やりましたよみなさん、移住前にインタビューできました。問答無用でお楽しみください!
篠原祐太氏プロフィール
1994年生まれ。昆虫食伝道師。駒場東邦卒業後、慶應大学に在学中。
昆虫食で地球を救うのが夢。現在は、40000匹の虫と自宅で同棲中。
過去には、学生支援に関する事業や様々なイベント等の主催実績あり。
特技は野宿と虫の踊り食い。動植物ともコミュニケーションが可能。
登場のインパクトがすごい
篠原:あ、イケダさん!今日はよろしくおねがいします。
イケダ:え、いきなりすごいですね、そのTシャツなんですか?
篠原:アブラゼミの幼虫Tシャツです。たまたま見かけて、もう一目惚れしちゃいましたよ。
イケダ:え?そのなかに生き物たちがいらっしゃるんでしょうか。ぜひ見たいです!そのために端の方の席取ったので!
篠原:はい、まず出しちゃいますね。
これ、タランチュラです。
イケダ:いきなりやばいの出た!笑 これいくらくらいするんですか?
篠原:個体差もありますが、安くて5000円、高いと10万、というところでしょうか。一度だけ食べました。
イケダ:あ、やっぱり食べたんですね!常食は厳しいですよね。コスト的に。
篠原:値段という点では、食べるのは抵抗感ありますね。ただ、「まだタランチュラを食べたことがない」という状況が許せないので、そこはお金よりも食べる方が優先です。
イケダ:毒とか大丈夫なんですか?
篠原:毒は意外と弱いんですよ。ただ、スピードが早いので、公共の場では出せませんね。ここで出したらパニックになります。
イケダ:ヤフトピに載りそう(笑) これはコオロギですか?
篠原:はい、7匹いたんですが、3匹電車のなかでコオロギ食べちゃいました。
イケダ:あ、あの電車内で鳴いていたコオロギたち…食べたんですか!
電車内でコロオギが鳴き始めた…
服を重ねてなんとか堪えてる…
けど、チラチラ見られてる…
— 地球少年@新潟ヒッチ (@yshinoearth) 2014, 6月 2
篠原:はい、電車内で食べたんで、視線が気になりましたが…。
イケダ:え、生で食べるんですよね。
篠原:はい、小腹が減ったら2〜3匹…。こんな感じで食べます。
イケダ:これはヤバいですね、すごい動画撮れちゃいました。ありがとうございます。
イケダ:これは可愛いですね!
篠原:ヒョウモントカゲモドキです。餌はコオロギですから、一緒に食べて感想を共有できるので貴重なパートナーなんですよ。コオロギの美味しさをわかってくれるんです。ゴキブリも食べます。
イケダ:この子が噂の愛するゴキブリたちですか。
<彼女たちには失礼ですが、一応モザイクを…。>
篠原:はい。彼女たちは特別ですね。キスもしますよ。…こんな感じで。
イケダ:すごい、おとなしいんですね(笑)
篠原:ディープキスです。最近は受け入れてくれるようになりましたね。
イケダ:いやー、面白すぎる!こちらは蛇?
