藤生明
2014年6月11日10時11分
ダビンチの真作か否か。日本からイタリアに戻った「重要作品」をめぐり、世界の研究者が一堂に会して激論を交わしたが、方向性さえ示せなかった。なにせ“相手”は約500年前の絵。一筋縄ではいかない。
イタリア・フィレンツェで先月開かれた国際会議で議論された作品は「タボラ・ドーリア(ドーリア家の板絵)」。ポプラの木板に描かれた縦86センチ・横115センチの油彩だ。16世紀初頭、レオナルド・ダビンチがフィレンツェ共和国政府の要請で描いた未完の大壁画「アンギアーリの戦い」の下絵の可能性があり、日本の国宝に相当する「重要作品」とされている。
ベッキオ宮殿の同じ場所には現在、16世紀中ごろのバザーリの壁画が描かれ、その裏にその壁画が隠されているのではと、数年前に調査があったが「発掘」は中断。そこに舞い込んだのが、70年前に国外流出した作品の帰還だった。
「傑作が戻ってきた。ダビンチ作に違いない」(文化担当のゴダール大統領補佐官)。2012年、イタリアは沸いた。寄贈元の東京富士美術館(東京都八王子市)の館長を招いた式典を開き、各地で巡回展を催した。ところが、その先に話が進まないのがとりわけ鑑定が難しいダビンチの宿命か、帰還後に真作、模写と意見が分かれ、針路の定まらぬ彷徨(ほうこう)に再び身を委ねるハメになった。
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