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R18異世界の男は全滅したようです 作者:夢路屋

二章

プロローグ

新章開始です。
プロローグなので短いです。
 あの戦いから十日ほど経過した。
 その間の俺の生活は特に何をするでもなくボケッとしているだけのものだった。というのもいくら神具の所有者になったとはいえ、今まで狂っていたものがいきなり正常になったとは考えられないという桔梗や白亜の考えによって、しばらくは屋敷で大人しくしてくれと懇願されてしまったからだ。

「……暇だな」

 俺はそうぼやきながら横に置いてあるお茶を啜った。

 こうして俺は暇を持て余しているが、桔梗や白亜はそうはいかないようで今回の事件についての調査や、戦いによって出た被害への対応などに追われている。
 楓や白亜の部下たちも同様で、忙しそうに何かを書いたり何処かへ出かけたりしているようだ。

 あの戦いの当事者である肝心の白雪は、神具に憑りつかれていた影響なのかいまだに目を覚ますことなく眠り続けている。

「……ところでお前はなんなんだろうな?」

「ぷぎ!」

 そしてその問題の神具なのだが、俺の羽織と同化して以降は特にこれといった変化は見られなかった。
 昨日までは……。

 今朝起きるといつも枕元に置いていたはずの羽織が見当たらなく、さすがにかなり焦った俺は慌てて飛び起きた。するとどういうわけか、俺の布団の隣に真っ黒で艶やかな毛並みをしたイノシシが寝ていた。
 そこは美少女じゃないのかよ。と思わないでもないが、そのイノシシにはどうにも見覚えがあった。
 そのイノシシは俺が森で生活しているときに倒し、羽織の原料となった毛皮の元の持ち主の姿だったのだ。

「やっぱりお前って……あの森の主か?」

「ぷぎ?」

 俺の問いにイノシシは首?を傾げるように体を傾けたが、なんのこと?と言いたげにこちらを見てくるだけで何の答えも返しては来ない。

「……原因はあの神具かな」

「ぷぎ~」

 どう考えてもそれ以外の原因は見当たらない。

「そうだ。《所有者特権=盗見》」

 俺はとりあえずこのイノシシについて調べてみることにした。

 Lv……---
 HP……6000
 MP……6000
 STR……6000
 DEF……6000
 DEX……6000
 AGI……6000
 LUK……0
 スキル
 神獣形態……神獣へと姿を変える。
 武装形態……武装へと姿を変える。
 称号
 神具〈衣〉……獣族の神が自らの毛を編み上げた神衣。
 新生……新たな所有者によって新生を遂げた。

「……意外と強いな」

 そしてステータスには予想通りの内容が書かれていた。
 この変化が正常なもので元からこういった機能があったのかはわからない。もしかしたらこの世界の人間以外が所有者になったことで起こった変化なのかもしれないが、別段害があるわけでもなさそうだ。

「それよりどうやったら羽織に戻るんだ? これ?」

 ステータスを見る限りではかなりの戦力になりそうだが、いざというとき羽織がないというのもかなり不安がある。そんなことを考えながら頭を掻いていると、イノシシが鼻を押し付けてきた。

「ぷぎ!!」

「なんだよ? お?」

 突然イノシシの毛が盛り上がると、今度はその毛が俺へと延びてきた。
 そしてその毛があっという間に俺の全身を包み込むと、次の瞬間にはいつもの着慣れた羽織を纏っている状態に変化していた。

「お? おお! すげぇな」

 どうやらこのイノシシは俺の意思で自由に羽織に戻れるようだ。

「ぷぎぎ!」

 そして今度は逆にイノシシにしてみようと考えると、待っていましたと言わんばかりの勢いで羽織からイノシシの状態へと変化した。
 イノシシはどこか誇らしそうに鼻を上に向けながら一鳴きしている。

「お~」

 パチパチ

「ぷぎぷぎ」

 まさか現実で変身するよな生き物を目にするとは思わなかった俺は、イノシシに対して拍手を送った。
 それに気を良くしたのかイノシシは褒めろと言わんばかりに、俺に頭を擦りつけてくる。ここまで懐かれれば悪い気もしないので、俺は要望通りにイノシシの頭を撫でてやった。

「ぷぎ~」

 頭を撫でられたイノシシは気持ちよさそうに鳴くと、俺の隣に大人しく寝転んだ。

「う~ん。……名前でも付けるかな」

 元が俺の羽織なのでいつまでもイノシシと呼ぶのもどうかと考え、俺は早速このイノシシの名前を考え始めた。

「黒いイノシシだから……クロイノ? なんか黒いのみたいで変だな。う~ん……もうくろでいいや」

 自分にネーミングセンスを期待するだけ無駄だと悟った俺は、イノシシに対して見たまんまの名前を付けた。
 猫や犬のような名前だが、一応色はあっているので問題はないことにしておこう。

「よろしくな黒」

「ぷぎ」

 黒は理解しているのか、名前を呼ぶと一鳴きして返事を返してきた。





 そのあとも黒を枕にしながら縁側でのんびりしていると、突然それは現れた。

『見ツケタ』

「ぶぎぶぎ!!」

「……また出た」

 いつ現れたのか、いつからそこにいたのかは一切わからないが、俺と黒の視線の先にはいつか見た白い少女が立っていた。
 そしてこの間とは違い、途切れ途切れに言葉を紡ぐのではなく、滑らかにこう言い切った。

『見ツケタ』

 あまり善くないものなのか、その白い少女が現れてからは黒が異常なまでの警戒を示し、興奮した鳴声こえを上げている。

「さて……こうして二回も俺の前に現れたってことは、人違いじゃないみたいだな」

『見ツケタ……クスクス』

 俺の言葉は相手に届いていないようで、相手は何の反応も返しては来ない。
 そんな相手の情報を少しでも集めようと、俺はダメもとでスキルを発動させた。

《所有者特権=盗見》

「……あ?」

 俺は驚きと戸惑いの入り混じった声を上げた。

 Lv……――
 HP……――
 MP……――
 STR……――
 DEF……――
 DEX……――
 AGI……――
 LUK……――

 スキルによってステータスは見ることができるのに、ステータスが存在しないという矛盾した答えを突き付けられた。

「なんだこれ?」

「ぶぎーぶぎー」

 俺の戸惑いをよそにあの白い少女を見ている黒が、さらに警戒を強めた。
 何かしてくるのかと、俺も警戒を強めながら様子を窺っていると、今まで『見ツケタ』と言うだけだった少女が初めて動いた。

 少女はゆっくりとした動作で右手を上げ、指先を俺に向けるとこういった。

『災いを……』

 一言を言った少女は、初めからそこには何もなかったかのように消えてしまった。

「……なんだろうな」

「ぷぎ~」

 少女が消えたことで黒も緊張が途切れたのか、疲れたようにコテンと床に倒れて弱弱しく鳴いた。
 そして俺は最後に少女が見せた壮絶な憎悪の籠った目が忘れられず、呆然と立ち尽くしたままだった。

「……また何か起こりそうだな」

 なんの根拠もないのに、俺は少女が言った言葉から必ず何か善くないことが起こると確信した。
今回は博牟に新しい仲間?が増えました。
名前が安直なのはお許しください。作者にネーミングセンスはありません。
何せ昔飼っていたハムスターの名前がハムスだった程です。

二章も頑張って書いていくので、読んでいただければ幸いです。
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