篠原:この間捕まえた野性のアオダイショウです。
イケダ:ポケモンのノリですね…。
篠原:噛みますが、毒はありません。
イケダ:うおー、ちょっと怖い。けど噛みませんね。手なずけている…。
目指すのは昆虫食の普及
イケダ:やりたいこととしては、昆虫食の普及ということですよね?色もの芸人のようですが…笑
篠原:はい、昆虫食の普及です。どうやっていくかは悩んでいて、研究者としてアカデミックな世界に足を踏み込れつつも、それだけだと時間が掛かるのでどうしていくか、という感じですね…。
イケダ:研究機関みたいなものはあるんですか?昆虫食の。
慶応:少ないです。僕が通っている慶応にはないですね。国内外問わず、「昆虫食」に焦点を当てて総合的に研究をしている研究機関は本当に少なくて。ただ、昆虫に関する研究、食文化に関する研究はあるので、そういった場で昆虫食をテーマに研究するか、もしくは最初から組織に属さず自分でやっていくのか、選択肢は色々ありますね。先行事例もないですから、どうやっていくのかも含めて、難しいといえば難しいです。
イケダ:昆虫食、関心は高まっていますよね。国連が報告書を出してから特に。
篠原:はい。だいぶ研究は盛んになってきました。今のところ、文化人類学から昆虫食に入っている人が多い印象ですね。ただ、最初から昆虫食を環境問題や食料問題に結びつけて研究している人はまだまだ少ないので、そのポジションを狙っていく感じなのかなぁ、と思っています。
イケダ:昆虫食に対する一般の注目も高まっている感じですか?
篠原:そうですねぇ。最近はネットにも記事が増えてきていますし。あとは、書店で「昆虫食フェア」をやっていたりしますね。書店に一日張り付いて通り過ぎる人の反応を見ていたんですが、興味がある人は多い感じがしましたね。
ただなんというか、僕は4歳のときから虫食べているんですけど…。
イケダ:え?4歳!?
篠原:昆虫食は15年のキャリアがあるんです。もともと「当たり前に食べるもの」として昆虫を捉えていて、それを取り立ててクローズアップするものではないと思っていたんですよね。
人生をかけて昆虫食をやっていこうと決意できたのは、ごく最近なんです。2014年に入ってからとかですね。国連の報告書以来、今まで趣味でやっていたものを、これはライフワークとしてやっていけるんじゃないかと思い始めて。それから国内外の情報を収集して、確信めいたものに至ったのは今年に入ってからですね。
イケダ:なるほどー、起業とかも考えているんですか?
篠原:そういう方向性にいくと話題にもなりますし、そこそこイメージ通りにはなりますが、一過性のものになりやすいってのが懸念点ですね。アカデミックなところから入った方が、文化レベルでの転換ができるんじゃないかと。昆虫食ベンチャーやったところで僕が死んじゃったら終わりになるじゃないですか。研究なら先攻研究として残っていきますし。
ぼくが目標としている昆虫食の世界は、多分数世紀単位で掛かるものだと思っています。その難しさもわかっているんで、どうやってアプローチしていくか、揺れていたりもします。
食卓にコオロギやゴキブリが並ぶ世界を
イケダ:数世紀!壮大なビジョンですね。どういう世界を見ているんですか?
篠原:食卓に当たり前のようにゴキブリとかコオロギが並ぶ世界ですね。もっとも、そうなったとしても食糧難や環境問題が解決していないなら本末転倒だと思っています。
虫が好きだという以前に、僕は地球大好きなんです。虫を食べるのも、地球を感じるひとつの手段なんです。旅行に行くのとかと同じ感覚ですね。野宿したりもしますが、それも地球を感じるためですね。
イケダ:地球が好きだから、環境負荷の少ない昆虫食を推進していくと。すばらしいです。昆虫食のハードルってどこにあるんでしょうね?
