【ワシントン=川合智之】世界銀行は10日に発表した世界経済見通しで、2014年の世界全体の実質経済成長率を2.8%に下方修正した。前回1月時点の予測は3.2%だった。米国の寒波やウクライナ危機、途上国の構造改革の遅れなどが成長の足かせになる。15年の成長率見通しは前回の3.4%を据え置き、世界景気の減速は一時的との見方を示した。
成長率の下方修正が目立ったのが途上国。1月予測の5.3%から4.8%に引き下げた。寒波を受けた米景気の鈍化で輸出が伸び悩んだのに加え、構造改革の遅れや政情不安などが下振れにつながった。
中国の成長率を前回見通しの7.7%から7.6%に小幅に引き下げたうえで、経済改革が軌道に乗らないと「影響はアジア全域に広く波及するだろう」と下振れリスクへの警戒感を示した。
米国は寒波による景気低迷で第1四半期にマイナス成長となり、14年の予測は当初の2.8%から2.1%に引き下げた。ユーロ圏は1.1%と前回予測を据え置いた。
日本の成長率は14、15年ともに1.3%にとどまると予測する。日本経済が抱えるリスクとして、4月の消費税率引き上げで国内景気の落ち込みが続く懸念を指摘。改めて構造改革による生産性や投資の改善、雇用の流動性向上などを中期的な課題に挙げた。
ウクライナ情勢悪化のあおりでロシアの成長率は0.5%にとどまる見通し。ロシアと経済関係が深い欧州・中央アジアの低・中所得国も成長率が約1ポイント押し下げられる。一方、ウクライナ危機の影響が和らげば、ロシアの成長率は15年に1.5%まで回復すると見込んでいる。
報告では途上国の成長率が12年から3年連続で5%を割り込むのを「期待はずれ」と指摘。世銀のキム総裁は声明で「途上国の成長は必要な雇用を創出するには不十分」との見方を示した。
一方、先進国は14年の1.9%から15年に2.4%、16年に2.5%と回復が加速する見通しを維持した。
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