がれば経営も苦しくなる」と話していました。
養殖業者からも不安の声
ウナギの養殖が盛んな鹿児島県内の養殖業者からは、先行きを不安視する声が上がっています。
鹿児島県は、養殖ウナギの生産量がおととし全国で最も多い7184トンに上り、稚魚のシラスウナギの海外からの輸入も盛んに行われています。
鹿屋市の養殖業者で全国の業者で作る組合連合会の理事を務める松延一彦さんは、40ある養殖池で年間100トンを出荷しています。松延さんは主に国内産のシラスウナギを仕入れていて、ことしは例年に比べて豊漁だったため、今はすべての養殖池でウナギを育てています。
しかし今後、国内でシラスウナギが順調に確保できるかどうか不透明で、国際的な取り引きの規制を求める世論が高まれば、養殖業者による国内産のシラスウナギの奪い合いや価格の高騰、それに生産量の減少が起きるのではないかと考えています。
松延さんは「国内でのシラスウナギの漁獲量が激減し確保が難しいなかで、今後輸入ができなくなれば養殖業者はやっていけなくなる。国が中心となって保護対策を進め資源回復に当たってほしい」と話していました。
また、養殖の生産量が全国2位の愛知県の業者で作る組合は、すぐに生産が減ることはないと受け止めているものの、将来的に稚魚の仕入れに影響が出ないか懸念しています。
愛知県はウナギの養殖の生産量が全国2位で、西尾市一色町におよそ100軒の業者が集中しています。
養殖するニホンウナギの稚魚の多くは地元で漁をしたり関東地方から仕入れたりしていますが、今シーズンは全体のおよそ30%を中国から輸入しているということです。
一色うなぎ漁業協同組合の鵜殿健治組合長は「シラスウナギの生産者としても漁の期間を短くするなどニホンウナギの数を減らさないよう努力を続けてきただけに、今回の登録は残念です。生産に直ちに影響が出るとは思いませんが、ワシントン条約に登録される可能性もあるため、将来的に稚魚の仕入れに影響が出ないか心配しています」と話しており、今後、組合に加盟する業者に今回の登録の経緯などを説明することにしています。
[関連ニュース] 自動検索 |
[関連リンク] |
|