篠原:一概に言えることはないんですが、各論では色々とありますね。
ただ、やはり心理的なハードルが大きくて、並んでいない理由をロジックで詰めていっても解決は難しいと思います。「食べる」という行為は死に直結するわけですから、そういう意味でも、新しいものに挑戦するのはハードルが高いですね。
だからこそ、チャレンジングでやりがいもあります。地球が好きだからやりたいというのも強くて、大好きな虫を研究して、その結果として、愛している地球と人類の問題が解決できれば一石二鳥、一石三鳥だなと。
イケダ:地球が好き、って面白い感覚ですね。ちょっと正直わからないです(笑)
篠原:これは言語化するのがむずかしいんですが、自然が好き、植物が好きという感じがまずありますね。加えて、それ以外の要素も好きで、たとえば宇宙の中の地球の立ち位置だったり、地球という存在自体が奇跡的なものであることだったり、何か神秘的なものを感じると言うか…それは言葉で表現するのはむずかしいですが。
ゴキブリを生で食べて死んでも、それは本望
イケダ:いや、まぁ愛はものすごい伝わってきます(笑)具体的な話なんですが、さっきコオロギ生で食ってましたが、あれ大丈夫なんですか?衛生的に。
篠原:これは昆虫にかぎらないことですが、生食はある程度のリスクはありますね。広めていくにあたっては加熱処理、粉末処理が必要だと思ってます。
生で食べるのは趣味ですね。最悪ゴキブリを食って死んでもそれは本望という感じなので…。リスクは色々ありますが、基本的には加熱処理をすれば大丈夫です。そこら辺も含めて研究していく感じになります。
イケダ:このゴキブリはそんなにゴキブリっぽくないですね。むしろダンゴムシに近いというか。
<写真は…まぁ一応モザイクにしておきましょう。苦手な人もいるでしょうし>
篠原:ゴキブリは世界に4000種類くらいいるのですが、これは羽根もないし、のんびりしているゴキブリですね。まだ十数種類しか食べていないので、他のものも食べてみたいんです。ゴキブリって朽ち木に住んでいる種類もいるので、捕獲が簡単ではないんです。真面目にどうしようか考えています。
イケダ:食べたいんですね(笑)
篠原:とりあえず食べてみたいです。好奇心が誰よりも強いんですよね。やっていないことがあるのがそもそも許せないっていう性格なんです。
イケダ:食べていないけどこいつは食べたい!みたいなゴキブリはいるんですか?
篠原:カラフルなゴキブリがいると聞いています。他にも緑とか青とか色々なゴキブリがいるので、100種類くらい並べて食べ比べしてみたいですね。日本に持ってくるのも大変なので、実現は相当難しいですが…。世界を食べ歩くのは頑張ればできそうですが。
「ゴキブリを食べているということ、それ自体が幸せなんです」
イケダ:それはフォトジェニックですねー!超取材したい。高知から行きますよ。これ普通に興味あるんですが、このゴキブリの味ってどんな感じなんですか?生でも食べるんですよね。
篠原:味自体は淡白で、主張はしてこないですね。個体によって味噌っぽい味、クリーム味、バター味って感じで。生卵っぽさがあったり。あとは卵がある場合は食感がありますから、慣れるまでは抵抗感がありますね。慣れてくると癖になります。
どちらかというと珍味のような感じで、「これは美味しい!」とは評価できませんね。僕の場合は、味というよりは「ゴキブリを食べている」ということが幸せなんです。口にいれても動いているので、生きているものを食べている感覚が幸せ、という感じです。
もともと、豚肉や牛肉の「もとの姿が見えない」点に違和感を感じ続けていたんですよね。その点、ゴキブリは元々の形が残っている状態で食べることができるので、ある意味で安心できるわけです。個人的には、添加物まみれの食品を食べるよりはゴキブリの方がいいんじゃないか、と思っています。
イケダ:食材としてみたときのコストはどんな感じなんでしょう?
篠原:まちまちですが、1匹30円〜60円くらいしますね。この一箱で6000円くらいします。見る人が見れば天国ですね。
食料(ゴキブリ)には一生困らない:ゴキブリ3万匹と同居中
イケダ:意外とコスト高いんですね!繁殖って難しいんですか?
