6月
ハーバードビジネスレビューに寄せられた最新の研究により、学習における「ふりかえり」による効果が実証された。今回の研究では、1日の最後に「ふりかえり」を書く時間を15分与えられた生徒は、年度末のテストで23%も高いスコアを獲得するということがわかった。「ふりかえり」の大切さを再認識し、授業構成を再考するきっかけとなるかもしれない。
最新の研究により、学んだことや経験が「ふりかえり」としっかり結び付けられると学習はより効果的となる、ということが分かった。”Learning by Thinking: How Reflection Aids Performance,(思考による学習:どのようにして「ふりかえり」は成績に寄与するか)“の中で、HEC Paris、ハーバードビジネススクール、ノースカロライナ大学による研究チームが語るには、これは「『ふりかえり』による学習効果を実証した世界初の研究」だという。ここでいう「ふりかえり」とは、授業後に、重要なポイントを整理、抽象化、あるいは統合する時間をとるという意味だ。
たとえば、研究室で行われた実験で、ある参加者は、時間制限内で数学の問題に取り組み、その後に自分がどのような戦略を使ったのかを書き残した。すると、そのグループは、次のラウンドで、「ふりかえり」の時間を与えられなかったグループに比べ、18%も高いスコアを示した。
また、あるフィールドスタディ―では、新規採用された研修中のカスタマーサービス係の社員を比較した。片方のグループでは、研修のある日にはそれぞれ15分の時間が与えられ、その時間をつかってその日習った重要項目をふりかえり、少なくとも2つの学びを書き残すようにさせた。すると、15分の「ふりかえりタイム」を与えられたグループは、研修最終日のテストで23%も高い得点をあげたという。そして、このような成績向上は「一時的」なものではないのだという。「ふりかえり」による学びは長きにわたって定着するということが実証されたのである。
同研究では、「何かを学ぶベストな方法は、それを教えることだ」という通説についても分析している。研究チームは、新たなスキルや知識を共有したり教えたりするプロセスは、理解を深め学習効率をあげると予測していた。しかし、研究によると、「新たな知識を”1人”でふりかえること」と「誰かに共有したり教えたりすること」の間に大きな相違は見られなかったという。つまり、両者とも同程度に学習効果を向上させるというわけだ。
年齢の低めな生徒にとっては、「誰かに教える」という作業は授業後に内容を整理するのに良い方法であるが、年齢の高めな生徒にとっては他の手法でも十分といえる。すなわち、日記にテーマを書き残したり、カードに重要な項目を要約したり、学んだことを電話に向かってしゃべるといったことをすれば十分というわけだ。研究チームは、「ふりかえり」は、たとえそれがマネジメントのスキルであっても、学校で習う科目であっても、スポーツの雑学的知識であっても、学習にとって欠かせないものであると強調している。そして、次のように結論づけている。「より一生懸命にではなく、より賢く」学ぶことは可能なのだ。先生、トレイナー、チューターは、ほんのすこしの「ふりかえり」の時間を付け加えてあげることを考えてみるとよいだろう。
「ふりかえり」の重要性については、これまでも耳にすることは多くあった。塾の先生に言われたり、サッカーのコーチにいわれたりと様々な場面が思い浮かぶ。しかし、そのどれもが「なんとなく」であったように思う。そして、「なんとなく」で言われてもイマイチ納得できない自分がいたと記憶している。
そのような中で、今回、「ふりかえり」の効果が世界で初めて実証されたことには大きな意味があると思う。この研究結果がすべてではないが、これがより良い授業構成を考える上での何かしらのキッカケになれば嬉しい。
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