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北沢かえるの働けば自由になる日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2014-06-11 残念な話の連続

育児トンデモ助言との戦い

| 育児トンデモ助言との戦いを含むブックマーク

「あんたのお乳は腐っている」―医療関係者のトンデモ助言に泣く母親たちよ、立ち上がれ! | 森戸やすみ

という記事を読んでいて、ここは知っておいた方がいいと思ったところ。

相談をされる私たち医師は、育児の専門家ではありません。病気の治療を求められてきました。育児は科学ではないので、医師が普段頼りにしている科学的手法は馴染みません。赤ちゃんたちを2群に分けて実験してみるわけにいきませんね。実験内容によっては倫理的に問題が出てきます。また、育児は実は様々な知識と技術が必要な壮大で長期間かかる仕事ですが、医師が知っているのは、育児の中でも医学的側面だけです。教育学的側面、栄養学的側面、被服学的側面などに関しては知識がないので、子どもの教育方法、離乳食の進め方、いつ何を着せたらいいか実は知りません。医学部で習うことはないので、仕事上必要性を感じた医師は、改めて勉強すると考えて下さい。医師によって知識にばらつきがあります。だから、赤ちゃんに接することの多い小児科医・産婦人科医でさえ、提示する育児法は違うし時代によって移ろいます。

あんまり知られていないけれど、実は、子育ての専門家ってのは、助産師保健婦なんだな。3か月検診の時とか、医師は病気や発達の度合いについて診断してくれるが、実際、相談したいような、育児の悩みは、日ごろから妊産婦と接することが多い、助産師や看護師、保健婦が担当して、回答することが多い

「真剣に見てもらえなかったのよ、小児科の先生に」

みたいな不満を言う人もいるんだけれど、それはちょっと違うので。

例えば、おむつかぶれがひどい。というのを医師に相談すると、軟膏を処方して、「清潔にしてくださいね」。

一方、助産師に相談すると、「おむつの中の湿気のせいなので、おむつを替える時にきれいにふいてから、しばらくおむつをはかせないでお尻を乾燥させてみては」。

しかし、それも、母親の混乱につながるようで。

「お医者さんと、助産師さん、言っていることが違う。どちらを正しいの!?」

いやいや、どっちが正しいじゃなくて、それぞれの立場で提案できる対処法が違うだけなんだけどね。


育児トンデモ助言に対して、こういう提案がなされているんだけれど。

現在は初産年齢が上昇し、高学歴なお母さんや社会経験を積んで調査能力・問題解決能力を身につけたお母さんが増えています。おかしな助言だなと思ったらそれをソーシャルメディアで相談したり、ブログに書いてみたりしてみてはいかがでしょうか。実際、確かな調査・検証能力のある女性のFacebookページやブログが読者を集めています。身近な人からの助言や言い伝えや習慣、育児雑誌やネットの情報に「本当にそうなのかな?」と疑問を持ち、「胎内の子どもが語りかけてくる」「子どもは親を選んで生まれてくる」などと言ったスピリチュアルでファンシーな雰囲気が苦手な親ごさんたちを"実際的な親"と便宜的に名づけてみましたが、そういう実際的な親たちが集い、発信したら、とても大きな力になります。

うーん、これはなぁ。

実名会員制のSNSでも、すごい状況があるからねw

以前、育児本を手伝ったときにリサーチした感じだと、逆に、高学歴・高齢出産のお母さんの方が、育児の隘路にはまりやすい気がした。

若いお母さんは目の前の赤ちゃんをまず見るから、なに言われようと迷わない。

「赤ちゃん、元気だからいいじゃない」

その姿勢が問題になる場合もあるよ。「授乳しているのに煙草を吸う」とか、「おっぱいの形が悪くなるから粉ミルクだけ」とか。おいおいって言いたくなるようなこともあるんだけれど、実際のところ、その呑気さや雑さが意外と良かったりするんだな。