篠原:ある程度、温度などの環境を整えると繁殖はしますね。実はゴキブリは、食べごろになるまで4〜5ヶ月かかるんです。なのでブワッと増えるというより、ゆるゆる増えていく感じですね。僕が食べるよりは増えるスピードが早いので、食料は一生困らないですね。
イケダ:家にはどのくらいいるんですか?虫たちが。
篠原:家には、4万匹くらいいます。ゴキブリ3万匹ですね。レッドローチと言われる種類だったり、4〜5種類いますね。
サイズ的に食べ応えがあるのがマダガスカルゴキブリで、これはお気に入りなので持ち歩いているんです。小腹が空いたらゴキブリを食べます。アメとかグミみたいな感じです。ちょっとお腹空いたときにゴキブリを食べるというか。
イケダ:異次元っぷりにくらくらしてきますね(笑)
篠原:いや、よく誤解されるんですが、ゴキブリだけ食べているわけではなく、食べ物は色々食べていますよ。虫は普通のお店では提供されていないので自分で持ち歩いている感じです。僕は野宿することも多いので、多めにストックを持っておいて、食料として食べているわけですね。
あと、彼らはボディガードも兼ねてますね。ゴキブリとかタランチュラとか蛇を出したら、ヤクザも逃げ出すと思います。
イケダ:食料であり、ボディガードでもある(笑)新しいライフスタイルですね。
篠原:小腹が空いたときに2〜3匹食べる感じですね。ゴキブリは生命力がある生き物です。4億年生きてきた彼らへのリスペクトがあって…ゴキブリを食べると、今日も1日頑張ろう、と思えるんですよね。
僕にとっては、ゴキブリがエネルギー源ですね。今食べているゴキブリの分まで、頑張って生きて、昆虫食で地球の問題を解決していこう、と思えます。
イケダ:ホント強烈ですね…(笑)
篠原:あとは、ゴキブリへの偏見を取り除きたいというのもあります。日本だとゴキブリが殺すべき対象になっていますが、そこへの問題意識もありますね。
だから「ゴキブリが一番好きか」と訊かれてもとそうではなくて、他の虫も好きだし、食べるんで。日本で今クローズアップする対象としは、ゴキブリがいいんじゃないかということでやっていますね。
ほら、ゴキブリってけっこう可愛いんですよ。横から見たことありますか?
イケダ:ほんとだ!意外とかわいい!これはありですね。
篠原:ちなみに、世界的にはゴキブリを食べる地域もありますし、漢方として使う地域もあります。栄養価も高いですし、コレステロールを低下させたり、抗凝固作用により血栓の形成を抑制する効果もあると言われています。そこら辺は研究していきたいところです。
「大量養殖技術」は昆虫食の重要なイノベーション
イケダ:昆虫食って日本だとどう受け止められてきたんでしょう?江戸時代とかも食べてたんですかね。
篠原:地域によっては、昔から食べられていますね。今でも長野県のように、海がない地域等ではたんぱく質を確保するために必然的に食べられていますね。とはいえ、だいぶ販売しているところも減ってきているようで…「伝統食」として採算度外視で続けられている感じはありますね。
今後、既存の昆虫食文化を持続可能なかたちで保全していく活動にも注力していきたいですね。昆虫食を広めようとして、伝統的な文化を壊してしまっては本末転倒ですし。
イケダ:ぼく、イナゴ好きなんですよ。この間飛騨にいったらお惣菜屋さんにイナゴが大量に並んでいて歓喜してしまって。五本指に入る大好物なんです。あれって、もっと安くならないんですかね?
