国防

民間パイロット不足を解消する特効薬は縦割り排除中国の侵攻から国を守るためにも、官民の操縦者技能活用制度の確立を

2014.06.12(木)  織田 邦男

昭和20(1945)年7月、サイパン島の日米攻防戦において、米軍の圧倒的物量の前に矢弾尽き果てた第31軍は、参謀長井桁敬治少将が玉砕攻撃を前にして、本土に決別電報を打電した。

米、中国に国際空域での緊張回避を呼び掛け

自衛隊機に異常接近を繰り返したSU-27戦闘機(写真は航空ショーが行われた珠海での展示)〔AFPBB News

 「・・・将来の作戦に、制空権なきところ勝利なし。航空機の増産活躍を望みて止まず」

 制空権を失った戦いの悲惨さを訴える悲痛な電報であったが、この教訓は現在にあっても輝きを失っていない。

 昨年12月、中国は東シナ海に防空識別圏を一方的に設定し、国際法を無視して、あたかも領空のごとき運用を続けている。5月24日には、日中の防空識別圏が重なる公海上の空域で、情報収集にあたる自衛隊機、米軍機に対し、極めて危険な異常接近を繰り返すという威嚇行動をとった。

急速に技量を上げている中国のパイロット

 東シナ海のみならず南シナ海でも、領有権問題は一触即発の緊張が続く。中国の軍事力行使を抑止できるかどうかは制空権、制海権の帰趨にかかっていると言っていい。特に制空権、つまり航空優勢の獲得は対中国抑止戦略のカギとも言える。戦略家ジョン・ワーデンは次のように言う。

 「すべての作戦に航空優勢の確保は不可欠である。いかなる国家も敵の航空優勢の前に勝利したためしはなく、空を支配する敵に対する攻撃が成功したこともない。また航空優勢を保つ敵に対し防御が持ちこたえたこともない。反対に航空優勢を維持している限り、敗北した国家はない」

 第2次大戦におけるナチスドイツの英国本土攻略作戦では、英国が本土防空作戦「バトル・オブ・ブリテン」で航空優勢を維持し続け、ヒトラーの野望を挫いた。

 日本が東シナ海上空の航空優勢を確保し続ける限り、公船同士の小競り合いはあっても、日中の軍事衝突は抑止できるだろう。東シナ海の航空優勢はいまだ我が方に分がある。だが、今回の自衛隊機、米軍機に対する中国戦闘機の要撃行動からも伺えるように、質量共に着々と実力をつけているようだ。

 昨年12月に定められた「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」および「中期防衛力整備計画(平成26年~平成30年)」でも「航空優勢の獲得」は重視され、限られた予算の中でも重点的に配意された。

 ただ、これには盲点がある。中期防衛力整備計画には装備面の充実は俎上に上っている。だが、それを運用する人的戦力の養成、管理の問題については放置されたままだ。

 井桁少将は「航空機の増産活躍を望みて止まず」と血涙…
Premium Information
楽天SocialNewsに投稿!
このエントリーをはてなブックマークに追加

バックナンバー

Comment

アクセスランキング
プライバシーマーク

当社は、2010年1月に日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より、個人情報について適切な取り扱いがおこなわれている企業に与えられる「プライバシーマーク」を取得いたしました。

Back To Top