STAP細胞:致命的データ、理研は詳細な解析を
毎日新聞 2014年06月12日 00時02分(最終更新 06月12日 00時02分)
「STAP細胞」が、受精卵から作る万能細胞「胚性幹細胞(ES細胞)」だったのではないか、という指摘は以前から出ていた。STAP細胞として公開されている遺伝子データに、ES細胞によく見られる8番染色体の「トリソミー(通常2本の染色体が3本ある状態)」が見つかったという解析結果は、その指摘の裏付けになる。理化学研究所は、論文全体の内容や残された試料の調査に消極的だが、不正の全容解明が一層求められる結果といえる。
東京大の研究チームも同じ結果を出しており、解析の信頼性は高い。論文で記述されているSTAP細胞だった可能性を否定するデータとも言え、STAP細胞の存在を疑問視する専門家は「致命的なデータ」と批判を強める。
解析した理化学研究所の上級研究員らは、他のSTAP細胞の公開データの解析も実施しており、そこではSTAP細胞の特徴である万能性を示す遺伝子の働きをほとんど確認できなかったという。また、STAP細胞から樹立したとされる「FI幹細胞」のデータの解析では、ES細胞と、胎盤の細胞に変化する「TS細胞」とが9対1の割合で混ざっていた可能性があるとの結果が出た。膨大な容量の遺伝子データを複数誤って登録することは現実的ではなく、計画的な捏造(ねつぞう)行為があった可能性もある。
理研はこれまで、論文の再調査や研究の生データなどの解析を先送りしてきた。今回の解析は、STAP細胞の真偽を見極めるうえでも、詳細な解析が必要であることを示す結果だ。理研は現在、STAP細胞を作り直す検証実験を優先させ、上級研究員が5月下旬に解析の概要を報告していたにもかかわらず、報道されるまで認めてこなかった。
ある国立大教授は「仮にSTAP細胞がES細胞であるなら、検証実験をやる意味もない」と指摘する。外部識者による理研の改革委員会は12日に提言書をまとめ、公表する。改革委は再三、理研に論文の再調査を求め、提言書にも盛り込む見通しだ。理研には改めて「幕引きを急ぐな」とのメッセージが突き付けられている。【須田桃子】