篠原:やはり、コストがかかるんでしょうね。手で取っている場合は採集にも労力がかかりますし。イナゴは普通に美味しいですし、他はだめでもイナゴならいけるという方もいるので、可能性は高いと思いますが。あとは、イナゴ自体の数が、農薬の使用などで減ってきているというのもあるでしょうね。
イケダ:なるほどー…イナゴとかうじゃうじゃ増えそうな感じしますけどね。
篠原:簡単そうな感じはしますが、難しい部分もあるんだと思いますね。バッタ類は栄養価が高いので、大量養殖技術を確立し、途上国とかにそのノウハウを輸出して現地でシステム化すれば、食糧難も環境問題も雇用の問題も解決することができそうです。探求の余地がありそうで、個人的に今後注力していきたい領域です。
イケダ:なるほど!養殖技術で課題解決というのは、ユーグレナと被りますね。
篠原:まさに。養殖技術の問題が解決できれば、昆虫食へのハードルが下がるんでしょうけれど、既存の生態系に影響が出ないように大量養殖しなければいけないですね。養殖することで地球環境がかえって悪化してしまっては、最悪ですし。その意味で、浅はかに昆虫食を推奨するのは避けないとな、と思っています。
イケダ:アメリカのスタートアップでも、昆虫食系出てきましたよね。あれどう見てますか?コオロギチップスの「Six Foods」とか。
篠原:Six Foodsは面白いんですが、あれもコオロギをまぜる必要性はどこまであるの?という疑問があって。コオロギを入れるメリットには触れられていないんですよ。「米と豆だけで作ったチップス」より優れた点が示されてないですよね。
もっとも、昆虫食への窓口としてはいいと思います。価値観が徐々に変わっていくのでは、という期待はありますね。ハーバードを出てああいうことをやっているというのは注目を浴びますし、ありがたいな、と。昆虫食で挑戦する同じ仲間として上手く協力してやっていきたいなとは思っています。
イケダ:コオロギチップスって、技術的には難しくないですよね。粉末にしているだけで。篠原さんもあんな感じのスタートアップやればいいんじゃないですか?
篠原:うーん、話題性はありますが、一過性で終わってしまう可能性が大きいかなと感じています。おっしゃっる通りで今すぐできますが、それが冷めてしまったら終わりですから。自分のやりたいことと若干ずれてしまう印象があって、踏み出せていませんね。とはいえアカデミックな方から攻めるのも時間が掛かってしまうので、それはそれでバランスを見ながらやっていく必要性もひしひしと感じていて。悩んでいますね。
イケダ:うーん、篠原さんは起業家タイプだと思いますね。こうやって話してみて。研究の方にも関わりつつ、そちらは誰かもっと向いている人に任せて、ガンガン市場を攻めていく方が変化のスピードは早そうです。
篠原:そうですね、そんな感じは僕もしています。すでに研究している方はいるので、研究者の方と一般の人をつないでいくというのもやりたいんですよね。たとえていうなら、魚で言う、さかなくん、動物でいう、ムツゴロウさん。そういう人たちって、研究もしていますが、親しみも感じるじゃないですか。ポジション的にはああゆう方々をイメージしています。グローバルに活動する昆虫版さかなクン、みたいな。
イケダ:じゃあ、むし君?(笑)
篠原:いや、どうなんでしょう(笑)ただ彼らみたいに学術的な部分をリアルな部分に上手く融合していくというのはやりたいですね。世界中の研究者や昆虫食のプロジェクトを推進している方々と上手く協力しながらやっていきたいです。
ゴキブリたちと意思疎通
イケダ:いやー、ホントいいですねー。これから表に出るようになると、ガンガン炎上しそうですね。
篠原:テレビとかに露出するのはインパクトがありますが、冷めていくのも早いので、状況を整えていかないと、大きなチャンスを無駄にしてしまう懸念がありますね。露出のタイミングも重要だと思っています。ある程度準備が整って、それから出て行きたいと思っています。人生かけてやるからには、一歩たりとも妥協したくありません。
イケダ:批判を受けるとしたらどこが穴なんでしょう?
篠原:色々ありますけど、僕が生食していることに対するリスクは一番叩きやすいでしょうね。「子どもが真似したらどうするんだ!」とか。あとは、動物を持ち歩くことに対して「それは虐待なんじゃないか」とか。
イケダ:すごく興味深いです。動物の権利とかは語られますが、「虫の権利」ってどういう意識なんでしょう?