逆に、高齢出産の人の方が知識が多く、経験も多い分、迷う感じがしたなぁ。まじめにやり過ぎる。

「なにも話せない赤ちゃんから、目を離さないで」

というのは正しいんだけれど、それを厳密に守り過ぎている感じもある。1日中ピッタリくっついて、赤ちゃんのことだけ考えていたら、それは、苦しかろう。

「え、そんなことを気にするの?」

と思うようなことを真剣に悩んでいたりするんだな。「頭の形がいびつ」や「体にあざがある」、「標準よりも小さ過ぎる」みたいなことを、半端な知識あるから見つけ出して、調べ抜いて、大問題にしてしまう。

そういうのはなんだが、ウェブで情報を集めたり、相談するぐらいならば、出産前から定評ある育児書を買って、まず読んだ方がいいと思う。いつの時代も親は同じようなことに悩むので、以下のような定番育児書には、上にあげたような悩みの答えは載っている。

おすすめは「育児の百科」(岩波書店)だが、これが古いと思うならば、「はじめて出会う育児の百科」(小学館)。こちらは未熟児だった場合や発達に不安がある場合などもカバーしている。うちには2冊あって、ちょうど補完し合ってよかった。

驚くほどでもないが、リサーチして分かったのは、


「かなりの母親が、育児書を開いたことすらない」


育児書をマニュアルとして厳密に育てた世代は、80年代ぐらいまでじゃないかなぁ。今の母親は、育児書すら頼っていない、口コミと雑誌ってどこかに統計があったんだけど、それは検索してみてくださいw でも、この手の育児書に載らないようなことは、子育てにおいて、そうそう起きないと思うんだけどね。




また、育児にまつわるトンデモ助言が一掃できるか……これは難しいと思っている。例えば、80年代の母親は「合理的なミルク」で育てて、00年代は「絶対母乳」、今はどっちでもその人次第だけど、両方悪いわけじゃない。時代によってブームがあるし、医学以外の面で再評価されたりすることもある。だから、医療的に危険なものや、明らかに間違っているもの以外は、「育児方針の違い」であって、問題として糾弾は難しい。言えるとしたら、「極端にするな」って加減の問題にするぐらいかな。

しかも、医師や助産師保健師など地域の医療従事者とは、子育てのために長い付き合いになるで、多少トンデモなことを言われようが、なかなか反論はできない。webでその医師や病院の問題点を書き込みしたり、関係機関にクレームを言うと、産科医・小児科医がいなくなるかもしれないでしょう。足りないんですから、人材は大切に。多少のことは目をつぶらないと。

親や親せき、近所のおばちゃん、ママ友から流れてくるトンデモ助言は、夫が「バカには、言わせておけよ」と言ってくれれば、多少落ち着くもんだと思う。言われても流す大人の態度しかない。だって、大抵、悪気ないからw 親切心の塊なんだからw その心だけは受け取っておかないと。


というわけで、トンデモ助言は……育児に関しては、そもそもトンデモかどうかが時代背景や知識によって変遷するものもあり。明らかなトンデモであっても、面と向かって「うるせー」と言い難いものなわけで、個人的には、撲滅は難しいと思う。


では、なにができるかと言えば、いちばんできそうな対策は、育児を楽しめず、悩みのタコつぼに陥りやすい母親たちが、もっとゆるく、広い目で見られるように、環境を整えることじゃないかな。母親は、それぞれ立場も、生きてきた経験も違うから、「これはトンデモです」という知識の啓蒙から行くのは、難しい気がするんだよなぁ。

トンデモ助言を聞いたとしても、要は視界が広くて、気持ちゆったりとしていたら、

“それは、私的にはないわ”

と言えるんじゃないかな、心の中で。にこやかにうなずきつつ聞いて、自宅に帰ったら、父親といっしょに、こっそり笑い飛ばす。

「ひどくね? マジ、笑えるでしょ」

というわけで、父親の役割は大事だよっと。身近な味方がなによりだよ。



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