クルーグマンがそんなアホな記事を書いたのか、と勘違いされたかたは、そういうわけではありませんのでそのまま素通りしてください・・・

 クルーグマンが少し前のブログで人口減少の問題点について書いています。

こうした論点を示すたびにいろんな人から質問をもらう.「どうして人口の減少はいいことだって考えないの? だってさ,人口が減るってことは,資源への負担が減るってことだし,環境に与える損害も減るってことでしょ.」

ここで認識しておくべき大事なことがある.
「人口増加が鈍るのは,いいことになりうるし,そうなるべきだ――ただし,健全な政策としてまかり通ってるものは,この潜在的にはいい発展を大きな問題に変えてしまう見込みがあまりにも大きい」ってのが,それだ.なんでかって? 現状のゲームの規則では,ぼくらの経済には,「自転車」っぽい側面が色濃くあるからだ:十分にスピードを出して走ってないと,こけてしまいがちなんだよ.
(引用は経済学101さんから、全文は
こちら


 そこで問題:
 クルーグマンが「自転車」の比喩で表しているものはなにか? 日本語2字で答えよ(ヒント:上記のリンク先の全文を読むこと)。

A.アホ
B.ばか
C.ロバ
D.人口
E.それ以外









答え: それ以外


 おいっ、日本語2字じゃなかったのかよ!

そうでした。忘れてました。

 たぶん性格がねじれている人は(だって選択肢にない答えで答えるんですからね)、「投資」と答えるんじゃないでしょうか。


  問題は「資本の」成長率のやっかいなところにあるといえます。資本は消費や生産に合わせて瞬時に変化できません。資本は、生産が減少して必要とされなくなったらといって消えてなくなるわけではありません。その時点を超えて長持ちしてしまいます。
 また、生産するときにはすでに資本が装備されていなければなりません。つまり、「現在の」生産に必要な資本は、「現在以前の時点で」現在の生産量を予測して、あらかじめ生産されていないといけないのです。だから投資は「将来の」生産を予測して行われることになるのです。

 人口成長率が減少すると必要とされる資本も減少します。したがって投資も減少します。しかし、投資は一時的に人口成長率以上に減少します。なぜなら資本が長持ちしてしまうからです。
 また、投資は、「将来の」生産レベルを見越して行われるという点から言っても「先に」減少し始めます。

 クルーグマンが問題にしているのは、単純に人口成長率が「減少する」ということではなくて、人口成長率が減少する時の、人口成長率の変化と、資本の成長率の変化と、投資の成長率の変化との「ずれ」(タイムラグ)です。つまり、どうしても投資が「先に」減少するので、何らかの景気停滞を経る可能性が高いからです。

 自転車のたとえは、経済にとって、投資は本当はもっと「ゆっくり減速」したほうが望ましいのに、「急に減速」してしまうと経済がこける、ということを表しているわけです。

 人口成長率が減少したからといって、わたしたちが貧しくなるとは限りません。クルーグマンも言っているように、1人当たりで享受できる資源は増えます。1人当たりの資本ストック(資本装備率)も増える可能性が高いです。1人当たりの生産も増えるかもしれません(ただし、こうならない可能性もあります。一番の要因は、知識や技術の発展は人口に比例する、というところです)。

 しかし、経済は、投資が「先に」減速するので「ある程度の期間の間」景気停滞あるいは不況を経験する可能性が高くなります。クルーグマンが危惧しているのは、「正しい政策」が行われればその期間を短くすることができる(あるいは、なくすことができる)のに、現在の政治的状況ではそのような政策が行われない可能性が高いからです。

(あそうだ。もうひとつ忘れていました。)
 人口成長率がマイナスになると、「理論的には」実質金利(あるいは均衡実質金利)がマイナスになる可能性があるので、名目金利のゼロ下限によって金利が下がらなくなれば、やはり問題になりそうです。