篠原:僕自身、小腹が空いたら虫を食べているんですが、「可哀想」という反応は相当数あります。いや、それを言うなら豚とか牛の方がよっぽど可哀想なのに、虫にだけそれをぶつけるのはおかしいと思いますね。
もちろん、食べ物への感謝はもっています。そこは世間一般の方々以上に感謝しながら食べている自信があります。食べるときも「殺してやる!」という感じではなく、「愛しているよ、一緒になろう」と意思疎通をはかりあって食べています。信頼関係をつくった上で食べています。
虫をモノとしては見ていないですし、イケハヤさんと会うような感覚で、ゴキブリと話していますし、食べています。彼らの命も、人間と同じくらい尊いと思っています。そういう感覚は食べないとわからないですし、理解するのも難しいと思いますが…。
イケダ:え?話してるんですか?
篠原:割と会話できますよ。特には虫類系は会話できて、蛇とかトカゲとか。犬猫より喋りやすい感覚がありますね。個人としてはですが…。
イケダ:意思疎通って、お互いに気持ちが通じているんですか。
篠原:意思疎通は図れますね。「この環境どう?とか「餌何が食べたい?」とか「温度湿度どう」とか聞くと、わかります。ゴキブリたちにも何の餌を食べたいかを聞いてから、餌をあげていますね。もっとも最近は40000匹を超えていて一匹一匹には対応できないので、だいたいの総意を伝えてもらっていますが。
イケダ:すごい!
篠原:でもコオロギとは仲良くなくて、意思疎通を図ることはあまりできませんね。苦手です。だからさっきも、電車の中で食べてしまいました。オスのコオロギは、けっこうケンカして鳴いて、それが鳴き止まないんです。「鳴くな」といっても言うことを聞いてくれなくて、食べざるをえないというか…。その点でいったらゴキブリの方がおだやかですね。
動きの速いゴキブリを捕まえるためには
<…いや、もうモザイクいらないでしょ!かわいいですよ、ほら。>
イケダ:たしかにおだやか。のそのそしていて可愛いですね。普通のチャバネゴキブリとかも食べるんですか?
篠原:家にいるものとかは殺虫剤の生体濃縮とかが怖いので食べませんね。野性のは食べますよ。
イケダ:つか、捕れるんですか!あの動きが速いゴキブリたちも。
篠原:それは慣れが必要で、慣れると次の一手を読めるようになるんです。こっちに動くな、みたいな。
あとは敵意むき出してはなくて、「仲間なんだよ、地位向上のために頑張っていくから」という感覚で信頼関係を築きながら、彼らの行動を読んでいくと捕まえられますね。僕は「ゴキブリ早捕り選手権」とかあったら世界レベルですよ。
ゴキブリにかぎらず、トノサマバッタとかも信頼関係をつくって、先を読んでいくことが必要ですね。虫を食べる醍醐味は捕るプロセスにもあって、狩猟本能をくすぐってくれます。牛は捕って食べることができないじゃないですか。
カミキリムシは美味しい
<名前はまだないそうです。>
イケダ:色々な虫を食べてきたと思いますが、美味しかった虫を挙げるとどんなものがありますか?
篠原:色々な本にも書いてますが、カミキリムシは美味しいですね(参考:“とっこむし”を美味しくただきました。)。ただ捕るのが難しいです。朽ち木のなかにいるので、探すのが大変なんです。
あとはアブラゼミの幼虫とかもめっちゃおいしいです。これは街中でも取れますね。初心者におすすめかな、と。幼虫をとって揚げて食べたらリスクもないですし、軽い狩猟体験もできるので。
イケダ:そろそろ出てきますね。みんなでアブラゼミの幼虫を捕獲して食べるワークショップとか面白そうですね。
篠原:今もそういうイベントは行われていますね。ぼくがこういう発信をしても、食べてみたいという人は増えてきました。最初はやっぱり抵抗がありますけれど、色々と情報に触れているうちに興味を持ってくれるみたいで、そこを利用していきたいですね。
イケダ:調理法ってどんな感じなんですか?
