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 名古屋大学工学研究科のチームが、新しい遺伝子検査用の素材を開発した。ごく少量の血液で瞬時に目的の遺伝子を検出できる。実用化が進めば、細菌による食中毒や感染症などの確定診断が、その場ですぐに正確にできるようになるという。11日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に発表した。

 感染症などの遺伝子検査では、血液などからDNAを取り出し、原因と思われる一部を増殖して目的の遺伝子を確認する方法が一般的だ。ただ、増殖には数時間から数十時間を要し、誤差が出る恐れもある。このため研究チームは今回、DNAを増殖しないで済む新素材を開発した。

 1ミリ角より小さなガラス基板に、太さ約10ナノメートル(ナノは10億分の1)の針金でできた「もみの木」が密生したような構造だ。新素材に血液を一滴通すとDNAの鎖がばらばらになる。目的の遺伝子を含むDNA断片は、蛍光色素を含む溶液内で色素と反応することで発見できる。

 この技術を応用すると、がん細胞の目印である複数のDNA断片やたんぱく質も短時間で一度に検出できるという。馬場嘉信教授は「感染症には、すぐ確定診断をして治療することが必要なものもある。2年後には実用化したい」と話す。(鈴木彩子)