篠原:基本的には、揚げる、炒める、焼く、ですかね…。茹でるのはあまりないですね。素材の味が来ちゃうので。ただ、揚げ油を繰り返し使っちゃったりするので、それが体に悪いというのがあります。特に途上国などでは。新しい油でちゃんと調理すればいいんですが。
基本的には、シンプルに牛肉豚肉のように塩コショウでいいと思います。幼虫系だと醤油ですね。僕も森なんかに行くと、生で幼虫を見つけて醤油を付けて食べていたりしますね。
イケダ:これはデスソース?
篠原:これはゴキブリと一緒に舐めて、元気と刺激を貰っていますね。あとは野宿して寒いときにぺろっと舐めるとあったかく感じたり。最悪誰かに襲われそうになったらこれをかける、という…。目に入ると多分失明します。さすがに実際にはやらないですが(笑)
「家族には感謝しています」
<遊びにきてくれました。やばい、超可愛い。>
イケダ:しかしまぁ、ご家族はどういう反応なんでしょうか。
篠原:だいぶ慣れてきていますね。僕自身、4歳の頃から虫を食べていて、家で飼っていたので。一時期は家で20〜30種類の動物や虫を飼っていたこともありました。
たださすがにゴキブリは話が変わってきますが、さすがに最初は「飼うのはやめて…」みたいな感じでしたね。今はもう認めてもらっています。ただ、冷凍マウスを冷凍庫に入れていたんですが、それはNGで怒られましたが…。
《ゆる募》冷凍マウスを大量に欲しい人
実家でマウスが出禁になったので譲ります。
— 地球少年@新潟ヒッチ (@yshinoearth) 2014, 5月 30
イケダ:ご家族の理解ありきですよねぇ。
篠原:本当、そこは感謝しています。ありがたいですね。
地球を守るために、虫を食べる
<生き物ボックス>
イケダ:色物っぽいですが、つまるところ、地球環境を守りたいから、虫を食べるわけですよね。
篠原:はい、そうですね。国連も報告書を出している通り、昆虫食には可能性があるんです。ただ、あの報告書自体も、100%ではないですし、昆虫食にはメリットもあれば、デメリットもありますので、そこはむやみに推奨するのではなく、慎重に探っていきたいところですね。
イケダ:その意味では、環境系のNGOと繋がってほしいですね。日本には色々活動している団体がありますし。
篠原:ですね。他の活動とも関わってやっていきたいです。
イケダ:最後に、昆虫食にかける意気込みをぜひ。
篠原:昆虫食には様々な可能性があると思っていても、やはり、本気で地球のことが好きじゃないと続けられないと思うんですよね。特に今の段階では。
その点でも、僕がやらないといけないという使命感はあります。4歳から虫を食べてる人なんてあまり日本にはいないと思いますし。後は地球への想いもありますし。本当に地球が大好きなんです。
昆虫食と出会って、自分はこれで生きていくんだ、というひらめきがありました。それはこれまでの人生で感じたことがなかった感覚なんですよ。今までも色々なことをやってはいましたが、全部中途半端に終わってきたんです。これなら他のものも捨てられる、と始めて思ったのが昆虫食なんですね。
今後は、大好きな地球のために、大好きな昆虫の可能性を本気で探求していきたいと思います。結果として、環境問題や食糧難が解決に向かえば、これ以上ない幸せですし、生まれてきて良かった。生きてて良かった。って心の底から思えると確信しています。
イケダ:ありがとうございます!超面白い。これまでお話を伺ったなかで、屈指の面白さですよ。次は高知でお話していただきたいなぁ。
篠原:四万十川の水で育ったコオロギとかゴキブリとか、食べにいきたいですね。
イケダ:ぜひ(笑)
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イケイケドンドン!
鳩山元首相と僕のミールワーム達と!
虫への僕の想いを伝えられて満足です。
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— 地球少年@新潟ヒッチ (@yshinoearth) 2014, 2月 21
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